犬かご小説(内容)リクエスト 第5位 人魚姫ネタ(悲恋風)
「リトル・マーメイド・カゴメ」
そこは人間が誰も近寄らない
”人魚伝説”が伝わる小さな島。
マーメード島。
その島に15年前。
転覆した船・・・小さな布にくるまれた赤子が
この島に流れ着いた。
「なんと・・・まぁ・・・」
その赤子を拾い、育てたのが・・・
”魔術師・カエデ”。超一流の腕をもつカエデは
30年前、とある罪から、この島に流刑されたのだ。
「・・・おばあちゃん!今日はいっぱいお魚とれたわ!」
「・・・かごめ。海岸へはあまり行くなというておろう」
「ごめんなさい!でも今日は浅瀬に魚がいっぱいいたから・・・」
15歳の黒髪の美しい娘に成長したカゴメ。
生まれ持った運動神経で海に入ればまるで本物の人魚のように
泳ぎもぐる。
「おばあちゃん。今日は椰子のみジュース?」
「ああ」
「ナイフじゃなくて魔術でぱぱっと割っちゃえばいいのに」
きっとかごめを睨むカエデ。
「かごめ!滅多なことを言うもんじゃない・・・。
魔術はね・・・。自分のために使うんじゃないよ・・・。」
「は、はい・・・ごめんなさい。おばあちゃん・・・」
魔術のことを口にすると昔から怒るカエデ。
(魔術が嫌いなのかな・・・。それとも・・・。何かつらい
過去でも・・・)
かごめはカエデが何物なのか詳しいことは知らない。
(いいの。だっておばあちゃんがいてくれれば
私は幸せ・・・)
自分の本当の親の顔もしらない。
この島に流れ着いてそだてられたということしかしらない・・・。
ただ・・・。かごめにはなにやら不思議な力が宿っている。
子供の頃・・・
日照りが続いたこの島に、雨がふってほしいとかごめが
泣くと雨が降ったことも・・・。
(この子は・・・高い魔力を秘めている・・・)
”絶対にその力は使うんじゃない・・・!!”
カエデに固く禁じられ、胸のペンダントがその封印の証だ。
(・・・おばあちゃん。私いい子にするから・・・。だから
長生きしてね・・・)
かごめの家族はカエデだけ・・・。カエデの哀しむことはかごめは絶対にしない。
「おばあちゃん!私、椰子のみとってくるね!」
かごめはペンダントをぎゅっと握り締めて海岸へ行く。
(椰子の美ジュースを作って元気にしてあげよう)
そう思ってかごめが砂浜に行くと・・・
「あれ・・・?」
ザザン・・・。波打ち際に流れる銀色の・・・髪・・・
(ひ・・・人・・・?)
かごめが静かに近づくと・・・
(やっぱり・・・。人だわ!)
赤いマントに・・・腰には剣を据えた銀髪の少年が
倒れていた。
「あ・・・あの・・・」
かごめは恐る恐る揺さぶってみる・・・
「・・・う・・・」
「・・・!」
かごめはビクっと肩をすくめた。
”いいかい!?かごめ。島の外の人間は・・・。
絶対に関わっちゃだめだ!お前は幸せになれない!”
カエデの言いつけが頭を過ぎる。
(・・・でも・・・。この人はこのままでは・・・
死んでしまう)
関わってはいけないが、命を助けてはいけないとは聞いていない。
「・・・う・・・ぐ・・・」
(・・・胸に傷が・・・。化膿してる・・・)
少年の胸と背中には大きな切り傷が・・・。
「キ・・・キョ・・・」
「え?何・・・?」
かごめは耳を当てて聞く。
「キキョウ・・・」
(キキョウ・・・??)
「キキョウ・・・」
(・・・。なんて・・・切ない・・・声で・・・)
「ゴホゴゴゴホッ!!!」
激しく咳き込んで水を吐き出す少年。
(もっと吐かせなきゃ・・・!)
「よ・・・ッ」
かごめは少年を背負う。
衣服に水がしみこんでいるせいもあり重く・・・
(ああ重い!軽くならないかな)
ふわッ
(・・・!?)
