あなたを護る
「あー!おりられないよー!」
村の子供が、木登りをしていて降りれなくなってしまい、
枝の先につかまって泣いている。
「かぁちゃーん、うわあん!!」
おお泣きしている子供を、母親が下で心配そうに見上げている。
「ああ、誰か、誰かお助けを・・・」
その言葉を聞きつけたのか・・・
「ちっ。仕方ねーな」
赤い衣がひょいっと枝に飛び乗り、子供を抱え、
母親に子供を手渡した。
「ぴーぴーなくんじゃねぇ。男だろ」
母親と子供は犬夜叉の風貌に驚き、呆然としている。
「なんでい」
ビクッと怖がる親子。
「・・・こ、怖いよ・・・っ」
「ち、ちかずくんじゃないよっ。食われたらどうすんだい・・・」
「なっ・・・(怒)」
子供と母親は犬夜叉から逃げるように走り去っていった・・・。
「・・・けっ・・・。助けてやるんじゃなかったぜ・・・」
ちょっと親切心を出してしまった自分がなんだか情けない。
人間から避けられるのは慣れてしまったことだけれど
厚意から出た行動に拒絶されるとやはり・・・
「・・・むなくそわりぃ!」
ポチャン!
池に小石をいれ、川原の草むらに寝転がる犬夜叉・・・
「犬夜叉。何してるの?」
「何もしてねぇよ。けっ・・・」
かごめは犬夜叉の横に静かにひざをかかえて座った。
「犬夜叉」
「なんだよ」
「・・・。大丈夫だから」
「何が」
「私は・・・わかってるから。全部・・・。犬夜叉のやさしい心は
私が知ってる・・・」
かごめは犬夜叉の腕にそっと掴まり、寄り添って座った。
「だから・・・。大丈夫よ。ね・・・!」
「俺は別にお、落ちこんでなんかねぇっ」
「ふふ・・・」
照れる犬夜叉。
かごめはただ、犬夜叉の傍で微笑む。
「けっ・・・」
微笑むかごめが傍にいれば
そばにいれば
居続けてくれたら・・・
きっと・・・
大丈夫。
川原に吹く風が
やさしい香りに変わった・・・