戦国時代のシンデレラ
〜口付けの罠〜
中編


「て・・・てめぇ・・・。かごめに何しやがった・・・」



「・・・特に何も。ちょっとまじないをしただけさ」



「ま、呪いって・・・」



鷹丸を睨む犬夜叉をなだめようとするかごめ。






犬夜叉の着物をつかもうとするが・・・。





「いぬ・・・」







突然気を失って倒れこんでしまった!




「かごめ!?」


かごめを起こそうとするが




バチッ・・・!




「!?」



結界のようなものにはじかれてしまった・・・!







「言ったでしょう?私以外の男はもう触れられないと・・・。さらに
かごめ様にはもう一つ呪いが・・・」



犬夜叉はすごい剣幕で鷹丸の着物を掴んだ。



「てめぇ・・・っ。いい加減にしやがれ・・・。人間だからって手加減
しねぇぞ・・・!!」



「・・・私を殺したらかごめ様は永久に目を覚まさない」



「な・・・」


「かごめ様が目覚めさせることができるのは私だけ・・・。貴方がかごめ
様を諦めれば助けましょう」




勝ち誇った顔の鷹丸・・・。




「てめぇ・・・っ。かごめを今すぐ元に戻せ。いやってんなら力ずくでも・・・」




「・・・。力ずく?ならこうです」



パチンッ。



指を鳴らすと




「う・・・」



かごめが苦しみだした・・・。




「私の意思一つでかごめ様はどうにでもなる。この状況が
お分かりになるでしょう?ククク・・・」



「ク・・・」



鷹丸を乱暴に扱えば、かごめが苦しむ・・・。





手も足も出ない状況に犬夜叉はただ唇を噛む・・・。







「・・・そうだ。一つだけかごめ様を助ける手をお教えしましょう」




「何だと!?」






「明日の夜。月が満ちるまでにかごめ様に私以外の男が口付けをすること。
・・・ま、できれば・・・の話ですがね。私か貴方か・・・。かごめ様の唇争奪戦
といきますか。ハハハ」





犬夜叉の怒りは既に頂点だ。



だが、鷹丸を不用意に攻撃すればかごめが危ない・・・。





(くそ・・・っどうすりゃいいんだ・・・!)