少年の体がまるで布のように軽くなって・・・。
「・・・。ヘンなの・・・。まあいいわ。とにかく運ばないと!」
少年を家につれてかえり、自分の部屋のベットに寝かせた。
当然、カエデは激怒してかごめに怒鳴って尋ねた。
「かごめ!!そいつは誰だい!??」
「分からない。打ちあげられていて・・・」
「すぐ海に捨ててきな!!島の人間じゃない奴に
関わるとろくなことがない!!」
カエデは少年の顔の上に手を広げ、呪文を唱えようとした。
その顔はかごめが一度も見たこともない憎悪に満ちたカエデの顔・・・。
「駄目よ!!まだ生きてるわ!!」
「離せ!かごめ!」
「いや・・・!!私見たくない・・・!!私の大好きなおばあちゃんは
怪我している人を見捨てるわけがない・・・!」
(お願い!おばちゃん!!)
カエデの腕にしがみつくかごめ・・・
「・・・!?」
(・・・じゅ・・・呪文が・・・言えん・・・)
”瞬間移動”の呪文で少年を海へ戻そうと思ったカエデだが
その呪文の言葉が・・・声に出ない。
(かごめの・・・力か・・・)
「お願い・・・やめておばあちゃん・・・お願い・・・」
目に涙をためてカエデの腕にしがみつくかごめ・・・
「・・・。わ、わかったよ・・・。仕方ないね・・・」
「おばあちゃん・・・」
「その代わり・・・。そいつの怪我が治ったら・・・
すぐにここから一番近い街へ飛ばす・・・。いいね?」
「・・・わかった・・・。ありがとう」
こうして・・・。かごめは銀髪の少年の看病をすることになった。
少年の傷は思ったより深く・・・
傷口はなかなか治らなかった。
一週間経っても意識は戻らなかった。
「うぐ・・・ッ。キキョウ・・・キキョウ・・・!」
「あ、暴れちゃだめよ!!」
うわごとのように”キキョウ”という言葉を連呼し・・・
かごめはつきっきりで看病。
”傷を治す魔術”かごめはそれをカエデに頼のんだが
「傷が深いなら高度な治癒魔法が必要だ・・・。ワシは
もうそんな魔術は忘れた。自力で治らないようなら、
その男の運命だよ」
と、突き放された。
(直して見せるわ・・・!)
何度も何度も包帯を代え、水も飲ませ・・・
(死なせたくはない・・・。この人を)
そして十日目の朝。
「・・・ん・・・」
少年が意識を取り戻した。
(よかった・・・!)
かごめは安堵したが・・・
「キキョウ!??お前死んだんじゃ・・・」
少年はかごめの顔見るなり驚いて飛び起きた。
「え?何いってるのよ。私はかごめよ」
「・・・か・・・ごめ・・・?」
「そうよ。私はかごめ。ここはマーメード島。
あなた、打ち上げられてたのよ」
少年はようやく我にかえったのか、かごめの部屋を見回す・・・。
(そうか・・・オレは・・・船から落ちて・・・)
思い出す記憶。
「ねぇ。貴方の名前は?」
「・・・。てめぇに関係ねぇだろ」
かなり口が悪い少年。かごめは三日三晩看病したのに
少年の態度の大きさにカチンときた。
「助けた人間に向かってその言い草は何?
名前ぐらいいえないわけ?だだこねてんじゃないわよ?ふんッ!」
「・・・!!」
お冠のかごめにちょっとびびる少年。
(こ、コイツ・・・(ドキドキ))
「・・・い、イヌヤシャ」
「え?い?」
「犬夜叉ってんだ!名前・・・!」
「・・・イヌ?イヌ・・・ヤシャイヌ・・・」
かごめはじーっと犬夜叉の顔を見た。
「ぷくくくっくっく・・・!!犬っぽそう!!ほら、弱い犬ほどよく吠えるって
いうでしょ?アハハハ」
「・・・!!て、てめぇ!!グッ・・・!!」
怒りにかかった犬夜叉だったが、傷口が響いて・・・
「・・・寝てなきゃだめでしょ?」
(・・・!)
