其の九
子作り 親作り @>
”子作りも頑張ろうね” 「・・・」 木材をのこぎりで切りながら犬夜叉の思考はかごめの冗談めいた一言に 囚われております。 (頑張るもなにも俺達まだく、口付けすらまだだってのに・・・) ”子作りはね、おとこがリードしなくっちゃ” かごめ母の言葉が浮びます。 (り、リードって・・・。そ、そんな”方法”あんのか!??どんな・・・) 犬夜叉クン、仕事中にちょっと年齢制限しちゃいそうな画像を妄想しちゃいました 「先輩ー!先輩小包きてますよー」 「誰が子作りだ!誰がーーー!!」 「じゃなくて小包ですってばー・・・」 犬夜叉、何を考えていたか全部、暴露しちゃいましたv 「先輩ー。早くも子作り宣言ですかぁーvvぐふv」 バキ!! 犬夜叉の後輩・・・照れ隠しのパンチでダウン・・・ 「ったく・・・。この職場にはエロばっかだな・・・」 呆れ顔で小包の差出人を見ると・・・ (ん・・・?北海道・・ってことは弥勒か) とくれば中身はやっぱり・・・ (・・・カニじゃねぇ) 珊瑚の着替えだったv そしてメモが 『犬夜叉へ。いやー。またちょっと夫婦喧嘩しちゃいましてねぇー・・・。今度のは ちょっとヘビー級で珊瑚、着替えも持たずにそっちに行っちゃったv』 「なにが行っちゃった、だ!!」 『しばらく時間を置いたほうがいいかと思いましてね。一週間ほど、私もマイ、ワイフを よろしくな〜♪♪ 君の大親友の弥勒クンよりv』 メモをぐしゃっと握りつぶす犬夜叉。 「何が大親友だ!!職場に自分の女房の着替え送ってくる親友がいるか!!ったく あのエロ弥勒め・・・」 犬夜叉が呆れていろころ・・・ 楓荘に着替えの主の珊瑚も無事到着していた。 食堂でかごめに弥勒に対しての愚痴をおせんべいをほおばりながら話す珊瑚。 「まったく・・・。アイツったら家に会社の女の子によっぱらったからって背負われて帰ってくるんだよ!!信じられる??」 「えー。それはちょっと」 「そうでしょ!!新婚まだ2年目っていうのにさ!!」 「そ・・・そうね」 微妙にのろけられると言葉に困るかごめ。 コポコポと急須で湯飲みにお茶を注ぐかごめ。 「今度という今度は絶対にあっちから謝るまで帰らないんだから!!というわけで しばらくお願いしますかごめちゃん」 「お安い御用よ!ここは珊瑚ちゃんの家でもあるんだから・・・」 「かごめちゃん・・・」 女癖、二股癖のある男をもつ女同士、わかり合うものがある二人・・・ 「ふぅー・・・」 珊瑚はやけにだるそうにため息をついた 「珊瑚ちゃんなんか疲れてる?」 「え?あ。そうかも・・・。きっと飛行機のせいだね」 「・・・」 空手で鍛え上げた珊瑚。 飛行機に乗ってきたぐらいで疲れるなんて・・・ かごめはちょっと不思議に思った。 それにコーヒーを珊瑚に差し出そうとしたが 珊瑚はお茶にしてほしいと・・・ (・・・) なんとなく女の勘が働く。 「ねぇ・・・。珊瑚ちゃん・・・」 「・・・な、なに?」 かごめは珊瑚の下腹部をそっと撫でた。 「かっ。かごめちゃん・・・!??」 「・・・珊瑚ちゃん・・・ママになるのね」 「!!」 図星だった 「ど・・・どうして・・・」 「私達親友よね。女同士よね。わかるのよ。女の勘ってやつかな」 「す、すごいね・・・」 珊瑚はお茶を一口飲んだ。 「弥勒さましってるの?」 「・・・知ってたら家出許してくれるわけないよ」 「じゃあすぐ知らせないと・・・!こんな重大なこと」 かごめが携帯を取り出したが珊瑚は止めた。 「珊瑚ちゃん・・・?」 「・・・アイツにはしばらく知らせない。アイツが謝るまでは・・・」 「でも」 「いいの!これは女の意地でもあるんだ!!うん!!」 (・・・本当はすぐにでも知らせたいに決まってるのにな・・・。珊瑚ちゃんも頑固なんだから) 同じ女として珊瑚の意地も理解できる。 