唇を噛む犬夜叉。




既に空には朝日が昇っていた。





かごめが連れ去られ、犬夜叉達は鷹丸の後を追っていた。 町の住人の話では、丘をひとつ超えたところに鷹丸の離れ屋敷があるという。 「呪いなら呪いを持って返す。犬夜叉わたしにまかせなさい」 「おめぇたち・・・」 眠っていたはずの弥勒たち。 かごめの危機を感じ、天守閣まで登ってきた。 「でもどうすんだ・・・。かごめには近づけねぇ」 「ふっ・・・。私に任せないといっただろう。他の男の口付けで目覚めるなら 私はどんな結界も破って見せよう!いざっ!!!!」 バキドカ バッコン!! 弥勒、悪い虫がまだ暴発し、犬夜叉と珊瑚の鉄拳が・・・。 「こんなときに馬鹿やってんじゃないよッ!!スケベ法師が!!」 こんな弥勒をよそに、鷹丸はかごめを抱き上げ移動しようとしていた。 「待ちやがれ!!」 「・・・明日の満月までに結界を破れなければかごめさまは私のもの・・・。 ではごきげんよう・・・」 「あっ!!!」 掛け軸がカタンっと裏返り、かごめたちは壁の中に消えた。 「どこいきやがった!!!」 犬夜叉は壁をけり破るがかごめの姿はどこにも・・・。 「仕掛け通路か・・・。きっと城の外に連れて行かれたのでしょう・・・」 「くそ・・・っ!」 自分の無力さに悔しがる犬夜叉・・・。 「まぁ犬夜叉。焦るな・・・。それより問題はどうやって かごめ様ののろいを解くか・・・だ」 「・・・どういう意味だ。かごめを助けるいい方法があるってのか!?」 「ああ」 真剣な眼差しで弥勒が言う・・・。 「かごめ様を助ける方法・・・。それは。結界を破るほどの 濃厚な口付けだ!!!」 拳をにぎって力説する弥勒・・・。 当然。 珊瑚の飛来骨によって一撃される。 「まじめに考えろまじめに!」 「私は至ってまじめだぞ。おふざけではない。 濃厚な口付けによってかごめ様に刺激をあたえるんだ。そうすれば 目覚めるやもしれん・・・」 それらしく言うが珊瑚は怪しく横目で見る。 「犬夜叉。お前、それができるか?」 「なっ・・・。そ、そ、そんなモンお、オレはッ」 ちょっと刺激的な質問に犬夜叉、しどろもどろ。 「お前ができないとなると、かごめ様の唇は鷹丸のものになるのだぞ?? それでもいいのか?」 弥勒は犬夜叉を肘でつく。 犬夜叉の脳裏でかごめにキスをする鷹丸の図のスライドショーが。 「ふ、ふざけんじゃねぇーーー!!スケベ野郎が!!!」 自分の妄想に激怒する犬夜叉。 「ならばここは照れや恥じらいを捨て、男になれ!すきなおなご の唇を守れ!!」 「・・・おう」 ぽそっと言う犬夜叉。 かごめに近づくこともできない。 「な・ら・ばだ。私が特訓してやろう」 「なにをだよ」 「おなごを悶絶させる接吻を・・・!」 バキッ!! 珊瑚の痛い突込みが入る。 「何いってんだい!かごめちゃんをどうやって救出するかでしょ!まったく・・・」 「で、でもどうやって・・・犬夜叉はちかづけませんし」 「”男”はちかづけないんだろ?じゃあ私が城に忍び込んで なんとかかごめちゃんを連れ出すしかないね」 「おお!その手があったか!では珊瑚が忍び込んでいる間に 犬夜叉、接吻の練習を・・・」 ボカ! 弥勒、とどめをさされる。 「馬鹿法師雲母、行くよ!」 機嫌をそこねた珊瑚、雲母にのり、 鷹丸の屋敷へ・・・。 「おーい。弥勒、大丈夫か?」 「はい・・・なんとか・・・」 潰れた弥勒をのぞきこむ犬夜叉・・・。 「まったく・・・おなごの心というものは難しいものだな・・・。 本気で好きなおなごならなおさら・・・。犬夜叉」 「あんだよ」 「・・・。時には自分の気持ちを言葉や態度で相手に示すことも 大切だ・・・。でないと相手は離れていってしまうぞ・・・」 「・・・うっせーよ」 ぷいっとふてくされる犬夜叉 「照れや意地を捨てろ。かごめ様を本気守りたいならな・・・」 その台詞は。 真剣な顔つきで弥勒は犬夜叉に諭すよう・・・。 「・・・けっ・・・。てめぇに言われたかねぇ・・・」 月を見上げ・・・ かごめを想う犬夜叉・・・。 (かごめ・・・) 一刻も早く・・・助け出したい気持ちを抑えきれない犬夜叉だった・・・。 その頃。 「母上・・・。今晩私の花嫁になる娘です・・・」 「・・・本当に母上によく似ている・・・」 床に寝かせられたかごめの髪をすっとすくう鷹丸。 部屋には掛け軸が。 その掛け軸には美しい十二単を着たおなごが描かれている。 なんとも意味深な手つきでかごめの髪をなでる・・・ 「きっと・・・。母上が私に差し出した娘だ・・・。この口付けで目覚め そして私の虜になる・・・」 かごめのあごを持ち、眠るかごめに近づける鷹丸・・・ そのとき。 「親方さま。白無垢の準備ができました」 侍女が白無垢を風呂敷に包み持ってきた。 「入ってくるときは一声かけるものだ」 「す、すみませぬ・・・。あ、あのこの白無垢、どうしましょう」 「・・・。かごめ様にお前が着せておけ。私は祝言の準備を見てくる」 「はっ・・・」 うつむき、震える侍女を睨んで 部屋を出て行く鷹丸・・・。 