続・居場所を探して
〜タンポポの種〜


其の十四 独占欲




独占欲。 それは恋が深まれば深まるほどに 激しくなるものだ。 とくに 最近、やっと初キッスにまでこぎつけたこの男は・・・ 「・・・。遅せぇ」 携帯の画面の時刻を見ながら玄関先でかごめの帰りをまつ犬夜叉。 「6時半まで帰って来るつったのにあいつ・・・。もう5分も過ぎてやがる!!」 まるで門限を破った娘を叱る父親のように 仁王立ちの犬夜叉。 今日はかごめとレンタルビデオを一緒に返却する予定だったとかで・・・ そしてかごめが帰って来ると・・・ 「ただいまー」 「かごめ。10分も遅刻だぞッ」 自転車を止めるかごめに怒鳴りちらす犬夜叉。 「仕方ないでしょ。お迎えのお母さんが遅かったんだから・・・。 10分ぐらいでうるさいな」 「なっ・・・10分ぐらいってどういうことだッ。オレは腹をすかせて待ってたんだぞっ。 それをお前は・・・。だいたいなぁお前って奴は・・・」 ぐだぐだと横で文句を言う犬夜叉・・・。 「・・・。もーーー!!うざったいなーーー!!」 「なっ・・・。うざい・・・?」 かごめの言葉に犬夜叉、ハートブレイク!! 部屋にあがっていくかごめのあとについていく犬夜叉 「そうよ!!一体何なの??いくら恋人同士でも限度ってものがあるわよ!! そこまで束縛されちゃたまらないわ!!」 「束縛って・・・」 「私は今日、疲れてるの!じゃあね!!」 バタン!! 部屋を追い出される犬夜叉クン・・・ (かごめ・・・。オレがうざったいって・・・(涙)) しょんぼりしながら自分のお部屋に 帰還する犬夜叉・・・ その様子を向かいの弥勒夫妻はばっちりドア越しに盗み聞き。 「完璧に犬夜叉はかごめ様に実権にぎられてるなぁ。あの様子じゃ」 「実権っていうより・・・。ただの我が侭じゃないの?」 かごめから習った編み物をする珊瑚。 「犬夜叉の独占欲って子供じみてるんだよねぇ。やらしさいっぱいの誰かさんとは違って」 「・・・。珊瑚。お前、安定期に入ってからなんか機嫌わるくないか?」 「これ。背広のポケットに入ってた」 『倶楽部 カクテル』 スナックのマッチを発見されたようで・・・ 青ざめる弥勒。 「こ、これはあの・・・。ちょーっと飲み会で・・・」 「飲み会ねぇー・・・。さぞや可愛い同僚さんも一緒だったんでしょ」 「やましいことは何もない。なんてたってオレは父親になるんだからなー」 お腹の子供を味方につける弥勒。 「こーんなやらしい父親だったら嫌われちゃうわよ。娘に」 「!??娘・・・?ってことは・・・。女の子なのか!?」 「・・・ウン。生まれるまで性別は楽しみにとっておこうって思ったんだけど・・・。 でも知りたかったの」 「そうか。娘かぁ・・・」 感慨にふける弥勒。 「だから。もう夜遊びはだめだからね!やらしい父親は女の子は嫌うんだから」 「わかった!毎日残業なしで帰って来るぞ。パパはーー!」 お腹に耳をあて父親宣言する弥勒だった と。そんなこんなで、楓荘の恋物語は 色々な展開を見せております。 「・・・かごめ。怒ってるのか?」 夜中零時過ぎ。 犬夜叉は我慢できずにかごめの部屋で体育すわりをしてかごめのご機嫌伺い。 「おい・・・。ねてんのかよ」 ガラガラッ ミッキーマウスのパジャマ姿のかごめが出てきた。 「あんた・・・。いい加減にしなさいよね。難じたと思ってるのよ」 「・・・だけどよ・・・」 ついでに申しますと犬夜叉もミッキーのパジャマを着ております色違いの青。 「・・・。ごめん。私が言いすぎた。せっかく犬夜叉が借りてきてくれたんだものね」 「おう。