戦国時代のシンデレラ
〜口付けの罠〜
前編


かごめたちはとある村に立ち寄る。




宿や反物問屋が連なるにぎやかな城下。




だが男衆はなんとなく面白くない顔で・・・。




その理由とは・・・





「へぇ〜。美しい武士が多いってだけあって、凛々しい
人が多いね」




すれ違う武士を



かごめと珊瑚はとても興味津々で眺め放題。




「・・・ふっ。珊瑚、かごめ様。もっと美しい法師が
ここに」


気取る弥勒など無視しておなご衆は、まるで修学旅行の学生の
ように城下を見物。





「・・・けっ。くだらねぇ」



こういうことには疎い犬夜叉だが。


肝心のかごめがほかの男を見詰め。




「確かにあの人は優しそうに見えるね」




(んなっ(怒))



などという会話が耳に入れば、ぶちっと嫉妬の紐が切れまして。




「かごめ、てめぇ、どこ見てやがる!」


と、かごめの視界を衣で遮ってしまう犬君です。




「ちょっと何するのよ」




「うるせぇ。お前・・・。顔が綺麗な男がそんなに好みなのか!」




「別にそんなことないわ。私は優しい人が好き」




「・・・。お・・・オレは優しくねぇのか・・・(照)」



犬夜叉君、ぽそっと小声で尋ねます。




「・・・。優しい時もあるけどちょっと乱暴じゃない。それに短気だし嫉妬深いし
頑固だし・・・」




笑顔で犬夜叉に言うが、犬夜叉の心に思い切りグサリ・・・。



(お、オレってそんなに嫌なとこしかねぇのか(涙))



犬夜叉、町の真ん中で落ち込む。





「そ、そんなに落ち込まなくても・・・(汗)あ、あのね、私は
犬夜叉の色んなところ全部好きって言いたかったの」




「・・・ほ、ホントか(おそるおそる)」




「うん」




「・・・そうか(照)」





町の真ん中で、なんともほのぼの、いちゃつく
犬君とかごめちゃんです。





「かごめにあそこまで言わせないと自信がつかんのか・・・。つくづく情けない男じゃ」



七宝、珊瑚の肩で呆れ顔・・・。





そんな犬一行に、近づいてくるのは・・・。




「キャー!鷹丸さまよー!」


おなご達の色めき立つ声。



振り向くと馬に乗った何人かの武士が・・・。




「城下の皆の衆、ご機嫌麗しゅう・・・。如何お過ごしでござろうか?」



一番真ん中の武士。一番高価そうな着物を着ている。


どうやら殿様のようだ。




「こら!そこの者達!鷹丸さまの御前である。道を開けい!」


家来が犬夜叉達に詰め寄った。




「・・・けっ。何だよ。俺達に命令しやがるのか」



「こら!貴様!鷹丸様に向かってなんという口の利き方を・・・」




「うっせぇ。偉そうにしてんじゃねぇよ。どこに立ってようと
俺達の勝手だ。そっちこそ怪我しねぇうちにどきやがれ」




いつもの如く傍若無人な犬夜叉。


かごめが”失礼よ。そんな言い方”と小声でいさめる。



「お、お前たち、この城下の者ではないな。怪しい。
おい、この者たちをすぐに捕らえよ!」


家来が犬夜叉達を囲む。




「やめるんだ!」



そのとき、鷹丸が一声あげて家来達を止める。




「で、ですが鷹丸さま、このもの達の失礼千万ときたら・・・」



「何の理由もなく人を捕らえるなど、正しきことではない。
お前達はさがっていなさい」



「はッ・・・」



鷹丸の家来達は犬夜叉達から離れて刀をしまった。




「・・・私の家来達が失礼仕った。旅の方。私は鷹丸と申します」




「いえ。私達の方こそ何も知らないでごめんなさい」




「・・・」




鷹丸は何故か、かごめをじいっと見詰め、馬から降りて近づく。




「あの・・・。名はなんと申される?」




「え・・・。かごめっていいますけど・・・」




「・・・かごめ様・・・。よい響きです・・・」




鷹丸はかごめの手をとり、ぎゅっと握り締め、なんと口付けを・・・。






「なっ・・・」





村のおなご達のどよめきの声があがる。



当然、アイツも・・・。




「て・・・てめぇッ。どさくさにまぎれて何
すんだッ」


と、鷹丸とかごめの間に割って入った。




(いつも見る図だ・・・「鋼牙」)


