絆を探し求めて
〜白い羽根が舞う頃〜
第9話 導かれて
「かごめ・・・目を開けなさい・・・」
心電図の電子音が病室に響く・・・
かごめの命の音だ
顔中を包帯で巻かれ吸入器をつけられ
骨折した手足も固いギプスでおおわれて・・・
「かごめ・・・。どんな夢をみているの・・・?」
「・・・」
応えぬかごめの腕を優しくさするママ・・・
「楽しい夢ならいいけれど・・・。でも・・・ちゃんと目を覚ましてね・・・。
ママたちの元へ・・・帰ってきて・・・。帰ってきてね・・・」
母の涙が
包帯にしみこむ・・・
かごめが見ている夢・・・
どんな夢だろう
かごめはどこにいるのだろう・・・
”君の・・・愛しい人に会いに行っておいで・・・”
(・・・風馬さん・・・?)
”この羽根の奇跡は・・・一度だけ・・・後は・・・”
(・・・羽根の奇跡・・・)
”会っておいで・・・君の大切な人に・・・”
(・・・私の・・・大切な人・・・)
”会って・・・おいで・・・”
(・・・犬夜叉・・・)
”羽根の奇跡は・・・一度だけ・・・後は・・・”
”後は・・・”
ヒラリ・・・。
「おねえちゃん・・・誰?」
「え・・・?」
緑の着物を着た少年がかごめを見上げている。
気がつくとかごめは制服姿でご神木の前に・・・
(わ、私・・・二十歳だったはず(汗))
「あ!!その服!!」
「え・・・あ、あの・・・」
「あ・・・おもいだした!七宝兄ちゃんの絵の中の
着物に似ている・・・えーっとえーっと確か・・・かごめっていう
人!!」
少年は指差した。
「あなた・・・七宝ちゃん知ってるの!?」
「うん!」
(そういえば・・・この子・・・ちょっと助平な誰かに似ているような・・・)
じーっと少女の顔を見るかごめ
「もしかして・・・。貴方のお父さんは・・・。弥勒様?」
「うん!父上は弥勒法師。村の寺の住職してるんだ!ちなみにオレの
名前は翡翠」
「・・・そっか・・・。弥勒さま・・・パパになったんだ・・・。そして
珊瑚ちゃんはママに・・・そっか・・・そうか・・・」
親友が仲間が
幸せに生きている・・・
かごめの顔が自然と綻ぶ・・・
「お姉ちゃん、父上と母上知ってるんだね」
「うん。大切な仲間なの」
それから翡翠は珊瑚と弥勒の夫婦喧嘩した話を沢山した。
さらに新しい命が珊瑚に宿っていることも
「あははは。相変わらずだなぁ二人とも・・・」
「でもね。父上も母上もけんかした後はすごく仲がいいんだ。
父上はたんこぶできてるけどね」
「ふふふ・・・」
翡翠がじーっとかごめの顔を見ている。
「なあに?」
「・・・。いぬやちゃのおにーちゃんに会いに来たの?」
(えっ・・・)
確信を突かれ、かごめは返答に困った。
「いぬやちゃのおにーちゃん。ごしんぼく、いっつも
みあげげているよ」
「・・・犬夜叉が・・・」
ご神木を見上げる・・・
(現代と同じだ・・・)
同じ色
同じ高さ・・・
「母上が言ってた。俺が生まれる前・・・。いぬやちゃの
お兄ちゃんがちっちゃな芽のご神木を大切に大切に育てたんだって」
「・・・」
「毎日、毎日お水をやって・・・。枯れないように。強い風が吹いたら
倒れないように体で守って・・・」
「・・・」
ぽた・・・
ぽた・・・
「あれ!」
かごめの瞳からぽろぽろと・・・
「お、おねーちゃんどうしたの!?」
「ご・・・ごめんね・・・」
けれど止まらなかった。
(・・・一緒に育ててくれたんだ・・・。ご神木・・・)
会えなくても繋がっていた。
一緒に水をやり
木を守って・・・
(・・・一緒に・・・)
会えなかった時間の分だけ・・・
喜びがあふれる・・・
