第46話 くすぐったいプレゼント 6月下旬。 犬夜叉が勤める工務店の事務所では従業員達が喜ぶ出来事が。 「特別にボーナスだ」 給与袋の中に別の封筒に5万ずつお金がはいっていた。 「ヤッホー!!」 だった5万のボーナスで飛び上がって喜ぶ若い見習い達。しかし、安月給の彼らにとっては5万という金額はでかい。 そして犬夜叉は・・・。 (・・・。余分にもらっても使い道がねぇな・・・) 家賃と光熱費、食費ひいても犬夜叉はほとんど必要以外のお金に給料の大半がいく。 さて。犬夜叉の5万の使い道は・・・。 (・・・ん?) 犬夜叉はふとカレンダーを見た。 6月ももう終わり・・・。 (楓荘に来てもう一年か・・・) 月日の経つのは早い。 今の暮らしがあるなんて一年前は想像もしなかった・・・。 今の自分があるのはかごめと出会ったから・・・。 「・・・」 5万円をじっと見つめる犬夜叉・・・。 "かごめになにか贈り物をしよう" どこからともなく天の声が。 「ばっ・・・。誰が!!調子のいい弥勒じゃあるまいし!!」 独り言で、他の従業員は犬夜叉に注目。 「な、なんでもねぇよ・・・」 とりあえずその場はごまかすが・・・。 その日の帰り・・・。 犬夜叉はとある場所を見つめている。 ウィンドウのマネキンが着ている花柄のワンピース・・・。 前にかごめがほしがっていたやつだ・・・。 (・・・値段は・・・) 視線を降ろすと・・・。
「・・・」 犬夜叉は即刻購入をあきらめ、帰ろうとした・・・。 その時。またどこからともなく天の声が・・・。 ”わー・・・。いいなぁ。このワンピ・・・。手が出ないけど素敵だなぁ・・・” かごめのこえが・・・。 「・・・。くそう!男は度胸だ!」 カランッ・・・ッ。 回転ドアを入ると・・・。 「いらっしゃいませー♪」 綺麗どころの若い店員がいっせいに犬夜叉を甲高い声でお出迎え。 犬夜叉は思わずあとずさり・・・。 「お客様、もしかしてどんな感じのものをお求めでございますか?最新のデザインでしたらばこちらに・・・」 やいのやいのと何枚もの服を勧められ、圧倒される犬夜叉。 「お客様のお相手の方はどんな方ですか?」 「え・・・。ど、どんなって・・・」 突然、聞かれても・・・。 思わず出た答えが・・・。 「わ、わんねぇけど、”いいにおい”はする」 シーン・・・。 女性店員達は一瞬沈黙。 「きゃーーーー♪やだぁ♪お客様ったら大胆なーーーvvv」 犬夜叉の答えが店員達に大うけしたらしい。 きゃはははと笑い声が響く。 「な、な、なにがおかしいんだ!!」 「もう♪お客様ったらラブラブなんですねーv」 肘でつんつんする店員。 犬夜叉は何だかもうここから早く逃げ出したい心境に・・・。 「だーッ!!もううるせえ!とにかく、あの窓際の白いやつ、くれ!!」 指差して白いワンピースを求めた。 「毎度ありがとうございまーす♪」
「お買い上げ、ありがとうございましたー♪」 (あー。もうこんな場所二度とこねぇ・・・) 慣れない買い物をしてどっと気疲れした犬夜叉。 それにしても。 (これ・・・。買ったがはいいがどんなツラして渡せば・・・) ”かごめ、ほれ、やる!” 「・・・これじゃあ犬にエサやるみてぇだし・・・」 ”かごめ・・・。お前のために買ったんだ。似合うと思って・・・” 「だああああッ。んなこといえっか!!気障ったらしいこと・・・」 犬夜叉。歩道で一人、問答し、歩行者の注目の的・・・。 「・・・」 ともかく買ったのだからなんとかして渡さなければ。 (そっと、ドアの前にでも置いておくか・・・。それが無難だよな・・・) 渡す方法が見つかり、犬夜叉は信号待ち・・・。 が、その時。 「わッ・・・!」 犬夜叉の後ろで待っていたサラリーマン風の男が躓いて犬夜叉もろとも倒れた。 その拍子で紙袋が道路に・・・! 「あッ・・・」 ブロロロ・・・! 嗚呼無念・・・。 ワゴン車の車輪は紙袋ごと見事に踏んでいった・・・。 信号が青になり、すぐワンピースを取りに行くと・・・。 (・・・なんで・・・) ワンピースにはくっきりと車輪の跡がついてしまっていた・・・。 がっくりと肩を落とす犬夜叉・・・。 トボトボとアパートに帰る犬夜叉・・・。 ワンワンワンッ! 散歩から帰ってきたゴマちゃんとかごめとバッタリ・・・。 「あ、犬夜叉。お帰り。遅かったね」 「べ、別に・・・」 犬夜叉は紙袋をぱっと後ろに隠す。 ワンワンッ!【ちょっと!今なんか隠したわね!】 微妙な犬夜叉の態度の変化にゴマちゃんはすぐに反応。 早速鼻をきかせて捜査に入るゴマちゃん。 ワンワンッ!【何?この紙袋がなにかにおうわね!何を隠したのよ!!】 ゴマちゃんは紙袋をくいっとひっぱる。 「あっ。こら、ゴマ!やめろ!」 ワンワン!【そのよそよそしい態度!かごめちゃんを泣かせる種になるようなものじゃないでしょうね!?】 バサバサッ。 勢いで紙袋が地面に落ち、箱から白いワンピースが飛び出てしまった・・・。 「あれ・・・。このワンピ・・・」 かごめがワンピースをすくいあげる・・・。 「これ・・・。どうしたの・・・?」 「・・・(照)」 「・・・。も、もしかして・・・。あたしへのプレゼントとか・・・?」 犬夜叉の目を覗き込むかごめ。 「・・・ば、ば、馬鹿野郎!そ、そんなわけねーだろ!!ひ、拾ったんだよ!信号待ってたら潰れた紙袋あったから。そ、それだけでいッ」 腕組みをして背を向ける犬夜叉・・・。 しかしその背中には思いっきり『かごめのために買ってきた』と書いてあるようで・・・。 「ふふ・・・。じゃあ、あたし、もらってもいいかな?だって犬夜叉着ないでしょ?」 「べ、別にかまわねーけど・・・。それ、汚れちまってるぜ・・・」 「・・・。大丈夫よ。このくらいなら」 かごめは部屋に行き、洗面器に水を入れ木綿用洗剤を入れてワンピースをひたした。 そして古い歯ブラシで汚れた部分を静かに擦る・・・。 「・・・。そんなんでとれんのか・・・?」 「うん・・・。ほら、大分うすぐくなったでしょ。あとは、クリーニング屋さんにまかせるとして・・・」 ついた汚れは大分とれ、かごめはそっとワンピースをハン がーにかけた。 「・・・。これ・・・。本当にもらっていいのかな・・・?」 「・・・。拾ったもんだ。べ、べつにいいんじゃねぇか・・・?」 「・・・うん。じゃあ・・・ありがたく貰うね・・・」 「お、おう・・・」 犬夜叉の顔には自分が買ったぞと書いてある。 照れくさそうにズボンのポケットに両手をつっこむ。 「でもよ・・・。本当にこんなよごれちまったモンでいいのか・・・?」 「うん・・・。いいの・・・。だって・・・。犬夜叉がくれたものだから・・・」 かごめはそう言ってワンピースをぎゅっと抱きしめた。
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