其の二十九 そんな声出しちゃイヤ★
〜ドキドキクリスマスナイト〜
「ふぅ。いい風呂だった」
犬夜叉が風呂からあがってタオルで髪を拭きながら階段を上がってきた。
「・・・ん?」
かごめの部屋からなにやら声がする。
(・・・何やってんだ。あいつ)
犬夜叉のかごめ探知機が何かを察知して、こそっとドア越しに耳をあてる犬夜叉。
すると・・・。
「あ・・・っ。う・・・。・・・っ」
(!?〇△×■ーーー!???)
なんとも悩ましいかごめの声がもれてきて・・・。
「あっ・・・。そ、そこ・・・。いい・・・っ。・・・!!」
(ーーーーー!????)←錯乱。
「ハァ・・・ッあッあッあぁああッんッ」
(ーーーーーーーッ!??????)←狂乱
犬夜叉、あまりのかごめの悶え声に・・・
パタリ・・・。
廊下に赤面した犬夜叉が大の字になって倒れた・・・。
これが本当の悶え死に・・・(笑)
「およ・・・?こんところで犬夜叉が眠っておるぞ?」
七宝がつんつんと犬夜叉をスリッパでつつく。
「ふぅ・・・。どうやらまたよからぬことを考えて爆死したらしい・・・。
子供じゃのう」
七宝に合掌され、犬夜叉、結局廊下でそのまま朝までご臨終だったという・・・
翌朝。
「・・・」
ぼうっとした顔の犬夜叉・・・。まだ夢の中にいるような・・・。
食堂に下りてくると。
「珊瑚ちゃん、昨日のマッサージ。よく効いたよ!」
「そう?よかった。それにしてもかごめちゃんの肩も腰もすごく
凝ってたよね」
朝食のトーストを食べながら話すかごめと珊瑚。
その会話から昨日のかごめの”あの声”の正体が分かった犬夜叉。
(・・・なんでい。そういうことだったのか・・・)
なんだかほっとしたような・・・。
けど・・・。
”あっ・・・。そ、そこ・・・。いい・・・っ。・・・!!”
(・・・ドキドキ)
かごめのあの声が耳から離れない。
(くそ・・・。オレって・・・。オレって・・・)
自分でもイヤになるくらいに
かごめを意識してしまう・・・
(こんな自分・・・。かごめに見せられねぇ)
自分はこんなに生々しい男だったか?
こんな・・・。
「・・・犬夜叉?何考え込んでるの?」
「・・・っ」
犬夜叉を覗き込むかごめ。
かごめの顔が至近距離に・・・。
「ちょ、ちょっと・・・」
犬夜叉はもう余裕がない・・・
食堂を出て犬夜叉は二階にベランダに・・・
「ふぅ・・・」
ペチペチと頬を叩たく・・・。
「どうした。犬夜叉。かごめ様の喘ぎ声に悩んでいるのか」
「!!!!」
犬夜叉、核心部分をいきなり突かれる。
「な、な、な・・・」
「いや〜。昨夜のかごめ様の声は・・・。魅惑の調べだったなぁ」
「!!て、てめぇきいてやがったのか!!!」
犬夜叉、激怒。
「かごめ様の”あの声”・・・。ふぅ。男はたまらんだろう。清楚なかごめ様が
あの様な・・・」
「妙な想像してんじゃねぇ!!このエロオヤジが!!」
犬夜叉、弥勒の助平トークを口を抑えて阻止。
「・・・。ふふふ。いやいや刺激が強すぎたか。犬夜叉」
「・・・うるせえ!」
弥勒、しゃかしゃか、歯ブラシを動かしながら話す。
「今時、”結婚まで清い関係で居よう”というのはかなり貴重なカップルだろう。ま、
私と珊瑚も正式に結婚するまではキスだけだったが」
「・・・(ドキドキ)そ、そうなのか・・・」
「ああ。だからこそ、初夜は燃え上がったぞ〜vv珊瑚はオレの腕の中で
乱れ咲いて・・・むふふふ・・・」
弥勒、サンタクロースのように口元が歯磨き粉でもこもこ。
「そしてまもなく世の中はクリスマス!!恋人達が燃え上がるイベント!!
