夏の終わり
夏の終わり どこか切なくて だけどこそばゆくて 夏の終わり また新しい絆が生まれたらいいな・・・。
「はー・・・。暑い暑い」 犬一行。 女性陣は朝からの太陽の照りに 早くも苦しそう。手で顔をパタパタ仰ぎながら歩く。 「ね〜。犬夜叉ちょっと休もうよ」 「けっ。この位の暑さなんだってんだ!ったく これだから人間の女は・・・」 ギロリ。 (なっ。なんでそんな睨む) 「女の子を労わらない男なんかだいっきらい。 それに人間だからっていうのがもっと嫌!!!」 「なっ」 「・・・私、ここで少し涼んでいくから!」 かごめはリュックをどすっと木の根元に置いて座り込んだ。 「先に行けば?大妖怪さん」 完全にお冠のかごめ。 こうなれば犬夜叉も意地になり・・・。 「そうかい!けっ!!」 犬夜叉一人、そそくさと先に走っていってしまった・・・。 かごめも完全に怒りモードで珊瑚たちも近づけず。 「・・・ど、どうします?珊瑚われわれは・・・」 「・・・法師様、この後の展開予想つくでしょ?」 「ええ。当たり前です・・・長い付き合いですから。 というわけで我々はあの岩陰で犬夜叉達のこの後の展開を 見物と行きますか」 弥勒たちはかごめがもたれている木の後ろの岩影に座り 水を飲んでこっそり、犬夜叉とかごめの痴話げんか見物。 (私のことなんだと思ってんのかしら。 でもそれより”人間”ってフレーズがもっと腹がたつ! ・・・なんか・・・私と犬夜叉を区別されたみたいで・・・) きっと犬夜叉はなにげなく出た言葉なのだろうが 好きな人から自分とは違うんだっていわれてる気がして かごめは切なかった。 (・・・あーあ・・・でもすぐムキになる私も馬鹿・・・) ふっと空を見上げる。 入道雲がモクモクと・・・。 綿のように浮かんで・・・。 「・・・夏の空ね・・・」 この夏の空のように 真っ青で 真っ直ぐな気持ちでいつもいられたら・・・。 「ふぅ・・・」 小さな切ないため息がかごめからこぼれる。 (・・・かごめの奴。何考えてんだろ) 其の小さなため息をこっそり聞いている 意地っ張り男。 かごめがもたれている木の天辺で かごめのようすを伺っている。 (・・・なんであんなに怒ったのかがわからねぇんじゃ 謝る事もできねえ) 早く仲直りしたい。 かごめの怒っている理由を必死に探る犬夜叉。 「・・・お水でも飲もう」 かごめはリュックから水筒を取り出して さっき小川で汲んできた水を一口飲む。 「ふぅ・・・」 水分補給。 少しだけ気持ちは落ち着くが・・・。 (犬夜叉・・・。戻ってきてくれないのかな) ちょっとだけ期待してみる。 ・・・頭の上に本人がいることも知らず。 (かごめ。誰待ってんだ・・・?) 貴方です。犬君。 「犬夜叉・・・」 (・・・ドキッ) 吐息を漏らすように呼ばれて犬夜叉は緊張。 「・・・人間とか妖怪とか関係ないはずだよね?私達は・・・」 (かごめ・・・) かごめの独り言でようやく かごめの怒った理由を理解した犬夜叉。 ”人間の女が・・・” (・・・あんなもん、つい出ちまっただけじゃねぇか) けれどかごめにとっては 心がちくりと痛む一言で。 (・・・。でもやっぱオレが悪いのかな・・・) 犬夜叉も空を見上げる。 夏の青い空を吹きぬける風のように 素直に真っ直ぐな気持ちでいつもいられたら・・・。 ビュウッ!! 「・・・っわっ!!」 突風に煽られ、 バサバサ!どさ!! 犬夜叉、落下。 「あ・・・」 「・・・あ」 目が合う。 (・・・) (・・・) 喧嘩真っ最中の二人。 ”ごめんね” ”俺が悪かった” その台詞が出ればすぐに仲直りなのに・・・。 「・・・い、居たの。犬夜叉」 「けっ。お、オレがどこにいよーと勝ってだろ」 ぷいっと 顔をそむけあって座る二人。 素直になりたいのに。 (・・・どうしてなれないんだろう・・・) 二人。 同時に空を見上げる。 (・・・夏の空か・・・) 夏の空を羽を伸ばして飛ぶ鷹のように 心を自由に解き放たれたらいいのに・・・。 ちょっとだけ心が近づけたら・・・ 近づけたら・・・。 (!) (・・・!) 二人の指先が少し触れ合って 見詰め合う。 「あ・・・」 「・・・あ」 突然の触れ合いに 二人とも体が動かない。 でもせっかくのチャンス。 心も触れ合える・・・ (・・・そうよね。ここで素直にならなきゃ) 「・・・!」 かごめはそっと犬夜叉の手の上に自分の手を重ねた。 「あの・・・。ごめんね」 「え、な、な、何がだ」 「・・・ごめんね」 「け・・・けっ。あ、謝られる筋合いもねぇ、け、喧嘩なんか してねぇんだから・・・」 犬夜叉のこれが精一杯の”ごめんね”。 犬夜叉らしい。 というよりこれが犬夜叉。 かごめは少し微笑んで・・・ (・・・!) 犬夜叉の肩に身を寄せた。 (嗚呼・・・かごめの・・・優しい匂い・・・) 強張っていた体も 心も すうーっと・・・。 あの夏の空のように・・・。 (ずっと・・・こうしていたい・・・) 「・・・かごめ」 「ん?」 「もう少し・・・。休んでくか・・・(照)」 「・・・うん・・・」 痴話げんかも 悪くないかもしれない。 こうして 寄り添いあえる 時間をくれるから・・・ 二人で見上げる空は より一層、綺麗で大きく見える・・・。 でも・・・。 (・・・かごめの匂い・・・。夏の空より・・・ 好きだ・・・) 広くて大きな空より もっともっと 大好き・・・。 夏が終わっても 空はそこに在り続ける。 いつもそばにいてくれる人のように・・・ 夏の匂い 優しい匂い 夏が終わっても 変わらずに・・・。