「わかったわ。じゃあ暫くは黙っとく・・・。あ、それからモウヒトリ。 すぐ顔に出る男にもね。珊瑚ちゃん」 「うん・・・犬夜叉にもね」 こうして女子連盟は固い約束を交わしたのだが・・・ 「てめぇの夫婦喧嘩にオレを巻き込むな」 仕事から帰ってくると食堂のテーブルにどさっと弥勒から送られてきた荷物を置く犬夜叉。 「送り返してよ」 「んだとー!!オレが運んでやったのに」 「それより・・・。あんた、まだ月島桔梗にこだわってるんだって?」 いきなり話の矛先を変えられ、動揺する犬夜叉。 「あんた、そんな根性でかごめちゃんお嫁さんにする気なの!!」 「う、うるせー!!てめぇにゃ関係ねぇ!!」 「関係ある!!かごめちゃんは大事な親友だ!!そのしんゆうを・・・うっ・・・」 珊瑚は急に口を両手で抑えて お手洗いに走った。 「な、なんだぁアイツ・・・。腹でも壊したのか」 「・・・アホか。ツワリにきまっとるじゃろ」 「つわり・・・?ツワリってなんだ」 「・・・。ホントにあほじゃ」 呆れ顔で新聞を読む楓・・・ (ツワリ・・・?つわり・・・。え。つわりってあの・・・) 「珊瑚の奴・・・。ガキができたのか!???」 パコーン! 容赦なく犬夜叉の後頭部を背後から新聞紙で殴るかごめ。 「な、なにすんでいッ。かごめ!」 「いい??弥勒さまにはぜったいにこのこと内緒だからね!」 「なんでだ。めでてぇことじゃねぇか」 「めでたいけど女の意地なの!!わかったわね??」 「けっ・・・。わかったよ・・・」 こうして緘口令をしいた楓荘でありますが・・・ 「うっ。ううぅ・・・」 珊瑚のつわりは思った以上にひどく 夜中に何度もトイレにはしる。 「珊瑚ちゃん。大丈夫?きっと飛行機が祟ったのね・・・。気圧のせいかな・・・」 「大丈夫・・・。ごめんね。迷惑かけちゃって・・・」 「いいのよ。こういうときだからこそ女同士助け合わなきゃ」 「かごめちゃん・・・」 トイレの前で友情を深め合う二人・・・ その様子をつまらなそうな顔で犬夜叉が見ております。 (けっ・・・、何が女同士だ) 「犬夜叉。お前も見ておけよ」 浴衣姿の楓がぬっと現れた。 「結婚すればかごめだっていずれ、お前の子を宿したときの勉強 をしておくことじゃな」 「・・・(照)」 ”お前の子を宿す”のフレーズに何故だかドキドキ、 嬉しく思う犬夜叉くん。 「夫はおなごを支えねばならん。珊瑚の様子を見ながら 今からよーっく勉強しておけよ」 「・・・けっ・・・。まだ先の話だ。オレは寝るぜ」 生意気な口を叩きながらも実は楓ばあちゃん知ってるのだ。 ゴマちゃんも。 わうわぅ・・・【アイツ、『親になる心得』って本よんでるのよ!でもアイツ自体、まだ 子供じゃないの!ってゆーか子供の作り方しってんのかしら??】 部屋の中でこっそり『親になる心得』という本をやっぱり よんでいる犬夜叉クンでありました・・・ (・・・ほうほう。男ならキャッチボールか) ・・・ホントに気が早い。犬夜叉君(笑) 犬夜叉が布団の中で親の心得をお勉強中の頃・・・ 向かいの空き部屋で眠る珊瑚は何度も寝返りを打つ・・・ 新しい命が眠るお腹を不安そうにさすりながら・・・※「大丈夫・・・?珊瑚ちゃん」 珊瑚はこっちに来てから体調を崩し、寝込んでしまった。 かごめは仕事を休み、ちょっと遅い朝食を珊瑚が眠る枕元にそっと置く。 「ごめんね・・・。迷惑かけちゃって・・・」 「ううん・・・。眠れなかったみたいね・・・。昨夜・・・」 「・・・うんちょっとね・・・」 か細い珊瑚の声・・・ それに不安そうな顔・・・ かごめは珊瑚の様子がおかしいのは弥勒とのケンカだけではないと なんとなく感じた 「ねぇ・・・。珊瑚ちゃん。何か不安なことでもあるの・・・?」 「別に・・・。つわりがひどいだけで・・・」 「・・・。