続・居場所を探して
〜タンポポの種〜
其の二十四 健康的な恋愛で行こう
”私・・・早く犬夜叉の赤ちゃん産みたいな・・・” そーんな台詞を聞いたものだから。 何だか最近またまた発情気味の犬クンは (ドキドキ) かごめの近くにいると動悸がはやくなってきます。 「・・・犬夜叉。やらしい顔しておるぞ」 「!!」 食堂で、納豆ご飯を食べる七宝に突っ込まれる犬夜叉。 「七宝。犬夜叉はな、かごめ様に”欲情”しているのですよ」 「ばっ。弥勒てめぇ、妙なこと吹き込むなッ」 慌てて七宝の耳を塞ぐ犬夜叉。 そこへかごめがお盆に味噌汁を乗せて運んできた。 「なぁかごめ」 「なあに?」 「・・・欲情って何だ?」 ベチャ・・・。 かごめ、唐突な七宝の質問に思わず犬夜叉の味噌汁をこぼす・・・ 「あのな、今、犬夜叉と弥勒が言っておったんじゃが、犬夜叉がかごめに・・・ブガ!!」 犬夜叉、七宝の耳と口を両方抑え、質問を阻止。 「・・・な・・・。なんでもねぇからな、なんでも・・・っ」 「・・・」 かごめは顔を真っ赤に染めてパタパタとスリッパを鳴らしてキッチンへ 戻ってしまう・・・ 「・・・やーい。かごめにそっぽむかれてやんのー!」 バキ! 「わーん」 七宝、犬夜叉からお仕置き、今日一発目を食らう。 「・・・けっ・・・なんか今日はムカつく!オレは朝飯いらねぇ!」 犬夜叉はリュック一つ背負い、むすっとした顔のまま仕事に出かけた。 (朝からもう・・・うちの男達は何を考えてるの) 一方。七宝の爆弾発言にキッチンで洗い物するかごめはただ ドキドキしていた・・・ だがそのドキドキはかごめの職場でも引き継がれる。 子供達が帰ったあとの職員室。 「ねぇねぇ。かごめ先生」 「何ですか?」 かごめは保育園便りをパソコンで作りながら同僚の話を聞く。 「かごめ先生って・・・。勝負下着って持ってる?」 「え’’・・・(汗)」 キーボードを打つかごめの手が思わず止まる。 「私の彼氏ね・・・。最近私にそっけなくて・・・。だからちょっと過激な 下着をつけて迫ってみようと思うの」 かごめの耳元でぼそぼそと話す同僚。 ここは神聖な保育所。子達が楽しく過ごす場所なのにどうして プライベートな話題が平気でできるのだろうとかごめは何だか苛苛してきた。 「ねぇかごめ先生・・・」 「申し訳ありませんけどご自分で選ばれてください!!失礼します!」 かごめはパソコンの電源を切り、むすっとした顔で職員室を出た・・・ かごめの剣幕に同僚は圧倒・・・。 「・・・。私、なにか悪いこといったかな・・・」 「ほんっとに最近の若い子ってば謙虚さがないっていうか、露骨すぎるのよ!」 スーパーでスーパー袋にサツマイモや大根を入れながら怒るかごめ。 (何が勝負下着よ。それより自分の仕事にもっと情熱を向けるべきだわ!) 苛苛が収まらないかごめ。 恋愛するのは悪いことではないがもっと心を大切にした恋愛がいい・・・そう思うかごめだが。 (・・・生々しいのは嫌よね) 今時、お堅い考えかもしれないが少なくとも結婚という区切りをつけるまでは ”責任がとれないような”行為はしたくない。 「・・・!」 かごめが通り過ぎようとして思わず立ち止まったところ。 女性用下着売り場の入り口だった。 その入り口には・・・なんとも過激な細いひも状のような黒い下着が・・・ (・・・こ、こんなの誰が着るの・・・) ”彼に迫ってみようと思うの・・・” 同僚の言葉が過ぎる。 「・・・や、やだ。あたしったら何思い出してるんだろ。早くカエロ・・・」 そそくさと売り場から逃げるように通り過ぎるかごめ・・・ スーパーの帰り。 本屋の前を通り過ぎるかごめの足がまたとまった。 『私だって彼氏に迫りたい!女の子だって熱くなる! 私と彼の熱いー夜』 そんな謳い文句の少女漫画雑誌をかごめはペラペラを捲ってみる・・・ 「・・・(混乱)」 内容のあまりの過激さにかごめは絶句・・・ (ど、どこが”少女”漫画なのよ・・・。少女があんな・・・) ショック状態のままかごめは家に戻る・・・ (何だか心を清めたい気持ち・・・。美味しいものつくって リフレッシュしなくちゃ) そうおもいながらキッチンへ行くと男衆の話し声が聞こえてきた・・・ 「弥勒。お前、やったのか?」 「え?