第42話 壁の向こうには 「何?犬っころがいなくなった?」 戦国大学・陸上部部室。 ロッカーの前でユニフォームに着替えていた鋼河に、鋼河の後輩が『かごめ姐さん情報』を伝えていた。 「犬夜叉とかいう男はもういなくて、かごめ姐さんの隣の部屋は空いているようなんでさぁ」 「へぇ〜・・・。そうかい。犬っころがねぇ・・・」 鋼河は腕組みをしてしばし考え、立ち上がった。 「よし!俺、決めたぜ!今日、引っ越す!」 「え?」 「銀二、お前も手伝え!わかったな!」 満面の笑みを浮かべながら鋼河はグランドへ出て行った。 「ひ、引っ越すって・・・。まさか・・・!?」
ピンクのエプロン姿で台所たつかごめ。 肉じゃがをおなべてんこもりに作ってしまった。 「・・・。しょうがない。弥勒さま達にも食べてもらおうっと」 小皿に肉じゃがを移し変え、ラップするかごめ。 一人一人の分を小分けする。 (・・・。犬夜叉だったら作りすぎてもお代わりくれって言うのにな・・・) 些細なことだけど・・・。 隣には犬夜叉がいないんだと実感して寂しい・・・。 コンコン。 今頃ノック・・・? (もしかして・・・) 微かな期待が沸く。 しかしかごめがドアを開けると・・・。 「おっす!かごめ!」 「鋼牙くん・・・?」 スポーツバックひとつ担いだ鋼牙。 「どうしたの?こんな時間に・・・」 「俺、引っ越してきたんだ。これはそのお祝い」 鋼牙はりんごひとつ、かごめの手に乗せた。 「ひ・・・引っ越してきたって・・・。もしかして犬夜叉の部屋に!?」 「おう。管理人のばばあには話しつけてきた。犬っころの部屋だったってのはちょっと気にいらねぇが・・・。かごめ、今日からおめぇと一つ屋根の下一緒だ・・・。何か困ったことがあったら何でも俺に言えよ」 鋼牙はかごめの手を握る。 かごめはぱっと手を放した。 「あ、あの鋼牙君・・・」 「んじゃかごめ。俺はまだトレーニングがあっから」 パタン・・・ッ 。 突然起きたつむじ風の様に一瞬のうちに自分の用件を満たす鋼牙・・・。 かごめはただ、驚いて鍋つかみをはめたままだった・・・。
・・・いや。
新興住宅・建築現場。 「な、なんだてぇえええ・・・ !????」 ボト! 「いってぇーーーッ(涙)」 弥勒の報告に驚き、思わず金槌を足元に落とし、直撃。 「犬夜叉。そのリアクション、分かりやすぎだ。しかも定番だし」 「う、うっせーっ」 足を押さえる犬夜叉。しかし直撃したのは金槌より、自分の部屋に鋼牙がいて、かごめと一つ屋根の下、という事実らしい。 「なんで俺の部屋に鋼牙のヤローがいるんだ!」 「お前がでていったからだろう。部屋が空いているんだ。誰が入居したっておかしくはあるまい?おや?もしかして、あの部屋は空いていてほしいのか?戻りたいとか?」 肘でつんつんと犬夜叉を突付く弥勒。 「べ、別にそんなんじゃ・・・」 「お前の部屋綺麗でな。誰でも入れる程に綺麗だったぞ。かごめ様がちゃんと掃除されているからだ」 「・・・!」 「ま。お前はもう出て行ったんだから関係ないがな。おおっといけない。会議が始まる。じゃあな。犬夜叉。とりあえず、報告だけはしたぞ」 腕時計を見て、急いで銀行に通勤していく弥勒だった。 「・・・」 ”かごめ様がいつも掃除している・・・” 弥勒の言葉に心が揺れる。 「何ぼやっとしてんだ!犬っころ!」 同僚に渇を入れられ、ハッと する。 (かごめ・・・) 五月晴れの空を見上げると。 浮かぶのはかごめの笑顔。 きっと同じ空の下で今も笑っているんだろうと思うと不思議とエネルギーが沸いてくる。 それと同時に会いたい気持ちも・・・。 ゴー・・・。 飛行機雲が犬夜叉の頭上に白いラインを描いていった・・・。 「しっかし・・・。狭いな。この部屋は・・・。トレーニングもできやしねぇ・・・」 床に片手をつき、腕立て伏せをする鋼牙。 部屋が狭い上に、下の部屋に音が響くと思うと、力いっぱい筋力トレーニングも思うようにできず、戸惑っていた。 (それに犬っころが住んでたかとおもうとムカつくぜ) 色々と不満を感じている鋼牙だが・・・。 「・・・お?このいいにおいは・・・」 かつおだしのいいにおいに誘われてかごめの部屋の前に立つ鋼牙。 小窓から、かごめが台所で料理をしている姿が見えた。 (・・・。嫁さんにしたらかごめのうまいもん毎日食えるよな・・・。というかエプロン姿のかごめもまた・・・) 新婚気分に少し浸る鋼牙・・・。 ばちっとかごめと目が合った。 出を休めて部屋からでてくるかごめ。 「鋼牙くん・・・?」 「あ、すまねぇ。いいにおいがしたもんだから・・・」 「そうだ。鋼牙君、もしよかったらシチュー食べない?つくりすぎちゃって・・・」 お鍋の蓋をあけると、とろっと美味しそうなシチューが。 「ふッ。かごめ。おめぇの作るもんなら鍋何倍だって食ってやるぜ」 鍋をぎゅっと握り締め、かごめを見るめる鋼牙・・・。 その様子を・・・。 楓荘の目の前にある電柱の影から嫉妬の炎を燃やして見上げる男・・・一人。 犬夜叉だ。 時々、またマスコミ連中が嗅ぎまわっていないかアパートを覗きに来ていた。 (・・・くそう〜!鋼牙の野郎〜ぉ!!!かごめの作ったメシを〜!!!) クリームシチューの匂いが犬夜叉の元まで漂う・・・。 グククー・・・。 腹は正直。 食べなれた、いや、今一番食べたいもの、かごめの手作り料理に犬夜叉の腹の時計は激しくシグナルを送る。 (俺、何でこんなことしてんだか・・・。しょうがねぇ・・・。家に帰って夕食に・・・) 今現在、犬夜叉の部屋にあるのはカップラーメン一個・・・。 (・・・。なんかコンビニで買って帰るか・・・)
※ 鋼牙が引っ越してきて一週間後。かごめの大学である噂がたった。 『陸上部エース、狩屋鋼牙と日暮かごめが、同じアパートで同棲!?』 鋼牙の取り巻きの女生徒達は当然黙っておらず、学食で昼食中のかごめ周りを取り囲んでいた。 「はっきりしなさいよ!あの噂は本当なの!?」 「同じアパートっていうのは本当だけど・・・同棲だなんてそんなことは・・・!」 「同じアパートだって!やっぱり噂は本当なのね!?」 鋼牙の取り巻き達は一層かごめに詰め寄る。 「何やってんだ!お前ら!」 「鋼牙さま!!」 取り巻き達を掻き分け、かごめをかばう鋼牙。 「鋼牙くん、この女と一緒に暮らしてるってほんとなの!?」 「あー本当だ!かごめと俺は”一つ屋根の下”に住んでる!なんか文句あっか!?」 学食に鋼牙の台詞が響き、周囲はどよめく。 「かごめは俺の女だ!イシャモンつける奴は女だって容赦しねぇ!!わかったか!!」 堂々の宣言に鋼牙の取り巻きは圧倒され沈黙・・・。「かごめ、行くぞ!」 「え・・・!?ちょ、ちょっと待っ・・・」 強引にかごめの手をつかむと鋼牙は『つむじ風の鋼牙』、その名の通りに素早く学食を去っていった・・・。
鋼牙の取り巻き達だけはうっとりとした目をしている。 「あの強引さがたまらないのよねぇ・・・v」 昼食も途中に、中庭に連れ出されたかごめ。 「ちょ、ちょっと待ってったら!鋼牙くん!!」 鋼牙の手を離すかごめ。 「どーした。何でそんなに怒ってんだ?」 「怒るわよ!みんなの前であんな事言うなんて・・・!」 「だって本当のことじゃねーか。『一つ屋根の下』ってのは」 確かにそうだが、あの発言では『同棲宣言』であり・・・。 「安心しな。もう取り巻き達には手出しさせねぇ」 「そーゆー問題じゃなくて・・・」 すっかり鋼牙のペースにかごめも戸惑う。 「・・・。かごめ。俺はなんで犬っころが部屋を出て行ったのかはしらねぇ。だが、あいつからお前のそばを離れたんだろ・・・?あいつは自分からレースを降りたんだ。コースアウトしたのさ。そんな奴は勝利に向かって走る資格はねぇんだ。だったら俺はゴール・・・お前めがけて走るだけさ・・・」 鋼牙はじっとかごめを見つめ肩に手を置いた・・・。
