絆を探し求めて
〜白い羽根が舞う頃〜
第4話 守りたい魂
「裏陶を探しに行く」
「犬夜叉!?」
桔梗の墓土を大切に懐にいれながら
犬夜叉は仲間達にそう告げた。
「犬夜叉・・・。落ち着け。今のお前は普通じゃない」
弥勒が諭す。
「・・・うるせぇな・・・。桔梗はまだ生きてる・・・。生き返らなくちゃいけねぇんだ・・・ッ!!
オレはまだアイツに・・・!!」
「しっかりしろ!!!犬夜叉」
「うるせぇな!!弥勒どけ!!」
「しっかりしろ言ってるんだッ!!!」
ガッ!!!
「!?」
弥勒の拳が・・・
割って入ったかごめの頬に命中する・・・。
「・・・かごめちゃん!!」
かごめに駆け寄る珊瑚・・・
「大丈夫よ。珊瑚ちゃん。それより弥勒さま・・・。
犬夜叉の思うように・・・させてあげて・・・」
「え・・・。で、でも・・・」
「・・・お願い・・・。今は・・・。犬夜叉の思うように・・・」
「かごめ様・・・」
ガタン・・・ッ!!
犬夜叉は打たれたかごめの頬にも目も留めず
小屋を出て行った・・・
小屋を出て行った犬夜叉の懐から
白い羽が
落ちた・・・
それを拾うかごめ・・・
「・・・犬夜叉の奴・・・。普通じゃないよ・・・。あんな・・・」
「・・・仕方ない・・・の・・・」
かごめの声が切なすぎて・・・。
珊瑚には返す言葉が見つからない。
「・・・人の・・・。生死がこんなに重くて・・・深いなんて・・・。知らなかったよ。珊瑚ちゃん・・・。
私は・・・甘く考えすぎてた・・・。反省しなくちゃ・・・」
「かごめちゃん・・・」
「犬夜叉が言ったとおり・・・。桔梗は生きている・・・。
私の中でも・・・そして犬夜叉の中でも・・・。桔梗は・・・。ずっとずっと
存在し続けるの・・・」
「かごめちゃん・・・」
かすれ声のかごめ・・・
赤い目・・・
きっと昨晩は泣きはらしたのだろうと察する珊瑚・・・
「・・・私は・・・。犬夜叉のありのままを
受け入れなくちゃいけない・・・。私は・・・」
(かごめちゃん・・・?)
「・・・少し・・・風に当たってくる・・・」
少し足元をふらつかせながら
かごめも小屋を後にした・・・
「法師さま・・・。もしかしてかごめちゃん・・・」
「・・・。言うな珊瑚・・・。これは・・・。誰にも決められない・・・。
かごめ様たち本人しか・・・」
「で、でも・・・」
珊瑚を抱きしめる弥勒。
「・・・。・・どうにもできないんだ・・・。大切な仲間なのに・・・」
「無力だね・・・」
仲間の
痛々しい未来。
できることなら
幸せになって欲しかった・・・
珊瑚は弥勒の胸の中で・・・
泣いた・・・
”この羽を持ってる者同士は・・・きっと結ばれるって言い伝えがあるんだって”
(・・・風馬さんにもらった白い羽・・・。ごめんね・・・)
ご神木の下で
白い羽を見つめるかごめ・・・。
(・・・桔梗と犬夜叉の心が・・・。離れませんように・・・)
そう・・・羽に願うかごめは・・・
ご神木の前で
犬夜叉の帰りを待った・・・
「くそうッ!!!どこにも呪術師はいえねぇ・・・!!」
苛苛しながら
犬夜叉が帰ってきたのは
すでに夕暮れ・・・
「・・・おかえり・・・犬夜叉・・・」
「かごめ・・・」
ご神木に体育すわりで犬夜叉を待っていたかごめ・・・
「・・・呪術師さんは・・・見つかった・・・の・・・?」
「・・・」
首を横に振る犬夜叉・・・
「・・・犬夜叉・・・。桔梗の心を・・・生きてる人間の都合で・・・
生き返らせたり眠らせたり・・・勝手にしちゃいけないと思う」
