続・居場所を探して読みきり編 〜祈り〜
前編
「か・・・か、かご・・・かご・・・め・・・?」 よろよろと・・・ ベットに近づく・・・ 長い黒髪が・・・枕に流れ・・・ 白い布が かぶせられている・・・ (嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ・・・) 犬夜叉の思考は完全に止まり・・・ ベットの横でひざまづいてただ・・・ うな垂れる・・・ 「嘘だ・・・。嘘だ。かごめが・・・かごめが・・・」 そう これは 夢。 神様が犬夜叉に見せている 悪夢・・・ (嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ・・・) 体が硬直していく・・・ 脱力して 全身の血の流れが・・・止まった・・・ 「・・・旦那さんですか・・・?」 ナースが犬夜叉に声をかける・・・ 「・・・どうしてもっと早く・・・来て上げなかったんです・・・!!」 「・・・」 ナースの声も犬夜叉には聞こえず・・・ ただ・・・蹲る・・・ 「”犬夜叉”桔梗・・・無事でいて・・・。奥様はそう・・・ 痛みに耐えながら言っておられましたよ・・・」 「・・・か・・・かご・・・め・・・」 「たった一人で・・・。痛みに耐えて耐えて耐えて・・・。 さぞかし寂しかったでしょう。苦しかったでしょう・・・」 ”犬夜叉・・・” あの声は 幻なんかじゃなかった・・・ 「う・・・。うぁああああああ・・・ッ!!!!!」 犬夜叉はナースの足にしがみついて 嗚咽をあげた・・・ 「・・・泣くくらいなら・・・。どうして側にいてあげなかったんです・・・?」 「うぅああああ・・・ッ」 「・・・。泣いてたってしょうがないでしょう・・・。 奥さんは最後の最後まで・・・。貴方を気遣っていましたよ・・・」 「か、かごめぇえええええ!!!」 犬夜叉は大声で泣いて 白い布を取った・・・ 「やかましいわい。阿呆が」 「!?」 白い布をとったらなああんと。楓おばあちゃんがそこに・・・ 「・・・な・・・な・・・な!???」 犬夜叉、混乱の余り、ろれつがまわってない。 「ビービー男が泣くんじゃない。相変わらず間抜け面じゃのう」 「な、なんでばばあが・・・!?おい、看護婦!! かごめはどこに・・・」 犬夜叉はナースの襟をつかむ・・・ (!?) 「はあい♪犬夜叉くうん♪おっかえんなさーい★★」 ナース姿の弥勒で・・・(汗) 「な・・・み、弥勒!?て、てめぇ!!」 「ふはははは。犬夜叉。今のお前の鳴き声、しかと 録音したぞ?」 ポケットからカセットテープを取り出す弥勒。 「て、てめぇら!!は、図りやがったな!??」 「気がつかないお前が悪い。冗談じゃないか単なる」 犬夜叉かっと弥勒の襟を強くつかんだ。 「やっていい冗談と悪い冗談があるだろうが・・・っ!!」 「・・・それはこっちの台詞だよ」 「さ、珊瑚・・・!」 「あんたにはこのくらい毒がある冗談しないとわからないんだよ! 鈍感男!」 「毒が効きすぎだ!!かごめの生き死にを簡単に使うんじゃねぇ!!!」 「かごめちゃんは生きてるけど、本当に一時、意識なかったんだよ!?? この鈍感男!!」 廊下で言い合う犬夜叉と珊瑚。 看護士に注意される。 「文句は後・・・。かごめちゃんはこっちだよ・・・」 犬夜叉は珊瑚の後についていく。そこは・・・ (しゅ・・・集中治療室・・・!?) 様々な医療器具の音が響く。 かごめは一番端のベットに 酸素マスクをつけて眠っていた・・・ 「か・・・かごめ・・・」 犬夜叉はかごめの手を握り・・・その温もりを確かめる・・・。 (よかった・・・。生きてるんだな・・・) ほっとして犬夜叉はがくっと跪く・・・ 犬夜叉ははっとした。 