第68話 ラスト・ゲーム
「犬夜叉さん!」 犬夜叉は樹の事務所に来た。 「樹。どうしたんだ。一体。桔梗に何かあったのか!?」 「いや・・・。直接には・・・。桔梗は今、新譜の事で 隣県にでています。さっき、確認しました。それより、これ 見てください」 樹は正体不明のファックスを見せた。 ファックスには 『もんだい。あなたのたいせつなものはなーんだ?まちがったら なくなるよ。あなたのタイセツナモノ。きえちゃうよ・・・』 新聞紙やチラシの文字を切り取って組み合わせたような文字で 書いてあった。 「単なる嫌がらせだとは思ったんですがなんだか・・・」 クシャっとファックス用紙を丸める犬夜叉。 「こんな幼稚なことするのは奴しかいねぇじゃねーか。またゲーム 感覚で・・・っ」 「・・・。僕もそんな気がしてます。犬夜叉さん、かごめさんは今日・・・」 「・・・ああ。アパートにいるよ。楓ばばあもいる」 「それはあまりよくない状況じゃ・・・。すぐ戻ってください。犬夜叉さんを 引き付けておいて、そこをつつく・・・アイツのパターンですから」 「あ・・・ああ・・・」 だが、かごめとあんな別れ方をしてしまって なんとなく口ごもる犬夜叉。 「かごめさんと何かあったんですか?」 「・・・べ、別に・・・。だとしてもお前には関係ねぇ」 「関係ない・・・ですか。犬夜叉さん、前に僕いいましたよね? あなたがはっきりしないなら、僕は前に進むと・・・」 樹はソファアに深く腰を下ろした。 「貴方がかごめさんを捕まえていられないなら僕は・・・。 僕はもう迷いません。はっきり言います」 「な、何をだよ・・・」 樹はソファから立ち上がり、犬夜叉をまっすぐ射抜くように見た。 「別れてください。かごめさんと・・・。僕にください」 「・・・なっ・・・」 樹の迫力に押される犬夜叉・・・。 その決意の固さは目をみればわかる・・・。 「プロポーズもします。幸せにします。その自信は貴方に負けない」 「・・・」 「かごめさんに好きだと言います、誰より好きだという。抱きしめます」 「やめろ・・・」 「そしてキスもします。それから・・・ホテルに誘って一緒の夜も過ごして・・・」 「やめろっつってんだろッ!!!!」 バキ・・・ッ。 犬夜叉の拳は樹をソファに思い切り突き飛ばす・・・。 「痛・・・。犬夜叉さんの拳は流石に効くな・・・。でも・・・かごめさんを 手放すということはそういうことなんですよ・・・?他の男のものになる、 新しい人生を送るってことなんですよ・・・!」 「・・・」 「・・・。僕を殴る気持ちがあるなら・・・。もう・・・。宙ぶらりん はやめましょう・・・。自分の気持ちと向き合ってください・・・」 「・・・」 犬夜叉は何も言わず、部屋を出ようとした。 そのとき。 PPPPP。 事務所のファックスが鳴り、ジー・・・と用紙が出てきた。 「こ・・・これは・・・!」 『もんだい・いぬやしゃのだいじなものはなーんだ? かごめ?ききょう?まちがえたら、きえちゃうよ。 だいじなもの、きえちゃうよ・・・』 ファックスにはそう書いてある・・・。 「くそ!!篠原か!!!どこにいる!!出てきやがれ!!」 犬夜叉は用紙を破り、窓に視線をやった・・・。 「!!」 事務所下・・・電話ボックスに・・・野球帽をかぶった男が こちらを見てわらっていた・・・。 「篠原ーーーーーー!!!」 バタンッ!!! 犬夜叉は篠原の姿を見つけ、事務所を飛び出した。 「待ちやがれッ!!もうにがさねぇ・・・っ!!!」 電話ボックスから逃げる男を追う!! 「待ちやがれーーーーッ!!!!」 男に追いつき、両腕を掴んだ。 「篠原ッ!!!観念しやがれ・・・!!!もう逃げられねぇぞ!!!」 男と七転八倒し、犬夜叉が帽子を取ると・・・。 「てってめぇは・・・!?」 篠原とは似てもにつかない・・・まったくの別人・・・。 「クックック。犬夜叉。リーダー(篠原)はここにはいないぜ?」 「なっ」 「いっただろ・・・?大切な人を間違えるときえちゃうよ・・・って?」 バキッ!! 「てんめぇ・・・ッ!!!!篠原はどこだ!!ふざけてんじゃねぇえ!!!」 バキッ!!! 完全にキレた犬夜叉は男をなりふりかまわず殴る。 殴る。 殴る。 「犬夜叉さん!!やめろ!」 樹がとめに入るが犬夜叉の興奮はおさまらない。 「離せ、ぶっ殺してやる、篠原もこいつもみんなぶっ殺してやる!!!!!」 「しっかりしろッ!!!!」 バシッ。 樹の平手が犬夜叉の拳を止めた。 「今、あなたがしなければいけないのはこいつを殴ることじゃないだろう!!」 「樹・・・」 「・・・今度こそ・・・。あなたの”たいせつなもの”を守ってください・・・」 犬夜叉の手をぐっと・・・ 握り締める樹・・・。 何かを託すように・・・。 「こいつは僕が警察に連れて行きます。だから早くかごめさんの元へ・・・!!」 「樹・・・。すまねぇ・・・っ」 今度こそ・・・ 今度こそ 守ってくださいね・・・。 (かごめ・・・!!) 犬夜叉は走った。 走って   走って 走り抜いて・・・。 『一番大切なもの』の元へ・・・。
