続 居場所を探して
〜タンポポの種〜
其の二十八 24時間ずっと好きって言ってて
今、巷ではやっている恋愛ドラマ。
『24時間すきって言ってて』
純粋で一途なヒロイン。
不遇な境遇にありながら昔の恋人を断ち切れない優柔不断な恋人のために
尽くす・・・そんな内容で。
「まるでどこかの誰かさんを見ているようだ」
弥勒と珊瑚に突っ込まれまくりのその誰かさんこと、犬夜叉君。
(こんなドラマ、誰が作りやがった!テレビ局にもっく言ってやる!)
などと言い掛かりもいいようなことを思っていた。今日この頃。
しかし。
実は犬夜叉もこっそりとこのドラマを見ているのである。
なぜかというと・・・
(・・・そうか。かごめはこういうことを考えているのか)
ヒロインが泣くシーン。
”本当は24時間好きでいてほしい。私だけを見て欲しい”
ヒロインの気持ちをメモ帳に書き取る犬夜叉。
かごめの気持ちがなかなかイメージできない犬夜叉はドラマを見て、女心を研究中なのだ。
(しかし・・・。この野郎はんっとにはっきりしねぇ男だな!)
ドラマを突っこんでおります。
・・・人のこと、言えないと思うのですが?犬夜叉君(苦笑)
そんなこんなで、犬夜叉はかごめの心を必死に理解しようと頑張っている。
勿論、かごめはそんなことは露知らず・・・。
「ねぇねぇ。かごめちゃん。昨日、”24時間好きって言ってて”
見た?」
「え?あ、うん。まあ・・・」
「ヒロインの彼氏見てたらさ、もうなんか私、苛苛しちゃって・・・。
思わず空手技食らわせたくなったよ!」
箸をぎゅっと力いっぱい握り締める珊瑚。なんかすごい気迫です。
その空手技を食らわされたらしく弥勒の首にくっきりと痕が・・・
弥勒はちょっと怯えながらご飯を食べております。
「男ってほんっとにどうしようもないんだから。好きな女なら
どれだけ甘えても構わないなんて思ってるところが気に食わない!」
「さ、珊瑚ちゃん落ち着いて(汗)」
「かごめちゃんはどう思った?あの男。どっかの
誰かさんを思い出すよね?」
そのどっかの誰かさん。罰が悪そうに新聞を読んでるフリ。
(・・・(冷や汗))
新聞で顔を隠しつつもかごめの答えちらっと新聞の角からチラ見。
「え・・・。ど、ドラマはドラマだし・・・」
「そうだけどさ。でも腹立つよね!?身近に似たような存在がいるせいで」
珊瑚、どっかの誰かさんに聞こえるようにわざと大きな声で話す。
「・・・うん・・・。でも・・・。きっと彼女も分かってると思うよ」
「何を?」
「・・・ずっと・・・宙ぶらりんな恋は・・・。きっと成就しない・・・って」
かごめは湯飲みを優しく撫でながら話す。
「自分の恋が実らないって受け入れた上で・・・。
彼のためにできることを全部し終えて・・・。彼女はきっと一人で歩き出す・・・
自分の進むべき道を・・・」
「かごめちゃん・・・」
かごめの言葉は・・・
珊瑚にも弥勒にも
単なるドラマの感想には聞こえない。
切実なかごめの気持ち・・・
「ってね。ちょっとセンチになっちゃうけど、珊瑚ちゃん。ドラマはあくまで
ドラマだから。それより希ちゃんにミルクあげる時間じゃないの?」
「あ、ああそうだった。いけない!」
珊瑚は粉ミルク缶と哺乳瓶を持って二階にあわてて上がっていく・・・。
「さーて。私も洗い物しなくっちゃ!」
茶碗をお盆に乗せ、かごめは流し場へ・・・
その後姿を
少し切ない視線で追う・・・どっかの誰かさんこと、犬夜叉。
「・・・釘を刺されたな。犬夜叉」
弥勒、容赦なく駄目押しで突っ込む。
「う、うるせぇ」
「ま、ドラマを参考にかごめ様の心を掴んでおくこどだな。じゃ、失敬。
恋愛下手だが”惚れっぽい”誰かさん」
(・・・なんで知ってんだ(汗))
惚れっぽい誰かさん、慌てる。
「犬夜叉。新聞、反対じゃぞ」
「え・・・」
七宝に突っ込まれ、慌てて新聞を元に戻す犬夜叉・・・
「・・・。アホじゃ」
その朝は・・・七宝のその一言で締めくくられたのでした。
(それにしても・・・)
かごめに信じてもらうにはどうするべきだろう。
ドラマのように『24時間好きって』言っていればいいのだろうか?
(・・・んなこと・・・。男ができるか・・・)
口ではいえないなら。
メールなら?
そう思った犬夜叉。
仕事の休み中、携帯を取り出し、ピッピととある文字を打っております
『かごめ、好きだ。好きだ 大好きだ』
(・・・)
送信ボタンを押そうと親指に力を入れるが・・・どうしても押せない。
(・・・くそ!)
