「え・・・?引っ越す・・・?」 「うん」 食堂で珊瑚たちがかごめ達にある報告をしていた。 町内にあるマンションに珊瑚たちは引っ越すという。 「でもそんな急に・・・」 「かごめちゃんたちが結婚、正式にしたのならあの部屋も いずれは子供部屋になる予定だったんだし・・・」 テーブルの上に、マンションの住所のメモが・・・。 「珊瑚ちゃん」 「ここは・・・。犬夜叉たちの家だよ。家族が増えていくんだから・・・」 しかしかごめは首を横に振る。 「違うよ・・・。住む場所は違っても、ここはみんなの家。 みんなの居場所だよ・・・」 「かごめちゃん・・・」 かごめと珊瑚は握手し合う・・・。 一方。夫達は・・・。 庭でスモークタイム。 犬夜叉が煙草の箱から一本取り出す。 「吸うか」 「・・・煙草はやめたんだ」 煙草を返す。 「・・・ふん。いいパパさん・・・だな」 「お前もいつかはなるんだから、今のうちに禁煙しとけ」 「・・・ゴホッ」 少し照れてむせる。 二人はしゃがみ、かごめが植えた・・・ピンクのチューリップを眺める・・・ 「かごめ様がうえた花・・・。今年も咲いたな・・・」 「ああ・・・」 「・・・幸せの花も・・・。咲かせてやれよ・・・。枯れないように・・・」 「けっ・・・。気障な台詞だけ、残してくんじゃねぇよ。ま・・・ たまには酒、付き合ってやるけどな・・・」 「ふ・・・」 短い間でも 一つ屋根の下に暮らした友。 互いに守るべきものが出来て・・・。 別々の家庭を築いていく・・・。 「犬夜叉・・・。かごめ様から・・・。笑顔を消すなよ・・・」 「・・・けっ。そっちこそ浮気して珊瑚泣かすんじゃねぇぞ」 「・・・お互い様にな・・・」 男同士。 分かり合えるものがある。 認め合えることがある。 二人は暫くかごめが植えたチューリップを眺めていた・・・ 一週間後。 向かいの珊瑚たちの部屋の荷物は全てなくなり、完全に 引っ越した。 「・・・。二人の夫婦喧嘩の声も聞こえない・・・か・・・」 さらに珊瑚たちを追うように七宝も父親の元に帰ることになった。 「・・・七宝ちゃん、いつでも遊びに来てね・・・」 玄関でランドセルを背負う七宝。 玄関の外には七宝の父親が運転するトラックが止まり・・・ 「七宝ちゃん。元気でね。ちゃんと学校行くとき、寝坊しちゃ駄目よ」 「心配するな。かごめオラはもう弱い子供じゃない。 どっかの二股男と違ってかごめをなかせるような大人には絶対にならん」 くっ・・・と決意を新たに拳を握る七宝。 だがすぐあとに犬夜叉からの一発が入ったのは言うまでもない。 「けっ。餞別だ!」 「犬夜叉ったらもう・・・」 呆れ顔のかごめ。 でもこれはこれで犬夜叉からの七宝の励ましということは分かっている。 「七宝ちゃん。ちゃんと朝ごはん食べるのよ」 「うん」 「ちゃんと寝る前には御トイレ行ってね」 「うん」 「学校行くとき、忘れ物しちゃだめよ・・・?」 「うん・・・」 七宝は目をうるうるさせて・・・。 たった数ヶ月だったけど・・・。 七宝にとってかごめは紛れもなく”お母さん”だった・・・ 「・・・かごめ・・・。また・・・たまにかごめの作るご飯・・・ 食べに来てもいいじゃろか・・・?」 「勿論だよ・・・。いつでもおいで・・・」 目の淵で必死に涙を我慢する七宝。 そんな七宝を抱きしめるかごめ。 いたずらっ子で大人顔負けの毒舌で・・・。 でもホントは寂しがりや。 そして大人以上の痛みを分かる子・・・ 「けっ・・・。玄関先で浪花節してんじゃねぇよ。ま、たまにメシ食いにぐらいは 来てもいいけどな」 「・・・七宝ちゃん。元気でね」 「うん。かごめもな・・・。犬夜叉に泣かされたらオラが ちゃんと仕返してやるから・・・」 犬夜叉など無視して、最後のハグし合う七宝とかごめ (けっ。今日だけは見逃してやるか・・・。七宝の門出でもあるからな・・・) プップー! トラックのクラクション。 「・・・じゃあね・・・。七宝ちゃん」 「・・・うん・・・!」 黒いランドセル・・・ 最初は重たそうにランドセルに背負われている感じがしたけど 今は、身長も伸びて力強く青い空を駆けていく・・・。 「・・・オラ・・・。ここで過ごせてよかった・・・」 トラックの窓から見送る犬夜叉とかごめに手を振りながら伝える。 「また・・・。来るから・・・。ここはオラの・・・二番目のうちだから・・・!」 犬夜叉とかごめは確かに頷く。 「待ってるよ・・・!七宝ちゃん・・・!待ってるからね・・・!」 