そうだぞ」 いきなり開き直る犬夜叉。 「明日は休みだし・・・。今から見ようか」 「い、いいのか?」 夜中にかごめの部屋で二人きり・・・。 犬夜叉クン、ちょっとだけどきどき。 「うん。あ・・・。だけど静かにね。弥勒さまたち眠ってるから。 じゃ、入って良いよ」 ”何か”を期待しながらかごめの部屋に入る犬夜叉。 「はいどうぞ」 クッションを置くかごめ・・・ 犬夜叉は緊張して思わず正座して座る・・・。 「二巻目からだったよね」 ビデオにカセットを入れ再生ボタンをスかごめ。 かごめの平気な顔で・・・ (こいつ・・・。この状況でなんでこんなリラックスしてんだ。意識されてねぇとか・・・(汗)) 犬夜叉くんはあーんなことやこーんなことを意識しすぎて 緊張しているというのに・・・ 「・・・。犬夜叉・・・」 (!!) かごめがピタリと体を摺り寄せてきた・・・ 犬夜叉クン、一気に顔がまっかっか。 「なんか・・・。この状況って・・・。エッチ。よね」 「なっ・・・」 誘うような・・・ なんともいえない色っぽい声と瞳・・・ (か、か、かごめ・・・) 「夜中にベットの前で二人きり・・・。いやらしい・・・よね・・・」 顔を犬夜叉の肩に摺り寄せるかごめ・・・ (せ、積極的すぎ・・・) だけどもう犬夜叉クンの心臓はバックバックン・・・ 「ねぇ・・・」 耳元で囁くかごめ・・・ かごめの息がかかって 「・・・もっと・・・いやらしいこと・・・。しちゃおっか・・・?」 (●△×■★※♪ーーーッ) ↑犬夜叉の臨界点は越えた瞬間。 「か、かごめッ!!!!!!」 ガバっと押し倒す・・・ (かごめ・・・!かごめ・・・!!) かごめの体にしがみ付いている・・・ (ん・・・?) 何だか線香臭い・・・ それに体がごつごつして・・・ (かごめって・・・こんな体ごつかったっけ・・・?) 犬夜叉が目を開けると・・・ 「・・・。お前、ワシを身ごもらせる気か?」 ちょっとだけ照れているしわだらけの楓の顔が真下に・・・ (●△■×★★ーーーー!???) 「わぁああああああー・・・・」(悲鳴) 楓荘朝・・・ 犬夜叉の言葉にならない悲鳴がとどろいた・・・ ご愁傷様です。犬夜叉クン(笑) 「うえぇー・・・」 食堂で気持悪そうにする犬夜叉。 (なんて恐ろしい朝だ・・・) 「失敬な。ワシとてまだうら若き60代じゃぞ。子供ができたらどうするんじゃ」 「できるか!!」 「はいはい。犬夜叉。八つ当たりはその辺で・・」 かごめが水を持ってきた。 口直しにといわんばかりにごくごく飲み干す犬夜叉・・・ 「大体あんたが悪いんでしょ。廊下で寝ちゃうだもん。おばあちゃんが起こしに行ってくれた んだから」 「・・・て、てめぇがいつまでも怒ってるからじゃねぇか」 昨夜は結局。犬夜叉はかごめのご機嫌を治すことが出来ず、かごめの部屋の外でずっと かごめのお許しを待っていて眠ってしまった・・・。 「それにしても・・・。あんた一体どんな夢みていたのよ・・・」 「・・・」 ”えっちなことしようか” 思わず顔を伏せる犬夜叉。 「・・・。何。その意味深なリアクション。もしかして・・・。いやらしい夢?」 ”いやらしい”いやらしい・・・ 夢の中のかごめの声が耳の奥でエコーする。 「んなわけねーだろ、わけねーだろねーだろーー!!」 犬夜叉、想いっきり動揺。 (く、くそっ。なんか完璧にかごめペースだ) 犬夜叉は納豆ご飯をかけいれ、食堂を出て行こうとする 「・・・犬夜叉待って」 立ち止まる犬夜叉の口元をかごめはエプロンの裾でふきふき・・・ 「///」 「今日ちょっとお願いがあるの。