続・居場所を探して
〜タンポポの種〜
其の二十 愛してるよりあったかい『オレだけが幸せになるわけにはいかねぇんだ・・・』 謎の言葉を残し、犬夜叉は姿を消した。 ・・・花嫁を置き去りにして。 「犬夜叉の奴・・・。帰ってきたら体中の関節粉々になるまで 折ってやる・・・」 「・・・(汗)さ、珊瑚ちゃん。た、胎教に悪いから落ち着いて・・・(汗)」 ボキボキを腕を鳴らして怒っている珊瑚。 かごめよりも恨みがたまっていそうである。 「おちついていられますか!花嫁をおきざりにするなんて・・・!! アイツ、どこまでかごめちゃんに甘えたら気がすむんだ・・・!!あーー!もう!!」 テーブルをドン!とたたく妻を見て 隣で密かに縮まる夫・弥勒。 (・・・オレが犬夜叉の立場なら入院の手続きとってから帰るな・・・(汗)) 「ねぇ!弥勒様!心当たりない!?犬夜叉があんなことする・・・」 「さぁ・・・。アイツのプライベートまでは・・・」 「なにさ!肝心なこと知らなくてエロな話ばっかりしてるんだから・・・!”やる” ことしか考えてないの!??男同士って!!」 「・・・。珊瑚。お前、怒りに任せて結構エロな事いまいったぞ・・・?」 ぽっと赤くなる珊瑚だが、今は照れている場合でない。 「と、とにかく珊瑚ちゃん。私もう少しだけ待ってみる・・・。きっと 止むにやまれない事情があったんだと思うから・・・」 かごめはそういい残し 二階へあがっていったが・・・ その背中は寂しさと不安が漂う・・・ 「・・・。全く・・・!!男にはわからないよ・・・!結婚式に一人取り残される なんて・・・!女にとったらどんなに惨めで情けない気持ちになるか・・・」 「・・・。珊瑚・・・」 「私はね・・・。かごめちゃんには誰よりも幸せになってほしいんだ・・・。 私がこうして今、弥勒さまと一緒にいられるみたいに・・・」 じわっと涙をためる珊瑚を抱き寄せる弥勒・・・ 「そうだな・・・。かごめさまにはもう・・・。気苦労なんて してほしくない・・・」 (犬夜叉・・・。お前ホントに罰当たりだぞ・・・) 弥勒は犬夜叉にむかってそう心の中で呟いた・・・ そして次の日の夜。 (犬夜叉・・・) かごめは携帯を離さず。犬夜叉からの連絡をひたすら待っていた。 ・・・壁にはウェディングドレスが寂しげに掛けられていて・・・。 (・・・何があったの・・・。本当に・・・) 事故にでもあったのか。それとも・・・ (まさか) こういう時、女の感は鋭く働くものである。 (・・・桔梗絡み・・・のトラブル・・・?) かごめは自分の思考を振り払うように頬をたたく。 (そんなことあるはずない・・・。犬夜叉を信じなきゃ。でも連絡もなにもないなんて 酷いよ・・・。) ぎゅっと携帯を握り締める・・・ (・・・酷いよ・・・) 〜♪ 携帯が鳴った。 だが・・・。 (これは犬夜叉の着メロじゃない・・・) P・・・ 少し落胆してかごめが出ると・・・ 相手は犬夜叉の同僚からだった。 かごめがもし犬夜叉から連絡があったら教えてほしいと言っていた相手だ。 「・・・え!??犬夜叉から・・・!??」 犬夜叉の同僚にとある出来事の事情を聞き・・・ かごめは犬夜叉が姿を消した理由が大体見当がついた。 「わざわざ教えてくださって・・・ありがとうございました」 P。 (・・・犬夜叉・・・。ホントにもう・・・。馬鹿なんだから・・・) かごめはすぐ旅行バックを取り出し、荷造りを始めた。 「か、かごめちゃん、どこいくの!??」 玄関で珊瑚と弥勒がかごめを呼び止める。 「もしかして犬夜叉が見つかったのですか!?かごめ様!」 「・・・。弥勒様。珊瑚ちゃん臨月なんだからいろいろ助けてあげてね・・・。珊瑚ちゃんも 体大事にね・・・」 「え??あ、あの・・・っ」 なんだか刹那な瞳と言葉を残し・・・ かごめは楓荘を跡にする・・・。 「な・・・。なんなんだ・・・。かごめ様のあの哀愁を帯びた瞳は・・・。 ま、まさか犬夜叉が姿を消した理由って・・・」 顔を見合わせる弥勒と珊瑚・・・ (・・・桔梗・・・か!??) 「・・・この期に及んであの二股男・・・。かごめちゃんまた 泣かせたら骨の髄引きずり出して全部切り裂いてやる・・・っ」 シャキーッンと珊瑚の右手の包丁が 不気味に光る・・・ やっぱり縮こまっている夫・弥勒。 (ひぃぃ・・・っ。お、恐ろしすぎる・・・。う、産まれて来る子には空手は絶対させないでおこう・・・(汗)) 犬夜叉が消えた理由。 それは果たして・・・ かごめは新幹線に乗り 東北のとある中核都市にやってきていた。 (えっと・・・) 楓からとある場所の住所が描いてあるメモを手に かごめはある場所に。 「ここだわ」 『たんぽぽ愛育園』 赤いレンガ。 ブルーの屋根。 絵本に出てくるような家だ。 小さな畑があって子供達が遊んでいる・・・ (・・・犬夜叉・・・) ここは犬夜叉が幼い頃預けられた施設だ。 かごめはキョロキョロと園内に犬夜叉の姿を探す・・・ と・・・ ノコギリと釘を打つ音が聞こえてくる 「あー!犬の兄ちゃん、ホントに大工なのか〜??」 「うっせぇなぁ!!オレはな、一軒家たてたんだ。黙ってみてろ!」 ベニヤの板をノコギリで足をかけて押さえて切る犬夜叉。 犬夜叉のまわりには子供達が集まって囲んでいた・・・ 「けっ。犬小屋ぐらい3分でつくってやる」 「犬の兄ちゃんだからね」 「くだらねぇしゃれいうんじゃねぇ!」 子供達と大笑いする犬夜叉・・・ 犬夜叉を見つめるかごめは思う・・・ (あれが本当の犬夜叉のなんだよね・・・) 優しく笑っている 声をかけるのを止めかごめは暫く 子供達に囲まれる犬夜叉を見つめる・・・ (あんな犬夜叉だから・・・。きっと・・・) 結婚式をすっぽかした理由も納得できると感じるかごめ。 「あれー?あそこにとってもきれーなお姉さんが立ってるよ」 少女がかごめを指差し犬夜叉が振り返る・・・ 「・・・。か、かごめ・・・」 のこりぎりを置き、犬夜叉はかごめに近寄る。 「・・・犬夜叉・・・」 「あー!私お姉ちゃんのこと知ってるよ!犬の兄ちゃんの携帯の画面のおねーさん!」 「え?」 「わ、馬鹿、余計なこというな!!」 犬夜叉、あわてて少女の口塞ぐ。 「・・・。と、ともかくここじゃなんだから・・・。あっちで話すぞ」 「うん・・・」 二人は学園の事務室を借りて話すことにした。 子供達は二人がキスでもしないかと興味津々でドア越しに覗いている・・・ 「・・・。怒って・・・るよな?」 「・・・」 かごめの無言が怒っていると犬夜叉に伝える。 「・・・。す、す、すまねぇッ!!な、殴っていいぞ!覚悟はできてる!」 「・・・そう・・・。じゃあ一発いくから歯、食いしばって!」 犬夜叉は目を閉じた。 (・・・に、3発じゃすまねぇよな) と覚悟しながら。 だが犬夜叉の手に何かを握らすかごめ。 「・・・ん?」 犬夜叉が握らされたもの。それは請求書。 「ドレスの代金。まだ払ってなかったンだってね。立て替えておいたから あとでちょーだい」 「なっ・・・。て、てめぇ。お、オレを探しに来たんじゃなくて金を回収しに きたのかよ!」 「偉そうなこといわないでよ!!花嫁を置き去りにした新郎は誰よ!??」 「う・・・。や、やっぱ怒ってんじゃねぇか・・・(恐る恐る)」 犬夜叉、かごめの迫力にびびる・・・ 「怒ってるわよ!!でもね!私が怒ってるのは結婚式のことじゃなくて どうして私に相談してくれなかったかってことよ!」 「え・・・」 「みんな聞いてる・・・。同僚の人がいなくなったこと・・・。子供を残して・・・」 「かごめ・・・」 犬夜叉の同僚の松本。犬夜叉のよき兄貴分だったが 結婚式当日。 『七宝を頼む・・・』 犬夜叉に息子の七宝を託し、姿を消した・・・ かごめがこの事情を聞いたとき、 きっと犬夜叉はその残された子供を連れてここにきていると直感した。 たった一人。残される子供の気持ちを犬夜叉は・・・ 誰よりも知っているから・・・ 「・・・。松さんがいねぇだなんて信じられねぇ・・・。元々オレと同じで 身内なんていねぇ人だった・・・。だから松さんの気持ち、すげぇわかって・・・」 「犬夜叉・・・」 「七宝見てたら・・・。オレだけが・・・。幸せになれねぇって・・・思った・・・」 犬夜叉は哀しそうに声を押し殺して話す・・・ 「犬夜叉は・・・。その先輩の同僚の人が好きだったんだね・・・。信頼 していたんだね」 「すまねぇ。かごめ。オレの都合でお前を・・・」 「いいよ。もう置いてけぼりは慣れてるから・・・。