トラックが見えなるなるまで・・・ かごめは手を振り続けた・・・。 いや・・・ 見えなくなっても・・・。 「・・・いっ・・・ちゃった・・・」 「行ったな・・・」 静かだ・・・。 会えなくなったわけじゃないのに 明るい電気が急に薄暗くなったみたいに 寂しい・・・ 「あ・・・。どうしよう・・・」 「どした・・・?」 「夕食の買い物・・・。買い過ぎちゃった・・・。犬夜叉・・・。 今日、沢山お代わりしてね・・・」 「・・・ふ・・・。ばぁか・・・」 瞳を潤ませるかごめの肩を抱く犬夜叉・・・。 押し寄せる寂しさは・・・犬夜叉も同じ・・・。 今日から自分がかごめを守っていく。 支えていく・・・。 ”かごめ様から笑顔を絶やすなよ・・・” (弥勒たちの分も・・・オレが・・・) かごめの肩を抱く犬夜叉の手が 一段と強く・・・。 「犬夜叉・・・」 「いつまでも泣いてんじゃねぇ・・・。オレが・・・。 オレがいるだろ・・・」 「・・・うん・・・。そうだね・・・。これからは・・・。二人で一緒・・・ だよね・・・」 「おう・・・」 じっと 見つめあう犬夜叉とかごめ・・・。 かごめはごく自然に瞼を閉じた・・・ (かごめ・・・) 「うおっほん!!」 「!!」 楓の咳払いで、久しぶりの犬かごチュウ、中断。 「・・・このおいぼれを忘れる出ないわ!いくら新婚だとはいえ、 お前達、ここは”路上”だぞ」 (あ・・・) 気がつけば。 二人のラブシーンを見学する通行人の皆様方が・・・。 「///」 「///」 赤面する二人を ギャラリーは微笑ましい拍手を送ります。 「・・・ふぅ・・・。・・・こりゃ子作り環境、もっと考えニャいかんのう・・・」 葉桜の頃。 初々しい二人の頬を 心地いい初夏の香りが通り過ぎていく・・・。 川辺。 犬夜叉との思い出の川辺。 腰まであった長い髪をばっさり切った桔梗の姿があった。 「・・・」 バックの中から一通の手紙と犬夜叉からもらったあの髪留めを取り出す・・・ 手紙を広げ、読み返す桔梗・・・。 差出人は楓・・・ 『・・・貴方と犬夜叉の思い出の品を一時、この年寄りが預かっておりました・・・。 しかし犬夜叉の新しい門出に際して、これが犬夜叉の側に、あるべきではないと 判断した次第です。犬夜叉が貴方に送った品・・・。 あなた自身の手で・・・けじめをつけることが犬夜叉にとっても貴方にとっても 大切ではなかろかと・・・年寄りの説教と思い、心にとどめてくだされば幸いです・・・』 と・・・短い文章だった。 「・・・」 桔梗は静かにしゃがみ、髪留めを川の流れに落とした・・・。 ゆっくりと流れていく髪留め・・・ 髪留めに込められた思い出も一緒に 流して・・・別れを告げる・・・ 「・・・。幸せに・・・。幸せに・・・」 犬夜叉へ・・・ そして・・・ 「桔梗!何してるの!レコーディング始るわ!」 土手にとめてある車の窓から桔田が叫ぶ。 「・・・。幸せに・・・」 そして・・・ 未来の自分へ・・・。 風に吹かれる雲・・・ それぞれの行く道の上に流れる ・・・形ではない幸せを見つけに・・・ 「・・・おいかごめ。オレの背広、どこいった」 「昨日、クリーニングに出したって言ったでしょ!なんで人の話きーてないのよ!」 食堂で朝からパジャマ姿でかごめに一張羅の背広の行方を尋ねる犬夜叉。 「どーすんだよ!今日、試験会場にジーンズはいてくわけにゃいかねーだろ!」 「知らないわよ!別にいーんじゃない?格好なんて。 大事なのは、試験に受かろう!っていう意気込みよ!」 お玉をもって力説するかごめ。 「ま・・・そうだけどよ」 「とにかく精一杯力を尽くすこと・・・!今夜は・・・沢山私、 労ってあげるから」 「///」 犬夜叉、ちょっと違った想像を一瞬しちゃいました。 「・・・んなら力の出る・・・”何か”くれよ」 「え?何かって・・・」 「///」 犬夜叉、ちょっと恥ずかしい注文をかごめにお願いしちゃいました。 「・・・しょうがないなぁ。もう」 かごめは背伸びをして犬夜叉の頬に・・・ CHU! 元気が出る”何か”をしてあげました。 「・・・これで元気でた?」 「・・・おう」 「じゃ、犬夜叉。早くご飯に食べて支度して!遅刻したら元もこもないわ」 建築の専門学校の試験。 犬夜叉が”生徒”になるなんてかごめはちょっと心配だけど・・・。 (犬夜叉にはしっかりしてもらわなくちゃ) いけない理由があるらしい。 「犬夜叉。気をつけてね」 「おう」 玄関で犬夜叉の背広の襟を整えるかごめ。 「あ、それから・・・犬夜叉。明日、車の運転、お願いできるかな」 「ん?