第47話 始まりの招待状 ”月島桔梗復活記念コンサート、チケット残りわずか”CDショップの窓に桔梗のコンサートのポスターが貼ってある。 衝撃的な復活劇から3ヶ月近く経ち、売り出したアルバムは記録的にヒットした。 そして。 坂上樹プロデュースするコンサート・・・。 桔梗が再びクラシック界に蘇る第一歩になる。 そのコンサートに向けて桔梗は自宅のバルコニーで日々練習をかさねていた。 「桔梗・・・。練習するならうちのホールを使えばいいのに・・・」 「・・・ここが一番のびのび音が出る・・・」 「そうか・・・」
風と一体となるような、滑らかな音を奏でて・・・。
幼い頃から・・・。この音をずっとそばで聞いてきた・・・。 それがいつしか・・・。桔梗が奏でる音色は一人の女に対する想い代わって・・・。 しかし、桔梗が音色を届けたい相手は自分じゃないと・・・。 もう分かっている・・・。 「相変わらずいい音だな。これならコンサートも大丈夫だな」 「・・・。人は・・・。聞きにきてくれるだろうか・・・。ずっと死人だった私の音など・・・」 「・・・。たとえ客がこなくても。お前は弾く。舞台にたって堂々と・・・」 桔梗はだまって力強くうなづいた・・・。 「お前が・・・。一番聞いてほしい相手は必ず来てくれる・・・ 。あの人なら・・・」 「犬・・・夜叉・・・」 桔梗の髪が風になびく・・・。 この風に乗せて、今の自分の気持ちを犬夜叉に伝えられたら・・・。 桔梗はそんな想いで再びバイオリンを奏でた・・・。
「この真ん中においてあった肉、誰が食った!弥勒、てめぇだな!」 「証拠はありますか?ふッ」 「証拠だぁ?ふざけんな!オレの肉返せ!!」 鍋のなかで弥勒と犬夜叉の箸が肉の奪い合いで他の野菜たちもぐちゃぐちゃに混ざってしまう・・・。 「あ!?」 かごめが鍋つかみで鍋を没収・・・。 「もう男性軍はお肉おしまい!これからはあたしと珊瑚ちゃん、楓おばあちゃんとゴマちゃん女性軍が食べるの!ねー!」 いつのまにか、ゴマちゃんもちゃっかりかごめの横におすわりしていた。 「ったく。どうして男ってこう食い意地わるいのかな」 「本当じゃのう・・・」 女性軍、向こうのテーブルでおいしそうにすきやきを堪能。 「あーあ。犬夜叉。どうやら私達はこれで我慢しますか」 「・・・おう」 缶ビールを取り出していっぱいやりだす男衆・・・。 こんな感じの楓荘の食卓・・・。でもみんなで食べる夕食はやっぱり美味しいし楽しい・・・。 たわいもない冗談や日ごろの話・・・。 憩えるひと時だ・・・。 「あ、そうじゃった・・・。かごめ宛てに手紙がきておったんじゃった」 楓はポケットから昼間郵便屋からあずかったかごめ宛ての手紙を割烹着のポケットから取り出す。 「あ・・・。これ、樹さんからだ・・・」 カサ・・・。中をあけると・・・。4枚、桔梗のコンサートのチケットが入っていた。そして手紙も。
という内容の手紙も同封されていた。 にぎやかな久しぶりの焼肉パーティーが静かに・・・。 「どうする・・・?犬夜叉・・・」 「どうって・・・」 「行くわよね。あんたは・・・」 桔梗の晴れ舞台・・・。行かないはずがない・・・。
「チケットは4人分あるから、弥勒さまも珊瑚ちゃんもよかったら一緒に・・・」 「いいですな。クラシックなんて久しぶりだ。いいな。珊瑚」 「うん。あたしも聞きたい」 「じゃあ決まり!今度の休み、みんなで行こう!ね、犬夜叉」 「・・・。ああ・・・」 少し複雑そうな犬夜叉・・・。 明るいかごめ態度に・・・。 かごめは・・・平気なのか? 桔梗のコンサートに行くことは・・・。 嬉しそうにチケットを弥勒と珊瑚に配るかごめを複雑な視線を送る犬夜叉だった・・・。 その夜・・・。かごめはなかなか寝付けなかった。 ベットから出て、窓を開けた。 半月が出ている。 「月・・・か」 桔梗のイメージは月と言われる。 今晩の月はどうだろう。 三日月でとても白く光っている・・・。 まるで、コンサートでの桔梗のような・・・。 「コンサートか・・・」 このコンサートが終わったら・・・。 かごめはある決意をしていた。 いや・・・。本当はずっと前から心の中で・・・。
「満月がいいな。私・・・。ね、犬夜叉・・・」 かごめも酔いたいときが在る。缶ビールを一口ふくんで夜空の月をながめていた・・・。
空を眺めるかごめを黒い車の中からサングラスの男が覗いている・・・。 「桔梗・・・復活おめでとう・・・。なら盛大な”お祝い”をしねぇとなぁ・・・。血がながれるような・・・くくく・・・」 怪しい瞳でかごめを見つめ、にやりと笑った。 「もうひとりの桔梗にも協力してもらわねぇと・・・。ふふ・・・。待ってろ桔梗・・・。オレが最高のコンサートにしてやるからな・・・」 窓が閉まって・・・。
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