「下水道の点検ですか?」 「はい。大家さんから頼まれたので・・・」 作業着を着た男。 かごめの部屋の台所の流しを開き、パイプ管をいじりだす。 「あの・・・どうですか?どこか、異常あります?」 「いえ・・・。ですが少し錆びていますので錆び止めを流しておきます・・・」 「そうですか・・・」 何だか無愛想な男の物言いにかごめは少し、気まずさを感じた。 それに・・・。 (なんかこの煙草のにおい。どこかで・・・) かごめはそっとしゃがんで男ののぞきこむが。 男の顔はまったくの別人。 (よかった・・・。でもなんだか雰囲気の重い人だな・・・) 重苦しい空気にかごめは男に尋ねた。 「あの・・・。まだ点検、終わりませんか?」 「・・・ええ。あと少し・・・」 「あの・・・友人が来るんです。早めにお願いします」 「友人・・・ですか?”犬夜叉”とかいう二股男ですか?」 「!?」 男の口から犬夜叉の名がでて驚くかごめ。 「ど、どうして・・・」 「どうして・・・?復讐対象の名前を忘れるわけがないじゃないか・・・。ククク・・・」 「そ、その声は・・・」 男はゆっくりと・・・帽子を脱ぎ・・・。 白髪交じりのカツラを取り・・・。 ベリッと顔の皮膚を取った・・・。 「お久しぶりです。お姫様」 「し、篠原・・・ッ」 3ヶ月ぶりに見る卑しい顔・・・。 篠原だ・・・。 「い・・・犬夜叉ッ・・・」 ガタンッ!!! 逃げようとしたかごめ。 だがドアを篠原に阻まれる。 「おおっと。そんなに慌てなくても犬夜叉はこっちに向かってますよ。 お姫様」 「・・・一体何をするつもりなの!??」 「”たいせつなもの”を僕が消してあげるんです」 「どういうことよ・・・」 「後悔させてあげるんです。ククク・・・」 ナイフをかごめにちらつかせ・・・。 ベットに座る篠原・・・。 「さ。王子様が来るのを待ちましょう・・・。お姫様」 「・・・」 (犬夜叉・・・ッ) キキキキーー!! 「気をつけろ!!馬鹿野郎!!」 信号を無視し、一路、アパートに走る犬夜叉。 (かごめ・・・!!) 犬夜叉が交差点を曲がろうとしたとき。 「かごめーーーーー!!!」 どこかで聞いた声と正面衝突。 「わっ。なんだ。犬っころ!?」 「こ、鋼牙!?」 「犬っころ、てめえ、かごめをまた危ないめにあわせたな!?」 「んだよ。うっせーな。今、てめぇに構ってる暇はねぇんだよ!!どけ!」 道路の真ん中でケンカをはじめる二人。 「俺だって犬っころにかまってられねぇ!!篠原が現れたんだよ!!」 「!?どういうことだ!!」 鋼牙のトレーナーを掴む犬夜叉。 「メールがきやがった・・・。”お姫様を預かっています。取り返しにきてください。 王子様”ってな・・・」 「あの野郎・・・っ」 「・・・犬っころ。今はとりあえず休戦ってことにしてやる。かごめを助けるためだ」 「うるせぇ。かごめを助けるのは俺だ!!てめぇはすっこんでろ!!」 犬夜叉と鋼牙。 物凄いスピードでアパートを目指す・・・。 「かごめ・・・っ」 アパートに着いた二人。 「かごめを助けるのは俺だ!!犬っころの出る幕じゃねぇ!!」 「やかましい!!痩せ狼!てめぇこそどっか行ってろ!!」 いがみ会う二人の携帯。 同時に鳴った。 (まさか・・・) 同時に出ると・・・。 「お姫様の目の前でケンカはよくないですよ。王子様」 「しのはらっ・・・!!!」 悔しそうに唇を噛む犬夜叉・・・。 「てめぇ・・・っ!!!かごめは無事なんだろうな・・・っ」 「ええ。僕の横でじっとして頂いてます。切れのいいナイフと一緒に・・・」 「!!」 サクッと林檎を噛む音が携帯からした・・・。 「・・・篠原・・・。てめぇ・・・かごめに傷一つつけてみやがれ・・・。てめぇの面、 二度とみれねぇ面にしてやる・・・」 犬夜叉の声は怒りで震え・・・。 「ラストゲームの始まりですよ。さぁ、楽しみましょう・・・」 篠原の不気味な声が・・・ 暗闇に響いた・・・。 」