続・居場所を探して
〜タンポポの種〜
其の二十三 犬夜叉の子守唄
珊瑚の出産から2週間。 珊瑚の赤ちゃんは嬉しいことに大分体重も増えて保育器から出された。 「・・・希(のぞみ)ちゃん。おかえり」 珊瑚の腕の中ですやすや眠る赤ちゃんにかごめは微笑む。 珊瑚と弥勒の第一子。長女・希ちゃんです。 「みんなが希望を捨てずにいてくれたからこの子は生まれた・・・。 だから希ちゃん・・・か。弥勒さま、すごくいい名前選んだよね・・・」 「うん・・・。本当にいい名前・・・。ね。希・・・」 珊瑚は希の小さな手をきゅっと指で握る・・・ 「・・・珊瑚ちゃん。今・・・。すっごく綺麗よ」 「えっ。な、何、急に・・・」 「お母さんの顔・・・。とても慈愛に満ちた・・・一番女性らしい 綺麗な顔してたから・・・」 「や・・・。やだ。かごめちゃんたら・・・。わ、私なんて 家事とかあんまり出来ないし・・・いいお母さんになれるか・・・」 「大丈夫よ。だって珊瑚ちゃん。希ちゃんのこと、大好きでしょ? その気持ちがあれば・・・大丈夫。ね?」 かごめは珊瑚の手を握り締め励ます・・・ 「かごめちゃん。ありがと・・・。かごめちゃんが親友でよかった・・・」 同じ女同士・・・ 気持ちが分かり合えることが嬉しい・・・ 病室の外でかごめ達のやりとりを聞いていた男衆は。 「犬夜叉。かごめ様はきっと世界一の母親になれるな・・・。あの強さと 優しさは誰も適わない・・・」 「ああ」 「だったらお前は世界一の父親にならねば。釣り合いが取れない」 「偉そうに。てめぇに言われたくねぇよ。看護婦ナンパしてたって 珊瑚に言ってやろうかな〜♪」 犬夜叉、先手を取ったり・・・そんな顔をしている。 「ふっ。言いたいならそれもよし。今、オレと珊瑚には希というかたーい絆が 在る。私のナンパの一つや二つなど・・・」 余裕をぶっこいている弥勒だが背後に殺気が・・・ 振り向くと目が三角の珊瑚が・・・ 「さ、珊瑚・・・」 弥勒、後ずさり・・・ 「へぇええ。ナンパの一つや二つねぇ・・・」 珊瑚、目が据わってます・・・ 「希。こんな助平なパパはいらないね。ポイしよ、ポイ! もう希、抱かせてあげないから!!ふんッ」 「あ、そ、そんな〜。珊瑚、私にも希をだかせてくだされ〜・・・」 いつものごとく弥勒夫妻のケンカ勃発・・・ 犬夜叉とかごめは同時に呆れ顔。 「でもま・・・。この展開の方が珊瑚ちゃんたちらしいわね。ふふ」 「・・・だな」 くすっと笑う二人・・・。ケンカができるほど、元気になった。 珊瑚も。そして新しい命も。 こうして珊瑚の出産騒動は無事終わり、退院してきた。 新たな住人・仏野 希(生後2週間)が加わり、楓荘にもいつもの日常が戻って 参りました。 「きゃあ。希ちゃーん。ばぁあ♪」 珊瑚の腕の中であくびをするたびかごめと七宝と弥勒はその可愛さに メロメロ。 「きゃは。くしゃみした。かっわいい〜☆」 「可愛いのう〜。オラもこんな妹がほしいわい」 食堂でアイドルとなっております、希ちゃん。 だが約一名。 つまらなそうな顔の男、一人あり。 「おいー。かごめ。飯はまだかよ」 「え?何犬夜叉。あんたいたの。ご飯ならお湯沸かしてあるから 勝手に食べて」 「か、勝手にって・・・」 テーブルの上には毎度おなじみカップラーメンが。 「なっ・・・。かごめお前、疲れて還って来た亭主にカップラーメンって・・・」 かごめに抗議する犬夜叉だが。 「亭主・・・?私達、まだ結婚してないでしょ。だから勝手に食べてて。 あ、希ちゃんのおむつの時間だわ!」 「なっ」 かごめは犬夜叉にガラガラを持たせ二階に駆け上がっていく・・・ (・・・。オレは赤ん坊じゃねぇぞ!) 完全に希にかごめを取られ、犬夜叉、面白くない。 「犬夜叉・・・。お主。生まれて間もない赤子にまで 妬いて折るとは・・・。ふっ。やはり子供じゃな。その ガラガラがようにあっておるわい」 (・・・(怒)) ニヒルな顔の七宝。 カチンと犬夜叉の苛苛に火をつけました。 「生まれてたった6年のてめぇに言われたかねぇてんだぁあ!!」 「わーー!!かごめ、犬夜叉がまたおこったぁ!」 犬夜叉と七宝の子供のけんかが勃発・・・ そんなこんなで楓荘の食堂はいつも賑やかです。 「賑やかなのは・・・いいのう」 当の楓ばあちゃんは若い住人達を縁側で見守ってます。 ワンワゥ!【アタシも早くこどもつくろうかしらね!】 ゴマちゃんと一緒に(笑) そんないつもに日常が戻った楓荘ですが。 犬夜叉の機嫌は治らず。見かねた弥勒と珊瑚はある提案をした。 「何・・・!?お、オレとかごめが希の子守を・・・?」 「ええ。私と珊瑚は無事、出産したことを珊瑚のお父上に 報告してきます。