かごめはそっと犬夜叉を寝かせる・・・。
(う・・・///)
そのとき、かごめの服の胸元がちらっと見えちゃいまして・・・。
(///ってなんでドキドキすんだ)
それに
背中に添えられた手が・・・
やけに温かく犬夜叉には伝わって・・・
「よーやく傷口が塞がりかかってるんだから動かないの。
それに骨折もしてる」
「・・・う、うるせぇ///」
「ふふ。ほーんと、生意気な子犬ね。あとは
体力をつけて・・・骨がくっつくの待つだけね。
何か美味しいものつくってくるわ」
「・・・けッ」
かごめが部屋から出て行く・・・。
犬夜叉はぼうっと天上を見上げる・・・。
一瞬、死んだはずの桔梗が蘇ったのかと思った。
(・・・。生意気な女だ。やっぱキキョウとは別人だ)
桔梗の手はあんなに温かくはなかった。
(そういえば・・・)
意識を失っている間・・・
手には心地いいぬくもりが在った気がする。
(・・・かごめ・・・か。ヘンな女)
「お前は王家ゆかりの者だな?」
「・・・!ば、バケモノ!!」
バキ!
杖で頭に一発いれられた犬夜叉。
突然のカエデの登場に犬夜叉、失礼な一言でご挨拶。
「イテテ何すんだババア!」
「その剣は『テツサイガ・・・』この世の
あらゆるものを切るという・・・」
「!?ババアどうして知ってやがる・・・!?」
「・・・。こちらの質問が先だ。それに・・・桔梗というのは・・・
もしや”王家直轄魔術仕官の桔梗”ではないか?」
「!!て、てめぇ・・・なんで・・・ッ」
(やはり・・・。桔梗姉さまことだったか・・・)
カエデは犬夜叉の素性が大体察しが付いた。
「・・・。質問は終わりだ。怪我が治るまではここに
置いてやる・・・。だが治ったらすぐに、本島に瞬間移動魔法で
送り返す・・・。いいな?」
「あ、ちょ、ちょっと待・・・」
バタン!!
カエデは物凄い形相で犬夜叉を睨んで出て行った・・・。
(なんであのババア・・・。キキョウのこと・・・。
知っているんだ・・・)
首を傾げる犬夜叉。
一方カエデも・・・。
(・・・。キキョウ姉さま・・・が・・・)
30年前・・・。カエデをこの島に流したのは姉の桔梗。
カエデと桔梗は王家直轄の魔術師で、
それも、国の魔術師を全て総括する司令官でもあった。
”カエデ・・・。すまぬ。これもこの国のためだ・・・”
”姉さま・・・いいのです。私は王家になど
執着しておりませぬ”
”・・・。すまぬ・・・”
(桔梗姉さま・・・)
『禁断魔法』を使い、桔梗が得たのは
膨大な魔力と蘇生能力が高く老いがない肉体。
長期間、王家に使えるために桔梗が選んだ道だった。
だが・・・。
犬夜叉は桔梗が死んだといっていた。
しかし、蘇生能力の高い体を得た桔梗が簡単に死ぬはずはない。
(・・・姉さま・・・。一体何があったのです・・・)
「・・・。かごめ・・・。どうやら・・・。お前があの
男を助けたのは・・・。運命なのかもしれぬ・・・」
カエデは空を見上げた。
・・・何かが起こりそうな予感と共に・・・。
それから犬夜叉の怪我は日を追うごとに治っていった。
「は!?なんで俺が後片付けを!?」
「あったりまえでしょ!あんた居候なんだから」
キッチンで犬夜叉に皿をもたせるかごめ。
「お、オレはけが人だぞ!?」
「足だけでしょ?手は動くんだからハイ、あの
お皿、戸棚に置いて。それとも何?アンタは
剣は強いのにお皿ぐらい片付けられないのー?」
「そ、そんな訳あるか!」
「じゃ、おねがいしまーす!」
かごめはにこっと犬夜叉に笑いかける。
(な・・・なんて女だ!)
