犬かご小説リクエストタイトルアンケート 「淡い光りを心に抱いて」 雨が降る。 久しぶりに二人きりで散歩に出かけた犬夜叉とかごめに 空は雨宿りを促した。 「あ、あそこに洞窟がある・・・!」 二人は誰かに背中を押されるようにその洞窟に 入った。 (この洞窟は・・・) 雨は犬夜叉に遠い過去の蜜月を思い出させる。 「ふぅ。雨酷かったねー・・・」 「・・・」 何の変哲もない洞窟の中をなんとも懐かしそうに ・・・切なそうに見渡している・・・ (・・・犬夜叉・・・。その”顔”は・・・) もう一人の巫女を思い浮かべている顔・・・だ・・・。 「・・・犬夜叉・・・」 「・・・!あ、ああ」 「はい・・・タオル・・・」 犬夜叉は心、此処にあらず・・・ かごめはあえて気がつかないフリをした・・・ お互いに濡れた体をタオルで拭く・・・ 背を向けて・・・。 (かごめ・・・) 微妙な空気が流れる・・・。 互いの背中をちらりと見詰め合う。 かごめの背中が・・・ 犬夜叉を拒否していた。 (犬夜叉・・・) 犬夜叉の背中も・・・ かごめを拒否していた 何か・・・ この空気を変えなくちゃ・・・。 かごめは必死に話題を探した。 「・・・あ・・・!犬夜叉・・・!奥に道があるみたい・・・!」 「え?」 奥に二手に分かれた道が見える。 先はそんなに長くはなさそうで・・・ 「行ってみよう!私、右に行くね」 「あ、ちょっとかごめ・・・!」 「犬夜叉は左・・・!きっと行き止まりで繋がってる みたい。ふふ。先で会おうね」 かごめはすたすたと先へ行く。 「ったく勝手に行くなよ」 犬夜叉は左の穴に・・・。 (ったく・・・。一体どういうつもりなんでい・・・) 気まずい空気になったと思ったのに 急に元気になって・・・。 (わかんねぇな・・・) とぼとぼと・・・一人で・・・歩く・・・ 「ねー。犬夜叉ー・・・いるー?」 「え?あーいるぜー」 薄い岸壁の向こう。 互いの声は確かに聞こえる。 「お前、ころぶんじゃねぇぞ」 「うん。懐中電灯あるからだいじょーぶ」 声は確かに聞こえるのに・・・ (犬夜叉・・・) (・・・かごめ・・・) どこか遠く感じる・・・ 同じ方向に進んでいる 別々の道を・・・ 同じ方向だけど・・・ 心は・・・ (・・・かごめ・・・何考えてんだろ・・・) (犬夜叉・・・) 薄い壁・・・向こうでどんな顔をしているのだろう・・・? そして行き止まりについた・・・ 「犬夜叉・・・行き止まりだね・・・」 「お、おう・・・」 互いの声を確かめあうよに 薄い壁に手をあてる。 向こうに好きな人がいる。 確かにいるのに 隔てているのは薄い壁なのに 簡単に壊せない”壁” (・・・犬夜叉は・・・今、私のことなんて考えてないんだろうな・・・) (かごめ・・・まだ怒ってんのかな・・・) 顔がみたい。 うすっぺらい壁。 拳一つで壊せるのに・・・ 「・・・あ・・・」 足元に小さな穴をみつけたかごめ。 しゃがんで覗くと犬夜叉の足がみえた。 「ふふ・・・。おーい。裸足のそこの君」 「ん!?な、なんだ!?」 犬夜叉はキョロキョロして声の出所を探す。 「こっちだよー!二股君」 「・・・(汗)」 声の出所に気づいて、穴を犬夜叉も四つんばいになって 覗く。 「かごめ。おめぇ、何やってんだ」 「ふふ・・・。犬夜叉の目、綺麗だね」 「・・・な・・・///」 犬夜叉の瞳にも映る。 ・・・かごめのやさしい瞳が・・・ 「ね、握手しよ」 かごめはすっと肘ぐらいまで穴に手を通した。 「こ、子供みてぇことすんじゃねぇよ」 「いーじゃないの。なんかこういうの新鮮」 「・・・ったく・・・」 照れくさそうに犬夜叉もかごめの白い手を握った。 (・・・やっぱり・・・あったけぇな) 何度握って 何度そのぬくもりに励まされたか (・・・顔がみてぇ・・・) 手だけじゃ足りない。 薄暗い洞窟。 かごめの笑顔に照らされたい。 「・・・かごめ。ちょっとそこ、どいてろ」 「え?」 「この壁、ぶっこわす」 犬夜叉は拳を握って 「うりゃ!」 ドゴ! 自分の背丈ほどの穴をあけた。 砕けた小石が天上から落ちてくる。 「ったく犬夜叉ったら乱暴なんだから」 「けっ。うるせー」 早くこんな壁壊してかごめの顔が見たかった。 ・・・とは言えない犬夜叉。 「・・・おい。帰るぞ。帰りは一本道だ」 「うん」 犬夜叉は手を差し出す (・・・犬夜叉から握ってくれた・・・) 細い道を戻る。 少しだけユックリ目に 来るときは別々の道でも最後は一緒・・・ (・・・心もそうだといいな) かごめはそう思って犬夜叉に身を寄せるように歩く・・・ (かごめ・・・) 肩のあたりを見下ろすと かごめがにこりと微笑み返してくれる・・・。 (・・・かごめ・・・) ・・・堪らない どうしてこの笑顔にあたたかい幸せを 感じるのだろう 死ぬほど愛しい 「・・・犬夜叉。ちゃんと前見て歩かなきゃ」 「・・・!わ、わかってらぁ///」 (・・・仕方ねぇだろ。目が勝手に・・・) 勝手に求めてしまう。 微笑み かごめかごめかごめ ・・・かごめ 死ぬほど愛しい その名前 たった一人の暗闇で、みつけた小さな光り 希望と言う名の・・・。 「あ・・・。入り口、見えてきたね」 ゆっくりと・・・。入り口の小さな光りが見えてくる・・・ 暗い道でも 光りを頼りに二人で歩けば怖くない (かごめがいるから・・・) 外に出ると雨はもう既に上がっていて・・・ 雲の間から青空が見えた。 「・・・雨上がりの青空もいいね・・・」 「・・・」 けれど犬夜叉は空よりもダイスキなのは・・・ (・・・かごめの笑った顔の方がいい) 空を嬉しそうに見上げるかごめ。 「・・・かごめ」 「ん?」 「・・・。かごめ」 「なあに?」 何度も呼びたい。 何度も笑って・・・? 「かごめ・・・」 「だから何よ」 「う、うっせぇな・・・///。呼びたかっただけでい。 悪いか!」 (犬夜叉・・・) ぶっきらぼうな少年はそれが精一杯のILOVEYOU。 ”好きだ”も聞きたいけれど 犬夜叉らしい言葉のほうが想いは伝わってくる・・・ 「・・・犬夜叉」 「なんでい」 「うふふ。私も呼んでみたかっただけ。犬夜叉が振り向いてくれるから・・・」 「///けっ・・・」 雲の合間から光り差す・・・ 淡くて優しい光りは ピュアな二つの恋心を照らす・・・ いつもでも いつまでも・・・