第73話 辛い春の予感
カフェを飛び出していった珊瑚。 かごめは隣の公園の噴水まで追いかける。 「待って珊瑚ちゃんっ」 「もうほっといてよ!」 かごめに背を向けうつむく珊瑚・・・。 「ほっとけない・・・。だって・・・珊瑚ちゃんはあたしの大切な親友だもの・・・ 悲しい顔して・・・絶対ほっとけない。ほっとけないよ・・・!!」 「かごめちゃん・・・」 篠原のことや自分の恋のことで忘れかけていた。 隣の部屋の親友の恋の危機。 全部知っている。珊瑚の恋。弥勒に実は一目ぼれだったこと。 同じ会社の女の子が尋ねてくるたび 気になって気になって嫉妬していたこと。 「・・・。ねぇ・・・。自分の気持ちに・・・素直にならなくちゃ 駄目よ・・・。本当に・・・タイミング逃して後悔なんて絶対駄目なんだから・・・」 「かごめちゃん・・・?」 気持ちがこもるかごめの言葉。 「・・・一緒にいたら・・・私責めてしまう・・・。弥勒さまのこと・・・」 「え?」 「私・・・欲張りなんだ・・・。弥勒さまと一緒にいると些細なことで怒って・・・。 弥勒様を責めて・・・。どんどん嫌な自分になっていく・・・。それ辛いんだ・・・」 わかる。 好きになればなるほど 嫉妬すればするほど 嫌いな自分が見えすぎて・・・。 「俺は・・・珊瑚を追い詰めていたのかな・・・」 「弥勒さま・・・」 コートに手を入れた弥勒・・・。 寂しそうにつぶやく。 「・・・。俺と一緒にいて辛い・・・。正直、強引に珊瑚を一緒に連れて行こう・・・ なんて思っていたけど甘かったかな・・・」 「・・・」 珊瑚は弥勒に背を向けたまま・・・。 勢いよく噴き上げる噴水をながめて・・・。 「・・・。珊瑚ちゃん!お願い、素直になって!弥勒さまに 応えてあげて・・・!」 「・・・」 かごめは必死に訴えるが珊瑚は黙して・・・。 「珊瑚ちゃん!!」 「・・・もういいです。かごめ様・・・」 「で・・・でも・・・」 「・・・。珊瑚の気持ちを優先することを俺は忘れていた・・・。でも これだけは知っていて欲しい・・・。生涯、俺の隣にいて欲しい 女はお前だけだと・・・」 弥勒は髪をかきながら申し訳なさそうに呟く・・・。 「怒ってるお前も泣いてるお前も全部・・・好きだよ」 弥勒の優しい声・・・。 珊瑚を包むよう・・・。 「じゃあ・・・」 コートにチケットをしまう弥勒。 「み、弥勒様・・・」 かごめにお辞儀をして弥勒は立ち去る・・・。 「ま・・・待ってよ・・・!!」 珊瑚の声に弥勒が振り返った。 「珊瑚ちゃん・・・?」 「チケット、出して」 「え・・・?」 「いいから出して!!」 弥勒は言われるまま飛行機のチケットを取り出す。 「・・・。いくらしたの?これ・・・」 「え・・・い、いや2、2万だけど・・・」 「・・・。このチケット、あたし買うよ」 「か、買う・・・?」 珊瑚は財布から2万円取り出し弥勒に渡す。 「キャンセルなんてもったいないから・・・」 「さ、珊瑚それって・・・」 「・・・綺麗なスチュワーデスに手出さないとも限らないから あたしが監視しなくちゃ・・・」 「珊瑚・・・」 珊瑚はもじもじしながらチケットをきゅっと胸の前で握り締める。 (・・・珊瑚ちゃんたら・・・。きっと弥勒さまに・・・飛びつきたい のね) かごめは珊瑚の背後に回って・・・ 「珊瑚ちゃん、それッ!!」 「きゃあッ・・・」 ドンっと押し出した。 珊瑚は弥勒の胸に無事、送られて・・・。 「弥勒様!珊瑚ちゃん、ちゃんと北海道まで抱えていって あげてよね!」 「わかりました。かごめ様の大切な親友、しかと承りました。 