「・・・かごめ・・・?」 「そ・・・そんなんじゃない・・・。犬夜叉が出て行ったのは・・・。あたしやみんなのために・・・。みんなに迷惑がかかることを心配して・・・。そんなんじゃないの・・・」 「かご・・・」 ハッとする鋼牙・・・。 (かごめ・・・。なんて瞳してやがる・・・) 切ない想いを押し込めるが瞳は正直。 秘める想いが溢れ出て・・・。 「かごめ・・・。お前・・・」 「ごめん・・・。鋼牙くん・・・」 「かごめ・・・!」 かごめはうつむいたまま大学の中へ走っていった・・・。
あのかごめの張り詰めた顔・・・。 切なげな瞳の奥・・・。 一体何がかごめを追い詰めているのか・・・。 (畜生・・・。犬っころ奴・・・。かごめに何しやがったんだ・・・!) 湧き上がる嫉妬を抑えながら。 犬夜叉に対しての怒りを奥歯でぐっとかみ締める鋼牙だった・・・。 その夜。 仕事を終え、寮に戻ってきた犬夜叉。 階段を上ろうと見上げるとそこに・・・。 腕組みをして犬夜叉の部屋の前に鋼牙が 「こ・・・鋼牙・・・!?」 「よう。犬っころ。てめぇに話がある。ちょっと顔かせ」 「んだよ。俺は話なんてねぇ。疲れんだよ。お前の相手なんて・・・」 「やかましい!!かごめの事だ。疲れてる暇なんてねぇだろ!」 「・・・!」 いつもにも増して険しい表情の鋼牙・・・。 いつもの様子とは違うと感じた犬夜叉。 結局二人は近くの公園で話をすることにした・・・。 誰も居ない公園。電灯だけが明るく・・・。 「鋼牙。話って何だ・・・。お前がしゃしゃり出ることはなにもねぇ」 「うるせぇつってんだろ!かごめにあんな顔させやがって・・・!おい、犬っころ、かごめとお前の間に何があった!!白状しやがれ!」 「お前には関係ねぇつってんだろ!首突っ込むんじゃねぇッ!」 二人に浮かぶのはかごめの悲しいそうな顔。 一番心に堪えることは同じだ・・・。 「かごめが言った・・・。『自分達のために犬っころは出て行った』と。犬っころ、てめぇかごめに何か危険な目でも遭わせたのか?」 「・・・」 「おい、なんとかいいやがれッ!!!」 「・・・『遭わせるかも知れねぇ』から出たんだよ・・・。俺のせいでかごめ、いやかごめだけじゃなく他の奴らにも・・・。それ以上は話せねぇ。話すとなおさらやばいんだよ・・・!」 シャツから手を離す鋼牙・・・。 「クックック・・・」 「何が可笑しい・・・」 「かっこつけてんじゃねーよ。自分の側に置くと危険だから離れるだぁ・・・?面倒なことから逃げただけだろーが。やっぱりてめぇは走る前からコースにもたたずリタイアするヤローなんだよ!」 鋼牙の言葉に思わずガッと鋼牙のシャツの襟をつかむ犬夜叉。 「てめぇに何が分かる!!」 「わかりたくもねぇッ・・・!!俺なら惚れた女がピンチなら何が何でも離れねぇッ!!全身全霊守り抜く!ごちゃごちゃ理屈抜かして、かごめにあんな顔させたりはしねぇんだよ・・・ッ!!!」 「んなっ・・・」 言い返せない犬夜叉・・・。
「・・・」 鋼牙の言葉に返せない自分が悔しい・・・。 悔しくて・・・。 何も言葉が浮かばない・・・。
鋼牙はそう言い捨てると、ジーンズのポケットに手を入れ、公園を去っていった・・・。 ”ごちゃごちゃ理屈ぬかして、かごめをあんな顔にはしねぇ!!” 鋼牙の言葉がグサッと効いた・・・。 そばにいてもかごめを悲しませる。 離れても・・・。 (じゃあ俺は・・・一体どうしたらいってんだよ・・・) 公園の電灯が・・・。 何度もチカチカ消えたりついたりした・・・。 ※ ”もう、アパートの周りをチョロチョロすんじゃねぇ!”そう言い放たれた犬夜叉だが、かごめと同じ屋根の下に鋼牙がいると思うと落ち着かない。 気がつけば、まぁまた、電信柱の影に・・・。 (これじゃあ俺がなんかあぶねー奴みてぇじゃねぇか) しかし気になるかごめの部屋・・・。 優しい灯りが灯って・・・。 その隣には鋼牙が。 (くっそ・・・。鋼牙の奴・・・。勝手なこと言いやがって・・・) ”理屈ぬかしてかごめを苦しませることはしねぇ!”