「さ、珊瑚・・・赤ん坊は・・・」 「生まれたよ・・・。男の子・・・」 犬夜叉はほうっと安堵の息をはいた。 「でも難産も難産でね・・・。かごめちゃんは一人で頑張って頑張ったん だけど・・・。心臓に負担がかかって・・・でもかごめちゃん・・・ 本当に一時危なかったんだよ・・・?意識がなくなって・・・。 呼びかけても応えなくて私、もう本当に怖かった・・・」 「・・・珊瑚・・・」 瞳を潤ませる珊瑚の肩を弥勒は抱いた。 「犬夜叉。今はとにかくかごめ様のそばにいてやれ・・・」 「わかってる・・・」 細いかごめの腕・・・ あまりの痛さに手足をばたつかせて 周囲にぶつかり青あざができて・・・ かごめの桃色の頬は青白く 目の下にはくまができて 出産の壮絶さを物語っていた・・・ 「たった一人で・・・あの痛みに耐えて耐えて耐えて・・・。 どんなに心細かったか・・・。寂しかったか・・・」 「・・・」 「・・・犬夜叉・・・。あんたホントに馬鹿だ・・・。 一番そばにいてほしい時にいなくてどうするんだよ・・・」 珊瑚は涙を溜めて犬夜叉に訴える・・・ 「・・・犬夜叉に連絡しようかって言ってもかごめちゃん、 余計な心配かけたくない・・・って・・・止めて・・・」 「かごめ・・・」 太い点滴を刺されているかごめの細い腕が 痛々しく・・・ 犬夜叉はぎゅうっとかごめの手を握り締めた・・・ そしてかごめの目がうっすら開いた・・・ 「・・・!か、かごめ・・・!」 「い・・・やしゃ・・・」 「かごめ・・・!」 まだ麻酔が切れていないのか・・・ かごめは朦朧としている・・・ 「かごめ・・・。ごめんな・・・ごめんな・・・」 「い・・・やしゃ・・・。き・・・ききょ・・・」 「桔梗は無事だった。だから安心しろ・・・」 犬夜叉の言葉に・・・ かごめはか細く微笑む・・・ 「かごめ・・・。ごめん・・・。本当にごめんな・・・。 お前一人・・・つらい思いをさせて・・・」 かごめは首を振った・・・ 「かごめ・・・」 「・・・い・・・やしゃ・・・」 「ん・・・?」 かごめが必死に何かを伝えようと口を動かす 犬夜叉は耳をあてて聞いた・・・ ”い・・・やしゃ・・・。おか・・・えり・・・” 「かごめ・・・。ただいま・・・。そしてありがとう・・・。産んでくれて・・・」 犬夜叉の言葉に・・・ かごめの目筋から 一筋・・・ 流れる・・・ ”産んでくれてありがとう・・・” 一番聞きたかった 言葉だった・・・ 「・・・かごめ・・・!?」 犬夜叉の言葉に安心したのか かごめは再び目を閉じて 眠りついた・・・ そして犬夜叉は・・・ かごめが目覚めるまで・・・ その場を離れなかった・・・
『犬飼かごめ様 男児 3900g』 (あれが・・・。オレのガキか・・・) 新生児室。 犬夜叉はまじまじと自分の子供を眺めております。 (どっちに似てるんだろうな。ま、どちらに似ても 見てくれはもんだいねぇ) 犬夜叉の赤ちゃん。 お父さんの視線に気づいたのか、ぱっと目を開けた。 「おっ。目、あけたぞ!」 犬夜叉、新生児室の前で大騒ぎ。 (・・・オレを見んのか・・・。おい。オレがお前の おやじだぞ) 白い産着。ちっちゃな手足をもぞもぞさせている。 (・・・可愛い(かごめによくにて)・・・) 犬夜叉、なんだか沸々と自分の中に芽生えるあったかい感情を 感じております。 (い、いかん。父親面する前にそれよりかごめだ) 犬夜叉はかごめの着替えと珊瑚が作った 重湯を持って病室に・・・ 「かごめ・・・?」 朝食が終わり、空の皿が置いてある。 かごめはスースーと寝息をたてて眠っている (そうだよな・・・。疲れてるはずだよな・・・) 難産だった昨日の今日だ。 