最終話 小さな幸せ
 
かごめの微笑みにしばし 見惚れる犬夜叉・・・。 「犬夜叉・・・?まだねぼけてるの・・・?」 「はっ・・・。お・・・おっせぇじゃねぇか!!て、てめぇッ」 「ご、ごめん・・・。も・・・もしかしてずっとここで 待っていてくれたの・・・?」 「///ん、んなことあるわけねぇだろッ!!」 毛布を慌てて背中に隠す犬夜叉。 くすっと笑うかごめ。 そして新しくなった 楓荘を首を伸ばしてかごめは眺めた・・・ 「・・・ワタシに・・・見せたかったものってもしかして・・・」 「・・・。オレが建てた(正確には犬夜叉が勤める工務店)」 「そうなの・・・?凄い・・・。凄いよ!!凄いよ!犬夜叉!!」 かごめは目をぱあっと見開いて喜ぶ。 「ここを犬夜叉の手で造ったなんて・・・。うん。とっても素敵。ワタシも嬉しい・・・!! ね、中、入ってみてもいい??」 「お、おうっ。って、荷物もってけ〜!」 かごめは荷物を犬夜叉に持たせ、一人、はしゃいで中に入っていった・・・ 木の匂い。 廊下の木目が綺麗に映る。 アパートといっても、前のようにいくつも個々に部屋があるわけではなく 一軒家で 『下宿』形式だ。 一階の和室が2つあり、一つは楓の部屋。 玄関を入ってすぐ右に食堂がある。 「キッチン、すごいね〜!しかもシステムキッチン!!」 かごめは食器棚を開けたり色々調べる。 「カウンターか。ここから食事を運ぶのね♪はい、犬夜叉。お夕飯 できたよ。なんちゃって」 新築した家を見て回る新妻のようなかごめ 「ね。犬夜叉。二階の部屋をかすの?大学生とかに?」 「・・・他の奴なんて住むか」 「え?じゃあ誰が住むの?」 「そっ。それは・・・」 何故か顔を赤らめる犬夜叉。 「まあいいか。じゃあ次、二階の部屋見てくるね〜♪」 階段をかけあがっていくかごめを 犬夜叉はちょっと複雑な想いで見上げる ”伝えたいこと” タイミングがつかめない。 (・・・かごめが落ち着いてからにしよう) 人生でたった一回のことだ。 焦ることはない。 かごめはその後も二階のベランダや3つある部屋を見て回る。 「やっぱり新築の家っていいね。わくわくしちゃう」 新しい楓荘に興奮さめやらず・・・といったかごめ。 「もういいか?見学は」 「うん。でも・・・。やっぱりなんか嬉しくて。楓おばあちゃんの居場所を 犬夜叉の手で復活させてくれた・・・。それが嬉しいの」 (・・・なんつー顔で言うんだ(照)) 素直に感想を述べるかごめに・・・ 犬夜叉の心は胸キュン。 「・・・。で。犬夜叉の”伝えたいこと”ってなあに?」 「あ、ああぁ・・・」 「楓おばあちゃんのこと?それとも・・・」 「と、とにかく、こっち・・・こいっ」 犬夜叉はかごめの手を強引にひっぱり再び二階に上がる。 二階にあがって2つ目の部屋にかごめをつれてくる犬夜叉。 フローリングの普通の洋室の部屋だ。 「ここが・・・なに?」 「使え」 「え・・・?」 「ほ、ほら。お、お前、こっちの保育所に来るんだろっ?どうせ新居探すんなら ここ・・・使え」 「・・・いいの??」 「お、おう・・・」 かごめは満面の笑みを浮かべて喜んだ。 「助かるなぁ・・・。楓おばあちゃんと一緒っていうのも心強いし・・・」 「・・・ばああだけじゃねぇ、オレも一緒だ」 「あ、そっか。だから、二階の部屋、2つあるのね。じゃあまた お隣どうしなんだね」 「・・・隣じゃねぇ。一緒だ」 「・・・え・・・?」 チャリ・・・。 犬夜叉は真っ赤な顔でかごめの目の前に鍵を差し出した。 「こ・・・この部屋の鍵だ。一つはお前が持て」 「うん」 「もうひとつは・・・。お、お、オレが持つ・・・(照)」 「・・・え・・・?犬夜叉が持つ・・・?」 首をひねるかごめ。 (・・・。犬夜叉が同じ部屋の鍵を持つ・・・??同じ部屋・・・。同じ・・・。そ、それって・・・) 「・・・そ、それってあ、あの・・・犬夜叉・・・もしかして・・・」 「///」 犬夜叉はくるっとかごめに背中を向けた。 「もしかして、もしかすると・・・。もしかすると 今・・・私・・・。