犬夜叉、文字を消し、改めて打ち直し。
『酢来打』(好きだ)
犬夜叉、当て字にしてみました。
ちょっとだけ照れくささが抜けたので送信した・・・
(よし!きっとこれで伝わるだろ!)
ちょっと自信満々で、かごめの返事を待つ犬夜叉・・・
5分ほどして・・・
〜♪
かごめから返信がきた。
(・・・♪)
『犬夜叉。好き。私もよ。』
なーんてことが書いてあるだろうとウキウキ気分でメールを開くと・・・
『酢来打、”すぐだ”って何?携帯、故障したの?』
「・・・」
かごめも犬夜叉に負けず劣らず、結構鈍いところがあることに
今更ながら気がつく犬夜叉。
だが、ストレートにちゃんと伝えないからだと思われますが。
(くそ・・・。やっぱ”24時間お前が好きだって”面と向かって言わなきゃいけねぇのか・・・)
「はぁあ・・・(徒労・・・)」
犬夜叉、ただただ・・・ため息が出るお昼休みだった・・・。
同じ頃。
「・・・ふふ。犬夜叉ったら・・・」
かごめは、今日、保育園がお休みで楓荘で一人食堂で昼食をとっていた。
「・・・酢来打。なんて。まわりくどいったらありゃしない」
どうやらかごめは犬夜叉のメッセージの意味は分かっていたらしいが。
「人の振り見て、自分の鈍感さを少しは理解しなさい。犬夜叉。ふふ・・・」
かごめは一人、食堂でカルボナーラを
食べながら携帯をにこにこしながら眺めていた・・・
犬夜叉は携帯で、気持ちを伝える方法を諦め、別の方法を考えた。
それは・・・
「おうゴマ、てめぇの首輪借りるぞ」
ワゥワゥ!【ちょっと!あんた、アタシのお気にの首輪になにすんのよ!】
ゴマちゃんの首輪にメモをはさむ犬夜叉。
そのメモには・・・
『好きだ。24時間ずっと』
と書いてある。
手紙に伝達方法を変えたまではよかったがどうしてもそれを渡せない犬夜叉。
夕方、かごめがゴマを散歩に連れて行くという事実を利用しようと思いついたらしいが・・・
「これでよし・・・っと」
ワゥワゥ!【ったく、メンドクサイ男ね!好きだって3文字ぐらい
いえないわけ!?】
ゴマちゃん、犬夜叉の回りくどい手法に苛苛。
ワゥワゥ!!【アタシをコマに使うなんて100万年早いのよ!手紙なんてこうしてやる!!】
ゴマちゃん、暴れて首輪から落ちた手紙をなんとビリビリ噛み千切った・・・
「てめぇ!!オレが丹精込めて書いた手紙を・・・」
ワゥワゥワ!【フンッ!男ならちゃんと言葉にして伝えな!それができなけりゃ
かごめちゃんみたいな上等な女の子、幸せなんて出来ないわ!】
「・・・何してんのよ」
ギクリ。かごめは散歩の紐を持って庭に出てきた。
「い、いや、なんでもねぇッ」
犬夜叉は慌てて中に入っていく・・・
ワゥワゥ・・・【ちょっとかごめちゃん。聞いてよ!犬夜叉ったらアタシをだしにしようとしたのよ!】
かごめの足に擦り寄るゴマちゃん。
ゴマちゃんを抱っこするかごめは地面に落ちていた紙の残骸を
一枚一枚拾い初めて・・・
ワゥワゥ!【あんな子供っぽい男、もうやめたら?ったく。ねぇかごめちゃん、それより
お散歩、お散歩!】
残骸をポケットに入れ、かごめはゴマと一緒に散歩に出かけたのだった・・・
こうして。犬夜叉のゴマちゃん大作戦(?)も失敗に終わり、ガックリな犬夜叉。
夜。風呂から上がり、自分の部屋に行くと・・・
(ん?)
ドアの隙間に桃色の便箋が・・・
カサ・・・
ほんのり甘い香りの便箋を開くと・・・
『私も好きだよ。犬夜叉 byかごめ』
と一言書いてあり・・・
(・・・。つ、伝わってたのか・・・)
犬夜叉、ちょっとほっとしたような・・・。嬉しいような・・・
(それにしても・・・。いい匂いだ)
くんくんと便箋の香りをかぐ犬夜叉・・・
『私も好きだよ』
(///)
そのワンフレーズを何度も黙読して犬夜叉は・・・手紙をもったまま
布団に入ったのだった・・・
一方かごめの机のコルクボード・・・
ゴマちゃんに引き千切られたメモが丁寧にセロハンテープで繋ぎ合わされて
貼り付けられている・・・
『かごめ、好きだ』
と犬夜叉の荒っぽい字・・・
夜の風に揺られていたのだった・・・