第7話 炎上・・・そして・・・
かごめがいなくなって1週間がすぎた・・・
「散魂鉄爪!!」
ザシュ!!
楓の村周辺で悪さをするの下等妖怪を犬夜叉は片っ端から
退治している
「・・・犬夜叉の奴・・・」
「・・・しょうのない奴・・・」
弥勒と珊瑚。
犬夜叉はかごめとのことを聞いても何も答えない。
犬夜叉の心中は・・・
(目をみていればわかる・・・)
「ちっ・・・!!奈落を倒しても雑魚妖怪はうようよ
いやがるぜ・・・!!」
桔梗が生まれ、育ったこの村を守ること
・・・桔梗が眠るこの場所を・・・守りぬく・・・
(桔梗・・・)
「散魂鉄爪!!」
ザシュ!!
短い日々だったが・・・桔梗と過ごした日々の記憶が宿る
この地を守る・・・
守りたい・・・
(それが・・・オレの選んだ道だ・・・)
「散魂鉄爪!!」
妖怪たちを蹴散らしながらも・・・
体のどこか・・・力が入らない
大事なパーツがぬけたみたいに・・・
底力が沸いてこない・・・
・・・心のどこかが不安で・・・
「ちっ・・・雑魚どもが・・・」
体を動かしても
忘れようとしても
在るべきぬくもりが・・・
一番優しい匂いが・・・
ないことの重さに気づく・・・。
「誰もこの村にはいれさせねぇぞ!!」
村に害をなす妖怪たちを蹴散す毎日。
「散魂鉄爪!!」
まるで、行き場の無い寂しさも一緒に蹴散らしているように
弥勒たちには見えて・・・。
(・・・だが・・・こうなる道を選んだのは・・・。
おまえ自身だぞ・・・)
どうにも出来ない。
仲間とて・・・できないことがある。
そして家族でも・・・
「いってきます。ママ!」
ガラガラ・・・
パタン・・・。
玄関を出て行くかごめの後姿を。
母は切なく見送る・・・
(かごめ・・・)
表面上は変わらないけれど・・・
日を増すごとに
かごめの切ない背中が悲鳴をあげているよう・・・
(・・・切り替えが・・・できないのね・・・)
会えないという現実に
むかえあえない。
ただ、忙しい毎日をこなすことで紛わせるだけ・・・
(受験・・・。私は受験だけを考えよう・・・)
難しい数字と公式だけを頭に入れよう。
ノートに向かって一心不乱に・・・。
(寂しさもいつか・・・。懐かしさに変わる・・・。きっと・・・)
そう信じて・・・。
だが・・・その日の空は
かごめの心のように不安定だった。
朝、雲ひとつなく晴れていたのに夕方にはどんより重く曇って・・・
(・・・降りそうね・・・)
空を見上げ、ため息を何度もつきながらかごめは家路に着く・・・。
ゴゴゴ・・・。
黒い重たい雲から物凄い音が鳴って・・・。
ゴゴゴ・・・
ドーンッ!!
「!」
雷の大きな音にかごめははっとわれに返った。
そして、階段を見上げると黒い煙が立ち上がっている・・・
(・・・雷・・・。落ちたの・・・!?)
かごめは駆け足で階段を上がる・・・
(もしかして・・・落ちたのは・・・)
階段を上がりきって見えてきたのは・・・
真っ二つに割れて燃え上がるご神木だった。
(・・・燃えてる・・・。燃えてる・・・!ご神木が・・・!!)
かごめはかばんを放り投げ、水道に走った。
そして蛇口をひねり、バケツに汲んだ水をご神木にかける。
「駄目・・・!!燃えちゃだめ・・・!!犬夜叉と私の思い出が・・・」
(消えないで・・・。なくならないで・・・)
かごめは無我夢中で水をかける
靴と靴下を脱ぎ素足になって・・・
バケツに何度も水を汲み、水道とご神木を往復して・・・
(駄目・・・!!なくなっちゃ駄目・・・っ)
雨が降って・・・
・・・炎は消えたけれど・・・
激しい雷に真っ二つにされたご神木は
ただの黒い炭になってしまった・・・
ご神木の前にぺたりと座り込むかごめ。
「ご神木まで・・・。なくなっちゃった・・・。これでもう・・・」
(犬夜叉との絆は・・・完全に・・・消えた・・・)
燃え切ったご神木の炭を手のひらで救う・・・。
思い出が
つながりが・・・
こんなに軽い燃えカスに・・・
(・・・無くなったちゃったよ・・・)
涙雨・・・。
空が・・・
かごめの代わりに泣いている・・・
同じころ・・・。
戦国の世のご神木も・・・
燃え、跡形もなくただの炭と燃えカスに・・・
「・・・なんで・・・」
呆然と立ち尽くす犬夜叉・・・。
井戸もなくなって・・・
そしてご神木までも・・・。
(・・・なんで・・・。なんで・・・)
ご神木に落ちた稲光。
見たことも無い激しい稲光だった。
誰かの
何かの
・・・怒りがこめられているような・・・
(・・・オレの・・・心のせいか・・・?)