ああ、やったぞ。ばっちり決まったサ」 「・・・相変わらずだなぁったく・・・。お前のやり方は真似できねぇ」 (な、な、なんて会話してるの!!) ある一言がかごめには別の言葉に聞こえて・・・ 「みんな食堂でなんて会話してるのよーー!!」 大声をあげて食堂にはいっていくと・・・ (え) テーブルの上で、人生ゲームが広げられていた・・・ 「・・・なんだよ。かごめ。お前声あげて」 「・・・やるって・・・ゲーム・・・」 「ああ。七宝の奴が相手しろってうるせーから」 犬夜叉はルーレットを回しコマを動かす。 (・・・やだ・・・私ったら・・・) かごめ、とんだ勘違いにちょっと自己嫌悪・・・ 「おう。かごめ、腹へったぞ。オラ、ハンバーグがいいなぁ」 「ごめんね。七宝ちゃんい、今ご飯の支度するね・・・」 クルクル・・・ カタカタ・・・ 人生ゲームのルーレットのように かごめの心もぐるぐる回っている・・・。 (・・・。なんか・・・違う気がする。恋愛はそれぞれの形があると思うけど・・・) キスを一度でもすれば恋人? キスをしていない男女は恋人じゃない? 深い関係のないカップルは変? 現代にあふれる情報。思想。 それに振り回されそうになるときがある。 大切なものはなにか、見失いがちになる・・・ 「・・・。やっぱり私は健康的な恋愛をしたい。だって・・・」 欲にまみてしまったら 恋が恋でなくなる。 自然の心の流れに任せる。 自分を見失うような恋は・・・誰かを傷つけ、自分も傷つく。 「はぁー・・・。いい天気!」 翌日。 かごめの心の中のモヤモヤを一層するような雲ひとつない青空が広がる。 「ん?」 トントン。カンカン・・・ 庭から金槌の音が聞こえる。 かごめが庭に出るとゴマちゃんちの屋根を修理している犬夜叉。 「犬夜叉・・・。それ気づいてくれたの?頼もうと思ってたの」 「けっ・・・。暇だったからな」 いつもならこちらから頼まないとしてくれなかったのに自分から・・・ (何だか私の気持ちが犬夜叉に通じたみたい) 「うふ」 「何笑ってんだよ」 「別に。ただうれしいの」 「・・・。変な奴」 たわいもない事がこんなに嬉しい。 (そう・・・。私が感じていたいのはこういうあったかいキモチ・・・) 『女の子だって迫りたい・・・』 少女漫画雑誌の煽り文句のような激しい生々しい関係には簡単に なりたくない。 もっと・・・ (恋を育みたいの) かごめは犬夜叉の広い背中を見つめながら思う・・・ 「ふう。穴あいてたからな。塞いでおいた。これで大丈夫だろ」 「犬夜叉。ありがと。なんだかかっこいいよ」 「ばっ・・・!きゅ、急に照れくさいこと言うなよッ」 「うふふ・・・」 好きな人の照れた顔が嬉しい。 それを見つめられるこの恋が嬉しい・・・。 「あ、犬夜叉。汗・・・」 (ドキ) かごめは背伸びをして犬夜叉の額の汗をハンカチで拭う。 (・・・ドキドキ) 犬夜叉、かごめの何気ない行動にやっぱりまだまだドギマギしてしまいます。 「なんか・・・。いいよね。こういうの」 「あ?」 「・・・いいの。女の子のキモチなんだから」 「??」 犬夜叉は首を傾げる。 そんな仕草も好きになれる。 幸せな心地いい恋がやっぱり一番いい・・・ 「お茶、淹れたから縁側で飲もう」 かごめは冷蔵庫から冷えたお茶をコップに注ぎ持ってきた。 犬夜叉は咽がかわいていたのか一気に飲み干す。 「・・・」 かごめは空になった犬夜叉のコップをじっと見つめる。 そして何を思ったか自分のコップのお茶を入れ替えて飲んだ。 「ふふ・・・。これで犬夜叉と間接キス・・・だねv」 「・・・なっ(照)」 犬夜叉、ぽっと頬を染める。 「えへへ・・・。なんかくすぐったいね」 「///。な、なに言ってんだよ・・・。今日なんかお前、変だぞ・・・」 (変っていうか・・・可愛いっていうか) 「そう?でもいーの。変でも。私は私なりの恋があるんだから。 好きな人がいる幸せを噛み締めてるの」 「///」 犬夜叉も可愛い恋人がいる幸せを照れくさそうに噛み締める。 (私達は・・・私達の恋でいいのよ・・・ね?) 青い空のように 穏やかな。 でも時々ちょっぴりだけ刺激的な・・・ かごめは新鮮な空気を思い切り吸い込んで 犬夜叉と一緒に空を眺めていたのだった・・・