誰より幸せに致します」 「弥勒さま・・・」 「珊瑚・・・」 見詰め合う二人・・・。 「弥勒さま・・・。美人のスチュワーデスにちょっかいだしたら ただじゃおかないから・・・」 「はは・・・(汗)」 早くもかかあ天下風を吹かせる珊瑚・・・だが 二人は・・・ 弥勒は珊瑚をしっかりと抱きしめる。 珊瑚もそれに応えるように顔をうずめた。 しっかりと・・・ 確かな絆がうまれたと・・・ かごめは二人を見守った・・・ (・・・幸せになって・・・。後悔のないように・・・。弥勒様・・・珊瑚ちゃん・・・) 「あ・・・」 公園の片隅に植えてある桃の花。 蕾が開き始めた・・・。 幸せの蕾が・・・。
「・・・遅い。遅すぎるじゃねぇか」 ギプスで松葉杖をついて、窓から身を乗り出す犬夜叉。 無論犬夜叉が心待ちにしているのは・・・。 (・・・ん。来たな) 足音で待ち人来たり、犬夜叉。 ガラガラ。 「おう、かごめ、遅いじゃねぇか」 「あたしはあんたの家政婦じゃないのよ!いちいち文句いわないでよ! あたしが来るの待ってるのはいいけど大人しく待っててよ」 「ばっ。誰が待ってるってんだ」 「窓からいっつものぞいてるくせに・・・」 かごめと犬夜叉の声は廊下まで筒抜け。 「ちょっと!痴話げんかはほどほどにしてくださいお静かに!」 怒った婦長が入ってきて二人の言い合い終了。 「ふふ。微笑ましいラブラブなケンカ、ごちそうさまでしたうふふ・・・」 と、一言残して。 「・・・」 「・・・」 頬を染める二人。 「・・・く、口うるさいばばあだ(照)」 「ばばあだなんて言い方やめなさいよ。ふう・・・」 「けっ・・・」 犬夜叉とのこんな掛け合い。 それも一つ一つ覚えておこう・・・。 (なんか懐かしい気分になったりして・・・) 「?どうしたんだよ」 「なんでもない。ね、それより、退院の日、決まったの?」 「おうよ!いつまでも閉じ込められてたまるか。一週間後には 出られるぜ」 「そう、よかったね。でも、退院しても、必ず週に二度の診察 が条件だそうよ。お医者様がさっき私にみっちり説明してくれた。 わかってるわね?」 「う・・・」 犬夜叉を睨むかごめ。 犬夜叉が担当医を半分脅して退院日を早めたのはいうまでもない。 かごめが後で謝っておいたのだ。 「まーったくあんたって人は手がかかるんだから・・・」 「けっ・・・」 かごめは呆れ顔で犬夜叉の着替えを棚に しまう。 「・・・あのね。三月に入ったら一緒に行って欲しいところがあるの」 「あ?また買い物に付き合えってんならお断りだ。この足で 人ごみ行けるか」 都合の悪いときだけ怪我人になる犬夜叉君。 「そんな所じゃないわよ。ちょっと結婚式場まで」 「け、結婚式場!???なんでそんなとこに行くんだ?」 「・・・ウエディングドレス、一緒に見て欲しいのよ」 「え・・・」 (ウェデングドレス・・・?) 犬夜叉君の思考。 結婚式場一緒に言ってくれ+ウエディングドレス=・・・ 逆プロポーズ!? (そ、そ、そんなと、突然・・・っ) 犬夜叉、急に背筋を伸ばす。 「私ー・・・やっぱり洋式の方がいいと思うのよ。お値段もね、 手ごろだし」 「い、いやお、俺はどちらでも・・・って、かごめ、そんな突然言われても 俺・・・そのあの・・・」 「突然って・・・。早く申し込まないと間に合わないのよ。ね、いいでしょ?」 かごめは犬夜叉をじっと見つめた。 (か、かごめ・・・) 「・・・し、仕方ねぇな。お、お前がそこまで言うなら・・・」 「ほ、ほんと!?ありがとう!!」 「お、おう・・・」 犬夜叉の手を握って大喜び。 「で、でもな・・・。そのなんだ、やっぱり順序つーか、 お前の親とかに挨拶とかしねぇと・・・」 「はぁ?