「・・・あ・・・あ、どうしよう。あの、お姉ちゃん泣き止んで・・・。
い、今犬夜叉のにーちゃん呼んで来る」
「ま・・・待って!」
翡翠の手をつかんでとめるかごめ
「・・・いいの・・・」
「え?どーして?」
「・・・。驚かせたくないし・・・。それに・・・」
”犬夜叉のおにーちゃんね、毎日桔梗様にお花を供えてるんだ”
(・・・。ここは・・・。この時代は・・・。犬夜叉と桔梗の時代・・・)
自分の想いだけ
優先させられない・・・
「・・・とにかくいいの・・・。それから私に会ったことは誰にも言わないで」
「父上と母上にも?」
かごめはうなずいた。
「・・・皆に知られてしまうと・・・。消えちゃうかもしれないから」
「・・・そうなんだ・・・。うんわかった。じゃあ言わない」
「ありがとう。翡翠ちゃん」
素直なところ・・・珊瑚に似ているな、とかごめは思った。
「あ・・・いけない。そろそろ帰らなきゃ。かごめおねーちゃんは
いつまでいられるの?」
「・・・。それは・・・。分からない」
「明日また、来てもいい?」
かごめは笑顔でうなずく・・・
「じゃあまたね!」
翡翠の屈託のない笑顔が切ない・・・
(・・・いつまで・・・。いられるんだろう・・・。いつまで・・・
いてもいいんだろう・・・)
かごめはご神木にもたれ・・・
空を見上げる・・・
”大切な人に・・・会っておいで・・・”
「・・・でも風馬さん・・・。会えないよ・・・」
”桔梗様に毎日花を・・・”
桔梗の心を永遠に守っていこうと決めた犬夜叉に
会ってしまったら・・・
(・・・私だけ・・・勝手な想いを巡らせちゃいけない・・・。
それに・・・)
会ってしまったら
離れられなくなりそうで・・・
怖い
”羽根の奇跡は一度だけ・・・。後は・・・”
(”後は”の後はなんなの・・・?やっぱり・・・。この時代にこられるのは
一度きりってことだよね・・・)
一度きりならば
なおの事
会うことが怖い。
(・・・。犬夜叉の・・・元気な姿を一度見られたらそれでいい・・・。
それで・・・)
穏やかな風が
かごめの頬をくすぐる・・・
目を閉じて
風を感じる・・・
”本当に・・・?いいのかい・・・?”
(・・・うん・・・)
”・・・想いを・・・。伝えないと・・・後悔するよ・・・”
(後悔・・・)
”会っておいで・・・。君の大切な人に・・・そして
伝えておいで・・・。君の思いを・・・”
(・・・私の・・・想い・・・)
あたたかい風が
かごめを包む
”伝えておいで・・・”
その風は
届ける。
赤い衣の元へ・・・
「翡翠!あんたどこ行ってたの!」
「ごめんなさい。母上」
珊瑚にしかられてちょっと泣きべその翡翠。
「・・・どこ行っていたの?言えないの?」
「・・・あ、あの・・・。約束したの。誰にも言わないって」
「誰にもって・・・。一体誰と会っていたの」
「・・・。それも・・・秘密」
翡翠はただ俯いて、怒った珊瑚の顔を見ようとしない。
「親に秘密を持つなんて・・・。翡翠私は嘘は大嫌いだよ」
「・・・だって・・・だって・・・」
”知られたら・・・消えちゃうかもしれないから”
翡翠の瞳にこんもり涙が。
「それぐらいにしておきなさい。子供とて
いろいろあるのですから」
「あんたはいろいろありすぎ、だけどね(怒)」
珊瑚に食らったこの間の一発がまだ腫れてます。たんこぶ。弥勒パパは。
「はぁ。そ、それにしても犬夜叉の奴は遅いですな〜。
獅子の肉を取ってきてやるといっていたのに」
ちょうど、そのとき、珊瑚達の屋敷の外に獅子をかついだ犬夜叉がそこまで
来ていた。
(・・・!??)
ドサン!!