本当は希も連れて行きたいのですが、遠出を して希が風邪でもひいいたら大変ですからね」 「犬夜叉一人に希を預けることなんて死んでも出来ないけど、 かごめちゃんが一緒なら安心。娘をよろしくお願いします。かごめちゃん」 「任せて!希ちゃんはわたしが全身全霊でお世話させていただきます」 何だか保母と園児の母の会話みたいだ。 「というわけで犬夜叉・・・。明日の休み、よろしくね♪」 かごめは犬夜叉にウィンク。 (よ、ヨロシクねって・・・(汗)) かごめ、希のちっちゃな手を犬夜叉に振って頼む・・・ 翌日。 朝早く珊瑚の実家に向かった弥勒と珊瑚・・・。 オギャーーー! ンギャァア・・・!! けたたましい元気のいい希の泣き声が楓荘に響く。 「はいはいはい。希ちゃん。はい。ミルクよ」 かごめは哺乳瓶を頬に当て温度を確かめてから希に飲ませる・・・ 犬夜叉は自分の朝ごはんはまだかと言わんばかりの顔で むっつり。 「犬夜叉。そこでヤキモチなんて妬いてないでちょっと 希ちゃん、だっこしてみてよ」 「だっ。誰がヤキモチだ・・・。ったく・・・」 渋々、犬夜叉はかごめのとなりにどすん、と胡坐をかいて座る。 「いずれは犬夜叉もお父さんになるんだから練習練習」 「///」 犬夜叉、ぽっと赤くなる。 「はい。お父さん。赤ちゃんにだっこしてあげて。首もっちゃだめよ」 「・・・え、あ、お、おう・・・(汗)」 かごめはそっと希を犬夜叉に抱かせる・・・ ぎこちなく犬夜叉は希をだっこ・・・ (ち、ちっちぇぇ・・・) 何もかもが小さい。 足も・・・。 少しでも力を入れると壊れてしまいそうな・・・ 「どう・・・?」 「な、な、なんか緊張するな・・・」 犬夜叉はかごめに希をそっと返した・・・。 「赤ん坊ってなんか怖えぇな・・・」 「そう・・・。最初はみんな何もわからないからそう思うの」 かごめは哺乳瓶を振って希にそっと飲ませる・・・ チュッチュッと勢い良く希は吸ってている。 「本当はママのおっぱいがいいんだけど今日はミルクで我慢してね」 (お、おっぱいって・・・(照)) 犬夜叉、視線がかごめの胸元に・・・ なんだか生々しい・・・ 「・・・。犬夜叉。お主、いま、よからぬ想像しおったな?」 「ばっ・・・ガキが突っ込むな!!ふんっ」 犬夜叉はすっかりご機嫌斜め。 でもちゃんと”よからぬ想像”はしちゃってました(笑) 「あーあ。希ちゃん。犬夜叉お父さん今日は機嫌が悪いみたい。 こんなに天気がいいのにねぇ」 秋空。 うろこ雲が空を流れる・・・ 「・・・よく寝てンな・・・。赤ん坊ってのは・・・」 「そうよ。赤ちゃんは眠るのと泣くのが仕事だから・・・。一体どんな夢、 見てるのかな・・・」 ピンクのポチャポチャのほっぺを人差し指でかごめはつんつんする。 「なぁ。かごめ。犬夜叉もオラもかごめも・・・。みいぃんな赤ちゃんだったんのか?」 「そうよ。みんなこんなにちっちゃかったの」 七宝は不思議そうに希の寝顔を覗き込む。 「頑張って生まれてきたの。お母さんのお腹から 頑張ってかんばって・・・」 「・・・。そうか。オラは頑張って生まれたのか」 「そう・・・。だから、七宝ちゃん命は大切にしなきゃ駄目なの。 その日その日を大切に生きなくちゃね・・・」 かごめは七宝の髪を優しく撫でた。 「犬夜叉。みんなで手を繋ごう」 「あ?」 「いーからいーから」 かごめは犬夜叉の細長い指を希の楓のような手のひらに招いた。 希の指はきゅっと犬夜叉の人差し指を握り締める・・・ 「・・・希ちゃんと犬夜叉の握手。みんな家族よ」 「・・・フン(照)」 七宝も犬夜叉の右手を握った。 「家族じゃ。約一名ふて腐れた犬がおるがの」 「けっ・・・」 縁側で。 みんなで手を繋いで空を見上げる。 ゆったりとした時間が流れていく。 (・・・こういう一時を・・・かごめが教えてくれたんだよな) 犬夜叉はかごめの横顔を見つめながら思う・・・ 当たり前の幸せは かごめとともにつくっていくのだと・・・ 「かごめ」 「なあに」 「///。お、お、お前・・・。きっといい母親になれる・・・と思う」 「え・・・。そう、ありがと・・・v私・・・犬夜叉の赤ちゃんはやく産みたいな」 (///) 犬夜叉、もうなんともいえないこそばゆい気持ちが溢れ 思わずかごめの頬にてを添えてしまう。 「・・・犬夜叉。今はちょっと・・・」 「うるせぇ。したくなったんだから仕方ねぇだろ」 「・・・駄ぁ目。子供達がみてるから」 七宝、じーっと二人を観察しております。 「・・・オラは構わんぞ。今時キスぐらい小学生でもしておるわい」 「・・・」 七宝、大人の世界を知り尽くしている子供らしい(?) 「犬夜叉。今はみんなで空を見上げてようね。ふふ・・・」 「けっ・・・」 いつもの風景。 でもそれが一番大切な幸せだ。 当たり前の風景を 大切に大切に・・・