何いってんのよ。どうしてあたしの親に挨拶するの?」 「ったりめーだろ(照)お前が嫁に行くんだぞ・・・」 「あんた何寝ぼけたこといってるの!?あたしがどこへお嫁に行くって言うの」 「俺ントコに決まってるだろ!」 犬夜叉、自分で言っておきながら赤面。 「・・・ばっ・・・。あんた何か勘違いしてない?珊瑚ちゃんと弥勒さまのこと言ってるのよ!!」 「え?だ、だってお前、ドレス選べだの、洋式がいいだのって・・・」 「それは珊瑚ちゃんと弥勒さまに内緒で計画立てたいから協力してって意味よ。 な、何飛躍して考えてるのよ。もう・・・」 「て、ててててめぇが紛らわしい言い方すっからじゃねぇか。全く・・・(照)」 でもかなり乗り気でしたよ。犬夜叉君。 「・・・。で・・・珊瑚と弥勒。ケンカしてたんじゃねぇのか?」 「うん。でも仲直りしたの。一緒に北海道に・・・」 「へっ。メンドクサイやつらだぜ。一緒になりたいなら なれってんだ」 ”人のこと言えないでしょ。あんた・・・” とかごめの冷ややかな視線は言っております。 「珊瑚ちゃん・・・。本当に本当にずっと悩んでいたのよ。自分は 本当に弥勒様とやっていけるか・・・」 「俺には女の心はわからねぇ」 犬夜叉はりんごをがぶっとかじる。 「ねぇ。だからさ・・・。二人をもっと幸せな気持ちで送り出したいの。 協力してくれるでしょ?」 「・・・。仕方ねーな。ややかこしくねぇなら・・・」 「ありがとう。そう言ってくれて嬉しい。好きよ。犬夜叉」 (・・・え!?) ポロっと林檎が犬夜叉の手から落ちる・・・。 「じゃあ、お洗濯にいってきマース!」 鼻歌を歌いながらかごめは洗濯籠を抱えて病室を出て行った・・・。 ”好きよ、犬夜叉” 「・・・(照)」 かごめの一言が犬夜叉の耳でエコーしております。 かごめちゃんの告白に犬君の心は手まりのように弾みます。 (しかし・・・なんか最近、かごめの奴やけに素直な気が・・・) かごめの態度の違和感を多少は感じつつも、犬夜叉はかごめの”一言”の布団の中で 余韻に浸る・・・。 (・・・今度言うときはテープに録音でもするか・・・) かごめの”一言”を録音し、巻き戻しては 聞こうという魂胆か、犬夜叉よ。 テープレコーダーを密かに準備する犬夜叉だった(笑) 屋上。 春の陽気ですっかりあたたかな日差し。 タオルを洗濯バサミにはさでしわを伸ばして干す。 「ふう・・・」 腰をポンポンとたたく。 空を見上げるかごめ。 「もうすぐ・・・春・・・か」 春が近いこと肌で感じる。 空気、匂い・・・。 大好きな季節なのに。 今年の春は・・・ (辛い春に・・・なるかも・・・ね・・・)
この時期になると思い出すドラマといえば。東京ラブストーリー。今から13年位も前のドラマです。 自分はまだ学生じゃった・・・(なぜ七宝が入る) 最初は主人公の『リカ』もお話自体もあんまりすきじゃなかったんだけ どラスト だけ見ました。リカが電車の中で泣くシーンは結構好きです。 うん。あの例の『3年後』っていういきなりの展開にはびっくらこいたが。 さらにさらに。これももう、9年ほど前の ドラマ「いつかまた逢える」これもラスト、主人公の福山雅治さんの男泣きのシーン。 ・・・切なかったなぁ。でも、ラストがスカッとするのっていいですよね。 「愛してると言ってくれ」では豊川さんの男泣きに惚れてました。 当時はキャラの『榊晃司』に夢中でした。仕草とかもう・・・(#^.^#) 今はかごめちゃんに惚れてますが(笑) 最近は、あまりドラマは見ていませんが、夢中になって見られるドラマが 増えて欲しい今日この頃です・・・