「・・・」 ”オレにはもうお前だけだから・・・” 雨の中の犬夜叉の言葉・・・ (信じる。信じるしかないんだよね) 桔田梗子の名詞を破り捨てるかごめ。 (けど・・・。この胸のモヤモヤが消えない・・・) 犬夜叉を疑う気持ちじゃない。 仮に犬夜叉と桔梗の間になにかったとしても (全部受け入れた上で私は、今、犬夜叉の隣にいるんだから・・・) けれど・・・ 「・・・」 鏡に映る自分の顔・・・ よく似た顔の桔梗という名の女性は・・・ (存在感が在り過ぎる・・・) 消えない。 犬夜叉以上に・・・ 「・・・。駄目駄目!深刻になりすぎちゃ・・・」 かごめはほっぺをペチっと叩いて 鏡を伏せ、ベットに入ったのだった・・・ 翌朝。 「・・・あ。お、おはよう」 「お、おす・・・」 食堂。 いつもより30分も早く起きてきました。 「・・・」 「・・・」 微妙に重たい空気が二人の間に流れる・・・ 「あ、ご、ご飯食べるよね?ぱ、パンもあるけど・・・。ど、とっちにする?」 「あ、飯でいい・・・」 「あ、う、うん。じゃあご飯とお味噌汁よそってくるね・・・」 パタパタ・・・ 重たい緊張感から逃れるように キッチンに戻っていく・・・。 (かごめ・・・。やっぱまだ・・・。気にしてんのかな・・・) ふう・・・とため息。 「そのため息の原因は・・・。桔梗がらみかな?」 ブハっとお茶をはく犬夜叉・・・ 「な・・・なんだよ。お前はッ」 希を抱いて弥勒パパ、ご起床。 「希が早く目を覚ましので起きてみると・・・。かごめ様とお前の間の あのスリリングな空気・・・。ふっ。すぐ見ればわかるわかる」 希におしゃぶりをくわえさせて 椅子に座る弥勒。 「・・・何があったんだ?」 「別に・・・。たいしたことじゃねぇよ」 「そうか」 「・・・」 案外あっさり弥勒が引くので犬夜叉、ちょっと拍子抜け。 「お、おい。他に聞くことは無いのか?」 「別に・・・。どうせ、”かごめ様の機嫌はどうやったなおるか”だろう? お前が求める答えは」 「・・・」 モロ、正解だったので二の句が無い犬夜叉。 「・・・どうせ、オレが悪いってんだろ・・・。けっ・・・」 「犬夜叉。機嫌が斜めのかごめ様を受け入れたことはあるか?」 「は?」 「・・・機嫌が悪いかごめ様、お前を避けるかごめ様・・・。全て受け入れているか?」 犬夜叉は弥勒が言っている意味がいまいちピンとこないのか 首をかしげる・・・ 「・・・相手の喜怒哀楽全て受け止めてことができないで・・・。夫婦はやっていけないぞ。 なぁ。希?」 「アブブ・・・」 おしゃぶりを希にしゃぶらせる。 「相手の喜怒哀楽・・・??かごめのそれを受け止めたら・・・。 かごめの気持ちは晴れるのか?」 「・・・まぁ・・・な」 「わかった!!オレはかごめの喜怒哀楽を受け止められる男になる!!うおおおお!!」 犬夜叉、食事を取らずに 大声を上げて、出勤していった・・・ 「・・・相変わらず単純な奴だ・・・。ったく。なぁ希?」 「あぶぶぶ??」 希はにこっと笑ったのだった・・・ ”かごめの喜怒哀楽を受け入れられる男” 難題に犬夜叉は一生懸命考えた。 (楽しませて・・・喜ばせればいいんだな!怒らせるのと哀しませるはちょっと・・・(汗) ) 犬夜叉くん、一生懸命考えた結論がコレ。 というわけで・・・。 「かごめ!一緒に、”エンタの殿堂”みえねぇか??」 「え?」 「すげぇ面白い漫才やってるんだってよ!」 犬夜叉はビデオを抱え、かごめの部屋に・・・ 「な、何よ。急に・・・」 「いや・・・。そのお前を楽しませようとだな、あの・・・」 妙に犬夜叉の態度が余所余所しい・・・ 「・・・。何かあったの?」 「べ、別に・・・。と、とにかくだなお前の喜怒哀楽を・・・」 「訳わかんないこといわないで!私はいま一人になりたいの!!じゃあね!!」 バタン・・・ッ 犬夜叉・・・。こっぴどく拒絶され・・・。 「・・・。かごめが怒ってる・・・。”喜怒哀楽”のうち、 ”怒”は受け止めた・・・ことになるのか・・・?」 だけど。かごめの”怒”は犬夜叉にとても怖い・・・ 「ふぅ・・・。難しいぜ・・・」 犬夜叉はとぼとぼとビデオを持ったまま自分の部屋に帰還・・・。 その様子をドアの隙間から覗いていた弥勒夫妻。 「・・・犬夜叉って人間はんっとに”単純行動”な生き物だよね」 「そんな犬夜叉にかごめ様の心を受け止めろ・・・ということはやはり無理だったか・・・」 希ちゃん、ベビーベットですやすやおやすみ。 「・・・でも・・・。あれはあれでいいんじゃないかな。 二人らしいやりとりがあれば・・・」 「・・・ふっ。二人らしい・・・か」 希のぷにぷにのほっぺをつんつんする二人。 泣いたりくずったり・・・赤ちゃんがそのまま感情を出すように かごめも感情を抑えたりしないでほしい。 ・・・好きな人の前では・・・ 少しだけ先に幸せを掴んだ 二人は願う。 犬夜叉とかごめの恋愛の行方が幸せでありますよう・・・。 次の日。 