プロポーズ・・・されてるの・・・?」 「///」 「・・・。ねぇ。そうなの??どうなの・・・??」 犬夜叉の顔を覗き込むかごめ・・・ 「・・・そ、そ、そういうことにして”やっても”いい・・・(照)」 犬夜叉はもう口がしどろもどろ・・・ 「なーんだ。伝えたいことってそんなこと」 「なっ。なんだと!??そ、そんなことって何だ!!」 「あんたねぇ。どうしてこう回りくどいわかりにくーい表現方法しかできないわけ?? ロマンチックじゃないじゃない!」 かごめはぷいっと口を尖らせた。 「・・・て・・・てめぇ・・・。お、お、オレがどんなに苦労して 考えたか・・・」 「苦労してこれなの??進歩してないなぁ」 「・・・い、言わせておけば・・・!!お、男のプライドをよ・・・。!!」 犬夜叉の言葉を封じ込めるように かごめは犬夜叉に飛びついた・・・ 「・・・か・・・かごめ・・・」 「・・・ロマンチックじゃないけど・・・。嬉しい・・・。死ぬほど嬉しい・・・」 犬夜叉の背中に回されたかごめの手に 力が篭る・・・ 「・・・。けっ・・・当たり前だろ・・・」 「本当にいいのね・・・?そばに・・・いてもいいのね・・・?」 「・・・。ったりめーだろ・・・」 「・・・うん・・・」 シャイで不器用な 犬夜叉らしい プロポーズ その方が ずっとずっと嬉しい・・・ 二人はしばらくそのまま・・・ 何も言わずただ・・・ 抱きしめあった・・・ 一年ぶりの想いをこめて・・・ 「・・・。ねぇ」 「何だよ」 かごめと犬夜叉は壁に背をもたせ寄り添って座った・・・ 「・・・今日なんだよ」 「何が」 「・・・あたし達が出逢った日・・・」 出逢った日と 一緒に生きていこうと確かめ合った日が 同じ日・・・ 「・・・。そういう設定だったの?そこまで演出家じゃないか」 「ぐっ。偶然だっ偶然・・・」 「ならこんな素敵な偶然ってないね・・・」 かごめは 今日、一番優しい微笑みを・・・ 犬夜叉に送った・・・ (かごめ・・・) 「・・・!!」 かごめはすっと目を閉じた (・・・こ、これは・・・っ。こ、これはっ・・・) 犬夜叉クン、かごめからのお誘いに ドギマギ ドギマギ。 (・・・ど、ど、どうすんだっ) ”男をみせなさい!!犬夜叉!” どこからか天の声。いや弥勒の声が (・・・よ、よ、ようしッ。お、お、オレも男だっ) ゴクッっと唾をのみ、犬夜叉は手を震わせながらかごめの肩に触れた・・・ ”そうっ。あとはもうぶちゅっといくだけだ!!” (わかってらぁッ!!いちいちつっこむなっ) 犬夜叉も目を閉じて顔を近づける・・・ ”舌は入れるなよッ” (ばっ。だ、だ、誰がそんなリアルなこと・・・ってん・・・?) 犬夜叉。 やたらはっきり聞こえる弥勒の”天の声”に首を傾げる ”どうした!!絶好のチャンスだぞっ” 「・・・」 犬夜叉はすっと立ち上がり、扉を強引にあけた 「わぁあッ」 天の声の主とその妻のご登場。 「珊瑚ちゃん!??弥勒様!??」 「かごめちゃん。ひ、久しぶり・・・」 「て、てめぇら・・・(怒)」 とってもいい雰囲気を壊されてお怒りモード全開の犬夜叉。 「いやぁ〜。楓荘が新築されたって聞いてもと住人としては お祝いをせねばとおもってな。楓さまから招待されたんだ」 「だからってなんで”今”なんだよ」 「偶然だ。偶然。決して意図はない」 絶対にある、と犬夜叉思った。 一方おなご陣は 口付けのこともわすれ、久しぶりの再会に握手で喜んでいる (・・・) 犬夜叉君、ガックシ・・・ そしてその夜。 新築楓荘にてすき焼きパーティ。 「いやはやー!私達も住みたいくらいですなー」 「絶対すむなッ!!!」 ビールをがぶのみしあう犬夜叉と弥勒 「珊瑚ちゃん。北海道には慣れた?」 「うん。でもうちの旦那は相変わらず・・・。同じ団地の新妻に声かける ”悪い癖”はなおってないんだよ」 きらっと光る薬指の指輪。 珊瑚の今の幸せをかごめは感じた。 「犬夜叉。お前、ようやくゴールインだな。はっはっは。 かごめ様の体はお前のもの〜」 「///・・・!!!や、や やかましいッ!!助平野郎。