絆を探し求めて
〜白い羽根が舞うころ〜

第17話 きっとまた会える
よし。かごめは居るな) 余程かごめが突然消失したことがショックだったのか。 犬夜叉は妖怪退治にも行かなくなり、片時もかごめのそばを離れない。 何処へ行くにもついて回る。 「かごめ様にべったりだな」 そう弥勒たちがからかうと。 「う、うるせー!!かごめは足が治ってねぇ。誰がおぶってやるんだよ!」 と、赤面する犬夜叉。 そんな犬夜叉が微笑ましいと想いつつもかごめの心は複雑だった。 (・・・甘えてちゃいけない・・・。いつまでも・・・) 縁側。 犬夜叉とかごめが二人で静かに 空を眺めていた。 「・・・どうした。かごめ」 「ん?あ、足、早く治らないかなーって・・・。犬夜叉に 迷惑かけてちゃいけないし」 「お前のことはオレがおぶってやる。 いつでもついててやるからな!だから心配すんな」 犬夜叉は珍しくさわやかに素直に そういった。 本当の気持ちだからだ。 寧ろ・・・。 少しだけかごめの足の治りが遅くなればいい。 かごめのそばにいる理由が出来る。 そう想うほどに・・・ (・・・。どこにも行くな・・・かごめ) 何度となく突然消えるかごめ。 あの痛みにはもう耐えられない。 「かごめ。どこいくんだ」 「・・・。お風呂よ。まさかあんたもついてこないわよね?」 流石にお風呂までは着いてこないが・・・ 「かごめ、とっとと体洗って来い。俺が外で見張っててやる」 といってお風呂の前で覗きの番犬(笑) 「・・・。おすわり!!」 あらら。頼もしい番犬君、久しぶりにおすわり食らっちゃいました。 おすわり何度食らっても良いから。 片時もかごめから離れたくなかった。 だが・・・。とある時だけ犬夜叉はかごめのそばを離れる。 そう。 桔梗に会いにいくとき・・・。 「・・・犬夜叉。何処いってたの?」 かごめが寝ている間にそうっと桔梗の墓に花を手向けに行っていた犬夜叉。 「あ、い、いやあの・・・」 おどおどする犬夜叉。 「ふふ。いいよ。別に。犬夜叉。気にしないで」 「・・・かごめ・・・」 「犬夜叉とこうして桔梗のことで悶々すること自体・・・。 何だか今は大切な時間のような気がする・・・」 「・・・?」 かごめの微笑が犬夜叉には一瞬、悲しく見えた。 「・・・ねぇ。犬夜叉。明日・・・。連れて行ってほしいところが あるんだけど。頼んでいい?」 「おう。任せとけよ。どこでもつれてってやる」 「ありがと・・・」 かごめと過ごすこの日々。 ずっと続けば良いのに 続くはずだろうと犬夜叉は思っていた・・・。 「・・・はぁ・・・。広くなったね。背中・・・」 「!?と、突然なんだ・・・(ドキドキ)」 犬夜叉の背中におぶさるかごめ・・・ 「頼もしい背中になったなって思ったの・・・」 (な、撫でるなよ・・・(ドキドキ)) かごめの手つきがちょっと艶かしくてドキドキ・・・。 「・・・ありがとうね・・・」 「お、おう・・・(喜)」 犬夜叉の背中に頬を寄せる・・・ この背中に力づけてられてきた。 (・・・でも・・・。これが最後・・・) ぎゅっと犬夜叉に掴まるかごめ・・・。 (・・・か、感じるだろ(ドキ)) 背中に柔らかい感触に犬夜叉はドキドキ・・・ そんな犬夜叉に かごめが連れて来て欲しかった場所・・・。 小高い丘。 青い空をいつか手をつないで見上げたっけ・・・。 犬夜叉は静かに野原の上にかごめをおろした。 「どうだ。気持ちいいか」 「うん・・・。風が・・・。気持ちいい・・・」 かごめは目を閉じて風を感じる・・・。 (///) かごめの横顔にときめく犬夜叉。 