悔しいのにかごめの笑う顔を見ると、何故か反抗できない。
「おーい。犬夜叉ー。はい。お魚、かごにいれて」
「・・・(怒)て、てめぇ・・・。お、オレは飼い犬じゃねぇぞ」
「いーじゃないの。はい、おすわり」
「・・・(汗)」
かごめが隣に座ろうといわんばかりにポンポンと砂浜を叩く。
(なんで言うこと聞いちまうんだろう(汗))
浜辺にちょこんと並んで座るかごめと犬夜叉。
「ふふ。大分元気になったわね」
松葉杖も、片方だけになり胸の傷口もほとんど塞がった。
「けっ。オレはじょーぶな体なんでい」
「ふーん・・・ねぇ。ひとつ聞いてもいい?」
「なんでい」
「”キキョウ”って・・・もしかして貴方の好きな人?」
「・・・!!」
かなりピンポイントをついた質問だったのか犬夜叉の顔は
一片に変わった。
顔が”これ以上聞くな”といっている。
「・・・あ、ご、ごめん。うわ言でなんども呼んでいたから・・・」
「・・・。桔梗はオレのせいで死んだんだ・・・」
「死んだ?」
「・・・。うるせぇ!!てめぇには関係ねぇ!!黙ってろ!!」
(・・・。やっぱり凄く・・・好きだったんだ・・・)
犬夜叉の切なそうな顔に・・・
かごめの胸が何故だか痛んだ。
「・・・ごめんなさい・・・。もう聞かないから・・・」
かごめは俯いて足を抱えた。
(・・・。ちょ。ちょっと怒鳴りすぎたか(汗))
「・・・。べ、別にかごめが落ち込むことはねぇ」
「・・・あ!」
「??」
犬夜叉の顔をじーっと見つめるかごめ。
(そ、”その顔”で見るんじゃねぇよ)
「やっと言ってくれたね!私の名前!」
「はぁ?」
「ふふ。嬉しいなッ♪」
にこっと笑って犬夜叉の目を覗き込んだ。
「・・・(汗)そ、そんなことが嬉しいのか」
「うん!だって嬉しいじゃない。うん」
「・・・けっ・・・。勝手に喜んでやがれ」
「うん。喜ぶ・・・☆」
かごめは嬉しそうに砂浜に木の棒で名前を書く。
「ねぇ。犬・夜・又・・・ってこれで字、あってる?」
「オレは字はしらねぇ」
「そう・・・。じゃおあいこだね☆私もあんまり
書けないんだ。へへ」
(・・・///)
ぺろっと舌を出して笑うかごめにちょっとトキメキ☆
(わ、わからねぇ。コイツの心が・・・)
変なことで喜んだり
妙に怒ったり・・・。
ただ感じるのは・・・かごめのそばは・・・心地いい・・・
ということ。
「ふふ。今日はご馳走にしよーね。犬夜叉」
「けっ。知るか!!」
波打ち際で
楽しそうに話す二人の様子を・・・カエデが複雑な顔で
見守っていたのだった・・・。
その夜。
ザワ・・・
波が荒立つ・・・。
(・・・!)
不穏な気配を感じ目を覚ますカエデ。
(この・・・波動は・・・!)
同時に犬夜叉も目を覚ます。
(・・・この気配は・・・!)
ガタタン!!
犬夜叉とカエデは同時に砂浜へ走った。
「・・・!き・・・桔梗・・・!!」
「姉さま・・・!!」
夜の波に浮かぶ・・・
白いドレス姿の・・・美しい女。
それはかつて妹をこの島に流した姉の桔梗
そして犬夜叉にとって・・・死んだと思われていた
想い人・・・
その姿は・・・
月明かりに照らされ・・・
(桔梗・・・。桔梗・・・)
せつない想いが蘇る・・・
「・・・犬・・・夜叉・・・」
「桔梗・・・。桔梗・・・。生きてたんだな・・・」
「・・・犬夜叉・・・」
犬夜叉を手招きする桔梗・・・
(い・・・いかん!!あれは・・・幻じゃ!!)
カエデが犬夜叉を止めようと呪文を唱えよう杖を握ったが
(・・・!)
体が動かない・・・
(・・・結界と・・・呪文をかけられたか・・・!!)