と、珊瑚と七宝、弥勒たちは同時に思う。





「す、すみませぬ。かごめ様のお手があまりにもしなやかだったので
私の口が粗相をいたしました」




「な・・・」



気障な台詞に犬君、おされ気味。




「ところで皆様、今宵の宿はお決まりでしょうか?もし決まっていないならば
我が城にお泊まりくだされ」



「だ、誰がてめぇみたいなスケコマシ野郎の・・・っておい!!」




犬夜叉を無視して、弥勒たちはすでに馬に乗っている。




「コラ!誰が泊まるって決めた!?」



「犬夜叉。ここはお誘いを断る義理はないでしょう。野宿の日々が
続き私も珊瑚も疲れている」



「だからって・・・」




「・・・犬夜叉。今日はお言葉に甘えようよ。私もゆっくりしたいし・・・」




「・・・。なんでいッ。お前まで・・・。勝手にしやがれッ!!!」




「犬夜叉・・・っ」




完全に拗ねてしまった犬夜叉。



一人、どこかへ行ってしまった・・・。






「・・・。かごめ様。お連れの方に私は何か失礼を・・・」




「いえ。気にしないでください。いつものことですから・・・」




かごめは犬夜叉のことを気にしつつ、鷹丸の城へと向かった・・・。




鷹丸たちが立ち去ったあと、



町のおなご衆が奇声をあげていた。




「きゃーー!あの旅の女に鷹丸さまがっ鷹丸さまがっ
”お寝間の接吻”を・・・!」



と・・・。









小さな城といってもやはり城は城。 中はいくつもの畳の部屋があり、一番高いところが鷹丸の部屋だ。 かごめたちは客間に通され、尽くされんばかりに手厚い 世話を受けた。 「何日ぶりの白い飯じゃろー♪」 七宝は嬉しそうに椀の飯をほおばる。 弥勒といえば。 「ああ。肝心なことを忘れていた。この城下はおなごは 少なかったのだ・・・」 城のおなご目当てについてきた弥勒だったが好みの女中 はおらずがっかり。更に珊瑚からお見舞いされた手のあとを つけながら、ご飯を正座して食べております。 「ったくあの法師ときたら・・・。あれ、かごめちゃんどうしたの・・・」 「うん・・・」 かごめはなんとなく箸が進まなかった。 (犬夜叉、どこいったのかな・・・) 「・・・。犬夜叉の奴ならきっと屋根の上にでもいるよ。かごめ ちゃんから目を離すわけないしだから元気だして」 「うん・・・」 珊瑚の言うとおり、犬夜叉は城の鬼瓦の先にちょこんと すわって部屋の中の様子を伺い中。 (・・・かごめの奴。あんなスケコマシ野郎に騙されやがって・・・) と、一人拗ね犬。 「かごめ様」 (!?あの野郎の声だ!) 鷹丸の声に犬夜叉のかごめ探知機が作動。 「かごめ様。我が城の夕食はお口に召しませんでしたか?」 「いえそんなことは・・・。とてもおいしいです」 「・・・ならよいのですが・・・。もしどこか具合が悪くなったり したらなんでも言いつけてくだされ。私でよければ力になります・・・」 箸をもつかごめの手をぎゅっと握り締め る鷹丸・・・。 (あ、あの野郎〜!!!鋼牙みてぇことばっかりしがやって・・・っ。 ってわっ!!!) ガラガラガラ・・・! どさっ! 瓦の上の嫉妬犬、興奮しすぎて城の下の川に落下・・・。 「?なんでしょう?今の音は・・・」 かごめは障子の外をうかがう。 「きっと野良”犬”か何かでしょう。この辺りに多いんです。 さ、かごめ様食べてくだされ」 「はい・・・」 その”犬”は川の中・・・。 「くそ・・・!何でオレがこんなめに遭うんだーーー!」 と遠吠えをあげていたのだった・・・。 「ふう・・・」 月に雲がかかっころ。 寝付けないパジャマ姿のかごめは部屋を出て廊下の冊子の間からつきを眺めていた。 