それならいいんだけど・・・。何かに怯えているようなそんな 感じがしたから・・・」 「・・・!」 かごめの言葉に珊瑚はピクッと反応した。 「でも無理にはきかないわ。今はとにかく休んで。じゃあ私食堂にいるね・・・」 「・・・」 かごめがお盆を持って部屋をでようとしたとき・・・ 「・・・怖いんだ・・・」 「え・・・?」 かごめは珊瑚の元へ戻り静かに座った。 「怖いって・・・。何・・・が・・・?」 珊瑚は上半身、起き上がりかごめにを見つめた・・・ 「・・・。好きな人の子供を授かって言うのに・・・。嬉しいはずなのに・・・。何だか 怖いんだ・・・」 「珊瑚ちゃん・・・」 かごめは少し震える珊瑚の手をそっと握った 「自分でもどうしてそんな風に感じるのか分からないの・・・。でも 日毎に変化していく体が何だか不安で・・・。赤ちゃんが お腹にいるっていうより・・・。違う生き物が突然住んだっていうか・・・変な感覚 で・・・」 「・・・」 「陣痛ってどれくらい痛いのかとか・・・。ちゃんと生まれてきてくれるかとか・・・。 色んなことが不安に思えて仕方がないんだ・・・。ねぇどうしてかな。かごめちゃん・・・」 弱弱しく必死にかごめに訴える・・・ こんなに不安がる珊瑚の姿を見たのは初めてのかごめ・・・ 正義感が強く、物事に物怖じしない珊瑚が・・・ 新しい命が宿るということは実に喜ばしきこと すばらしいこと けれど 現実はどうだろう 出産ということができるのは女性だけだ つわり、食欲がなくなる、頭痛、苛苛・・・ 様々な変化がその女性に一気に起こる。 それを周囲は”妊娠だから当たり前のこと”と思うだろう。 だが当たり前のことではないのだ。 「珊瑚ちゃん・・・。一人で辛かったのね・・・」 かごめはそっと珊瑚の肩を包み、抱き寄せた・・・ 「かごめちゃん・・・。私・・・。こんなことで親になんてなれるかな・・・。そう思ったらね・・・。 弥勒さまに・・・子供ができたこといえなくて・・・」 「珊瑚ちゃん・・・」 珊瑚の気持ちが痛いほどかごめに伝わる・・・ 誰より子供を授かることを望んでいた弥勒。 子供が出来たことを伝えればきっと全身で喜ぶだろう。 でも今の珊瑚にとってそれが逆にプレッシャーになる・・・ 「珊瑚ちゃん。珊瑚ちゃんは全然変じゃないわ」 「・・・本当・・・?」 「赤ちゃんを産むってことは本当に大変なこと・・・。”感動、感動”ばかりじゃ ないもの。辛いこと、痛いこと・・・沢山女の人は乗り越えないといけない。 一人じゃ絶対できない・・・」 「・・・かごめちゃん・・・」 かごめは珊瑚の背中を優しくさすりながら話しかける・・・ そうっと そうっと・・・ 「・・・珊瑚ちゃん。これだけは覚えておいて。珊瑚ちゃんは 一人じゃない」 「かごめちゃん・・・」 豊和な・・・ 柔らかいかごめの声は幼い頃聞いた母の声に・・・ 少し似て・・・ 珊瑚の耳に伝わる・・・ 「妊婦さんの一番のお仕事はね・・・。自分の心と体を労わること・・・。 だから珊瑚ちゃん、今は休もう・・・?きっと大丈夫だから・・・」 「うん・・・」 かごめが”大丈夫”というと不思議に 本当に大丈夫に思える 珊瑚は安堵感につつまれ床に再び横になった・・・ 珊瑚が眠ったのを確認してすぐ部屋をでたかごめ・・・ (珊瑚ちゃん・・・。凄く参ってる・・・。女性に子供ができるって・・・ 本当に大変ですごいことなんだな・・・。でもこのままほおっておけないわ・・・) かごめはあることを思いつく・・・ そして赤ちゃんがいる知り合い夫婦に電話をかけた・・・ 一方・・・其の頃。 「戦国町〜戦国町〜」 バス亭に背広姿の弥勒が降り立つ。 「・・・なんか懐かしいな・・・」 よく通った商店街や歩道を眺めるが・・・ (それより珊瑚だ・・・。珊瑚・・・) 複雑な表情で楓荘に向かっていた・・・