犬夜叉・・・!男のみせどころだぞ!」
拳をにぎって力説。そしてとあるものを犬夜叉の手に握らせる。
「・・・!?」
そっと手の中をみると・・・。
『HOTEL らぶるーむv』
・・・どうみてもそれは。
(ら・・・ラブホの・・・まっち)
「そこは落ち着いた趣の部屋で・・・。二人きりのクリスマスを過ごす・・・。
ふっ。犬夜叉。今ならクリスマスキャンペーンで3割引だぞvv」
「だ、誰がんなトコ行くかよ!!ったく・・・!!」
犬夜叉がベランダから出て行こうとしたとき・・・
(はっ)
冷たい視線のかごめと珊瑚が・・・。
「あ・・・。こ、これは珊瑚ママ、おはよv」
「おはよ。じゃなぁああい!!あんたってヒトは!!朝っぱらからまた・・・。
父親なんだぞおまえはぁああ!!!」
「ひー!!珊瑚ママおたすけ〜!!」
歯ブラシをくわえたまま、珊瑚に強制連行される弥勒・・・。
一方犬夜叉は・・・。
「・・・。さいっていね!!」
「あ、かご・・・」
バタン!
ベランダのドアを激しく閉められ、犬夜叉、かごめに嫌われる・・・。
「・・・畜生。オレのせいじゃねぇだろーーーー!!」
と遠吠え。
さてさて。犬夜叉とかごめのクリスマスイブは一体どんな日になるのやら・・・
※
そして。
世の中はすっかりクリスマスムード。
街は鮮やかなイルミネーションが輝き、クリスマスソングがあちらこちら
から流れる。
「って先輩〜。飲みすぎっすよー」
「うっせぇえ!なぁあにがくりすますーだ。けっ」
犬夜叉達、若手の大工たちがよく行く飲み屋。
犬夜叉は後輩2人を引き連れて、飲みに来ていた。
「おう!おめーら。今日はとことん付き合え!!オレのおごりなんだからな!」
「え・・・。でもオレ達、彼女と・・・」
「んだとーーー!!!おい!お前ら、オレと女とどっちが大事なんでいッ!!」
徳利を握り締めて、後輩達に絡む犬夜叉。
「なぁああにがクリスマスだ。けっ。女といしゃつくだけだろーが!!へッ!!」
犬夜叉の荒れ方に後輩達は・・・
(・・・カノジョとケンカ中なんだな・・・(汗))
と犬夜叉のご機嫌斜めの原因を察する。
「うおおお!今日は朝までかえさねぇぞ!」
犬夜叉に首根っこつかまれた、後輩達。なんとか犬夜叉から解放されたいと
考えた方法が・・・。
(・・・こ、こうなったら。先輩がこの世で一番怖がってるヒトに来て貰うしかない!(汗))
と、呼んだのが・・・。
「・・・あ!こっちです!かごめさん!」
保育所帰りのかごめがやってきた。
「・・・すんません。でも犬夜叉先輩・・・俺らもうお手上げで・・・」
完全に酔いつぶれている犬夜叉。
かごめはじっと犬夜叉を見下ろす・・・。
(な、なんか怖いっす・・・。かごめさん・・・)
「犬夜叉。起きなさい。帰るわよ」
「んー・・・?ひっく。なんでい・・・かごめ」
「後輩さんたちに迷惑掛けちゃいけないでしょ。さ、帰りましょ」
犬夜叉の背中を揺すって起こすかごめ。
「けっ・・・。うるせー。女はひっこんでろ。クリスマスなんだろ?
鋼牙でも誘えばいいじゃねぇか。フン・・・っ!!」
犬夜叉のこの一言に・・・
かごめの顔からすうー・・・っと笑顔が消えた。
(さ、さ、更にこ、怖い・・・。な、なんか導火線に火がついた・・・?)