「なーにが”入ってくるときは一声かけるものだろう”だよ! すけこまし男が!」 バッと着物を脱ぐ侍女はなんと珊瑚で・・・。 「かごめちゃん!」 寝かせられているかごめを起こす。 「かごめちゃん目を覚ましてよ!かごめちゃん」 しかしかごめは目覚める気配がない。 「・・・仕方ない。とにかくここから連れ出さないと・・・」 珊瑚はかごめを雲母に乗せ、出て行こうとした。 「最近の妖怪退治屋は花嫁泥棒までするのか?」 「!」 鷹丸の家臣たちが珊瑚と雲母に刀をむけていた! 「・・・。悪いが花嫁は置いていってもらおうか。天にいる母上が私にくれた 極上の贈り物だからね」 「・・・母上だって・・・?かごめちゃんはあんたの母親じゃないよ! いい加減乳離れしなよ」 珊瑚は飛来骨を構えた。 「おおっと。あまり無茶はしない方がいい。でないとかごめ様が苦しむことになる」 バチン! 鷹丸が指を鳴らすとかごめが苦しみだした・・・。 「かごめちゃん!」 「ね?だから、私の花嫁を返してもらおう。いけ」 鷹丸は雲母からかごめをそっと抱き上げた。 「かごめーーー!」 障子を蹴破って犬夜叉と弥勒が突入。 「珊瑚!今助けますぞ!」 家来達の刀を弥勒が振り払う。 「・・・ったく・・・。雁首そろえて・・・私の宴を邪魔しようとする・・・」 「うるせぇッ!!かごめを離しやがれッ!!」 「・・・うるさいのはどっちだ。黙ってろ・・・」 バシ・・・。 鷹丸とかごめの周りに青白い結界が張られた。 「な、なんだこりゃ!?」 「特等席さ。光栄に思えばいい。これから美しい口付けの場面を見せてやる・・・」 「な!?」 犬夜叉たちの目の前でいきなり腕の中のかごめに口付けを迫って・・・。 「てめぇ!!!かごめに妙なことしてんじゃねぇッ!!!ちきしょう!! こんな結界ッ!!!」 犬夜叉が結界を破ろうとするがはじきとばされる。 その間にも鷹丸とかごめの唇の距離が縮まって・・・。 (くそーーーーーーー!!!!) 犬夜叉の嫉妬心が爆発した、 そのとき・・・。 ぶわっちーーーーん!! 「あんたなんかにキスされるくらいなら砂飲むんだ方がマシよ!」 かごめの啖呵と共に鷹丸の頬にくっきり手跡がついた。 同時に結界もとけ・・・。 「何故・・・目を覚ました。何故だ」 「あったりまえでしょ!あんたの卑しい邪気感じたら目も覚めるわよ!」 「・・・。霊力があるのか。お前は・・・」 「いいから離して!!」 「はなさん。絶対に離さない。離したら母上さまは言ってしまわれる!」 ”鷹丸・・・ごめんなさい・・・。鷹丸・・・愚かな母を許して・・・” 幼い頃の記憶。 旅の男と恋に落ち自分を捨て、屋敷を捨てた母。 必死に掴んだその手を いとも簡単に 母は離した・・・。 「・・・かごめ、離れろ!そいつから妖気を感じる!!」 「犬夜叉!」 かごめが手を伸ばす。 犬夜叉も手を伸ばす。 その光景が、自分を置いて、男との元へ走っていく 母と重なる・・・。 「駄目だぁあ!!行くなぁーー!!私を置いていくなぁー・・・!!」 「きゃああッ!!」 異様な声をあげ、かごめの足をわしづかみの鷹丸・・・。 「母上・・・私をまたおいていかれるのか・・・絶対に離しはせん・・・。 絶対に絶対に・・・」 何かにとりつかれたような異様な目をして・・・。 「母上・・・母上・・・」 「痛・・・っ」 かごめの足首をかなりの力で掴み、激痛が走る・・・。 「母上・・・」 「かごめは・・・てめぇのオフクロじゃねぇッ!その手を離しやがれ・・・ッ!!!!」 「うっ・・・」 犬夜叉の拳は鷹丸は壁にかけられた掛け軸ごと吹き飛ばされた。 「かごめ、大丈夫か!?」 「うん!」 犬夜叉がかごめを抱えようとしたが・・・ バチッっとはじかれてしまう。かごめにかけられた呪いの結界は解けていなく・・・。 「犬夜叉!」 「けっ・・・こんなもん平気だ」 「だけど血が・・・」 「うっせえッ!!!お前を助けるためならこんな結界へでもねぇッ!!!ううッ」 「犬夜叉・・・」 「くっ・・・。弥勒、珊瑚っ。屋敷から出るぞッ」 結界に弾かれ、切り傷をつくりながらも犬夜叉はかごめを抱き上げ、 屋敷を出ようとする・・・。 (犬夜叉・・・) 「はは・・・うえ・・・。ははうえーーー・・・ッ」 屋敷を離れていくかごめをまるで子供のように泣き叫んぶ鷹丸・・・ ”ごめんね・・・鷹丸・・・” 掛け軸に描かれた女性の絵・・・。 「母上・・・なんだ・・・ここにおられたのか・・・。戻ってこられたのですね・・・」 その掛け軸を抱きしめそして・・・。 「もう私を置いていかないで・・・母上・・・」 ろうそくの火をつけた・・・。 掛け軸は燃え上がり、屋敷の柱に燃え移る・・・。 「ずっと・・・一緒だよ・・・。母上・・・」 燃え上がる屋敷・・・。 鷹丸の小さな声が微かに響いた・・・。 満月はもうすぐ満ちる・・・。
何だかやたら長めになってしまったので中編という形にしました(汗) 勿論、後編は犬かごラブラブ全開で頑張りますので・・・(滝汗)