「犬夜叉・・・。どこいっちゃんたんだろ・・・」 ため息を一つつくかごめ・・・。 そのため息を。 しっかりこの男はやっぱり聞いていた。 (・・・かごめの奴。オレのこと気にしてんのか・・・?) ちょっぴり嬉しい犬夜叉君。 「かごめ様。眠れないのですか?」 「鷹丸さん・・・」 寝巻き姿の鷹丸・・・。 「そうだ・・・。天守閣の方にいらっしゃいませんか。月がとても綺麗に見えるのです」 「・・・でも・・・」 「・・・。私は貴方に警戒されているのかな・・・」 「そんなこと・・・」 「・・・貴方をはじめてみたとき・・・。亡くなった母によく似ていて 驚きました・・・。だからなんだか急に親近感が沸いて・・・」 寂しげな鷹丸の瞳にかごめはなんだか気になった。 「・・・。今日の月は優しい光だから少し見てみようかな・・・」 「ほ、本当ですか?」 「はい」 「よかった!じゃあ行きましょう」 かごめの手をとり、自分の部屋につれていく鷹丸・・・。 一瞬、ニヤッと不適な笑みを浮かべたことにかごめは気がついていなかった・・・。 ・・・無論、外の嫉妬男もひょいっと天守閣の屋根まで 移動。 (あの野郎・・・っ。かごめをどこに連れて行くつもりだ!) 「わぁっ・・・。いい眺め・・・!」 天守閣からは城下町が一望できる。 静かな城下・・・。 月明かりが平和な夜を醸し出す・・・。 「・・・幼いとき・・・。私も眠れない夜はここから母と つきを見ました・・・」 「そうなんですか・・・」 「貴方とこうして巡り合ったのもきっと母の導きだと思うんです。 かごめ様・・・」 鷹丸はかごめの手をとりじっと見詰める・・・。 「・・・。突然の申し出ですが、私の妻になってくださいませんか・・・?」 「えッ?」 「貴方をひとたび見たときから・・・。私の心は貴方に捕らわれてしまった・・・」 ぐっと顔を近づける鷹丸・・・。 かごめはさっと鷹丸から離れた。 「ごめんなさい・・・。私には使命があるんです・・・。それに・・・」 「・・・お連れあの赤い衣の方ですか・・・」 「・・・」 かごめはうつむく。 「・・・。でも、もう貴方に選択の余地はないのですよ」 「え・・・?」 急に優しかった鷹丸の声のトーンが変わった。 「貴方はもう私から離れることは許されない・・・」 「ど、どういうこと!?」 かごめは手の甲の見慣れぬ十字の模様に気がつく。 「な、なにこれ・・・!」 「私と貴方の永遠の絆の印・・・。私以外の男が貴方に触れる とその男は死す・・・」 「なっ・・・」 鷹丸は油断したかごめに迫り、口元をくいっとあげられ・・・。 (い、犬夜叉ー!) バキッ!! 「犬夜叉!」 どこからかとびでてきた犬夜叉の拳で鷹丸が吹っ飛んだ。 「てめぇ・・・っ。優しそうな面してかごめに何しやがるっ」 「・・・。そちらこそ。私とかごめ様の口付けを邪魔して・・ どうやら貴方は口付けさえまだのようですね。ふっ。なら、私の方が先にいただきますよ」 「なっ・・・(激怒)」 「まぁ最も・・・かごめ様に貴方は触れることさえできないでしょうがね・・・ふふ・・・」 鷹丸の不適な笑みが 犬夜叉とかごめに向けられた・・・
クエスト一位「犬に新しいライバル出現でかごめ争奪戦」。 かごめ争奪せんときたらばですね、やっぱりかごちゃんの唇争奪戦しか 思い浮かばなかった自分です(いや浮かんだのは、唇以上だろ) 嫉妬犬は書いていて気持ちが良かったです。 でもそれだけ妬くならもっとかごちゃんにアタックしてほしい って思います。 ええ、もう体ごとどーんと・・・・・(ふしだらな妄想は果てしなく) 後編もがんばりますのでよろしかったら、目を通してやってくださると 嬉しいです(^^)