続 居場所を探して
〜タンポポの種〜其の三十 ラブストーリーは突然に
(いっけない。遅刻しちゃう) かごめが腕時計を見ながらいそいそと部屋から出てきた。 すると、スーツ姿の弥勒と希を抱いた珊瑚が廊下に。 (・・・いいなぁ。新婚って感じね) ちょっと羨ましそうにかごめは見ていた。 「弥勒様、気をつけてね」 「あ、珊瑚。忘れ物」 CHUッ (///) 弥勒、珊瑚と希の頬に軽くキスをして弥勒。 見ているかごめの方が赤面。 「二人とも愛してるよ・・・いってきます。」 「はい、いってらっしゃい」 と、かっこよーく決めてご出勤です。 (かっこいいなぁ。やっぱり弥勒さまは・・・) かごめは惚れ惚れしていると・・・ ガチャ。 「くぁああー・・・。うー・・・。かごめぇ。腹へったぁー・・・」 寝癖の頭をポリポリかく犬夜叉が登場・・・ 「・・・」 「なんでい。かごめ。その顔は」 「・・・はぁああ・・・」 とてつもない諦めのため息・・・ 「かごめ。それより朝メシ・・・」 「・・・。自分で作ったら!フンッ!」 トタタタ・・・ きゅうにご機嫌斜めで階段を降りていく・・・ 「何おこってんだよアイツは・・・」 女心に疎い。犬夜叉。 ドラマを見てお勉強をしているのにあまり効果がないらしい・・・ 「犬夜叉。あんた、しっかりしてないと・・・。かごめちゃん、ほんっとに 誰かにとられちゃうよ」 「うっせぇよ。ったく・・・朝からどいつもこいつも・・・。ふぁあ・・・」 犬夜叉、しらーん顔で再び部屋で二度寝・・・ ”犬”の居ぬ間に・・・というが、犬夜叉がぐうぐう眠っている頃。 かごめの側に頬を染めた青年が一人・・・。 「へぇ〜。それで金子くん保父さんになろうと思ったのね」 「は、はい・・・」 子供達はお昼寝の時間。 体育館の遊具をかごめと片付ける実習生・金子。 実習生として2週間かごめが担当して指導している。 「まだまだ男の保育士ってすごく助かる。力仕事とか任せられて」 「そうですか!?いやぁ。僕、体力だけには自信があるんですよ」 もりもりの筋肉を腕まくりして見せ付ける金子。 「わぁ。頼もしいなぁ。素敵ね。きっといい保育士になれるわ」 「はい!!僕、かごめ先輩のような保育士になります!あ、す、すいません。 馴れ馴れしくかごめ先輩って・・・」 「うふふ。いいわよ。それより、そろそろみんなお昼寝から起きる時間だわ。 行きましょ」 「は、はい・・・(照)」 まるで初恋少年のように初々しく頬を染める・・・ このとき、金子はとある決意をしていたのだ・・・。 その日の夕方。 「かごめ先輩ッ。お送りします」 「え?」 金子が軽4の車でかごめを誘う。 「いいわよ。すぐそこだし」 「いいえッ!!か、かごめ先輩のような素敵な女性が一人歩きなんて!! ささ、乗ってください!!」 「え、ちょ、ちょっと・・・」 ちょっと強引に車に乗せられるかごめ。 そして楓荘の門の前に車を止める金子。 「ありがとう。金子くん。じゃ・・・」 「・・・」 じっとかごめをみつめる金子・・・。 「・・・何?」 (えっ) CHUッ!! 金子はなんといきなりかごめの頬にキス・・・ 「ちょ・・・ッ。な、何するの!??」 「すみません。かごめ先輩があんまりいい香りがしたから・・・」 「な、何言ってるの・・・。(はっ)」 フロントガラスにへばりついている 男・・・ (い、犬夜叉・・・(汗)) 犬夜叉くん、血管が10本ほど浮いてます。 すごい顔。 「わっ。なんだ、お前は・・・っ」 ガチャ! 犬夜叉はドアを開け、かごめを助手席から引っ張り出した。 「て、て、てめぇえええええ!!!かごめに何しやがるーーー!!!」 「お、お前こそなんだ!かごめ先輩に乱暴な・・・」 「かっ・・・かごめ先輩だと〜〜!??」 犬夜叉は思わず金子の襟を掴む。 「馴れ馴れしく呼ぶんじゃねぇ!!」 「お前こそ、かごめ先輩を呼び捨てにするな!」 二人とも、引きません。 にらみ合い・・・ 「犬夜叉、犬夜叉、やめて!金子くんも・・・」 「かごめ先輩。この人、かごめ先輩の何なんですか?」 