かごめの顔色はまだ少し芳しくない・・・ (かごめ・・・) 何時間も 何十時間も たった一人で闘わせてしまった。 (どのくらいの痛みだったんだろうか・・・。どのくらいの 苦しみだったんだろうか・・・) 男には体験することが出来るはずもない 想像しても分からない。 (だからこそ・・・。側についててやらなきゃいけねぇのに・・・) 運命の神がいるとするなら 犬夜叉は恨まずにはいられない なんで大事なときに”究極の選択”をさせる? 桔梗とかごめという選択をさせる・・・? (って・・・。オレの意志が弱いだけなんだろうがな・・・) かごめの前髪を申し訳なさそうに サラッと流す・・・ 「ん・・・。犬夜叉・・・?」 「悪い・・・。起こしちまったか・・・」 犬夜叉は少しずれていた掛け布団を整える。 「犬夜叉・・・。あの・・・。桔梗は本当に大丈夫だったの?」 「ああ・・・」 「よかった・・・。本当によかった・・・」 かごめははー・・・っと深く安堵の息を吐く・・・ 「かごめ・・・。お前はホントに・・・」 「何・・・?」 「いや・・・。なんでもない・・・」 ”お前は本当に・・・。強いな” そう言いたかった・・・ 「犬夜叉・・・。そこのメモとってくれる・・・?」 「え、ああ、これか・・・」 枕元にあったメモ帳をかごめに渡す。 「・・・名前・・・。考えたんだ・・・」 かごめはペンで文字を書いて犬夜叉に見せる・・・ 「”満”」 「うん。満(みつる)って呼ぶの・・・。 昨日の夜・・・満月がとても綺麗だった・・・。なんか 美味しそうなお饅頭にも見えたんだけど(笑)おかしいかな?」 「いや・・・いいんじゃねぇか・・・?お、オレは名前なんて いいの、うかばねぇし・・・」 「よかった・・・」 微笑むかごめ・・・ 結局最後の最後まで、子供の名前の名づけさえ かごめにやらせてしまって・・・ 「・・・かごめ・・・。本当にすまねぇ・・・。一人きりにして・・・」 「・・・ふふ。これからあと何回犬夜叉の”すまねぇ”を 聞くのかな。でも犬夜叉も桔梗も無事で本当によかった・・・」 「かごめ・・・」 かごめの手を握る犬夜叉・・・ 「犬夜叉・・・。赤ちゃん・・・見てきた・・・?」 「あ、お、おう・・・」 「どうだった・・・?どっちに似てるかな・・・?」 「・・・ま、まだわかんねぇよ(照)」 かごめは微笑むだけで・・・ 犬夜叉を責める言葉は一つも発しない 「・・・かごめ」 「ん・・・?」 「・・・。オレ・・・オレ・・・」 何かかごめに 伝えたいはずなのに 伝えたいはずなのに・・・ 言葉が上手く繋がらない・・・ 「・・・犬夜叉・・・。いいんだよ・・・」 「え・・?」 「・・・。自分にとって大切な人が大変なこと になっていたら何があっても飛んでいく人なの。私はそういう 人と結婚したんだから・・・」 「かごめ・・・」 かごめにこんな台詞を言わせてしまうなんて。 哀しく切なくかごめを強くさせているのは 自分だ・・・ 「かごめ・・・。オレ・・・。お前と子供・・・。絶対守るから・・・ 今言ってもかっこつかねぇけど本当だから・・・」 「うん・・・。期待してる・・・でも”三人”で、だよ」 「ああ・・・。そうだな・・・」 犬夜叉は実感する。 かごめの手の温もり (オレは・・・。オレはこんなにも・・・ かごめに支えられて・・・生きているんだな・・・) 欠点も長所も全て 受け入れて 許して 支えられている・・・ (・・・守らなくちゃいけねぇ。そして・・・) この温もりを 「・・・かごめ」 「ん・・・?」 「・・・。愛してるぜ・・・」 照れもなく 意地もなく・・・ 自然に 犬夜叉の口から発せられた・・・ 「・・・。犬夜叉・・・」 「な、なんだよ・・・」 「・・・あんた・・・。なんか悪いものでも食べた・・・?」 