それに私が犬夜叉の立場でも 同じこときっとしてたと思う・・・」 「かごめ・・・」 かごめの言葉に犬夜叉の心がほっと軽くなる。 「・・・。ねぇ。その子。ここで暮らすの?」 「え?ああ・・・。多分そうなると思う・・・。工務店の寮にはいられねぇし・・・」 「・・・」 かごめは少し考えてから犬夜叉に申し入れる。 「その子・・・。お父さんが見つかるまでうちに来ない?」 「え!??」 「だって。犬夜叉しか今、その子は信頼できる人いないんでしょう? ここでの集団生活はちょっとキツイんじゃないかな」 かごめは窓の外で元気に遊ぶ子供達を見つめながら話す。 「でも・・・。いいのか?」 「・・・。いいも悪いも・・・。犬夜叉がほおっておけいことは私もほおっておけない。 当たり前でしょ・・・」 (かごめ・・・) 「それに?」 「親に置いていかれる気持ちは私にもわかるから・・・」 かごめもまた・・・ 自分を置いて姿を消した母を持つ。 「・・・。その子はどこにいるの?」 「鉄棒の前で座り込んでる・・・」 犬夜叉が窓の戸を指差す。 6歳ぐらいの少年が足を組んで俯いている・・・ 「・・・。青い空だね。七宝くん」 かごめは少年・七宝の隣にちょこんと座る 七宝はかごめに背を向ける。 「・・・私。かごめっていうの。空・・・好き?」 「・・・」 「あたしは好き。空の青が一番好き」 「・・・」 七宝もすこしだけ 空を見上げた。 「・・・七宝くん。私の部屋からみる空もすごく綺麗なんだよ」 「・・・」 かごめはそっと七宝を抱き上げた。 「七宝君・・・。青空っていいね・・・。いいね・・・」 小さく震える手をかごめは握り返す・・・ かごめの温もりに 七宝の強張っていた表情も少し和らぐ・・・ (かごめ・・・。お前・・・。ホントに不思議な女だ・・・。そして・・・。 オレには勿体無い女・・・だ) 自分の全てを受け止め、共に背負うとしてくれる・・・ 犬夜叉の心に想いが溢れる。 「かごめ」 犬夜叉は静かに近づく・・・ 「あ・・・。犬夜叉・・・。七宝くん寝ちゃったみたい・・・」 かごめに抱かれすやすや眠る七宝。 「・・・お父さんがいなくなった現実を抱えて・・・。心が一杯一杯なのね・・・」 七宝を髪をなでるかごめ・・・ 「・・・かごめ。オレ・・・。そのあの・・・」 「え・・・?」 犬夜叉はかごめの耳元でぼそっと言った・・・ 「///。くすぐったいよ・・・もう・・・」 「なっ・・・。や、やらしい言い方すんじゃねぇッ」 何故か赤面する犬夜叉。 「・・・。もっかい言って」 「え・・・」 犬夜叉のTシャツをくいくいっとひっぱるかごめ・・・ 「もっかい言って」 そんなかごめの仕草が可愛くて・・・ 「わかったよ。耳かしな(照)」 犬夜叉はかごめの耳もとで呟こうと・・・ CUHッ 犬夜叉の唇に軽くKISS 「///」 「えへ・・・。不意打ちキス・・・。なんちゃって」 ぺろっと下をお茶目にだすかごめ。 (ああ・・・畜生。もう・・・///) かごめの可愛さに 犬夜叉はもうどうしようもなく・・・ とろけそう・・・ 「犬夜叉・・・。ありがとね」 「///」 (くそ。かごめったらかごめったら・・・) かごめの愛らしさに 犬夜叉はかごめをぎゅううっと抱きしめる・・・ 「え?あのちょっと。犬夜叉、ここで・・・」 「うるせぇ・・・。お前があんまりあんまり・・・」 可愛いから・・・ 犬夜叉、子供達の視線も無視してかごめをめいっぱいハグ・・・vv 「かごめ。オレの・・・可愛いかごめ・・・」 「・・・犬夜叉・・・ったら・・・」 子供達に囲まれて 二人は抱きしめあう。 その真ん中で 小さな瞳が少し動く。 それに気づいたかごめ 「犬夜叉・・・。お父さんが来るまで私たちが七宝ちゃんのお父さんとお母さんだよ」 「・・・ああ」 「・・・。傷ついた痛みの分・・・。七宝君にも私たちの大好き、分けてあげよう」 「ああ・・・。そうだな・・・」 犬夜叉は七宝の小さな手をそっと取る・・・ そしてかごめが二人の手をさらに包んで・・・ こうして 小さな家族が出来た。 借りの家族だけれど・・・ ”オレはお前が一番・・・大好きだ” 犬夜叉がかごめに伝えた言葉。 愛してるより あったかい。 二人のスタートは色々あるけれど 魔法の言葉があれば大丈夫・・・ きっと・・・