絆を探し求めて
〜白い羽根が舞う頃〜

14話 幸せな日々
(本物のかごめだ。かごめが戻ってきた・・・) かごめを井戸から連れ戻して二日目。 まだ完全に一人で歩けないかごめ。 弥勒たちの家で療養している。 「かごめ!足に効く薬草もってきたぞ!」 犬夜叉は頼まれていた妖怪退治をとっととすまして、弥勒たちの家に直行。 そして朝も夜も弥勒たちの屋敷に入り浸り。 ・・・というかかごめの傍に入り浸り(笑) 「・・・」 じーーー・・・。 床に眠るかごめをお座りの体勢でかごめを見つめる。 じーーー・・・。 (・・・また突然消えたりしえねぇだろうな) 髪の毛をサラ・・・っと触ってみる。 (よし・・・。生きてるかごめだ) 確認しないと不安で・・・。 「怪我人になにしてるんじゃ」 「!!」 ギクっと肩がすくむ犬夜叉。 「ったく。オラがいない間にかごめに手を出そうとは・・・。 助平犬が」 「・・・怒」 ボコ!! 久しぶりに犬夜叉の拳にくらっちゃいました、七宝。 「・・・ん・・・?」 「気がついたかかごめ。オラじゃ」 たんこぶを押さえて七宝が枕元に・・・。 「七宝ちゃん・・・」 「かごめ。気分はどうじゃ?」 「うん・・・」 「犬夜叉の奴が寝込むかごめによからぬ事をしようとしたが オラ、ちゃんと阻止したから安心せい!」 えっへん!と言わんばかりに胸を突き出す。 犬夜叉、七宝の頭上ではーと拳に息をかけている。 「・・・ふふ。相変わらずね・・・。いいコンビだわ。犬夜叉・・・」 「・・・(ドキ)けっ・・・」 朝のかごめの穏やかな微笑みにときめく、15歳の心。 「そうじゃ。犬夜叉。お前はあっちいっておれ。かごめは 安静しておらねばならんのだ」 「大丈夫よ。七宝ちゃん。私、起きるから・・・」 かごめは静かに布団から起き上がり立とうとした。 「きゃ・・・っ」 「かごめ・・・!」 ふらついたカゴメの体をうでて受け止める犬夜叉・・・。 「ご、ごめん・・・」 「けっ。仕方ねえ・・・。乗れよ」 犬夜叉はしゃがんで背中を差し出す。 「・・・い、いいの・・・?」 「あ、歩けないんじゃしかたねぇだろ・・・。し、 暫くお前の足になってやる」 「・・・ありがとう・・・」 「・・・お、おう・・・」 ふわ・・・ッ。 かごめは静かに犬夜叉の背中に体を預けた。 (・・・かごめの・・・感触だ・・・) 奈落と戦っていた間・・・ずっと背中に感じていた温もり・・・。 懐かしさと嬉しさが犬夜叉の心を柔らかくほぐしていく・・・。 何でもしてやりたい。 かごめのために 「い、いきてぇトコあったらいえよ・・・。どこでも 連れて行ってやる・・・」 「うん・・・。じゃあ・・・。ご神木のところが・・・いいな・・・」 「わかった・・・」 犬夜叉はかごめをそっと労わるようにおぶさり 負担がかからないようにゆっくり歩いて ご神木に向かった・・・ 「犬夜叉の奴。かごめにべったりじゃな」 「・・・べったりー?」 屋根の上でまんじゅうをほおばって犬夜叉とかごめを見送る七宝と翡翠。 「犬夜叉はな、体が大人じゃが心は子供なんじゃ。 かごめがおらんで寂しかったんで今、べったりなんじゃ」 「ふうん。私は七宝ちゃんにべったりしてあげる」 翡翠は七宝と腕を組んだ。 頬を染める七宝。 「お、おい・・・。お、オラは妖怪でお前は人間・・・ 不毛な恋は・・・(照)って寝とる・・・(汗)」 七宝と翡翠の頭上。 青空が広がっている。 幸せな空気が 風にも移って温かく・・・。 「・・・こっちのご神木も・・・。ちゃんと大きくなってくれたんだ・・・」 ご神木に頬を寄せるかごめ。 「・・・よかった・・・。嬉しい・・・」 「・・・」 毎日毎日。 かごめの国で 戦国で 犬夜叉とかごめが・・・ 少しずつ育てた 離れていたけど 一緒に・・・。 今、二人の願いが込められたご神木の前に 二人で座っている・・・ 「かごめ・・・。寒くねぇか」 「大丈夫・・・」 だが犬夜叉はかごめに上着を着せた・・・。 何気ない動作だけど・・・ 優しさに労わりが感じられて・・・ 「・・・」 「どした・・・?どっか痛いのか・・・?」 「ううん・・・。なんか・・・。犬夜叉・・・。 たくましくなったなって思って・・・」 「・・・な、なんだよ。急に・・・」 少し頬を染めて腕を組む犬夜叉。 