「・・・い、一応・・・付き合ってる・・・人」 (い、一応ってなんだ!) 犬夜叉、ちょっとだけ彼氏としてのプライド、傷つく。 「こ・・・こんな乱暴な男と・・・?ま、まさか、無理やり・・・!??」 金子、なにかとんでもない想像をめぐらせる。 「あ、あの金子君・・・。確かに犬夜叉は乱暴者だけど私の彼氏なの。 だから金子君の気持ちは嬉しいけど・・・応えられないの」 「・・・。わかりました。かごめ先輩」 かごめはほっと胸をなでおろすが・・・。 「かごめ先輩を乱暴な男から僕がお守りします!」 「え・・・(汗)」 かごめの手をぎゅっと握り、金子は深く一礼して走り去っていく・・・ どうやら諦めてくれたどころか一層燃え上がったらしい・・・ (あ、あんの野郎〜!!かごめの周りにうろちょろしやがって・・・!!) 奥歯を噛み締める犬夜叉。 だが、犬夜叉のヤキモチもよそに金子は次の日から・・・。 「かごめ先輩!おはようございます!お迎えにあがりました!」 早朝からかごめを迎えに 車で。 「あ、あの金子くん・・・」 「これから、かごめ先輩の送迎、僕が致します!じゃ行きましょうか!」 「え、あ、あのちょっと・・・」 金子は強引にかごめの手をひいて車に乗せた。 その様子を・・・ ミッキーのパジャマ姿のやきもち男が窓にへばりついて見ております。 「あの野郎〜!!かごめを勝手に連れて行きやがって!!」 ドタタタ! ミッキーのパジャマ姿のまま、外に飛び出る犬夜叉・・・ 「ま、待ちやがれ・・・!!」 車を追いかけようとしますが・・・。ミッキーのパジャマのまんまです。犬夜叉くん。 「・・・。く、くそ・・・。金子って奴・・・!強引なとこは 痩せ狼そっくりだな・・・」 (しかし・・・。このままだとかごめとアイツは四六時中一緒ってことで・・・) 犬夜叉くんの脳裏で勝手な妄想がはじまります。 ”かごめ先輩・・・僕があなたを守る・・・” ”金子君・・・” 手を取り合って、倒れこむ二人・・・ 「・・・うがああああ!!!か、かごめに何をするーーー!!」 朝からゴマちゃんのおうちの前で吠える犬夜叉。 食堂でその遠吠えを聞いている、楓荘住人のみなの衆。 「外でなんか吠えておるぞ。弥勒」 「ああ。うちの嫉妬深いオス犬でしょう。ほおっておいていいですぞ」 「そうじゃな」 しゃかしゃかと納豆をまぜ、済まし顔で朝食。 「うおおお。かごめに何しやがる金子虫ーーー!!」 吠え犬は収まらず・・・。 その夕方も。 「かごめ先輩。さ、つきましたよ」 車で送られて帰って来るかごめ。 玄関で仁王立ちしてかごめの帰りを待っていた。犬夜叉。 「だぁああああッ!!」 金子に手をとられ、車から降りるかごめを発見し、猛突進していく犬夜叉。 そしてばっとかごめを背後に寄せた。 「てめぇ!かごめの手ぇにぎってんじゃねぇ!」 「・・・は?かごめ先輩の手を握ってはいけないとどこの誰が決めたんですか?」 「なっ・・・」 理知的な応えに犬夜叉、一瞬呆気に撮られる。 「貴方こそ馴れ馴れしく女性の腕を掴むなんて・・・。非常識だ!」 「て、てめぇ・・・っ。偉そうに・・・」 犬夜叉、力では誰にも負けないが”口撃”は今ひとつ。 「かごめ!こんな年下やろーなんてほっとけ!行くぞ!」 かごめの右手をひっぱる犬夜叉。 「かごめ先輩、ついていくことないですよ!」 かごめの左手をひっぱる金子。 「かごめ!こっちに来い!」 「かごめ先輩、こっちへ!!」 両腕を二人にひっぱられる。 「て、てめぇら、いい加減にしやがれッーー!!!!」 とうとうかごめがキレ・・。 パッとかごめの怒鳴り声に手を離す・・・。 「・・・。女性を物みたいに扱う男なんてどっちもだいっきらい!!フン!!」 かごめの激怒に男二人、唖然・・・。 (まったく!!もう!!) かごめは頬をフグにして、台所へ向かった。 「・・・」 「・・・」 かごめの迫力に、ただ、呆然とする男、二人・・・。 (こ、怖すぎる・・・) 女性を怒らせると、怖いですよ、お二人さん。 「キャアアーーーーッ!!」 