続 居場所を探して
〜タンポポの種〜
第19話 一人ぼっちの花嫁
「・・・。いよいよ明日かぁ・・・」 教会での挙式本番前日の夜。 「明日。私、犬夜叉のところにお嫁にいくのね・・・。ふぅ・・・。ドキドキしちゃう」 かごめは一人、ベランダでのほのかな緊張感と感慨に包まれて浸っていた。 だが一方で新郎の方は違う意味の”ドキドキ”を味わっている。 「えーとえーと・・・。指輪の交換が終わってんでもって・・・」 親しい人だけを集めた披露宴での新郎のお言葉、を犬夜叉、メモのとおり、何度も読む練習。 「・・・だー!オレはこういうのが一番めんどくさくてきれーだ!」 だが、かごめのためだ、と思えば犬夜叉も大人になろうという気にもなる。 それよりも・・・ 犬夜叉君がお楽しみは・・・ (・・・式が終わって・・・身内だけのお披露目が終わって・・・。それから新婚旅行で。それから・・・) ・・・新婚初夜ーvv (///) やっと。やっと。合法的にこの世で一番大好きな子と一つになれる・・・夜v (///) 犬夜叉くん、”お楽しみ”があると思うと不思議なエネルギーが沸いてきます。 「よし。練習続けるぞ!」 というわけで、犬夜叉くん、再び新郎のお言葉の練習。 そんなこんなで、挙式当日の朝・・・ 「あ・・・」 「・・・あ」 朝、起きて二人階段のところで顔を合わす。 「お、おはよ」 「お、おす・・・」 いつもと変わらない朝なのに・・・ なんだか緊張する・・・ (今日。あたし犬夜叉のところに嫁ぐんだ・・・) (・・・今日・・・かごめがオレの嫁になるのか・・・) 「///」 「・・・(照)」 新鮮な空気。 「・・・あ、あの・・・。今日はよろしくお願いします」 「え、あ、おう、おう・・・」 お互いにお辞儀なんかしちゃって。 初々しい二人です。 そう。 今日この二人は結婚するのです。 色々あったけどやっと一緒になれる。 今日は特別な日。 「じゃ、じゃあ。犬夜叉。先行ってるね」 「お、おう・・・」 かごめはドレスの準備があるので一足先に教会のほうへタクシーで珊瑚と弥勒を乗せて 行きます。 「・・・。待ってるから。貴方を」 貴方、なんて言われて犬夜叉、ドキドキ。 (・・・あ、貴方って・・・(照)) 犬夜叉は照れくさそうにタクシーを見送る。 (・・・。あなた・・・か。”おかえりなさい。あなた”とか言うのか。かごめが・・・(にんまり)) デレデレしながら自分の部屋に戻る。 そして犬夜叉も支度を始めたそのとき・・・ 〜♪ 携帯が鳴った。 (この忙しいときに・・・) と思いながらも犬夜叉は出る。 「はい。もしもし・・・。ああ、あんたか」 相手は犬夜叉の知り合いらしいが・・・ どうも変な様子が漂う。 「え・・・!??な、なんだって・・・!???」 ポトリ・・・ 犬夜叉は愕然とした顔で携帯を落とす・・・ 「そ、そんな・・・」 犬夜叉はただ呆然と 立ち尽くしたままだった・・・
「かごめちゃん。とっても綺麗・・・」 「・・・や、やだな・・・。あんまり見ないで・・・」 教会の花嫁控え室。 白い花瓶に生けられたユリの花がかごめをより一層綺麗に魅せる 白いベールに包まれたかごめ・・・ 「・・・。私はかごめちゃんたちのお陰で一緒になれた。 今度はかごめちゃんの番だね」 「ありがとう・・・」 臨月を迎える大きなお腹の珊瑚。 親友の手をにぎり幸せになってほしいと想いを伝える。 「犬夜叉の奴、きっとかごめちゃんのこの姿見たらドギマギするよ。きっと」 「そ、そうかな・・・(照)」 犬夜叉に見て欲しい。 この純白の姿で好きな人に嫁いでく・・・ 一緒にバージンロードを歩きたい・・・ 湧き上がる気持ちをかごめは抑えられない。 (・・・犬夜叉。早く来て・・・。待ってる・・・) だが・・・ 式5分前になっても教会に犬夜叉の姿はない。 (どうしたの・・・?何かあったっていうの・・・?) 控え室で携帯を見つめるかごめ。 犬夜叉に携帯にかけてみたが電源を切っているのか出ない。 コンコン。 神父が花嫁を迎えに来た。 「あ、はい。今、行きます・・・」 かごめはドレスの下に携帯を隠して聖堂の方へ移る。 「・・・おい。犬夜叉はどうしたんだ」 新婦一人で新郎の姿がない。 弥勒や珊瑚たちも騒ぎ出して教会の周りをさがしに行く。 「アイツ・・・。こんな晴れの舞台の日になにやってんだ!」 お腹の大きな珊瑚がかごめの隣で怒っていると・・・ PPPPPPP!! 教会に携帯の音が響き渡る。 (犬夜叉だわ!) かごめが急いででると・・・ 「もしもし!??犬夜叉!?」 「・・・。かごめ・・・」 重たい声の犬夜叉・・・ 「どうしたの??事故にでも遭ったんじゃないかって心配したんだから・・・!」 「・・・。すまねぇ・・・。オレ・・・今、そこへは行けねぇ」 「え・・・!??」 何のことだか分からずかごめはただ困惑・・・ 「すまねぇ・・・!オレだけが幸せになるわけにはいかねぇんだ・・・!」 「あ、ちょ・・・っ」 ツー・・・ 犬夜叉は理由も何も告げないまま・・・切ってしまう・・・ 「・・・犬夜叉・・・」 携帯を持ったままたちつくす花嫁・・・ 教会に一人 純白のドレスが寂しく 光っていた・・・