続 居場所を探して
〜タンポポの種〜其の三十二 オレにできることは
犬夜叉の携帯が震える。 「・・・金子虫かよ。」 犬夜叉はムカつきながらも、かごめにまったちょっかいかけてきたのかと 思い、一発言ってやろうと出た。 「なんでい。金子虫。かごめならいねぇぞ」 「ち、違いますよ・・・。貴方にご相談したいことがあって・・・」 「あぁ??相談って・・・」 「・・・かごめ先輩・・・。今日、保育園に辞表出したんです・・・」 「え・・・!??」 初めて知るかごめの辞職・・・ 犬夜叉は金子から、保育園での騒動の一抹を全て聞いたのだった・・・。 (ち、畜生・・・ッ!!あの女・・・!!!) 桔田への怒りを露にする犬夜叉・・・だがそれより (かごめの奴・・・。なんでオレに一言も相談しねぇんだよ。 なんで・・・) 犬夜叉はベットから飛び起きて、かごめの部屋のドアをノックした。 「かごめ・・・。ちょっといいか?」 「なあに?」 「いや・・・。その・・・。全部・・・。聞いて・・・金子虫の野郎から・・・」 犬夜叉は申し訳なさそうな顔をして・・・ 「・・・とにかく入って。立ち話もあれだから・・・」 穏やかにかごめは微笑んでいるが・・・。 (オレのせいでかごめは) と自責の念でいっぱい。 「はいどうぞ」 座布団をしくかごめ。 ちょこんとあぐらをかいて犬夜叉は座る。 「・・・お前・・・。本当によかったのかよ・・・」 「・・・。仕方ないわよ・・・。保護者さんたちの怒りを静めるには・・・」 「なんでお前が辞めなきゃいけねぇえんだよ!!お前が悪いわけじゃねぇんだろ!??」 犬夜叉は金子から全ての事情を聞いた。 アレルギーの発作を起こした子供は実は、 こっそり家から自分でお菓子を持ってきていて、それを 食べたらしいのだ。 その菓子の中にアレルギー源になる物質が入っていたらしい・・・とのことだった。 「・・・でもね。子供達がお菓子を持ってきていた事に 気がつかなかった・・・。それは担任している私のミスであることにかわりはないのよ」 「けど・・・っ」 「・・・。発作起こした子のお母さんに言われたわ。”私事で ”集中力、欠けてたんじゃないかって・・・。その通りだったの・・・」 かごめは深く俯いた。 ”私事” かごめの言葉は犬夜叉を責めてはいないものの犬夜叉には 自分のせいだと思えてならない。 (・・・桔梗からみのことってでかごめに気苦労を・・・) 「だからってな・・・。なにもお前が辞めることねぇだろ・・・。 よってたかってかごめ一人、悪者にしやがって・・・っ!!オレが 園長に直談判してかごめの辞表、撤回してやる!!!」 犬夜叉は怒りで拳をぐっと握り締める・・・ 「・・・。犬夜叉。お願いだからそれだけはやめて」 「・・・あ?なんでだよ!!」 「・・・事を大きくしても・・・。子供達が動揺するだけ・・・」 「でも・・・っ!!!」 かごめは犬夜叉の震える拳をそっと・・・鎮めるように包む。 「感情的になって・・・。子供達の心を乱すようなことはできないの」 「かごめ・・・」 「お願い。私の事を思ってくれるなら・・・。ね・・・?」 (かごめ・・・) 正義感が強いかごめ。自分に非がないのなら絶対に自分を曲げたりしない。 けど・・・。 人一倍 かごめは人を労わる。 自分を貫き通すことで誰かが傷つくなら 自分に非があろうとなかろうと関係ない。 ・・・子供達の心を一番に考えるから・・・。 「・・・心配してくれてアリガト。でも私なら大丈夫。しばらく休日も とれてなかったから少し骨休めして・・・。それからまたちゃんと頑張るから」 「かごめ」 「うふふ。さーてとお風呂にでも入ってすっきりしますかー!」 ”私は大丈夫” かごめがそう言ったときは 全然大丈夫じゃないときだ。 (・・・なんで・・・。なんでオレを頼らないんだ・・・。大丈夫じゃないときこそ・・・) 犬夜叉が辛いとき かならずかごめは側にいてくれて・・・ 犬夜叉はその優しさに甘えた。 甘えられた。 (・・・オレは・・・オレには・・・何もできねぇってのかよ・・・?) 微かな寂しさとかごめの胸の痛みが 犬夜叉の心を締め付けた・・・。 「・・・ふぅ・・・」 重たいため息をついてかごめの部屋を出てきた犬夜叉を待っていたのは・・・。 「ほうほう。これはこれは恋に悩む二股男君ではないか」 希をだっこした弥勒だった。 「・・・うるせぇ。てめぇは子守してろ」 「子守ちてろだってぇ。希たんvv二股男は荒くてやーねぇ」 ガラガラを希にふる弥勒。 「犬夜叉。恋に悩むお前に良いものをあげよう」 弥勒が犬夜叉に手渡したものは。 車のキーとそれからもう一つ・・・ 「私の友人の別荘の鍵だ」 「別荘?」 「ああ。まぁ、別荘といっても小さなログハウスみたいなものだが」 「どうしろってんだ」 「・・・恋に、仕事に煮詰まったときは。休息あるのみ!!かごめ様を誘ってやれ」 チャリ・・・。 弥勒は犬夜叉に鍵を握らせた。 「かごめ様の側にいてやれ、そして・・・」 弥勒は犬夜叉の耳元で囁く・・・ 「・・・。かごめ様の心と体をおまえ自身でv癒して差し上げなさい(ニタリ)」 「なッ・・・(爆照)」 「んまぁあ。希ちゃん、犬夜叉お兄ちゃんのお顔、いやらちいでちゅねー」 「てめぇがやらしい事吹き込んだんだろうが!!!」 犬夜叉の声に、希がぱっと目を開けた。 「こらぁ。犬夜叉。やっと寝たのに起こすんじゃないですよ。全く。さ、おうちに ムッツリ助平はほおっておきまちょうね」 そう言ってすたすたと 自分の部屋に入っていく弥勒・・・。 「ったく・・・。どっちが助平なんだよ・・・」 お茶らけじみていても分かる。 弥勒の優しさが・・・ 車のキーにつまっていることを・・・。 「・・・礼は希に言っておくぜ。サンキューな・・・」 キーを握り締めて 犬夜叉は翌日。 かごめを誘った・・・