かごめ、犬夜叉の耳元にそっと口を近づける・・・。
そして・・・。
「私、酒癖悪いあんたなんて大っ嫌い!!!」
大っ嫌い!大っ嫌い!大っ嫌い・・・
(!!!!!)
犬夜叉、かごめの大っきらい発言で、酔いが吹っ飛ぶ。
「な・・・な、い、今なんて・・・」
犬夜叉、青ざめて目覚める。
「悪酔いしてんじゃないわよ!後輩さんたち巻き込んでどうするの!!」
「だ、だって・・・」
「だってもなにもない!!犬夜叉、とっとと帰るわよ!!」
「は、はい・・・」
かごめの後を背中を丸くしてついていく犬夜叉。
・・・母親に怒られた子犬のように。
(す、すげぇ・・・。これからは姐さんと呼ばせてください!!)
と、かごめの貫禄に惚れ惚れする後輩達だった・・・。
一方。
犬夜叉とかごめは・・・。
「全く・・・!なんでクリスマスの日に私が酔っ払ったあんたを
迎えに行かなくちゃいけないのよ。もう!」
完全にお冠のかごめ。
「ちょっと!聞いてるの!??」
シーン・・・。
かごめが振り向くと・・・
「・・・う・・・。気持ち悪りぃ」
電信柱にしゃがみこむ犬夜叉・・・。
「ちょ・・・ちょちょちょっと!!」
「ううう・・・」
口を抑えて気分がかなり悪そうだ・・・
「んもううう!!仕方ないわね!!」
犬夜叉の肩を担ぎ、大通りまで出てタクシーを探すが・・・。
どのタクシーも止まってくれず・・・。
ポツ・・・
「や、やだ。雨・・・」
雨まで降ってきて・・・。
(ど、どうしよう。このまま犬夜叉を担いでいくこともできないし・・・)
「う・・・重たい・・・」
犬夜叉の重たさにかごめは犬夜叉を降ろしてしまう・・・。
「うう・・・」
犬夜叉は青ざめたかお・・・。
「ホントにどうしよう・・・」
・・・と。かごめはとあることに気づく。
(こ、ここって・・・)
『HOTEL ラブラブるうむv』
そんな看板が光っております。
「・・・。な、なんなの。このお約束的な展開は・・・(汗)」
「うえぇえ・・・」
今にも吐きそうな犬夜叉・・・。
(今にも路上ですごい状態に
なりそうだわ(汗)選択の余地なし・・・ってこと・・・なの?)
「ほら。犬夜叉しっかり。立って・・・」
犬夜叉を背負い、かごめはそのHOTELに入った・・・。
(・・・は、初めてはいるけど・・・。どんな部屋なんだろ)
ガチャ・・・。
あけると中は・・・
(へぇ・・・。結構シンプル・・・)
普通のホテルとあまりかわらない、白いベットが一つ。
かごめの想像だとハート型のベットなんて想像していたのだけど。
「うえ・・・」
「ああ、もう、犬夜叉、洗面所こっちよ!」
犬夜叉を洗面所に連れて行き、濡れタオル渡す。
「ううう・・・」
「大丈夫?ほら・・・」
犬夜叉をベットに寝かせるかごめ。
「はい、お水・・・飲んで」
「う・・・」
犬夜叉の首をささえて水をのませる。
一口、二口・・・。
口から溢れた水をハンカチでそっと拭くかごめ・・・。
「・・・ふぅ・・・」
犬夜叉が眠りについた。
(あ・・・)
ふと窓を見る。
・・・雨が雪に変わっていて・・・。
「はぁ・・・。これが私のクリスマス・・・か」
世の中の恋人達は、きっと今頃、二人だけの世界で
ケーキよりも甘い雰囲気に酔いしれているのだろう。
(羨ましがるのもおかしいけど・・・。私だって少しは夢をみたいわよ)
なのに。
「ぐおー・・・」
ベットに大の字になって熟睡する犬夜叉。
(・・・ふぅ。期待するほうがおかしいか・・・)
かごめはため息をつき、床に脱ぎ捨てられた犬夜叉のコートをハンガーにかける。
(・・・ん?)