「私・・・。年とちゃったでしょ・・・?でも犬夜叉は・・・。凄く 大人になったね・・・」 「ばっ・・・。お前はお前だろっ。か、変わってねぇよ。 つーか・・・前よりキ・・・」 「え?」 ”綺麗になった”といいたいが言葉が途切れちゃった犬夜叉。 「・・・い、い、いや・・・。と、とにかくお前は大して変わって ねぇんだから気にスンナって」 「なんか・・・。誉めてるのかけなされているのかわかんないな。ふふ・・・」 「・・・わ、悪かったな・・・!」 ぷいっと拗ねる所は変わってない・・・。 変わった部分もあるし・・・ 永遠に変わらないところもあって・・・ それをひっくるめて・・・ 好きという気持ちになる・・・ 「・・・犬夜叉・・・」 「なんでい」 かごめはまっすぐに犬夜叉を見つめた。 「・・・やっと・・・。会えたね・・・」 「かごめ・・・」 「私・・・。嬉しい。会えて嬉しい・・・」 かごめが満面の笑顔で言うから・・・ 「・・・っ(照)」 リアクションに困る純情犬夜叉君。 顔を背けてしまう。 「・・・犬夜叉・・・?」 「・・・な、なんでもねぇよ。ま、と、とにかく お前は足を早く治せ。そ、そばにいてやるから・・・(照)」 「ありがとう・・・」 (・・・) かごめの笑顔を見るたびに 幻ではないんだな・・・と犬夜叉は確認する。 現実に、かごめが、そこに、いる それだけで力がわいてくる。 「・・・そろそろ戻るか」 「え・・・。もう少しだけ・・・。ご神木見てていい・・・?」 「ああわかった」 かごめは犬夜叉の肩に寄りかかった 犬夜叉もかごめに寄り添う・・・ ご神木にもたれて・・・。 (本物の・・・かごめ・・・やっと会えたんだな・・・) 犬夜叉の鼻にかかるかごめの髪と・・・。 香る優しい匂いが・・・ 確かな幸福感を犬夜叉に与える・・・ 二人で育てた二人のご神木で寄り添う二人だった・・・。 それからというもの・・・ 犬夜叉は日課だった妖怪退治を中断して かごめのための日々が始まった。 「犬夜叉!かごめにちゃんに精のつくもの何かとってきて!!」 と珊瑚に頼まれると。 「わかった!うまい魚とってきてやる!!」 「ってあんたね!家よりでかい妖魚とってきてどーすんのさ!」 と珊瑚に叱られたり。 かごめが立ち上がって歩こうとしたならば。 「無理すんな。かごめ。オレがおぶってやる」 「・・・で、でもね。あ、あの・・・いい」 「遠慮すんな。さぁ!」 「・・・。お風呂場の中までおんぶしてくれるの?」 「えっ(照)」 風呂場の前でもじもじする二人だったり・・・(笑) 「かごめ!今日はどこへ行く?」 「かごめ。うまそうな大根掘ってきてやったぞ!」 やっと会えたかごめに 笑顔のかごめに 犬夜叉は毎日毎日 かごめのために一生懸命だった いや・・・ 一生懸命・・・ かごめのそばにいたかった・・・ 「・・・犬夜叉。開けてイーよ」 「けっ。一体なんだよ。なんだって・・・」 カタ・・・ 襖が開けた犬夜叉。 「・・・」 そこには桃色のこの時代の着物を着たかごめが・・・ 「ふふ。村の人に仕立ててもらったんだ。ほら。かごめちゃん 向こうでの着物しかなかったからさ」 「ごめんね。わざわざ・・・」 「いいよ。それより・・・」 珊瑚はかごめの背中を押して姿を見せた。 「どう?綺麗だよね〜」 「・・・」 「どうしたの。犬夜叉。おーい」 「はっ」 犬夜叉、覚醒。 「ははーん。見惚れてたな。ま、仕方ないね」 「ち、違うッ!!ちょっと考え事してただけでい」 「あ、そう〜」 珊瑚、犬夜叉をひじでつつく。 「ふふ〜。かごめちゃん。早く歩けるようになって 村中歩いて回りなよ。きっと村の男達が黙っちゃいないよ」 (!!) 犬夜叉の嫉妬レーダー。 耳がぴくんと動いて早速始動。 「きっと嫁に来てくれーっと殺到するんじゃない。 試しに行ってみる?私が肩かしてあげるから」 「駄目だ!!かごめはオレが背負ってやってんだからな!! 誰も近づけさせねぇぞ!!」 と、かごめを自分の背中にきっちりと確保。 「・・・ぷ。ははははは!!わかったわかった。そんなにかごめちゃんと ひっついていたいならどうぞどうぞ。私は翡翠と美味しい魚でも取ってくるよ」 珊瑚はくすくす笑いながら 部屋を出て行く・・・ 「さ、珊瑚の奴・・・!