絆を探し求めて
〜白い羽根が舞うころ〜

第16話 過去と未来と・・・ (いよいよ・・・今日だ・・・) かごめは犬夜叉と桔梗が落ち合うはずの場所の茂みに身を潜め 桔梗が来るのを待った。 (もしかしたら・・・。未来が変わっちゃうかもしれないけど・・・。やっぱり 私には自分だけの気持ちを優先させるなんてできない) かごめは桔梗に伝えようと思った。 これから来る犬夜叉は偽者だということを・・・。 (・・・桔梗・・・) ”君の心で確かめておいで・・・” (風馬さんの声は・・・確かめろって・・・このことだったのかな。自分の 未来だけ考えちゃいけないって・・・) 犬夜叉との幸せな未来を考えちゃいけない。 自分だけの幸せは・・・。 (あ・・・。来た・・・!) 静かに歩いてくる桔梗・・・。 真っ直ぐな姿勢で その表情は凛としながらも 恋をしている女の子の柔らかさが溢れて・・・ 犬夜叉が忘れられないのもわかる気がする 悔しいけれど (・・・。やっぱり・・・。綺麗・・・) かごめの心は少し重く沈んだ。 (今は落ち込んでる場合じゃない。知らせなくちゃ) 「き・・・じゃなかった。姉上・・・!」 「楓。お前どうしてここに・・・」 桔梗は楓の視線までしゃがんだ。 「あ、あの・・・っ。えっと・・・。姉上っ。これから ここへ来るのは本物の犬夜叉ではありません」 「・・・。どういうことだ」 「・・・わ、悪い妖怪がいて・・・。姉上が持つ四魂の玉を 狙っているのです。犬夜叉に化けて姉上から奪おうとここへ 向かっていて・・・」 かごめは緊張した。 桔梗が信じてくれるかわからないけれど とにかく伝えなければ・・・ だが緊張して呂律がまわらない。 「落ち着け。楓・・・」 「と、兎に角、姉上!!犬夜叉を信じてください! 犬夜叉は・・・。犬夜叉は・・・姉上を裏切ったりしない・・・っ」 ”桔梗・・・” 桔梗の名を切なく呼ぶ犬夜叉の声がかごめの心に響く・・・ 「犬夜叉は姉上を信じています。だから・・・。だから 姉上も好きならば絶対に信じてください!」 桔梗の肩を掴んで必死に訴えた。 「・・・すまぬ。楓。私を心配してくれているのだな」 「え、いや、だから・・・。そうじゃなくて・・・っ」 「お前の気持ちは嬉しい・・・。安心しろ。私は犬夜叉を信じている」 かごめの髪をそっと撫でた・・・。 その感触はかごめがあまり知らなかった優しい桔梗のぬくもりで・・・ (・・・大丈夫だ。きっと信じてくれる) 「信じてください・・・。好きな人のことは・・・。お願いです姉上・・・」 「わかった・・・。ありがとう。楓」 そっと楓を抱きしめる桔梗・・・ (・・・これで犬夜叉と桔梗は裏切りあわずにすむのかな・・・。これで・・・) 桔梗の腕の中で・・・。 また意識が遠のいていく・・・。 (・・・今度は何処へ・・・?) ”過去は・・・変わらない” 優しい声がかごめの問いに答えた。 (・・・桔梗と犬夜叉・・・?) 見えてきたのは・・・ ご神木の前で見つめあう桔梗と犬夜叉 「・・・犬夜叉・・・。すまぬ・・・。私がお前を信じ切れなかったばっかりに・・・」 「いや・・・オレも同じだ・・・」 「だが楓のお陰で・・・。お前を裏切らずにすんだ。 楓に言われた。お前を何があっても信じろと・・・」 桔梗の手には四魂の玉が・・・。 「・・・お前を信じている・・・。犬夜叉・・・」 「ああ。おれもだ・・・」 深く深く見つめあい・・・。 