「・・・はぁ・・・。寝ちゃおっと」 かごめは両手を広げて大の字に・・・。 犬夜叉も誘われてごろんと寝転がった。 「・・・雲が・・・可愛いね」 「お、おう・・・」 犬夜叉には・・・。 草の匂いより 空の匂いより・・・ かごめの匂いの方が心地よく・・・。 「ゆっくり・・・こうしてずーっと・・・一緒に過ごせたらな・・・」 かごめの言葉に 犬夜叉は”お嫁にもらって”と言っているように聞こえて。 「あ。でも・・・。私の方が先におばあちゃんになっちゃうね。 ふふ・・・」 「・・・い、居てやるよ。い、一緒に。 お、お前がよぼよぼのババアになっても・・・」 「・・・もう!ババアって何よ。もっと他に言いないの!? ロマンチックじゃないんだから」 「う、うるせぇな。一緒にいてやるっていってんだから それでいいじゃねぇか・・・っ。ずっと一緒に・・・」 不器用な言葉。 でも犬夜叉の精一杯の気持ちが詰まっている・・・。 「・・・ずっと・・・。一緒に・・・?」 「そ、そうだよ・・・(照)」 「・・・うん・・・。そうね・・・。例え・・・違う空の下でも・・・」 (違う・・・空の下・・・?) かごめは静かに犬夜叉の手と重ねた・・・。 (かごめ・・・) かごめの手をしっかりと握り返す・・・。 絶対に離さない様に・・・。 それから数日後の夜。 かごめは犬夜叉に”つきが見たい”と言って 外に連れて行って欲しいと頼んだ。 「ここでいいか」 「うん・・・」 かごめと犬夜叉はご神木にもたれかかった。 「・・・綺麗だねー・・・」 「まあな」 「犬夜叉・・・。ありがとう。このご神木・・・。育ててくれて 嬉しかった・・・」 「お、オレは何もしてねぇ・・・。み、水はやってたけどな」 「水と・・・。犬夜叉の愛情よ」 (あ、愛情・・・(照)) ぽ・・・っと犬夜叉の頬が赤くなる。 「・・・。こっちに来てから・・・。犬夜叉にいっぱい いろんなことしてもらったね・・・」 「な、何だよ。急に」 「お礼したいんだけど・・・目、閉じててくれる・・・?」 (えっ・・・) 犬夜叉、早速とっても素敵な妄想が・・・。 「・・・お、お礼って何だよ」 「いーから・・・早く目、つぶってよ」 「わかったよ・・・」 犬夜叉はドキドキして目を閉じた。 (・・・お礼って・・・。お礼って・・・) 犬夜叉。ワクワクして待つ・・・。 「はい。開けていいよ」 (え) 犬夜叉の手に小さな花が・・・ 「なんだよ。これは」 「お花。この花言葉はね・・・」 「花言葉ってなんだよ。花なんて・・・」 フワ・・・ッ (・・・!) 一瞬だった・・・ 犬夜叉の頬に かごめの唇がふわりと触れられた・・・。 「・・・。お、お礼・・・(照)」 「///。そ、そうか・・・」 「いや・・・。だった?」 「べ、別に・・・」 くすぐったい・・・。 こんなドキドキ・・・。 いつまでもドキドキしていたい・・・。 いつまでも・・・。 (ずっと一緒にいたい・・・) その想いが 強くなる・・・。 「・・・。ねぇ・・・」 「ん?」 「・・・。もう一回・・・。目、閉じてくれる・・・?」 「え(ドキ・・・)。わ、わかったよ・・・」 (・・・こ、今度は・・・頬じゃなくて・・・) 犬夜叉はさらに嬉しい想像をめぐらせて目を閉じた。 「・・・私がいいって言うまで・・・。開けちゃだめだよ」 「わ、わかったよ」 (・・・気ぃ、持たせやがって///(喜)) ドキドキ。 犬夜叉、ちょっと緊張して・・・待つ。 (・・・。ま、まだかよ) ・・・。 (お、おい・・・) 気が短い犬夜叉。 