人形を通して・・・
結界を張るほどの高度な魔術を操れるのはただ一人・・・
(姉さましか・・・おらん・・・ぐッ・・・)
「・・・犬夜叉よ・・・」
「桔梗・・・桔梗・・・」
犬夜叉の目が・・・
赤く染まっていく・・・
(まずい・・・。あの男が・・・海に引きずりこまれる・・・!!)
ピチャ・・・
ピチャ・・・
犬夜叉は・・・ゆっくりと波の上に浮かぶ桔梗へと近づいていく・・・
「・・・オレの・・・桔梗・・・」
「行っちゃ駄目ーーー!!!」
(・・・!?)
かごめと声と共に結界が解けた。
「犬夜叉!!おばあちゃん!!大丈夫!??」
「かごめ・・・」
「あの透明な影は・・・。魔術ね!?」
「かごめ・・・お前・・・」
(結界を・・・破ったのか・・・)
「おばあちゃんは怪我ないわね!!」
「あ、ちょ・・・」
かごめは海に入っていく犬夜叉の腕を掴んで止めた。
バシャバッシャッ!!
「犬夜叉!!目を覚まして!!」
「・・・離せ・・・。オレは桔梗と逝く・・・」
「きゃあぁ!!」
かごめを突き倒してなおも桔梗の幻影に手を伸ばす・・・。
「桔梗・・・桔梗・・・」
「犬夜叉駄目よ!!気がついて・・・!!」
”犬夜叉よ・・・。私と共に逝こう・・・”
犬夜叉の耳には・・・桔梗の声しか聞こえない・・・
「桔梗・・・桔梗・・・」
犬夜叉のかすれる声・・・。
桔梗を求めてやまない・・・
だが目の前の桔梗は・・・
赤い目の・・・幻影・・・。
(駄目・・・。行っては・・・。行っては・・・)
「行ってはだめぇッ!!!!」
ザシュッ!
「・・・!?」
触れ合おうとしていた犬夜叉と桔梗の手を
何か光が放って邪魔をした。
「・・・桔・・・梗・・・」
「犬夜叉・・・!!」
犬夜叉は気を失い抱きとめるかごめ・・・
「しっかりして・・・!」
(はっい・・・いかん!!)
幻影の桔梗が・・・かごめと犬夜叉に向かって魔道波を放った
「かごめ!!!」
(おばあちゃん!!)
バシッ!!
かごめと犬夜叉を庇うようにカエデに魔道波が
直撃!!
「おばあちゃん!!」
「・・・かご・・・め・・・」
「あ・・・!血が・・・」
カエデの背中には・・・
黒い大きな穴が開いて・・・
かごめの膝にカエデの体がどすっと倒れた・・・。
(いや・・・いや・・・いやぁああ!!!)
「いやぁあああッ!!!」
カッ!!!!
マーメード島の
砂浜が
瞬間すさまじい光に照らされた
闇に一瞬発光した
光・・・
・・・気がつけば朝陽が・・・
※
(ん・・・?)
ザザン・・・
波の音と・・・潮の香り・・・
かごめが目覚める・・・
(私・・・あ・・・!!)
真っ黒い穴が開いたカエデの背中が浮かんだ。
「おばあちゃん!!」
ガタン!!
ベットから這い出るかごめ。
「おばあちゃん!!どこ!?」
家中さがしまわるがカエデの姿見えない。
「おばあちゃん!!」
外に出る・・・
すると・・・
「・・・おばあちゃん!!」
犬夜叉のマントをかけられたカエデが横たわっていた・・・
「おばあちゃん!!お願い目を開けて!!おばあちゃん!!」
「・・・心配すんな。生きてるぜ」
「・・・!犬夜叉・・・」
かごめはカエデの首の脈を確かめた。
(・・・脈がある・・・。生きてる・・・!!)