犬夜叉の両手が桔梗の肩に触れられた・・・ かごめは二人から思わず顔をそらす・・・。 (・・・よかった・・・。二人は幸せになれるんだ・・・。 でも二人のラブシーンは・・・やっぱり・・・。痛いよ・・・) これで未来が変わったのだろうか。 何かが変わったのだろうか (・・・私と犬夜叉は出会えなくなるけど・・・。 二人が幸せなら・・・) 偽善だろうか。 でも 好きな人が幸せなら それに勝る幸はない・・・ 「・・・お前もただの女か」 (!?) この嫌な声と空気は・・・。 かごめが顔を上げると犬夜叉の姿をした奈落が 桔梗から四魂の玉を奪って・・・! 「・・・お、お前は・・・!?」 「四魂の玉が手にはいったぜ」 「返せ・・・!犬夜叉、貴様ッ!!!」 犬夜叉の姿をした奈落は桔梗に向かって鋭い爪を たてた・・・! 「姉上・・・!!」 ザ・・・ッ!!!! 桔梗をかばった楓の姿のかごめ・・・ 奈落の爪は背中を深く傷つけ・・・ 「楓・・・!!」 「・・・姉様・・・。もう一度・・・。犬夜叉を信じて・・・。 あれは・・・。犬夜叉ではない・・・」 「楓しっかりしろ・・・!!」 血が止まらない。 楓を抱えた桔梗・・・ 犬夜叉に向かって矢を向けた・・・。 「・・・犬夜叉・・・。貴様・・・っ!!」 「へっ・・・。妹まで巻き込むなんてな・・・」 対峙する二人・・・ (違う・・・っ。違うのに・・・ッ!!) 薄れていく意識の中・・・ 再び優しい声が 聞こえてきた・・・ ”人は・・・過去を変える事は出来ない・・・” (でも・・・!) ”でも・・・。見つめなおすことは出来る・・・。 そして自分の行くべき道を・・・見つけられるんだ・・・” (・・・いくべき道・・・) 倒れるかごめに 白い羽根が舞い落ちる・・・ (・・・私の行くべき道は・・・) 心に浮かんだ問いを何度も唱え繰り返す・・・。 (・・・犬夜叉・・・) 「・・・!?かごめ・・・!?」 どこからともなく聞こえた声に 振り返る犬夜叉。 「かごめ・・・!!!」 そこには着物のまま横たわるかごめが・・・。 (あったかい・・・!生きてる・・・) 抱き上げた温もりに安堵する。 「おい・・・!!めぇ開けろ!!かごめ!!!」 かごめの体を揺すると ゆっくりと目を覚ました。 「犬・・・夜叉・・・」 「かごめ・・・!!」 朦朧とする意識・・・。 ここは何処? 帰ってきたのか・・・? 「ったく・・・。心配させやがって・・・。また勝手に消えるんじゃねぇよ・・・」 「・・・ごめん・・・」 かごめを抱く犬夜叉の手が・・・微かに震えている・・・。 「怖かった・・・。お前がまた・・・行っちまったんじゃないかって・・・」 声も震えて・・・。 本当に心配した気持ちが伝わる・・・ 「ごめんね・・・」 「・・・でも・・・信じてた。絶対に帰ってくるって・・・」 「うん・・・」 「・・・もう・・・。オレがいねぇ間に消えたりすんじゃねぇぞ・・・?」 力の限りかごめを抱きしめる・・・。 それは優しさに溢れて・・・ 犬夜叉の想いが伝わってきた・・・。 (・・・ありがとう・・・。犬夜叉・・・) 犬夜叉の想いの深さに感謝する・・・。 同時に・・・ かごめは改めて悟った。 (私・・・。このまま・・・。 自分だけのことを考えちゃ・・・今のまんまの 私じゃだめ・・・) そして・・・ (・・・風馬さん・・・。私を・・・。帰して・・・。私の時代に・・・) と・・・白い羽根に願ったのだった・・・