いや、一理も二理も・・・。 そばにいたら迷惑をかける、だけどかごめが気になる・・・。 矛盾した気持ち。 それがかごめを振り回していることも分かっている・・・。
犬夜叉が悶々と考えあぐねていると。 「きゃーーーーッ!!!!!」 かごめの叫び声がアパートに響いた。 「かごめ・・・!!」 犬夜叉は超特急でかごめの部屋に駆け上がる! 「どうしたかごめ!!!」 同じ台詞を同時に言う鋼牙と犬夜叉。 「なんだ犬っころ。てめぇ」 「お前こそ・・・」 かごめの部屋のドアの前でにらみ合う二人。しかし今はそれどころでは・・・。
バアンッ!! 「かごめ・・・ッ!!」 ドアをけり破るって中に入る犬夜叉と鋼牙。 ベットの上で毛布をかぶって震えながらビデオを見ているかごめ。 そのビデオは『12日の水曜日』という有名なホラー映画だった・・・。 「あ、あれ・・・?鋼牙くんに犬夜叉・・・まで。どうしたの?」 「・・・。かごめ。お前、今の叫び声は・・・」 「あ、これ、珊瑚ちゃんから借りたビデオなんだけど。すごく怖くて・・・」 犬夜叉と鋼牙はほっと胸をなでおろす。 「かごめ。よかった無事で。俺はまた犬っころがかごめにちょっかい出しにきたのかと思ったぜ」 「なっ・・・それはこっちの台詞だてめぇこそ、ずかずかとかごめの部屋にあがってんじゃねぇよ!」 「んだと!?やんのかこら!!」 犬夜叉と鋼牙、つかみ合いになりけんかを始めてしまった。 「かごめを悲しいかおさせやがって。犬っころめ!」 「うっせー!てめぇにゃかんけねーつってんだろ!!」 ドッシャラガシャーん! 本棚を倒し、取っ組み合う二人。 「や、やめて。二人とも!!」 かごめの声も聞こえない二人。 そして勢いあまって・・・。 ドゴッ・・・!!