早めにく帰って来てね・・・」 犬夜叉は無言で二つ返事。 かごめの潤んだ瞳に 犬夜叉は昨夜の夢の中のかごめを思い出す・・・ (絶対早く帰って来るぞ) 棟梁にはや引きを頼もうかと思ったりしちゃった犬夜叉だった・・・ そして夕方。夜6時ジャストに帰って来ました犬夜叉君。 何故だか少し鼻息が荒いのはどうしてか。 「珊瑚っかごめは!??」 「あー。そういえば、部屋であんたのこと待ってるってさ」 ドタタタ・・・!! 今夜の献立は犬夜叉の大好物のなのにテーブルの上に餃子にも目もくれず二階へ駆け上がる犬夜叉・・・ 「ふふ・・・。いい”オチ”が待ってるよ。犬夜叉」 お腹をさわりながらにやっと笑う珊瑚だった・・・ かごめの部屋の前・・・ (こ、これは”夢”じゃねぇ・・・。かごめからの・・・。間違いなく) ”お誘い” だ!! コンコン。 犬夜叉は緊張しつつもノックする・・・ 「犬夜叉?おかえりなさい」 「お、おう。はいるぞ」 「・・・あ、待って。ご、ごめんね。ちょっと今手が話せなくて・・・」 (手が離せないって・・・何を”準備”してんだ!?) 犬夜叉の脳裏ではかごめがベットをせっせとセッティングしている様子が 「もういいよ。入って」 「お、おう・・・」 かごめの色っぽい声につられる様にドアをあけると・・・ ガチャ・・・ ベチャ!! どこからともなくゴム製のボールが犬夜叉の左目にHIT! 「なッ・・・」 下を見下ろすと、3歳くらいの少年二人が犬夜叉をきょとんとみあげている・・・ 「犬夜叉。紹介するわね。『犬組』卓也くんと啓太くん。双子の兄弟なの」 のっぽな犬夜叉は不思議そうに見上げている。 「双子って・・・。お前」 「あのね。同僚の子供さんなんだけど急に預かることになっちゃって・・・」 「預かることに・・・って。もしかして・・・オレを早く帰ってこさせたのは・・・」 「うん♪この子たち、見ててーーVVV」 かごめの言葉と共にどわっと犬夜叉の背中によじ登る双子たち・・・ (何かが・・・違うだろーーーーー・・・!!) 心の中で叫んだ犬夜叉の声は・・・ 愛の神様には届かなかった・・・(笑) 双子たちはよほど犬夜叉の背中と頭が気に入ったのか 髪の毛をひっつかんだりたたいたり完全に楽しい玩具にしている。 「てめぇら、オレは公園のジャングルジムじゃねぇんだぞ」 犬夜叉の部屋にまでひっついてきちゃいました。 さすがに子供に手を上げるわけにもいかず・・・ 何より ”お願い。私、保育所の仕事たまってるの。双子ちゃんたちのことみてて” とかごめのお願いで邪険に扱うことも出来ず・・・ (くそ・・・。なんでこうなるんだ・・・) 『かごめとビデオ見ながらいちゃいちゃ計画』を妄想していたが どうやら儚い夢に終わりそうである・・・ それになにより犬夜叉が苛ついているのは・・・ 「卓也くん、啓太ちゃん、お風呂にはいるからいらしゃーい!」 「はーい!!」 犬夜叉にぽいぽいっと服を脱ぎ捨てお風呂場に入ってく双子達・・・ (・・・かごめにべったりじゃねぇかよ(怒)) 何より犬夜叉が怒っているのは双子たちにかごめをとられちゃったこと。 風呂場のガラス戸越しに 中の楽しそうな声をむっとした顔で 「きゃははは。二人ともあんまりへんなところさわらいないでー」 (なっ・・・) 「やんvもおおー・・・。くすぐったいじゃないのもう〜・・・」 (///) 「・・・犬夜叉。貴様が何を妄想したか説明しようか」 にやにや笑う弥勒が背後に・・・ 「お、おまえなぁっ」 「流石の犬夜叉も子供達にかごめ様を取られて、有り余った独占欲は やはり男の本能的な妄想で解消するのか・・・。