「・・・ッ!お前に何が分かるんだよッ!!生きてる俺たちには・・・
わからねぇ程の桔梗の辛さが・・・」
「・・・でも生き返らせるのは犬夜叉の都合でしょ?楽になりたいのは
犬夜叉でしょ・・・!?桔梗に謝りたい。楽になりたいだけじゃない!!」
「やかましいッ!!黙ってろ!!」
怒鳴る犬夜叉の声に
涙が出そうになるけれど
堪える・・・。
犬夜叉に正気を戻させるなら
嫌な女だって
思われてもかまわない。
嫌われたってかまわない。
軽い同情だって言われたってかまわない。
「・・・。大体、あんたはいつもそうよ。自分の哀しみだけに篭って・・・。
桔梗の哀しみなんて誰にも分からない・・・。あんたにも私にも・・・。
簡単に分かったなんていったら罰があたる・・・」
「わかったようなこと言うなッ!!お前は生きてるからわからねぇんだよ・・・」
「・・・目に見える形がなくなったら・・・桔梗は桔梗じゃなくなるの!??」
「・・・!」
犬夜叉ははっとしてかごめを見つめた。
「・・・。桔梗を抱きしめてあげて・・・。長い綺麗な髪がなくても・・・。綺麗な
白い肌がなくても・・・。桔梗の心は・・・心は犬夜叉の中にあるじゃない・・・」
「オレの・・・中に・・・」
桔梗の墓土を犬夜叉は抱きしめる・・・
「こんなのは・・・。生きてる人間の都合のいい理屈かもしれないけど・・・。
でも・・・。犬夜叉。あんたも私もいつかは・・・。いつかは体がなくなるの・・・。
皆同じ・・・」
「かごめ・・・」
「・・・。桔梗の心は・・・あんたが守ってあげなくちゃ・・・。
抱きしめ続けてあげなくちゃ・・・」
とめどもなく
かごめの頬を伝う涙・・・
「・・・。一緒に逝くとか逝かないとか・・・絶対に考えちゃ駄目だよ・・・」
「・・・!」
自分の心を見透かされたようで
かごめから目を逸らす犬夜叉・・・。
「桔梗の心を・・・。桔梗の思い出を・・・あんたが守って・・・。
みんなの心に伝え続けなくちゃ・・・」
かごめは・・・
犬夜叉の腕の中の墓土を
優しく見つめる・・・。
「・・・。哀しくて・・・誇り高く・・・美しく強い巫女がいたって・・・」
「かごめ・・・」
「・・・。生きている人間が・・・するべきことは・・・。
形のない魂の存在を・・・存在を・・・忘れずに・・・伝えていくこと・・・」
涙が
止まらない・・・
”同情の涙”
そう思われるかもしれない。
所詮、生きている人間の理屈で戯言だと・・・。
でも・・・
それでも生ある人間が
無理やりに自分の命を絶つということは・・・。
哀しすぎる・・・
残された者の
心を
殺す・・・。
「・・・。お願い・・・。簡単に逝くなんて言わないで・・・。
行き続けて・・・。桔梗の心を守ってあげて・・・」
「かごめ・・・。オレは・・・オレは・・・」
桔梗の墓土に
犬夜叉の涙がしみこむ・・・
「・・・桔梗に・・・何も・・・してやれな・・・かった・・・」
「犬夜叉・・・」
「桔梗・・・。ごめんな・・・ごめんな・・・」
巫女の衣装を抱きしめる犬夜叉・・・。
かごめもなく・・・
泣いて
泣いて・・・
何の涙かわからないぐらいに
泣いて・・・
「そう・・・。そうやって・・・。桔梗を抱きしめてあげて・・・。
ね・・・?」
「・・・」
犬夜叉は
ようやく
かごめの訴えがわかったのか
頷いてくれた・・・
そして・・・
かごめは伝える・・・
「・・・犬夜叉・・・。井戸・・・壊そう」
「え・・・?」
「・・・私・・・。帰る・・・。だから・・・井戸を壊そう・・・」
(それは・・・)
別れを意味する
かごめの言葉だった・・・