「おばあちゃん・・・!!よかった・・・」
カエデを抱きしめるかごめ・・・。
(そういえば・・・。カエデおばあちゃんの怪我は・・・)
「・・・貴方が助けてくれたの・・・?そういえば
桔梗の分身は・・・?どうなったの?」
「・・・しらねぇ。気がついたら朝だった。そんでばばあに
息はあって・・・。お前は気を失ってた」
犬夜叉が目覚めたときには
桔梗の分身はおらず・・・
(・・・かごめの体が光って・・・。なんか髪の色が変わって・・・)
薄っすらと
あの大きな光の瞬間を覚えている。
(・・・あの光は・・・魔法でもねぇ・・・。この女・・・一体・・・)
「ありがとう・・・犬夜叉」
「な、なんだよっ」
「貴方がいてくれて・・・。心強かった・・・」
「べ、別に・・・。そ、それにば、ばばあが
怪我したのは俺のせいだ・・・。桔梗が俺の居所をつきとめたから・・・
恨むなら俺を恨め・・・」
犬夜叉は少し申し訳なさそうにつぶやいた。
「・・・。うらんでなんてないよ。ともかくありがとう・・・」
「けっ・・・」
(いいって・・・。なんか体がくすぐってぇ・・・)
かごめの笑顔は
なんだかくすぐったくて・・・。
「・・・年寄りの前でいちゃついてるんじゃないよ」
「!おばあちゃん!!よかった!!」
カエデが気がついた。
「私・・・。おばあちゃんの体に穴あいちゃって・・・
どうしようかと・・・」
「・・・。かごめ・・・直したのはお前だよ」
「え?違うよ。私は何も・・・」
「お前の力はどうやら・・・強く念じると・・・。
発揮されるらしい。それも魔力の種類は未知だ」
大抵、魔法は人の性格が違うように
魔力もムキ不向きな魔法の種類がある。
攻撃系が得意な体質のもの、治癒系が得意なもの・・・。
だがかごめの力はどれにも当てはまらない。
「私に力なんて・・・。それよりおばあちゃんが助かった
ならいいの・・・」
(かごめ・・・)
可愛い娘。
たった一人、この孤島にながされ、寂しかった日々。
それがかごめと出会い家族が出来た。
(だが・・・。可愛い子には旅をさせよ・・・という暗示か)
「犬夜叉よ。かごめを連れて・・・。本島へ行ってはくれまいか」
「え!?何言ってるの、私はここにいる!!」
「かごめ。良くお聞き・・・。お前は自分が何者か知る
必要がある・・・。それに桔梗姉さまのことを調べてきてほしいのじゃ」
「おばあちゃん私・・・」
カエデはかごめの手を握った。
「かごめ・・・。人には親元を離れる時期が必要なんじゃ・・・。
今がかごめそのときじゃ。親の願いだと思って・・・。
聞いておくれ」
「おばあちゃん・・・」
カエデの必死な申し出に・・・
かごめは頷くしかなかった。
本当は離れたくない。
(おばあちゃんには・・・何か決意があるんだわ。
それに桔梗とやらがまた襲ってくるなら・・・ちゃんと立ち向かわなきゃ!)
カエデの決心を感じたかごめ。
こうしてかごめは犬夜叉と共に本島へ行くことになった。
「ババア。てめぇの魔法でひとっとびできねぇのか」
「やかましい。傷はなおっても体力がないんじゃ。瞬間移動魔法などしたら
心臓がもたん」
なにやら分厚い絨毯。
「けっ。こんなおんぼろ布じゃあ・・・沈んじまうぜ」
「ばか者。これは空を飛ぶ絨毯。さらにワシの魔力を
加えると・・・」
カエデは呪文を唱え、絨毯につん!と杖を
つついた。
すると・・・。
「何もかわってねぇじゃねぇか」
「ふん。ワシの得意分野は結界魔法。
3日は雨風も水にも大丈夫じゃ。それにそこいらの船以上のスピードもある。
2日もあれば本島が見えてくるじゃろう」
そしていよいよ・・・絨毯に乗り込むかごめと犬夜叉。
「かごめ。これを持て」
「なあに?」
小さなコンパクト。
王家の紋章がはいっている。
「あけるとワシの家とつながっとる。会話することも出来る代物じゃ。
万が一、その無骨者が何かしてたらすぐワシにしらせのじゃぞ」
「だっ誰が何をするってんだ・・・///」
何故か赤面している犬夜叉。
「おばあちゃんありがとう・・・。じゃあ行ってくるね・・・」
「気をつけて・・・。犬夜叉よ。かごめを頼む」
「けっ。足手まといになったら捨ててやる」
ドカ!!