うん。わかる、わかるぞ・・・」 妙に納得している弥勒。 「てめぇにわかられたくねぇっったくどいつもこいつも・・・」 「ははは。それにしてもお前って本当に感情のまんまだよなぁ」 「あ?」 弥勒と犬夜叉は二階のベランダに出て缶ビールをあける。 「・・・。子供同じで・・・。怒りたいときに怒り、母を無条件に求めるように お前もかごめ様を求める・・・。自然体すぎて時々羨ましいぞ」 「なんか微妙に馬鹿だと言われてる気がするぜ・・・けっ」 ゴクゴクとビールを咽に通す犬夜叉・・・ 「ふふ・・・。心底惚れたおなごには男は馬鹿になるもんだ・・・。何においても守りたい ずっとそばにいたい・・・。ずっとそばにおいておきたい・・・。我が侭になるモンだ」 「てめぇの場合は助平ってのがつくだろ。ふん・・・」 「・・・。女の方はどうなんだろうな。男のようにずっと好きな男を独占したい・・・ いつも想ってくれていると想うか・・・」 穏やかに微笑んで空を見上げて言う弥勒・・・ 「・・・。かごめ様は謙虚な女性だから・・・。決して独りよがりな口にはしないだろうし 態度にも出さないだろう。特に”負い目”があると・・・」 「・・・」 「説教なんて沢山だって顔だな。だがな。独占欲を超えた”愛” をかんがてみろ」 「なんだそりゃ」 「相手を”慈しむ”気持ちだぞ。ふっふふ」 かなり自信満々に言う。 「珊瑚なんて結婚してから自分で誘ってきて・・・。ぐふふ・・・」 (・・・。コイツに相談するのはもうやめよう・・・(汗)) 子供に嫉妬してしまう幼さを感じながら (・・・気合いれねぇとな・・・。なんか最近オレマジでやわになってる気がする・・・) 恋に溺れがちな自分を 月夜に戒めるように・・・ 「ねんねーん・・・」 夜遅く双子の弟の方がぐずりだし、かごめがベランダで だっこしてあやしていた・・・ 「やっぱりママが恋しいのね・・・。ごめんね。今夜はママはご病気なの。 我慢してね・・・」 愚図るのを必死であやす・・・ (かごめ・・・) 子供の心に寄り添う それがかごめの『仕事』 (・・・オレは・・・。馬鹿だな・・・) ”労わる愛、慈しむ愛” 弥勒の言った言葉の意味を今 わかった気がする・・・ 「あ・・・。犬夜叉」 「・・・寝つかねぇのか。ガキ・・・」 ギシ・・・ ベランダの床が軋む 「うん・・・。ほら。親指しゃぶって・・・。母恋しなのね・・・」 「・・・。お前も・・・。大変だな」 「え?」 「・・・。オレになんか出来ることあったら・・・。て・・・。手伝ってやるからよ・・・」 犬夜叉はほっぺをぽりぽりかいて照れくさそうに言った。 「どうしたの?急に」 「・・・い、いいじゃねぇか。ヒトが好意で言ってんだから・・・」 「ふうん・・・。じゃ・・・お言葉に甘えて・・・肩かしてもらおうかな・・・」 かごめはそっと犬夜叉の肩に顔を預けた・・・ 「・・・。こんなんでいいのか・・・?オレが手伝うって・・・」 「うん。充分・・・。疲れたとき好きな人の肩に寄り添える・・・。幸せなことだもの・・・」 (かごめ・・・) 犬夜叉はかごめの肩をそっと抱いた。 「・・・オレはいつでもお前のそばにいる・・・つ、つっかえ棒にはなってやれる・・・(照)」 かごめはくすっと笑って犬夜叉の腕と腕を絡める 「うんありがと・・・。ちょっと嫉妬深いつっかえ棒だけど・・・(笑)」 「・・・けっ・・・」 優しい匂いが隣にある限り。 多分絶えない独占欲。 それを”労わる”こと変えて・・・ 「・・・今度の休みは一日中犬夜叉と過ごせるから」 「・・・(真っ赤)」 月が優しい夜だった・・・