異様にふくれたコートのポケット。
かごめがポケットの中身を出してみると・・・
「あ」
桃色の包装紙に赤のリボン。
おおよそ犬夜叉が持つようなものではなく。それは
(も、もしかして・・・。クリスマスプレゼント?)
リボンの間にカードが挟まれている。
『かごめへ。なくすんじゃねぇぞ!』
と、荒っぽい字・・・。
「・・・。ふふ。ほんっとに不器用なんだから・・・」
かごめはそっとプレゼントコートのポケットにしまう。
(目が覚めたらちゃんと渡してよね。ふふ・・・)
豪快に眠る犬夜叉・・・。
「まーったく・・・。少しは女の子の気持ち、わかってよね・・・」
少年のような寝顔。
(・・・っていうか子供より手が掛かる・・・)
でもそれが私の恋人。
人一倍やきもちの恋人・・・。
前髪をそっとかきあげる。
「・・・これが私からのクリスマスプレゼント・・・よ。おやすみ」
CHU。
そしてふわっと
その唇を触れさせた。
かごめは毛布を一枚かぶりソファで丸くなった・・・。
「・・・。耳元であんなこと囁きやがって・・・」
(酔いがすっとぶだろうが・・・)
かごめが眠ったのと同時にむくっと起きた犬夜叉。
おでこをさわりながら。
(・・・おでこかよ)
少しばかり不満そうな犬夜叉。
「女をソファで寝かせるほどオレは解消なしじゃねぇ」
かごめそっと抱き上げ、ベットに運ぶ・・・
(かごめってこんなに細かったか?)
見た目も細いが・・・
華奢な体・・・
(柔らかいし・・・)
なんだか・・・。ちょっと変な気持ちに・・・
(・・・。オレってこんな奴だったか・・・)
かごめのいい匂いを感じながら犬夜叉はそっとかごめをベットに寝かせた。
「・・・。お前が耳元であんなこと言うから・・・」
すやすや眠るかごめ・・・
犬夜叉はコートのプレゼントを取り出す・・・
枕元に置く。
「メリー・・・クリスマス・・・」
かごめの額にそっと口付ける・・・。
「・・・ンゥッ・・・」
「・・・!!」
かごめの声に犬夜叉、ビクッと血が騒ぐ。
「ゥン・・・ウゥン・・・」
(・・・ドキドキ)
「・・・。そ、そんな声・・・。だ、出すんじゃねぇ・・・」
かごめの愛しい声も
寝顔も
サンタクロースの贈り物かな・・・?
ロマンチックなこともないけれど・・・。
好きな人と過ごせられたらそれだけでいい贈り物。
その日の雪は
真綿のようにふわふわ優しい雪だった・・・。
「ん?」
翌日。犬夜叉の部屋の前に、とあるものが。
(カセットテープ?)
裏面をみると。
『弥勒サンタからの贈り物です♪うふ』
と書いてある。
(また変なモンじゃねぇだろな)
犬夜叉は早速CDラジカセにいれ、ヘッドホンを耳に当てる。
カチ・・・ッ。
再生のスイッチを押すと・・・
聞こえてきたのは。
「ーーーーーーっ!??」
『あ・・・っ、う・・・っ、あぁッ・・・』
いつぞやのかごめの・・・声。
カセットベールの裏面をみると。
『寂しい夜に聞くこと超おすすめ♪』
と書いてある・・・。
(あ、アイツ、いつの間にこんなモン録音したんだ・・・)
呆れ顔で、ラジカセのスイッチを切ろうとしたが・・・
『あ・・・そ、こ・・・。・・っ気持ちいいっ』
(///)
犬夜叉はこそっと部屋に鍵をかけ、ヘッドホンをかけて
こっそり聞いていた。
これが一番・・・犬夜叉のクリスマスプレゼントだったのかもしれない・・・(笑)