黒い画用紙にキラキラ光る折り紙の粉を散らしたように、咲いている星達。
無数の星達の中から 、自分だけの一番星を見つけるように、
僕は
私は
貴方を見つけた。
君と出会わなければ、星がこんな綺麗だとは知らずいた。
ただ、真っ黒な空しか知らなかった。
消えるものか、なくなるものか・・・。
“小さくても僕は生きてるから”
可笑しいかも知れないけど、そうつぶやいているように見えた。
小さいけれど、懸命に輝く星がこんなにも愛しいと思えたよ。
・・・何だか涙がでた。
星に勇気をもらうなんて。
何気なく輝く星に、元気をもらうなんて。
そんな自分に気が付けたのも君がいたから・・・。
たった一人の君がいたから・・・。
だから・・・感謝の気持ちを込めて・・・。
君に、花を贈る・・・。
この星の下で・・・。
※
高い崖のてっぺん。
珊瑚と弥勒が並んで座っている。
何だかいい雰囲気。
星空と静かな風の音・・・。
珊瑚はいつにも増して緊張ぎみだ。
逆に弥勒は、いつもペース。
「おお。今日は一段と綺麗な星空ですなぁ・・・」
「そ・・・そうだね・・・」
空を見上げる弥勒に対し、珊瑚は弥勒の顔チラチラとみつめる。
ドキドキして・・・。
“法師様を置いていくくらいなら・・・。ここで一緒に死ぬ・・・ッ”
白霊山で奈落の妖怪達に危うくやられてしまいそうになったとき・・・。
無意識に言った言葉・・・。
自分でも気がつかなかった・・・。
でも、弥勒ははっきり聞いた。
珊瑚はあれから恥ずかしくて弥勒をまともに見られない。
「どうした珊瑚?神楽に喰らった傷がまだ痛むのか?」
「べ、べべ別に、そんなことない・・・ッ」
気のせいか妙に優しい弥勒・・・。
更に珊瑚は意識してしまう。
そんな様子を当然、もう一方のカップルは草陰から見守っている。
「ああ、いい雰囲気ねぇ ・・・。珊瑚ちゃん、なんか初々しい・・・」
「そーかー?俺にはいつもと同じにみえるがなー。ふあああ・・・」
大あくびする犬夜叉を七宝とかごめは冷めた視線をおくる。
「なんだよ。なにみてやがる」
「あんた程、“ロマンチック”を考えない男っていないわきっと」
「そうじゃな。子供のオラでも、わかるぞ」
「なんだとーー!おめーら」
「おすわり」
せっかくのいい雰囲気を壊さないように犬夜叉を黙らすかごめ。
「静かにしてなさい」
一方、こちら弥勒と珊瑚は・・・。
「いい夜ですなぁ・・・」
「そ、そうだね・・・」
なおもいい雰囲気だ・・・。
「珊瑚・・・。私は嬉しかったです」
「え?な、何が・・・?」
「不謹慎かもしれませんが、珊瑚が、一緒に死ぬと言ってくれたことが・・・」
「!!」
いきなり本題にはいる弥勒・・・。
珊瑚はさらにドキドキドキ・・・。
「あ・・・あれは、本当に法師様が死んじゃうかと思ってあわてただけで・・・」
「ふっ・・・。人は慌てたときにこそ、本音が出る・・・といいますがね。珊瑚・・・」
「なっ・・・」
容赦なく弥勒は珊瑚肩を引き寄せた・・・。
「お前がああ言ってくれなかったら私は本当に死んでいました・・・。お前に勇気をもらったのですよ・・・。感謝しています・・・」
「か、か感謝だんなんて・・・」
珊瑚に迫りつつ、弥勒はふと崖の間に咲く小さな桃色の小花を見つける・・・。
「感謝の印に・・・。あの花を珊瑚に捧げます。しばしお待ちを・・・」
「え!?法師様!?」
弥勒は花を取ろうと、ひょいっと四つん這いになって崖に身を乗り出した。
「ちょ・・・。法師様、危ないよ!」
「大丈夫です。ほら、もう少しで取れます・・・」
グッと小花に手が届いたその時弥勒はバランスを崩した・・・!