台所からかごめの悲鳴が聞こえる (かごめ!) (かごめ先輩!!) 犬夜叉と金子は靴のまま台所へ走って向かうと・・・。 「かごめ!!」 床に座り込み、右手を押さえるかごめ・・・ 床にはポットが転がり、熱湯が溢れ零れていた・・・。 「かごめ!!手、みしてみろ!!」 「犬夜叉・・・」 かごめの右手は真っ赤に爛れ、水ぶくれが・・・。 「大丈夫よ。ちょっと熱かっただけで・・・」 「大ジョブじゃねぇだろ!!」 キュッ!! 犬夜叉は蛇口をひねり、水でかごめの手を冷やす・・・ 「おい、てめぇえ!!車貸せ!!!」 「え・・・?」 「どこでもいい、病院つれてけ!!」 「あ・・・」 「早くしろッ・・・!!!」 金子は慌てて車のキーを取り出し、 犬夜叉はかごめをおんぶして車に乗せる・・・。 「かごめ、まだ痛てぇか!?」 犬夜叉は氷がはいったビニール袋をそっと手にあてて冷やす・・・ 「うん・・・。でも大丈夫なのに・・・」 「んなわけねーだろ・・・」 かごめを心配そうにみつめる犬夜叉の顔が・・・バックミラーに映る。 (・・・) 金子は後部座席のじっと鏡に映る二人を複雑に見ていた・・・。 幸いなことにかごめの火傷はそう深く広いものではなく、 傷薬塗っていれば2週間ほどで治ると・・・。 病院から戻ったかごめ達。 「手、あんま物とか無理して持つなよ」 「わかってるってば。過保護だなぁ。犬夜叉は」 「んなっ・・・。べ、別にオレは・・・(照)」 なんとなーく ほのぼのした空気が玄関に流れる・・・。 「・・・。かごめ先輩。今日はすみませんでした・・・。 なんだか自分の気持ちを一方的に押し付けてしまって・・・」 金子は深々と頭を下げた。 「大切なのは・・・。自分の気持ちを押し付けないで相手を尊重すること・・・。 それを教わりました・・・」 「金子くん・・・」 「・・・でも・・・。僕・・・。諦めたりはしません」 「え?」 「・・・報われない恋だからと・・・。何の努力しないのは僕の主義じゃないんです・・・」 (あ・・・) 金子はかごめの包帯の右手をそっと手に取り・・・ 口付け・・・ 「・・・早く火傷が治りますように・・・。僕の治癒魔法で・・・」 (が、がぁあああああ!!)←【かごめに何しやがる】の犬夜叉の心の声。 「では、失礼します。僕のお姫様・・・」 パタン・・・。 金子タイフーンは去っていったが・・・。 「あの気障野郎〜!!!!!!がーーーーッ!!!」 犬夜叉タイフーンは荒れっぱなし・・・。 「犬夜叉、落ち着いて・・・」 「落ち着いていられるか!!アイツ、手負いのかごめの隙を狙いやがって・・・」 「とにかく落ち着いて・・・。ね・・・?」 (///) かごめの色っぽい声で犬夜叉の怒り、即沈。 「多分・・・。金子君分かってくれてると思う。私達のこと・・」 「かごめ・・・」 だが。 犬夜叉はどーしても許せないことが。 「しかし・・・。あ、アイツはやたらかごめに、そ、その・・・ く、口付けしやがる・・・。そ、そこだけはお前も気をつけろよ」 「もう。手にキスくらいいいじゃないの」 「なっ!???キスくらいいいとは何事だ!て、てめぇ・・」 犬夜叉、かなりかごめの発言にショック・・・ 「もう。うるさいなぁ。私の唇にキスしていいのは・・・」 (う・・・) 犬夜叉の唇の人差し指をすっとあてて・・・ 「犬夜叉・・・だ、け・・・。ね・・・?」 「・・・(喜)」 「・・・。私の部屋に・・・くる?」 「///」 犬夜叉はかごめに少しひっぱられたまま・・・ 二階に上がっていく・・・。 犬夜叉の天敵・・・(?)が増えた不満があるが・・・。 かごめとラブらぶな夜が過ごせそうで 犬夜叉の心はウキウキ・・・。 ふたりで恋愛映画を見た夜だった・・・。 だが・・・ 楓荘の前に 赤いポルシェが止まっている・・・ 桔田梗子が携帯を片手に何かを写した。 「うふふーvいい写真とれしー。よかったよかったv」 携帯のカメラで撮った映像・・・ これが・・・ かごめを新たなトラブルに巻き込むことになる・・・