とうとう目を開けてしまった。 「おい!かご・・・」 (い、いねぇ!??) 隣に居たはずのかごめの姿がない。 「かごめ!?」 犬夜叉の反対側。 犬夜叉の背中の向こうにかごめの後姿が・・・。 「・・・お願い!!振り向かないで・・・。私の話を聞いて・・・」 「な、何言って・・・」 「・・・犬夜叉・・・。私、帰るよ」 「か、帰る!??な、何だよ突然・・・」 犬夜叉は突然のかごめの申し出にただ戸惑うばかり・・・。 「・・・ほ、ほら・・・。ママや草太達が心配してるし・・・。そ、それに・・・」 「それに・・・。何だよ。はっきり言えよ」 「・・・私がずっとここに居たら・・・。犬夜叉に甘えてしまう」 「・・・甘えたらいいじゃねぇか!言っただろ!?オレはずっと お前の足にでも何でもなるって・・・」 やっと会えたのに 今度こそずっと一緒にいられると思ったのに・・・ 犬夜叉は納得できない。 「それとも・・・。お前はやっぱりあっちの世界がいいのか? オレと一緒にいるのが嫌なのか!?」 「そうじゃない!!私だって犬夜叉と一緒にいたいよ・・・!」 「だったら・・・!!」 「でも・・・。私だけが・・・。桔梗が眠るここで・・・。犬夜叉と 笑いあって生きていくなんて私には・・・できない・・・」 ”ありがとう・・・” 本当の桔梗の優しさをかごめは過去へ行って見てきた・・・。 同じ女だから 同じ人を好きになったから。 分かる。 桔梗から見れば偽善的な見方かもしれないけれど 桔梗が眠るここで 自分だけが犬夜叉を見つめて生きていくなんて そこまで図太くなれない・・・。 「・・・かごめ・・・。桔梗のことは・・・」 「・・・それだけじゃない・・・。犬夜叉に甘えたままの私じゃいけないの」 「だからそれは気にするなって。お前の面倒ぐらいオレが・・・」 「それじゃあ駄目なの・・・」 「何が駄目なんだよッ・・・!!勝手に消えるなんてもう許さねぇぞ・・・ッ!!」 かごめの姿が見えない。 もう耐えられない。 犬夜叉は反対側に回って・・・ かごめの腕をしっかりと掴んだ。 「ゆるさねぇぞ・・・っ!!勝手に消えたり現れたり・・・っ」 「犬夜叉・・・」 「・・・。前に・・・。お前の手は冷たくて・・・。 雪みてぇに消えていった・・・。もしかしたらかごめは死んじまったんじゃ ねぇかって・・・。死んじまったんじゃねぇかって怖かった・・・」 かごめの手を掴む犬夜叉の手が震えている・・・ 「犬夜叉・・・」 「・・・もう・・・嫌だ・・・。誰かが死ぬのも・・・消えるのも・・・」 「・・・私は死なないよ。大丈夫・・・」 「そんなのわかんねぇだろっ!!離れちまってたら お前を助けることもできねぇッ・・・。お前の足になることも・・・ 出来ねぇんだぞ・・・」 かごめが生死も分からない。 幸せに暮らしているのかも分からない。 そんな蛇の生殺しはもう・・・ 「もう沢山だ・・・もう・・・」 「・・・犬夜叉・・・。ごめんね・・・。心配かけて・・・。 本当にごめんね・・・」 初めて知った。犬夜叉の葛藤を・・・。 こんなに想ってくれていたことも・・・。 かごめの頬から自然に涙が一滴流れた・・・ 「・・・お前があっちに帰りたいっていうならそれでもいい・・・。 でも今、消えるなんて・・・。頼むからやめてくれ・・・」 「・・・犬夜叉・・・」 かごめの腕を掴む犬夜叉の力が 強くなる・・・。 (・・・そうじゃない・・・。オレが・・・オレが 寂しいだけなんだ・・・) 優しい匂いがなくなるなんて 考えられない。 母と別れたときのように あんな寂しい思いはもう・・・。 