続・居場所を探して
〜タンポポの種〜
其の二十五 女を支えられる男
「くしゅんっ」 ピピッ。 ベットに寝込み、熱を測るかごめ。 「ふぅ。完璧に子供達の風邪うつちゃったみたいね・・・」 アイスノンでおでこをひやすかごめ・・・ 風邪をひいたのは久しぶり。 ガチャ・・・ 「・・・かごめ。大丈夫か?」 ちょっと帰りが遅かった犬夜叉。こそっとかごめの様子を見に来た。 「犬夜叉・・・」 かごめは起き上がる。 「寝てろよ。ほら・・・。林檎すってきてやったぞ」 「え?」 犬夜叉、ガラスの底の深いお皿に摺った林檎を入れて持ってきた。 「・・・犬夜叉・・・が?」 「なっ。なんだよ・・・っ」 「・・・ううん。でもちょっとびっくり・・・」 犬夜叉のことだから、”けっ。風邪なんかな、一晩ねりゃーなおる”とか言うだけ がいい”オチ”なのに。 「と、とにかく食べろよ。水分とらねぇといけねぇだろ」 「う、うん・・・」 かごめはスプーンで一口、食べてみる。 「ど、どうだ・・・(汗)」 「うん・・・。冷たくておいし・・・。ありがと。犬夜叉・・・」 「///。べ、別に・・・」 犬夜叉、ぷいっと照れ顔を隠す。 自分が風邪を引いているので気遣ってくれているというのもあるだろうが・・・ 「なんか・・・。犬夜叉。優しい」 「あ??」 「・・・。惚れ直すくらい・・・。優しいからなんか クラクラしちゃうよ・・・」 「・・・(照)」←かごめの言葉にもう、犬夜叉の方がクラクラ。 お互い、 何だか最近ちょっとだけ前より素直になってきた気がする。 特に相手が辛いときは・・・。 「と、とにかく寝てろ・・・。ほら」 「うん・・・」 犬夜叉、自分の革ジャンをかごめに着せ寝かせる・・・ 「ふぅー・・・」 熱が上がってきたのかかごめの吐く息も つらそうだ。 かごめの苦しそうな顔に・・・。 犬夜叉の意地っ張り虫も今日はお休みだ。 「タオル、とりかえてやる」 「あ、うん・・・。ごめんね・・・。いろいろ・・・」 犬夜叉は洗面器でタオルを濡らしそっと かごめの額に置いた。 「ふぅー・・・。気持ちいいー・・・」 (///) 熱っぽいかごめの顔・・・ パジャマのボタンが胸近くまで少しあいていて・・・ (はっ・・・!お、オレってやつはこんなときに どういう場所を見て・・・) 「・・・犬夜叉・・・」 「な、なんだよ・・・(ドキドキ)」 閏っぽい瞳のかごめ・・・。 「手・・・。握っててくれる・・・?」 かごめはスッと布団の合間から手を出す・・・。 「え・・・。あ、ああ・・・」 かごめの手をそっと握る犬夜叉。 (・・・熱い・・・。かごめ、ホントに辛いんだな・・・) 犬夜叉は両手でかごめの手をぎゅっと包む・・・ 「・・・お前がねむるまで いるから・・・」 「・・・アリガト・・・。でも犬夜叉・・・風邪、移らないようにね・・・」 「けっ。オレの体なんてどうでもねぇよ」 「うん・・・」 静かにかごめは目を閉じる・・・ (かごめ・・・) かごめの寝顔を見つめながら犬夜叉は思う。 結婚したらきっとかごめは 自分の事そっちのけで支えてくれるんだろう。 けど・・・ (夫婦っていうのは・・・。そういうんじゃねぇ) 結婚は。支られて 相手も自分を支えるということ。 「オレは女房を支えられる旦那になる!」 かごめの寝顔に 犬夜叉はそう誓った・・・。
”カミサンを支えられるいい旦那” になるべく、犬夜叉は早速次の日から行動開始・・・? かごめが近所の医者に診察に行くのに付き添うと言い出した。 「・・・別にいいのに・・・」 ちょっと不安げなかごめ。 なにがまた騒動が起きそうな予感がして・・・。 「よかねぇだろ!!かごめお前は病人なんだから・・・。 診察券だせ。持ってってやる」 犬夜叉はかごめから診察券を貰い、受付に持っていった。 「おう。患者一人、頼むぜ」 まるで出前のちゅうもんのように言う犬夜叉。 「・・。・あ、は、はい。ではあの検温おねがいします」 体温計を看護婦から受け取ると犬夜叉はかごめの元に戻る・・・ 「かごめ。検温だってよ」 「ありがと。犬夜叉」 かごめはプチッとブラウスのボタンをはずし、体温計をわきの下に 挟む。 (///) ・・・おいおい。犬夜叉君。いい”旦那様”になるんじゃなかったのですか?(笑) 犬夜叉の横に座っていた子供がニターッと犬夜叉に視線を送る。 (・・・はっ。お、オレとしたことが・・・。い、いかんいかん!) 犬夜叉くん、今は”いい旦那様”なるべくして、修行中なので 理性をきかせましょう。 待合室の茶色の椅子にならんで診察を待つ犬夜叉とかごめ。 「日暮かごめさーん。診察室へどうぞ〜」 かごめと犬夜叉は 診察室に静かに入った。 だが、犬夜叉は看護婦に呼び止められる。 「あの。できましたら、患者さんお一人でお入りに・・・」 「うるせぇえな!オレはこいつの付き添いだ!文句あんのか! 万が一かごめが変な治療されたらどう、あんた責任とるんだ!!」 「・・・。ど、どうぞ・・・」 犬夜叉、強引に看護婦を説得し、診察室に入る。 「さて・・・。どうされましたかな?」 70歳くらいのちょっと初老の医者。 「はい。ちょっと熱があって・・・」 「ほう・・・」 医者はかごめが言った症状をカルテに書きながら話を聞く。 (まぁ、悪くねぇ医者だな) 犬夜叉が一安心した。だが次の一言で・・・ 「じゃあ、ちょっと上、脱いで」 (な・・・なぬーーーーーーッ!?????) 「て、てめぇえ!!服、脱げってどういうことでい!!」 犬夜叉、医者の白衣を掴んで迫る。 「あ、当たり前でしょう。聴診器、服の上からあてられますか。 あとお腹も触診しないと・・・」 「しょっ触診だぁあ!??(ちょっと興奮)(オレの大事な)かごめの肌に触ろうなんて なんて助平な医者だ。オレが成敗して・・・」 「もーーーー!!犬夜叉!外に出てて!いぬ・・・」 かごめ、ふらーっと倒れる・・・ 「あ、かごめ・・・っ」 大騒ぎの診察室・・・ かごめは犬夜叉に抱きとめられたところで意識を失ったのだった・・・ (ん・・・?) かごめが目を覚ますとそこは・・・ 病院のベットの上。 (あ・・・あたし・・・) 横を振り向くと点滴の容器がぶらさがっていた。 「かごめ。気がついたか・・・」 「犬夜叉・・・」 「お前熱で倒れて・・・。解熱剤の点滴打って貰ったんだ・・・」 「そっか・・・」 犬夜叉はずっとの間・・・ かごめの手を握っていた。 「・・・。やだ。もう夕方じゃない・・・。帰らないと・・・」 「馬鹿。起き上がるな・・・」 「でも・・・」 「お前はオレがおぶっていくから・・・」 犬夜叉はしゃがみ、かごめに背中を差し出す・・・ 「犬夜叉・・・」 「寒くなる前に帰ろう・・・」 「ウン・・・」 差し出された広い背中。 おぶさるのは 久しぶりで・・・ 犬夜叉は背負ったかごめに毛布を看護婦からかけてもらい、 そのまま病院を後にする・・・ そんな犬夜叉たちを 通行人たちは振り返る・・・ 「ね、ねぇ・・・犬夜叉・・・。人が見てるけど・・・平気なの・・・?」 「けっ。んなもん・・・。人の目よりお前の方が大事だろ・・・」 (犬夜叉・・・) かごめの心がキュン・・・とした。 (優しすぎて・・・。また熱あがりそう・・・) かごめを背負った犬夜叉。 夕暮れの一本道を歩く・・・。 「かごめ。寒くねぇか」 「ううん・・・。だって・・・。犬夜叉の背中ダモン・・・」 「///」 夕暮れもオレンジ色なら犬夜叉の頬もオレンジ色に染まる。 かごめはギュッと体を密着させた。 (・・・!!) 犬夜叉の背中に果てしない心地いい感触が・・・ 「犬夜叉・・・。今日はホントにありがとう・・・」 「い、いや・・・」 (・・・(ドキドキ)) 「ありがとう・・・ね・・・」 かごめは再び瞼を閉じた・・・ 「・・・かごめ・・・」 かごめのお礼を言われると 死ぬほど嬉しい。 ・・・自分がこんなに誰かに優しく出来る人間だったと 気づかせてくれる。 「・・・かごめ・・・。オレ・・・。頑張るから・・・。お前の事支えられる男になって・・・」 「・・・スー・・・」 (・・・!!) かごめの寝息が犬夜叉の首筋に・・・ (・・・。支えられる男になる前に・・・。”理性”を保てる男なれねぇとな・・・(汗)) ドキドキと 温もりが合わさる 夕暮れ。 ・・・秋深まる季節だった・・・。