人をおちょくりやがって・・・!」 顔が真っ赤ですよ。犬夜叉君(笑) 「・・・ふふ・・・。なんか・・・。いいな。こういうの・・・」 「え・・・?」 「・・・仲間の皆で・・・笑いあったり怒ったり・・・。懐かしい・・・いいなって・・・」 「・・・。そ、そうか・・・」 「うん・・・」 かごめが喜んだ顔がいい。 かごめの・・・ 何度井戸があった場所へ 何度ご神木を見上げたか。 いつか会えるって信じて・・・。 (ずっと続けばいいのに・・・) そんな想いが芽生えて・・・。 「ねぇねぇ。かごめちゃん。こっちの着物も・・・」 着物の見立てに夢中の女子衆。 一方犬夜叉は弥勒に呼び出され。 「犬夜叉。お前はちゃんと考えているのか?」 「あ?」 「かごめ様のことだ。このままかごめ様がこの時代にいるということに なると・・・。どうするんだ」 「どういうことでい」 はぁ〜とあきれる弥勒。 「あのな、所帯を持つかということだ。かごめ様が ずっとこの家にいるわけにおいかないだろう」 犬夜叉、腕を組んですこーし考えてみる。 「・・・。わかった家を建てりゃいんだんだな!?」 「ま、まぁそういうことだが、犬夜叉。お前なーんか勘違い・・・って おらん・・・」 犬夜叉、何をどう受け止めたのか森の中へとすっ飛んでいった。 「・・・かごめ様の苦労が身に沁みて分かる・・・(汗)」 (・・・ふ。ま・・・。”らしい”っていうのかもな・・・) 犬夜叉らしく かごめらしく 幸せになってほしい。 仲間の幸せを願う弥勒と珊瑚・・・。 ちなみにその日、犬夜叉は近所の森半分の木を切り倒してしまい、 こっぴどく珊瑚に叱られてそしてかごめに飽きられて へこんだとのだった(笑) 賑やかな毎日。 冗談言い合って怒って 笑いあって 犬夜叉が求めていたもの、全てが凝縮されている。 何より欠かせない”かごめ”がそばにいる・・・。 犬夜叉はただ、ただ、嬉しかった。 だが・・・。 「・・・え?犬夜叉が?」 「うん。ったく。アイツときたら。かごめ、かごめと毎日 煩いくせに・・・」 かごめが寝ている部屋。 七宝は木の実をかごめに持ってきた。 そして七宝は犬夜叉が桔梗の墓参りを欠かさずしていることを 伝えた。 「かごめ、気に病むな。オラがしっかりと言って聞かせる」 「ううん。いいのよ。七宝ちゃん」 そっと七宝の額をなでるかごめ。 「桔梗をないがしろにするような犬夜叉なら・・・。私は好きにならなかった。 だからいいのよ。寧ろそういう犬夜叉であってほしい」 くっと目尻を押さえる七宝。 「かごめは一層器の大きい人間になっておるというのに・・・。 アイツは何年たっても変わらん子供じゃのう・・・」 「ふふ・・・。またそんなこと言ってたら犬夜叉からげんこつ、 もらっちゃうよ」 「ふっ。かごめ。オラを見くびるな。犬夜叉と違ってオラはもう 大人・・・」 ゴチン! あらら。七宝の頭の上に犬夜叉の拳が降ってきました。 「・・・誰が大人だ。このガキ子狐が」 「う、うるさいわいッ!!お前こそ”万年二股男”が!!」 ゴチン!! 二発目くらって結局最後はかごめの胸になきつく七宝。 「ったく。犬夜叉も・・・いい加減にしなさいね」 「けっ・・・」 (ふふ・・・。本当に変わらない・・・。あの頃と同じ・・・) 楽しかった日々・・・ これがこのまま続けばいいのに・・・ ”桔梗の墓に毎日ずっと・・・” (そうだった・・・。ここは・・・。犬夜叉と・・・。桔梗が 過ごした時代でもあるんだ・・・) 忘れちゃいけないことがあった。 その夜。 かごめは少し寝付けない。 (・・・私・・・。このままここに居てもいいんだろうか・・・) 漠然と疑問を感じ始めたかごめ・・・。 (・・・いいのかな・・・。このままで・・・) ”・・・周りに流されず・・・。きちんと・・・考えてごらん” うとうとし始めたかごめの耳に聞こえてきたのは 優しい声。 (・・・桔梗も・・・幸せになるはずだった・・・) ”君の心で見に行っておいで・・・。そして考えてごらん・・・” (私は・・・。このままで・・・) ”君の幸せが何かを・・・考えに行っておいで・・・” ふわり・・・ どこからか・・・ 白い羽根が一枚 かごめの横たわっていた布団に一枚残し・・・。 かごめの姿が布団から消えた・・・。