PPP〜♪ 保育所職員室。 かごめのバックの携帯のバイブが震えた。 「あ・・・」 犬夜叉からのメール。 『帰り、一緒にかえらねぇか?児童公園で待ってる 犬』 「・・・」 ちょっと前までなら、かごめから犬夜叉にメールを送ることが多かったのに。 最近は犬夜叉から・・・。 (・・・嬉しく思わないといけない筈なのに・・・。私ってば・・・) ”彼と桔梗はどこまで・・・” 桔田梗子の言葉がこびりついて離れない。 「・・・。しっかりしなくちゃ・・・!!」 かごめは頬を叩いて気合を入れるかごめ。 (この”靄”を早く消さなくちゃ・・・ね) 「お疲れ様でしたー・・・」 仕事が終わり、かごめは早速児童公園に向かう・・・ だが・・・その途中。 公園の入り口で・・・ カツ・・・ 「・・・!!」 「こんにちは・・・。日暮さん」 キツイ香水・・・ 赤いハイヒールの桔田が現れた。 「・・・な、何ですか。あの・・・私急いでるんですが」 「・・・公園の中の彼に・・・?そうなの」 「・・・」 桔田はかごめを見下ろすように、公園の入り口に立ちはだかる。 「・・・近々・・・。桔梗が帰国するかも・・・」 「・・・!」 かごめの心の奥がズキン!と撓(しな)った・・・ 「でも本人は全くその気が無くてね。困ってるのよ。 それとも日本には帰りたくない”何か”があるのかしら・・・?」 「・・・」 香水の匂いがキツイ。 鼻につく・・・ 「・・・いい加減。モトカノに返してあげたら・・・?貴方も辛いでしょう? 元カノの影がちらついたまま結婚だなんて・・・」 「・・・」 「ねぇ。よく考えて・・・」 かごめ、ビニール袋からごそごそ何かを取り出し、桔田の手に乗せた。 「・・・何、コレ?」 「肉まんです。おいしいですよ」 かごめはあんまんをほおばる。 「・・・どういうつもり?」 「どうもこうも・・・。美味しいからお裾分けです」 「・・・。いらないわ」 「そうですか。じゃあ返してもらいます。」 かごめはパクパク二個目のにくまんたいらげる。 「・・・確かに貴方と桔梗はまるっきり違う魂の持ち主のようね」 「ええ。私は私ですから。こうして人前で美味しいものを ばくばく食べるそういう女です」 「ふふ・・・。一筋縄じゃいかなさそうね。貴方達を別れさせるのは・・・。 でも・・・。きっといずれ貴方は彼から離れられざるおえない。 きっと・・・ね」 桔田は煙草の煙をふうっとかごめの顔のまえでわざと吐いて その場を立ち去った・・・ 「・・・」 (・・・運命なんて・・・関係ない!) 桔田の後姿に向かってかごめはそう・・・ 心の中で叫んだ・・・ 一方・・・その頃犬夜叉は・・・ キィ・・・ 一人ブランコに座り、かごめを待っていた。 誰もいない公園・・・ 静けさが寂しさを倍増させて。 まるで・・・。母が迎えに来るのを待っている子供のような・・・ (・・・”待つ”ってのは・・・。こんなに寂しいものなのか・・・) 恋しい人を待つほど 寂しいことはない。 まして。 恋しい人の心が自分を拒絶するほど・・・ 「・・・かごめ・・・。まだこねぇのかな・・・」 犬夜叉、足元の棒切れを手にしてため息をつく・・・ (まだかな・・・。まだかな・・・) 「犬夜叉。あんた何やってんの?」 「え」 犬夜叉が気がつき、足元を見てみると・・・。 砂の上に、書いてあるのは・・・ 『かごめ かごめ かごめ』 の文字・・・ (はっオレってやつは・・・無意識のうちに・・・) 「・・・もしかして。寂しくてあたしの名前かいちゃってたの?」 「ば、ばばば馬鹿野郎!んなわけあっか!た、ただ字の練習してただけでいッ」 犬夜叉、足で字を揉み消した。 「ふふふ・・・」 かごめは犬夜叉の隣のブランコに座った。 「・・・。かごめ・・・」 キィ。 かごめは思い切り足を蹴り上げ、ブランコをこぐ・・・ キィ。 (飛ばしちゃえばいいの。もやもやはこの夕暮れに・・・) 思い切りこぐ・・・ 「かごめ・・・。オレ・・・」 「犬夜叉・・・。ずっとずっとこうやって一緒に 夕焼けみようね。何があっても誰がいてもずっとずっと・・・」 「かごめ・・・」 キィ。キィ・・・。 夕陽を浴びるかごめの横顔が・・・ 切なく・・・綺麗に映る・・・ 「かごめ・・・。オレしっかりするから・・・。だから・・・。 信じてくれ・・・」 「ウン・・・。信じてるよ」 かごめはブランコをゆっくり止め、犬夜叉の方をまっすぐ見つめた。 「かごめ・・・」 犬夜叉静かにかごめの手を握る・・・。 「・・・この手を絶対に離さないでね。信じてるから離さないでね・・・」 かごめの握り返す・・・。 深い、絆はあると確信していても ともすればきえそうな・・・絆。 こうして時々、お互いの温もりを確かめ合わなければ。 かごめの温もりを体に刻み込む犬夜叉・・・ (絶対にかごめをなかせねぇ・・・) そう強く誓ったのだった・・・。
続 居場所を探して
〜タンポポの種〜其の二十七 相手を受け入れるということ