地平線が少し、明るくなってきた。

波も朝焼けに反射してオレンジ色に染まる。

犬夜叉は朝やけに映えるかごめの横顔をチラッと見る。

「かごめ・・・俺・・・」

「ねぇ犬夜叉」

「な、なんだよ」

「もう少し・・・。ここに居てもいいかな・・・。あたし、朝日、見ていたい」

かごめの顔に朝日があたる。

「お・・・おう・・・。好きにしな・・・」

「うん」

かごめは少し笑ってそう言うと、波打ち際で行き交う細波を追いかけ始めた。

その姿を離れて座って見つめる犬夜叉。

行っては来る、行っては来る波を

追っては逃げ、追っては逃げて波と遊ぶかごめ。

まるで、波がかごめを連れて行きそうだ・・・。

犬夜叉は急にまた、恐くなった。

さっき、海に入っていこうとしたかごめの背中。

背筋が凍った。かごめが海に・・・連れて行かれる!と思った・・・。

海に・・・。かごめが消えるかと思った。

あの・・・悪夢がよぎる。

冷たく、動かないかごめ。

犬夜叉の全身に再び恐怖感が走った。

波が・・・かごめを連れて行く!

海がかごめを連れて行く!

犬夜叉の視界のかごめが・・・小さく消えそうに見えた。 行ってしまう・・・。

深く暗い闇のそこへと

行って・・・消えてしまう!

「かごめ・・・ッ!」

思わず犬夜叉は、かごめに向かって走った。

そしてかごめの腕をつかんだ。

「え・・・?何犬夜叉・・・きゃあっ」

バッシャーン!

勢いで二人は海の中に倒れてしまった。

「たた・・・。何犬夜叉どうし・・・」

「黙ってろ・・・!しばらく・・・。頼むから・・・」

犬夜叉は力一杯かごめを抱きしめた。

両手でかごめが生きているのを確認するように。

生きているかごめを実感するために。

かごめが腕の中にいる。

夢ではない。夢では感じられない確かな感触が

腕の中にある。

柔らかな髪、細い肩。

これ以上力を入れたら折れそうな小さな背中。

みんなみんな・・・。かごめだ。

全身で・・・かごめが生きている事を

感じたい・・・。

そのまましばらく二人は・・・朝日を背中にお互いを包み合った。

濡れて少し冷たくなった体も、互いの体温が混じり合って冷えることはない。

犬夜叉は腕の中の確かなかごめの存在を確認して、心から安堵していた。

しかしかごめは・・・。

ちょっぴりまだ、痛かった。

犬夜叉の優しさが。

でも・・・。生きているから、犬夜叉の腕の力強さも感じられる。

生きているから・・・。

暫しの抱擁の後、犬夜叉が先に口を開いた。

「かごめ・・・。俺・・・。俺・・・」

その先、何をかごめに言いたいのか、うまく言葉が見つからない。

「・・・。犬夜叉」

「かごめ・・・」

「一つ・・・約束してほしいの」

「何だ・・・?」

犬夜叉の背中にまわされたかごめの手がぎゅっと犬夜叉の着物をつかむ。

「お願い・・・。生きていて欲しいんだ」

「かごめ・・・」

「思う存分生きて欲しい・・・。犬夜叉らしく生き抜いて・・・。四魂のかけらのせいで消えた命の分も・・・」

四魂のかけらのせいで消えた命・・・。

“桔梗”

その魂を救うためにも・・・。

「お前だって・・・死ぬなよ・・・。いくら夢だって、夢の中だって・・・。んなこと、俺がゆるさねぇぞ・・・」

その気持ちを込めて、犬夜叉はかごめの肩をもう一度、力一杯抱く。

かごめも、静かに犬夜叉の腕の中でこくりと、頷く・・・。


望むことは、その人が生きていること。


願うことは、その人らしくいられる世界


いつか、離れてしまうかもしれない未来でも



望むことは、その人の笑顔。


願うことは・・・その人の幸せ。



だから・・・。

"今$カきていきたい。

大切な人達と一緒に・・・。

「くしゅんっ」

「だ・・・大丈夫か?」

「うん・・・。犬夜叉、ほら・・・。太陽・・・昇ったよ。ほら・・・」

「ああ・・・」

暗い空が完全に夜が明け、辺りが光に包まれた。

今までも、切なさで何度もつぶれそうな夜を過ごしてきた。

でも。変わらない気持ち。

一緒にいたいという気持ち。

変わらない。このきもち。

違う時代でも同じ形と色をした太陽の様に・・・。

絶対に変わらない。

この想い。この願い。

そして、気がつくといつもそこには、

かけがえのない仲間がいた。

「おーい!かごめええー!犬夜叉ー!何しておるのじゃーー!」

七宝がぴょんぴょん飛び跳ねてこちらに走ってきた。

「これこれ。七宝!せっかくのいい雰囲気をぶち壊すんじゃありません!」

「壊してんのは、法師様でしょ」

頬に珊瑚の鉄拳の手跡を付けた弥勒と、まだ、少し眠たそうな珊瑚も七宝につられて砂浜にやってきた。

仲間が、二人を迎えにきた。

みんなが。

かごめは犬夜叉の腕から離れて、犬夜叉に手を差し出す。

「帰ろう・・・。みんなの所に・・・。二人で」

二人で・・・。

「ああ・・・」

繋ぐ。手と手。



何があっても生きていて欲しい。


だから、一緒にいよう・・・。


そう誓い合うように


繋ぐ手と手。


繋ぐ・・・命。


消えていった命の為、これから生まれる命のために


かごめと犬夜叉は手を繋ぐ。


確かに感じるぬくもりを信じて・・・。

FIN

これを書いている最中、丁度、テレビで高山に生息する『雷鳥』とう天然記念物にしていされている貴重な鳥が原因不明の皮膚病にかかって死んでいるという話題をしていました。 もう、只でさえ、数が少ないのに伝染しやすい皮膚病発見されて、かなり大変な事がおきてしまったということです。でも、原因はどうやら高山に観光するためにやってきた人間そのペットなどの影響が可能性大だそうです。雷鳥は私も実際に見たことありますが、雄がとてもきれいな白い羽根をしています。その白い羽根がそれこそ、ノベルの中の鳥みたいに緑っぽく変色していました。そんな画面を見たせいか、海鳥を助けようとするかごめちゃんの姿が浮かんでしまってこんな長くなってしまいました・・・。(爆)