居場所を探してシリーズ最終シーズン 「タンポポの綿毛が舞い落ちて・・・ 〜遠い空〜」 第二話 旅立ちの夜 その日の夕食。 大好物の肉じゃがなのに。 犬夜叉の箸は重く動く。 かごめも満も何か犬夜叉が重大なことを言おうとしていることを察知しているが あえていつものペースで夜を過ごしていた。 「とーちゃん。風呂はいろーぜ」 「お、おう」 「オレ、すげぇーんだぞ。ほら。 手で水鉄砲できるよーになったんだ」 「そ、そうか」 満は必死にしゃべる。 動いて手で鉄砲の形を作ってみせる。 重たい空気をなんとか4歳児なりに解消しようと。。 「満。お母さんのひざにいらっしゃい」 「・・・」 「お父さんから、大事なお話があるのよ」 かごめはエプロン脱いで、満をひざにちょこんと乗せ、 犬夜叉に向き合った。 「・・・ちゃんと話して。私達、大丈夫だから」 「・・・」 犬夜叉は覚悟を決めたように正座した。 「・・・。オレ・・・。北海道に行く」 「・・・」 かごめはなんとなく予感したいたのか 表情一つ変えずまっすぐ見据えている。 「ほっかいどー?」 満は首をかしげて・・・ 「おかーちゃん。ほっかいどーってどこだ? 遠いのか?」 「・・・。うん・・・。海の・・・ずっと向こう」 「えーーーーー!!とーちゃん そんな遠いトコに行くのか!?なんで!!」 「・・・。お仕事で・・・。どうしても行かなくちゃいけないの」 「イヤダ!とーちゃんが遠くに行くなんて!!」 事の重大さをようやく理解した4歳。 うるうる目に涙をためて犬夜叉のTシャツをひっぱる。 「行くってどのくらいいくの?えぐッ。 指何本ぐらい寝たら帰ってくるの・・・エグッ」 「・・・たくさん、たくさんだ・・・」 満は自分の指を数えてみた。 やっと10まで数を数えられるようになった満にとって 10以上の数はとても大きい未知の数字だ。 「・・・ううう。そんなたくさん・・・ とーちゃんがいないなんて・・・えぐッ。オレとかーちゃんと 小雪も一緒は駄目なのか?」 「・・・お前達に・・・。負担はかけらねぇ・・・。 それに・・・」 ”派遣人数は決まっている” ”家族の負担費用は出ない” ”病弱がちな小雪に新しい土地での生活は 負担が大きすぎる” 満には分からない 現実が 沢山ある。 「・・・すまねぇ・・・。でもな、そうしないと・・・。 みんなが不幸になるんだ」 「・・・イヤダイヤダぁ!とーちゃんと一緒がいい!! オレも一緒に行く!」 だだをこねて犬夜叉のひざにしがみつく満。 「満。いらっしゃい」 かごめは黙って満を呼ぶ。 「お父さんはね・・・。私達のために頑張りに行くの」 「だからオレも頑張って一緒にほっかいどーに行く!」 「・・・お母さんだって一緒に行きたいわ。でもね・・・。 行けないの」 「どうーしてッ!!」 「・・・北海道はとても寒いところ・・・。 小雪は・・・どうなると思う?」 「・・・」 満は一生懸命に考えた。 寒いところ。 寒くなると小雪は風邪を引く。 そしてすぐ肺炎になる。 いっぱいいっぱい注射を打たれる・・・ (オレ・・・ちゅうしゃ大嫌いだ) 「・・・」 「分かるわね・・・?満」 「・・・」 ぽろぽろと大粒の涙を流してうなずく満。 ぎゅっと抱きしめるかごめ。 「大丈夫よ・・・。距離は遠いけど・・・。北海道なんて 飛行機にのったらあっという間についちゃうんだから」 「・・・ホント?」 「うん。週に一回は必ずお父さんに会いに行きましょ」 「・・・うん!!」 満の背中を必死に撫でて かごめは抱きしめた 小さな心で理解した いや、大人の現実を理解させてしまったことが・・・ 犬夜叉の心の深く 痛く 申し訳なく 何も言えず ただかごめに任せるしかなかった・・・。 そして 悶々としたまま旅立つ日の夜・・・。 深夜。 子供達はすっかり夢の中。 満は飛行機に乗ればトーちゃんに会いにいけると、 飛行機のぬいぐるみを持ったまま眠っている。 ベランダ。 犬夜叉が一人深刻にうつむいている。 「・・・なーに一人でシリアスになってるの」 「かごめ」 「サラリーマンの宿命じゃない。単身赴任は・・・。 一度は経験してもいいかもしれないわ。一度きりの人生よ」 ボン!と犬夜叉の背中をたたいた。 「・・・。お前なんでもそう、前向きになれ・・・」 (えっ・・・) ぎゅっと・・・ 犬夜叉の胸に抱きついてきた。 「・・・。お前・・・」 「・・・。嘘・・・。本当は私が一番・・・ 寂しい・・・」 「かごめ・・・」 「・・・お願い・・・。今晩だけ・・・ ちゃんと抱きしめていて・・・。明日から頑張るために・・・」 「かごめ・・・」 「・・・。もっと・・・もっと」 もぞもぞっと かごめは顔を 頬を こすりつける 身を寄せる・・・。 「・・・。もっとだなんて・・・。 抱きしめるだけじゃすまなくなるだろ・・・」 「・・・。もっと・・・」 かごめはいつにも増して・・・ 身を寄せる パジャマの胸元が犬夜叉の胸元に当たる。 「・・・。3人目が出来たらどうする///」 「ふふ・・・。いいじゃない。満・・・弟欲しいって言ってたし」 「・・・お前の体が心配だ(照)」 「じゃあ・・・やさしく愛して・・・。 離れいてもお互いを覚えていられるように・・・」 二人はそのまま 子供部屋の隣の部屋に消えて 行った・・・。 支えあう夫婦 今宵は 熱い恋心を呼び覚まして・・・ 離れて暮らしても 絆が揺ぎ無いようにと・・・ 心と心を互いを強く強く繋ぎ合わせた・・・。