てめぇは春菊でもくってろ!!」 弥勒の口に春菊を突っ込む犬夜叉。 「い、犬夜叉やめなさいッ」 「うるせぇー!今日は無礼講でぇーーー・・・」 新しい食堂から 共に暮らした友達の再会の喜びの(?)声が響く。 短い間だったけど 一つ屋根の下で尾同じ季節を過ごした友。 それぞれの幸せをつかんで それぞれの人生を歩きはじめたのだ・・・ 「ったく・・・。飲みすぎるんだから。男どもは」 完全に酔っ払て眠る弥勒と犬夜叉。 「ふふ・・・。嬉しかったのよ。二人とも。本当はお互いに親友だって 思ってるはずだから・・・」 大の字になって眠る二人を かごめと珊瑚は笑って見つめた・・・ 「え・・・?」 「やっと・・・。だね・・・。やっと・・・」 「・・・」 かごめは立ち上がり、窓をみつめた。 「珊瑚ちゃん。ワタシ、思うの・・・。ヒトの幸せって・・・。 本当はいつもすぐ近くにあるものだって」 たとえばほら・・・ 足元にさく 黄色のタンポポ かごめはたんぽぽの花を見つめながら話す・・・ 「子供たちと一緒に遊んでると自然に・・・目線が下に いくの。下に・・・」 小さな花や虫 落ちている空き缶や小石。 子供たちはなんでもないものをすぐに”幸せ”な ものに変えてしまう。 「大人になったら色んな複雑なことで悩んだり 自分が嫌になったり・・・誰かを憎んだりするかもしれない・・・。そういうときにね。 子供の頃の”小さな幸せ”を思い出して欲しいんだ・・・」 辛くて辛くてこの世から消えてしまいたくなったとき ちょっと立ち止まって 花を見て 空を見て ありふれたものから少しだけ幸せを貰おう。 そしたらきっと 気づくはず いつもそばにいて自分を見守ってくれている誰かに・・・ 「小さな幸せ・・・か。そうだね・・・。人の幸せは きっとそこにある・・・」 眠る弥勒を優しい眼差しで珊瑚は見つめる 好きな人の寝顔を見ていられる この瞬間が 私の幸せ。 「みろくの助平やろう・・・むにゃむにゃ・・・」 「いったい犬夜叉ったらどんな夢みてるのかしら。ふふ・・・」 好きな人の 寝言一つでも嬉しくなれる それが私の小さな幸せ。 小さいけれど 大きく深い深い何かを与えてくれる 素敵な幸せ。 「あ・・・綿毛だわ・・・」 ふわふわの綿帽子。 かごめはふぅっと静かにふいた・・・ 晴れた夜空に舞う・・・ 眩しい月のあかりを浴びながら どこかの街へ 山へ 海へ 次の花を咲かせるために飛んでいく・・・ 「・・・。全部の種が・・・。小さな幸がある居場所に飛んでいけますように・・・」 願いを込めて。 希望を忘れないように きっと 君の居場所はすぐそこに・・・ あるから・・・
FIN

ふぃ、ふぃ、ふぃにっしゅーーーーー!!!(ひとりで感涙) しかしなんともありふれた終わり方・・・というかあっけなく終わらせてしまいました(汗) 色々ラストは考えたのですが、 原作のタイトルをつかわせて頂きました。 ラストも何だか予定調和でポンポンと色々なエピソード片付けてしまって なんというか自分でも安易に結末を結んでしまったなぁと すごく悩んだのですが、とりあえず一区切りつけたくてあせってしまいました(汗) 見切り発車ではじめた連載。 こんなに長く続くとは思わなかったです。 でも書いていくと「あれも書きたいこれも書きたい」 技術がないのに欲だけは出てきてしまってこんなに長くなってしまいました(汗) かごちゃんにいっぱい色んな台詞言ってもらいました。 最後は「小さな幸せ」 原作でも使われたタイトルですがやっぱり一番なんか大切なことではないかと・・・(偉そう) タンポポの生命力見ているとすごいなぁって思ったんです。 だからラストはかごちゃんとタンポポでしめくくろうと思いました。 無難であまり派手ではないけれども何か伝わるラスト・・・になれば・・・と(汗) 「居場所2」についてはただいま、執筆中です。 かごちゃんと犬君新しい日々が始まります。テーマは恋愛もそうですが『家族』みたいな感じになればなぁと思います。 本当に最後まで読んでくださってありがとうございました。 5/17 水音