犬かご50のお題
キス

夜。



立ち寄った村で一泊することにした一行。



村長の家の客間二つを男女に別れてつかっていた。





弥勒が正座して茶をすする。



「犬夜叉」




「なんでい」






「お前。かごめ様と口付けぐらいまではいったのか?」





「なっ・・・」




唐突な弥勒の質問に、犬夜叉、動きが止る。




「てってめぇッ何言い出す・・・」





「オラは何回もしたことあるぞー!」




ひょこっと犬夜叉の肩から顔を出す七宝。




「てっ。てめぇ。が、ガキの分際で・・・」




犬夜叉君の血管が何本が浮いてます。





「”七宝ちゃん、ありがとうー♪ごほうびのキスあげるね”チュっとな、おでこに
いっぱいくれたんじゃ。だからオラが一番じゃ」





「・・・ふっ。七宝・・・それはお子様用というものです。本当の口付けというのは・・・」





冷静に言う弥勒だが。




「じゃが弥勒。珊瑚からもいっぱいもらったぞ」







ボカ!





弥勒、七宝に一発いれる。





「なんでぶつんじゃー。わーん(大泣き)」






「ふっ・・・(怒)」





どちらが子供なのかわからない男衆。




犬夜叉は七宝に先を越されたショックで、朝まで呆然としていた・・・。







次の日の夜。




今夜は野宿だ。



魚を取りに弥勒と珊瑚はいない。



七宝は昼間、雲母と遊びすぎてどちらとも眠ってしまっている。






パキ・・・。


焚き火を囲み、犬夜叉とかごめじっと火をみつめている。





「ねぇ・・・」




「あぁ?」









「・・・キス、がいいかな」





「ええぇ!???」





(き、キスって・・・かごめの国だと確か・・・)








口付けのことである。








犬夜叉、動揺&ドキドキ・・・。









「と、と、突然なんだよっ」







「あたし・・・。キスがいいなって思うの・・・。どう思う?」






「ど、ど、どうって・・・」





犬夜叉の顔を覗き込むかごめ・・・。






(・・・ドキッ)





犬夜叉の視線は思わずかごめの柔らかそうな唇に・・・。








「キスって美味しそうだし・・・。いい味がするのよ」






「あ、味って、お、お前そんな・・・(真っ赤)」






(どんな味がすんだ?)







「ふわって感触でおいしいの」







(ふわって、おいしくて・・・)





犬夜叉はかごめの唇を見ながらゴクッと息を呑んだ。






「どうする・・・?犬夜叉?キスがいい・・・?それとも・・・」






「ど、ど、ど、どっちでも・・・」





「そ。よかった。じゃあキスにしようね♪」






「お、おう・・・」







犬夜叉はぴしっと背筋を伸ばして準備万端。






「・・・い、いいぜ・・・」






犬夜叉は目を閉じてかごめを待った。





ドキドキ
しながら。





待った。





(ふわっとして甘い・・・)





感触を想像しながら・・・。





だけど。








「・・・」




いくら待ってもそんな感触はやってこない・・・







そうっと目を開けると・・・






「あ、犬夜叉。焼けたよー♪はい、召し上がれ♪」





犬夜叉が持たされたもの。


それはこんがり焼けた魚。





「・・・。何だよ。これ」




「何ってお魚」





「そうじゃなくて・・・。”キス”じゃねぇのかよ」





「うん。そうよ。”キス”っていうお魚。とっても美味しいの」







「・・・」








犬夜叉君の頭上にドカーンとタライが落ちました(笑)







「て、て、てめぇ!!!ま、紛らわしいこといってんじゃねーーー!」





「何よ。まぎらわしいことって・・・。・・・。あ、あんたまさか
また変なフウに勘違いして・・・」






「ばっ(照)」





「もう・・・。犬夜叉のえっち」






「けっ・・・」






犬夜叉、合わす顔がないので拗ねてあぐらを書いてかごめに背を
向けて座ってしまった・・・








「・・・。犬夜叉。ねぇ。怒ったの?」





「怒ってねぇよ」







だが肩が尖って”怒ってる”と言っている・・・。







(しょうがないなぁ・・・)








「・・・ったくしょうがないなぁ・・・。犬夜叉、こっちむいて」






「うっせぇ!俺はお・・・」







ふわッ。





チュッ。







(・・・!)







犬夜叉のほっぺになんともいえぬ柔らかな感触が
はしった。









「おこりんぼさんv早く機嫌なおして・・・ね?」







「・・・」







にこっとウィンクされ、拗ね犬もどこへやら・・・。








でも。







「頬かよ」




ちょっと不満そうにぼそっと言った。






「え?何?」







「な、何でもねーよッ」






照れくさそうに焼き魚をかぶっとかぶりつく犬夜叉。






(ふふ・・・)




そんな犬夜叉を見てかごめは微笑む。






「じゃ私もいただきます」





かごめも一口焼き立てのサカナを食べる。






ちょっとこそばゆい、でもどこかあたたかな夜の出来事だった。