鋼牙のこぶしが壁に丸い穴をあけてしまった・・・。 鋼牙、犬夜叉の喧嘩は中断・・・。 「あーあ・・・。もう・・・。やっちゃった・・・」 かごめは穴を覗き込む。 「もう。どうするのよ。これじゃあ丸見えじゃない・・・」 「だ、大体おめーがまぎらわしー声あげるからだろーが!!」 「何よ。あんたこそ!人の部屋で喧嘩なんかして!」 鋼牙の目の前で痴話げんかを始めるかごめと犬夜叉。
「ぼろアパートは元からだろーが。けっ」 容赦なくぽんぽん、思ったことを思い切り言い合って・・・。 喧嘩しているはずなのに、どこか・・・。 口げんかも久しぶりで・・・。 何だかとても懐かしい変な気持ち・・・。 嬉しいような・・・。 「・・・」 そんな二人をじっと見詰める鋼牙・・・。 犬夜叉と喧嘩しているかごめ・・・。 急に元気になったようにみえて・・・。
鋼牙が二人の喧嘩を遮るように言った。 「な、なんでい!」 「俺は元のマンションに戻る。陸上部のエースだ。毎日のトレーニング欠かせねぇ。この部屋じゃ、勢いあまって今みてぇに壁ぶっ壊しそうだからな」 チャリ・・・。 鋼牙は犬夜叉の足元に部屋の鍵を放り投げた。 「勘違いすんなよ。俺はとなりの部屋がきにくわねぇだけだ。かごめをあきらめるわけじゃねぇ。俺は俺でかごめを守る」 「けっ・・・」 鋼牙はスポーツバックを部屋から取ってきて担いだ。 そしてぎゅっとかごめの手を握る。 「かごめ。短い間だったけどおめぇと一緒に暮らせてしあわせだったぜ。将来のための予行練習だ。今はまたちっとばっかし離れて暮らすことになるが、俺はいつでもおめぇを守ってやるからな。じゃあな」 パタン・・・。 ”つむじ風の鋼牙” その名の通り、突然現れ、突然消えていった・・・。 「鋼牙くん・・・」 「けっ。かっこつけやがって・・・」 そういいながらも、鍵を拾い、しっかりと握り締める・・・。 自分の部屋の鍵を・・・。 二人きりになったかごめと犬夜叉・・・。 横目と横目がばちっと合う。 「な、なによ。で、出てってよ!あたしの部屋こんなにして・・・。あんたの部屋は隣でしょ!」 「あ、ああそうだっな!言われなくても出て行くさ!」 バタン! 犬夜叉とかごめはそれぞれ自分部屋に・・・。 握りこぶしひとつ分程の穴の開いた壁。 その壁挟んで体育座りしているかごめと犬夜叉・・・。 「犬夜叉。そこにいるの・・・?」 「・・・いるよ。」 いつも壁越しに聞こえてきた声。 久しぶりで・・・。何だかほっとする・・・。 「・・・。ちゃんとご飯食べてた?お洗濯は?」 「ちゃんと食ってたし洗濯はまとめて洗濯機に突っ込んでちゃんと洗ってらぁ・・・!細かいこと言うな・・・っ」 「やっぱり貯めてたんだ、洗濯物!」 なんでもない会話がくすぐったい・・・。 。 壁ひとつ向こうから・・・。
「それにしてもこの穴・・・。派手にやってくれちゃって・・・。ちょっとそこの大工さん。ちゃんとなおしてくれるんでしょうね?」 「へん・・・。こんな穴、セメントでちょちょいのちょいだ。すぐ直してやる」 「当たり前でしょ!あんたがあけたんだから・・・。あ、犬夜叉、あたし着替えしてるとき、絶対に見ないでよ!」 「ば・・・ば・・・ッだ、だれが・・・ッ」 顔を赤く染めた犬夜叉は思わず、穴の向こうを覗いてしまう。 「あ・・・」 直径10センチの空間に。 かごめと犬夜叉の目がまっすぐ向こうにぴたりと合った。 「・・・」 「・・・」
「きゅ、急に覗くなよ・・・っ」 「い、犬夜叉こそ・・・っ」 照れくささも妙に懐かしい。 変だけど懐かしい・・・。 「・・・。犬夜叉」 「何だよ」
「おかえりなさい・・・」 まだ色々この先あるかもしれないけど・・・。 かごめの ”おかえり” に犬夜叉は・・・ 「・・・俺は。”ただいま”って言ってもいいのか・・・?俺は・・・」 「・・・。”おかえり”って言ったら”ただいま”でしょ・・・。言ってよ・・・」 言って欲しい。言って・・・。
遠慮がちに。震えるような声だったけど。 確かにかごめには聞こえた・・・。 「おかえり・・・。おかえりなさい・・・」 壁の向こうの犬夜叉にそう何度もつぶやくかごめだった・・・。 何だかあやふやなまま戻ってしまいました(滝汗)最初は、犬のアパートで桔梗とかごちゃん鉢合わせ・・・というのを考えていたのですが。ちょっともう暗くなりすぎて収拾つかなくなったので、こんな感じに落ち着いたのですが(滝汗)
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