杖でどつかれる犬夜叉。
「頼りにはならんじゃろうがかごめ、犬夜叉と仲良く
な」
「わかった・・・。じゃあおばあちゃん元気でね。絶対に
帰って来るから」
「ああ・・・。ああ待っておるぞ・・・」
カエデを抱きしめるかごめ・・・。
ぎゅっと握った手鏡を胸に
かごめと犬夜叉は絨毯に乗り込んだ。
絨毯はふわふわと浮き上がり島が小さくなる。
「おばーちゃーーん!!体に気をつけてねーーー!!」
かごめは砂浜から手を振るカエデに何度も叫ぶ。
カエデが見えなくなるまで・・・
犬夜叉とかごめを乗せた絨毯は
風に乗りかなりのスピードで青い青い空をかけぬける。
「あーあ・・・。島がみえなくなっちゃった・・・」
「けっ・・・。大げさな・・・親子だぜ。今生の別れじゃ在るまいし」
「アンタにはわかんないわよ!!私にとって・・・家族はおばあちゃんだけ
なんだから・・・」
「けっ。あんな、本島に行ってみろ、親のいねぇやつなんざ
ごろごろいるぜ。てめぇはぬくぬく誰もいねぇ島で育ったんだろーが」
「・・・」
かごめは俯いて無言になってしまった。
(・・・やばい・・・いいすぎたか・・・)
「・・・お、おい・・・(汗)」
「・・・ねぇ犬夜叉。本島って・・・どんなところ?」
「あ?ああ・・・でけぇ街だぜ。オレは嫌いだけどな」
「どうして?」
「差別があんだよ・・・。本島じゃ力と金のないやつは人間扱い
されねぇ」
犬夜叉は腕を組んで少し怪訝な顔をした。
思い出すのは・・・
幼い頃のこと。
「そうなの・・・。でも私は心配してないわ」
「なんでだ」
「だって・・・。犬夜叉がいるから」
「・・・なッ(照)何言ってんだ」
犬夜叉、照れくさそうにかごめに背中を向けた。
「一人じゃ不安だけど・・・。犬夜叉がいるから
安心してるの。守ってくれるって」
「・・・だ、誰が守るって言ったんだ」
「・・・違うの・・・?」
(う・・・///)
かごめの澄んだ瞳は・・・犬夜叉に言わせる
二人のキーワードを
「し・・・。仕方ねぇな・・・。ついでだ。
ま、守ってやるか・・・」
「うん!ありがとう!私も足手まといにならないように
頑張るね!」
(///)
こうもあどけなく素直に笑顔で言われると
反抗するキモチもうせる犬夜叉・・・。
「ふぅあああ・・・。なんか眠くなってきちゃった。
犬夜叉、番してて」
「な、何!?て、てめぇ、寝るんじゃ・・・」
「スー・・・」
犬夜叉の膝を枕に体を九の字してすやすやねむるかごめ。
かごめの寝顔に・・・犬夜叉、起こせず・・・。
(///し、しかたねぇ・・・。番しててやるか)
結界のせいか・・・かごめのいい匂いに包まれて
(優しい匂い・・・俺も・・・なんか眠い・・・)
うとうと・・・
犬夜叉の瞼も閉じて・・・
青い空・・・
雲の間をふわふわと・・・
空色の絨毯が飛ぶ・・・
まるで眠る二人のゆりかごのように・・・。
こうして
ちょっと不思議な力を持つ少女かごめと
乱暴ものだが優しい少年犬夜叉の物語が始まった。
絨毯は一路
本島の首都・センゴクへ向かう・・・。
二人の話はまたいつか・・・
FIN
・・・悲恋風になれずにすいません(汗)
かごめちゃんが人魚姫っぽくて、桔梗が魔法使いで犬夜叉が王子で・・・って色々設定を盛り込んでみたところ、
なんか世界観がでかくなってしまい、ラストが
続きものっぽくなってしまいました(汗)
余力があれば、世界観をもっと広げて続きを書いて見たいと思います。
とりあえずは、リクエストありがとございました(ペコリ)