天に昇った魂を守るといいつつ・・・
何かを望んでしまう心のせい・・・?
(・・・そうだ・・・。すべてはオレが・・・)
燃え滓を手のとる・・・
フワッ
「・・・!」
風が吹いて・・・
燃え滓が消えた・・・。
”心の中のもう一人を消しなさい”
というように・・・
(・・・オレは・・・。オレは・・・)
ひざまずいてうな垂れる犬夜叉。
別れだけではなく
心の中でひっそりと優しい匂いを求めることも
許されないだろうかと・・・。
(・・・オレは・・・。弱い・・・弱いな・・・)
現代と戦国・・・
同じ場所で
同じ時間・・・
背中を丸めて
絶望する二人・・・。
雨は・・・
なかなか止まずに・・・
夜は暮れた・・・。
「いって来ます・・・」
どんなに哀しいことがあっても朝は来る。
一日は始まる。
昨晩はあんなにはげしい雨だったのに
今日は嫌味なくらいに晴れている。
(これ以上。ママたちに心配はかけられない・・・)
息を抜けば涙があふれそうな瞳。
でもぐっと目尻に力をいれて堪える。
俯いたままかごめはご神木の前を通り過ぎる・・・。
(・・・!)
何かを感じた。
もしかしたら昨日のことは夢だったのではないか
そんな予感が・・・
だが振り向いてもご神木の姿は無い・・・
(そう・・・だよ・・ね)
都合のいい勘だけが切なく働く・・・。
かごめがため息をついて立ち上がろうとしたとき・・・
灰の中に違う色が見えることに気づく。
(なんだろう・・・)
かごめがそっと灰を払い、見つけたのは・・・
(・・・。ご神木の・・・。新芽・・・!)
黄緑色の
小さくてまあるい
ふたつの芽・・・
(・・・ご神木の・・・命・・・。なくなってなかった・・・。
まだ・・・。生きてた・・・!生きてた・・・!)
かごめはかばんを置いてそっと新芽を根っこから傷つけないように
掘りだす・・・
(・・・犬夜叉との絆・・・。まだ切れてない・・・)
小さなふたつの葉・・・
透明なしずくが落ちた・・・
「ママ!ママ!!鉢!鉢を探して!!」
(・・・哀しんでちゃいけないんだ・・・。生きて・・・前を見て
生きていかなくちゃ・・・)
小さな二つの葉・・・。
かごめに”がんばれ・・・”と告げている・・・。
同じころ・・・戦国の世でも・・・。
「・・・犬夜叉!ちょっと来い!!」
塞ぎこむ犬夜叉を七宝は、ご神木があった場所に連れて行き、
指差した。
「ほら・・・!ご神木の赤ん坊がおったぞ・・・!」
二つの小さな葉・・・。
「かごめとオラたちをつなぐものが・・・あるんじゃ!犬夜叉」
「七宝・・・」
「・・・姿はなくても・・・。心を繋ぐものが・・・あるんじゃ・・・」
目をこすって話す七宝・・・。
(姿はなくても・・・。繋がっている・・・)
そう・・・。
忘れるはずも無い
優しい匂い。
生きる時が違っても
(繋がっている・・・)
小さな双葉。
現代。
ご神木の灰をどかし、綺麗な土に戻した。
鉢植えで暫く育てたご神木の新芽は少し背が伸びて・・・。
かごめは鉢植えからご神木が生えていた土に新芽を植え替えた。
「・・・ゆっくり・・・ゆっくり・・・大きくなってね・・・」
如雨露で水を静かにやるかごめ・・・。
少しずつ育つ新芽に
心の痛みも少しずつだが癒えていく。
寂しさは相変わらず募るけれど・・・
(・・・いつか・・・また・・・会えるかもしれない)
確かな希望じゃないけれど・・・
毎日育っていく芽に
希望を託せる・・・
(いつか・・・。いつか・・・)
かすかな希望を
生きる力に変えて・・・。