「犬夜叉・・・。また・・・きっと会えるよ・・・」 「・・・!?」 かごめの体が・・・少しずつ薄れていく・・・。 「か、かごめ!!」 「・・・きっとまた会える・・・。そう信じていれば・・・」 「ふざけんなっ!!信じればだなんて!!」 「・・・。いつかまた会える・・・。会えたとき・・・きっと 喜びも倍になって・・・」 「理屈ばっかり言うなよ!!残された方の気持ちはどうなるんだ!!」 ”そう・・・。今、貴方が感じている気持ちが残される方の気持ち・・・” (!?風馬の声・・・!?) 「・・・。犬夜叉・・・。私・・・。もっと強い私になるから・・・。 その時会おうね・・・」 「い、行くなーーーっ!!!」 かごめの体が・・・ 白い光の中に吸い込まれていく・・・。 「勝手なこと言ってんじゃねぇよ!!かごめーーーッ!!!」 ”いつかまた・・・。会おうね・・・。ごめんね・・・。ごめんね・・・” 「かごめーーーーッ!!!」 かごめの体は完全に消え・・・ 白い光りもどこかへ・・・ (・・・井戸・・・!!) 犬夜叉は直感的に井戸へ走った。 「かごめぇええーーーーッ!!」 井戸の底に 犬夜叉の声が響く・・・。 「・・・なんなんだよ・・・。なんなんだよ・・・!! 風馬。お前か!!お前なんなんだよ!!」 ドン!! やり場のない怒りを拳に打ち付ける。 「かごめをつれて来たり帰らせたり・・・っ!!! お前は何様なんだ!??どういうつもりなんだよ!!」 つれてきたらなら どうしてまた戻す・・・。 「ふざけんな!!残された俺はどうすりゃいいんだよ!?? また・・・。振り出しじゃねぇか・・・」 かごめが幸せかどうか 危険な目に遭ってないか 確かめられないもどかしさ そして 何より 自分の居場所がなくなってしまった・・・ 寂しさ・・・。 「・・・。何がまた会える・・・。だ・・・」 脱力する犬夜叉・・・。 その犬夜叉の肩に 白い羽根が舞い落ちた・・・。 「・・・。羽根がなんだってんだ・・・!!」 犬夜叉は羽根をひきちぎろうとした。 ”捨てないで・・・。それは貴方と貴方の大切な人をつなぐ 大切な羽” 「・・・」 ”・・・今度は貴方が・・・。頑張る番ですよ・・・” 「オレが・・・?」 ”過去と向き合って・・・。未来へ歩き出す番です・・・” (過去と向き合って・・・未来に・・・) ”信じて・・・。また会えます・・・。きっと・・・。きっと・・・” 誰かの声は 静かに犬夜叉の耳の奥から消えた・・・。 「・・・オレが頑張る番・・・?なんだそりゃ・・・。 訳わかんねぇよ・・・」 今・・・。 分かるのは 再びかごめが消えたということ・・・。 そして今度はいつ会えるかわからないということ・・・。 (・・・オレが頑張る番・・・。どういうことだよ・・・。 かごめがいなければ・・・。力が沸かないんだ・・・) 井戸にもたれかかり・・・ 一人・・・ 孤独に つきを見上げた・・・ そしてかごめは・・・。 「・・・ごめんね・・・。ごめんね。犬夜叉・・・っ。 ごめんね・・・っ」 気がつけば、骨くいの井戸の底。 現代に帰ってきた。 井戸の底に手を当てて・・・ 「・・・犬夜叉・・・。ごめんね・・・」 溢れる涙をこらえながら・・・ 肩をふるわせていた・・・
・・・同じような繰り返し展開ですが(汗) 犬君もかごちゃんも誠実な性格ですから、自分達だけ 幸せハッピーオーライにはなかなかならないんじゃないかと・・・。 でも最後はかごちゃんの踏ん張りどころがメインになります。 頑張るった先に誰かが待っている・・・みたいな・・・です