「わっ・・・!」
「法師様っ・・・!!」
とっさに珊瑚は弥勒の腕を両手でつかんだ。
「もうっ・・・。法師様・・・!いわんこっちゃない・・・!」
「はは・・・。また珊瑚に助けられましたね・・・」
「ほら・・・。法師様、そっちの手も貸して!引き上げるから・・・」
珊瑚の必死な顔・・・。
自分のためにこんな顔をしてくれる女・・・。
もっと見てみたいと思うのは、わがままだろうか・・・?
「珊瑚・・・。あの・・・。こんなときに難なんですが、あの台詞、もう一度、言ってくれませんか・・・。白霊山での・・・」
「!?な、何言ってンの!!こんな時に・・・」
「どうしても聞きたい・・・」
「バ・・・バカ言わないでよっ。とにかく、もう片方の手を貸して!」
「そうですか・・・」
本当に残念そうにする弥勒・・・。
胸がきゅんとした珊瑚・・・。
「あ、あのね・・・。あたしはね、法師さまと一緒に死にたくない・・・。一緒に生きたいの!!だから・・・早く手をかして!!」
真っ赤な顔。
掴んでいるてもおのずと、熱が上がって・・・。
弥勒はもう片方の手で珊瑚に差し出して、崖からはいあがった。
「ふう・・・。すまんな珊瑚・・・。また助けられた・・・」
「・・・。花なんかどうでもいいのに・・・。もうあたしの前で危ないことしないでよ・・・!」
「そうだな・・・。愛しいおなごの涙ほどキツイものはないからな・・・」
弥勒は小花を珊瑚の髪にすっと挿しそして
「!!」
珊瑚を抱きしめた・・・。
珊瑚は緊張で固まっている。
そして弥勒は耳元で声を潜めて囁く・・・。
「さっきの台詞・・・。嬉しかった・・・。本当に・・・」
「・・・」
耳にかかる弥勒の吐息を背中全体に感じて珊瑚はもう心ここにあらず・・・。
「口づけしたいのは山々ですが、それはまた後日・・・。見物人がいないところで・・・」
「・・・」
珊瑚はもうすっかり弥勒のペースに飲まれ、もうクラクラ・・・。
そして、弥勒は、その“見物人”のかごめ達ににウィンクする。
「!!」
かごめ達はササッと身を潜める。
「み、弥勒、気がついておったんじゃな!」
「そ、そうだね。それにしても弥勒さま、流石・・・。素敵だなぁ・・・。ちゃんと女の子のことリードしてる・・・。それに比べて・・・」
ごろんと眠たそうに横になる犬夜叉。
「なんでい。そのあきらめた様な視線は・・・」
「たまにはあたしもあんな風に、されてみたいなぁー」
「へん・・・。俺は弥勒じゃねぇっての・・・。ってわッ!!」
かごめ、実力行使にでる。
いきなり犬夜叉にしがみつく。
「犬夜叉がやってくれないから、あたしがこうするのよ・・・」
「けっ・・・。強引な奴だぜ・・・」
照れながらもやっぱり犬夜叉も嬉しそう・・・。
「・・・。雲母、オラ達はオラ達で子供同士で語り合おうな・・・」
「ミー・・・」
弥勒の腕の中で、うっとりする珊瑚・・・。
その珊瑚に弥勒は、つぶやく・・・。
「珊瑚・・・。さっき、私と一緒に生きたい・・・と言ったな・・・」
「うん・・・」
「3人だ・・・」
「え?」
「琥珀も一緒に・・・な・・・」
「・・・!」
珊瑚はハッとした。
自分の恋に酔いしれてしまっていた・・・。
白霊山にはまだ、自分のたった一人の弟が残されているのに・・・。
今、自分はこうして好きになった男の胸の中で幸せを感じている。でも琥珀は敵の手の内に一人・・・。
その気持ちを思うと、たまらなくなる・・・。
弥勒の着物が珊瑚の涙で濡れる・・・。
「絶対に奈落から取り戻しましょう・・・“姉上を下さい”そう琥珀に言わなければなりませんからね」
「法師様・・・」
弥勒はそう珊瑚につぶやき再び、珊瑚を優しく抱きしめた・・・。
星空の下・・・。
愛しい魂達が寄り添い・・・。そして支え合う・・・。
確かなものはただ一つ・・・。
大切な人が生きていること・・・。
ただ、一人の貴方が・・・。