すぐに嗅ぎ取ったあの匂い・・・
犬夜叉は担いでいた獅子をほうり投げ捨てた。
(・・・ま・・・まさか・・・まさか・・・)
ドクンドクン・・・
犬夜叉に緊張と期待が
高まる・・・
「おう。犬夜叉。おかえり。獅子は・・・」
弥勒の呼びかけも無視して犬夜叉は屋敷のあちらこちらを
探し回る。
「な、なんだ。騒々しいな。どうした」
(・・・いねぇ・・・!でも確かに匂いはするのに・・・)
キョロキョロしてにおいの元を探す・・・
「・・・犬夜叉のおにいちゃん・・・」
(・・・!)
足元に翡翠が・・・
犬夜叉は翡翠を抱き上げて、くんくんと嗅ぐ。
「・・・翡翠・・・。なんでお前からかごめの匂いがするんだ・・・!?」
「・・・えっ・・・あ、あのー・・・」
”言わないで”
翡翠は犬夜叉にだけは言おうかと思ったがやっぱり約束はやぶっちゃいけない
ので言わない。
「・・・お前。かごめと会ったのか!?」
「え、あ、あのー・・・あ、あ、会ってないよ。
会ってないよ」
だが、子供の嘘はすぐばれる。
「・・・会ったんだな?」
犬夜叉の必死の顔に・・・
翡翠はうなずいてしまう。
「ど、どこで会ったんだ!?」
「・・・ご神木の前・・・」
「今、いるのか!?」
「・・・わからない・・・。ただ・・・。誰にも言わないでって。
知られると消えちゃうかもしれないんだって」
(消えるって・・・!?どういうことだ!?かごめ!?)
犬夜叉は翡翠を下ろすとすぐ様、ご神木に走った。
「・・・翡翠・・・。お前本当にかごめ様に・・・?」
「うん。とっても優しいお姉ちゃんだったよ」
「・・・そうか・・・」
珊瑚と弥勒。
小さいころから翡翠に語り続けてきた。
・・・異世界から舞い降りた少女がいたことを。
そして共に旅をして戦い、大切な仲間になっていったことを・・・。
「会えるといいなぁ。かごめおねーちゃんと犬夜叉にーちゃん」
「そうだな・・・」
翡翠を抱きしめ、大切な仲間2人の再会を願う・・・
「はぁはぁ・・・」
息を切らせて・・・ご神木の前に立つ・・・
辺りは薄暗く視界も悪いが・・・
(確かにここから・・・優しい匂いが・・・する・・・)
ドキドキをとめられない。
ご神木の向こう側に・・・もしかしたら・・・
「かご・・・め・・・?」
犬夜叉はゆっくりと向こう側に歩く・・・
だが・・・
(・・・いねぇ・・・)
匂いはするのに・・・。
姿はない・・・。
「かごめ!!いるのか!!出てこいよ!!」
何度も叫ぶが・・・
誰もすがたをあらわさない
(くそ・・・!匂いは感じるのに・・・!!)
「・・・かごめ・・・。ここに座っていた・・・」
根元の草。
誰かが座っていたのか葉っぱがしおれている。
そして優しい匂いが凝縮して・・・香っている・・・。
「かごめ・・・。お前・・・。ここに居たんだな・・・?来たんだな・・・?」
香る場所に触れてみる・・・
(まだ・・・温かい・・・)
いつだったか・・・
あのぬくもりを思い出す
・・・心地いい膝の温もり・・・
犬夜叉はかごめが座っていたその場所に
頬をつけて体をくの字にして横になる・・・
(・・・かごめは・・・ここに居た・・・)
あの
膝の温もり
忘れえぬ温もり・・・
(・・・きっとここに居れば・・・会える・・・きっと・・・)
犬夜叉はそのまま・・・
眠りについた
優しい匂いとぬくもりが消えないように・・・。
「・・・かごめ・・・?」
ママが気がついた。
ベットで眠るかごめの頬を伝う涙を・・・
「かごめ・・・。どうしてそんなに・・・
切ない顔をして・・・」
ママはその涙をそっと拭う・・・
「・・・どんな夢を見ているのか知らないけれど・・・。
ちゃんと帰ってくるのよ・・・」
ピッピ・・・
機会音だけが響く病室。
白いカーテンが
静かにゆれたのだった・・・。
・・・何だか現実感のない
展開になってしまいました(汗)会えなくても必死に信じ合う・・・
っていうことを書きたいだけなんです・・・(迷)
妙な展開かもしれませんが最後まで出来ればおつき合い下さいませ・・・(^_^;