別にいーけどどこまで行くんだ?」 「んー・・・。産院まで」 「さん・・・?」 (さんいん・・・?さんいん・・・サイン?サインコサイン?じゃなくて・・・!!) 産院!!! ポト・・・。 犬夜叉の手からバックが落ちた。 「さんいんって・・・お前・・・」 「ほんじゃ、明日、車よろしくねー!」 かごめはスタスタと食堂へ戻る。 「・・・ってかごめ、お前ーーーーー!!」 犬夜叉の喜びの(?)雄たけびが響く。 「ホントなのか、そうなのか、マジなのかーーーーー!!」 済ました顔で洗濯物を洗濯機から取り出すかごめ。 「らしいわね」 「らしいわねって・・・。なんでそんなに落ち着いてんだ!」 「あんたこそ何そんなに騒いでんのよ」 「ばっ(照)あ、当たり前だろうが!!」 「することしたから、出来たんでしょ?自然の摂理よ。 犬夜叉の方が”心当たり”あるんじゃない?」 淡々と言うかごめ。 「こ、心当たりって・・・(照)」 (・・・いつだ。いつの夜の・・・。ってあの時か、いや、あの晩か・・・) 「ふふ。女はね、母親になったらすごいのよ。それより犬夜叉。 試験に遅刻しちゃうわよ。早く行かないと・・・」 「ぎりぎり間に合う!ってかお前、そんな重たいモン、もってんじゃねぇよ」 かごめが持っているのは、犬夜叉のぱんつ。 「これのどこが重たいの?」 「うるせ!いーからお前は茶でも飲んでゆっくりしてろ!」 「いーわよ。これは私の仕事。犬夜叉は早く試験会場へいってってば!」 「よくねぇ!おれがやる!!」 二人で犬夜叉のぱんつを左右でひっぱりっこ・・・。 ビリリリリ!! 「・・・」 「・・・」 あらら。犬夜叉のぱんつが、二枚になっちゃいました(笑) 「・・・ふ。ふふふ・・・」 「く、クックック・・・」 二人は大声を出して笑う。 楽しくて 可笑しくて・・・。 干した洗濯物も一緒に笑っているように風になびく・・・ 「・・・。ふぅ・・・。よく笑ったー・・・」 「だな」 「子供が生まれたら・・・。こんな風に笑いあいたいよね・・・?」 「そうだな・・・。でもその度にオレのぱんつが減るのか?」 「・・・く。はははは・・・!もう!あんまり笑わせないで・・・。お腹痛・・・」 「何!??どこだ!」 「こーこ・・・」 かごめは犬夜叉の手をお腹にあてた。 「///こ、ここ、なのか・・・」 「そう。ここ、だよ・・・」 そう・・・ ここ、に・・・ 二人が見出した”幸せ”が・・・生きている。 「・・・ここ・・・か・・・」 「うん・・・」 新しい未来。 これから一緒に育てていく未来。 二人の幸せは、すぐそこに そばに ある・・・ 「犬夜叉・・・。これから・・・”私達”・・・よろしくね」 「おう・・・」 大切なものが増えた。 世界で一番愛しい女と・・・自分の分身。 「守っていくさ・・・。絶対にな・・・」 犬夜叉はかごめの唇にそう誓う・・・ チューリップが枯れた頃。 今度はタンポポの綿毛が庭を彩り 空に舞う・・・。 かごめが綿帽子を吹く・・・ 「みんなの幸せ・・・。希望が生まれますように・・・」 綿帽子たちはかごめの願いを乗せて 舞って行く・・・ ベランダで希をあやす弥勒と珊瑚のところへ・・・ 学校でサッカーをする七宝のところへ・・・ ・・・大きなホールでバイオリンを奏でる桔梗の元へも・・・ そして・・・。 「・・・お前の腹についてたぞ」 「ふふ・・・。今の私最大の”希望”だものね・・・」 小さな綿帽子。 これから元気に育てよ かごめは庭の土に埋めた・・・。 「・・・希望が・・・消えませんように・・・。希望が・・・絶えませんように・・・」 みんなの心に希望が届きますように みんなの心に希望が伝わりますように・・・。 かごめの願いを乗せて綿毛たちが空を飛ぶ・・・ 何物にも変えがたい 何より大切な 希望という名の幸せを乗せて・・・。FIN
・・・中途半端な終わりで申し訳ないです(滝汗) ダーっと一気に終わりにもっていっちまった 感じがしますが犬かごベイビーが宿ったと言うことで 濁してください(汗) 結婚後の二人はまた、余韻がある時に読み切り、と言う形で またかきたいなって思っています。 居場所・・・を書き始めて丸々 2年と半年・・・ぐらいでしょうか(うるおぼえ) こんなに長くなるとは思ってなかったのですが、 書きたいネタが色々あって気が付いたらこんなに 長くなってました。 でも最後までとりあえず、書けたので よかったと思っています。 本当に最後までおつきあい下さり有り難う御座いました。