かごめ、なんとも冷ややかな顔・・・ 「な・・・!??お、お前っ。ひ、人が・・・う、嬉しくねぇのかよッ(爆照)」 「そういうわけじゃないけど・・・。普段言わないこと 言うとなんかねぇ・・・」 「・・・く、くそ。も、もう二度といわねぇぞッ」 あらら・・・。 犬夜叉はそっぽをむいてしまいました。 かごめはそんな犬夜叉のセーターをくいくいとひっぱった。 「犬夜叉・・・。私もだよ。私も愛してる」 「・・・(喜)」 「・・・二人で・・・。あの子を愛していこうね・・・。生まれてきたあの子を・・・」 「・・・ああ・・・」 握り締めあう手。 ここにはいないけどその手の中には 小さな花のような手も一緒に 握り締めあっている・・・ 二人の宝物が・・・ 2週間後・・・ かごめと赤ちゃんは無事、退院した・・・ 青い産着をきた二人の長男、満君。生後2週間です。 かごめの腕に抱かれ、犬夜叉達の家に来るまで向かっています。 「犬夜叉。運転丁寧だね・・・」 「当たり前だろ。産まれたての子供がいるんだから」 犬夜叉パパ、しんまいパパですがはりきってます。 「・・・ふふ。満。あんたのパパは少しは優しくなったのかな」 「少しはってどういう意味でい。ったく・・・」 バックミラーにうつるかごめと我が子の微笑ましい姿。 (///) 犬夜叉、感慨深く見惚れていると・・・ 「わっ!!犬夜叉、前見て、前ッ!!!」 ちょっと乱暴な運転になっちゃいまして(笑) でもそんな犬夜叉もかごめは大好きなのです。 そして3人は・・・ これから3人が暮らしていく家に還って来た・・・ 「・・・さぁ。ついたよ。満」 ガチャ・・・ 犬夜叉が車のドアを開ける・・・ 肌寒いけれど 木漏れ日がかごめと満を照らす・・・ 「おかえりなさーい!!」 大切な仲間達がかごめを出迎えてくれる。 「ただいま。みんな・・・!」 珊瑚たちが産着の中の満を大歓迎。 「おい。誰か荷物・・・」 犬夜叉などそっちのけで満君の愛らしさに皆、見惚れております。 (・・・けっ。ま、いいけどな・・・) 「皆で記念写真撮らない?待ってたんだよ。かごめちゃんたちを」 珊瑚はかごめと犬夜叉を庭に連れて行った。 すると三脚にカメラをセットしている弥勒がいた 「お。やっと主役たちのご登場ですな。ささ、 かごめ様はこちらに。ついでに犬夜叉もこっちへ」 「ついでとはなんだ(怒)」 犬夜叉とかごめが真ん中の椅子に座り、珊瑚たちが周囲を囲む。 ついでにかごめの足元にゴマちゃんが(笑) 「さー。皆さん笑って笑って・・・」 弥勒がシャッターをまわす 「1+1=にぃ・・・!」 パシャッ! 無事、写真はとれました。 しかし。 「あーーー!!しまった。フィルムがない!」 「え!?弥勒さま、あんた何やってんだよ!!」 「すみません。昨日、入れておいたはずなんですが・・・」 「・・・ったく。いざってとき頼りにならないんだから」 弥勒家の夫婦喧嘩が勃発・・・? 「なんだよ。弥勒たちは・・・」 「ふふ。仲がいいって証拠よ」 「証拠か・・・」 「・・・!」 犬夜叉、かごめに不意打ちキス。 「な、何突然・・・」 「”証拠”だろ・・・仲がいい(照)」 「・・・犬夜叉ったら・・・///」 人目もはばからずいちゃいちゃムードの犬夜叉夫婦。 弥勒家の夫婦ケンカも納まってしまいました(笑) 「はーい。んじゃ今度こそ撮りますぞー!!」 今度はちゃんとフィルムを入れて 「はい・・・チーズ!!!」 パシャ・・・! 頼もしい仲間達との写真 その写真は食堂のテーブルの真ん中に飾られています。 そして。 いつもの日々がまた 始まる・・・ 「犬夜叉ーーー!!おむつ持ってきてーーー!」 「わ、わかったーー!」 新しい家族が増えて 笑い声も一層賑やか・・・ ”2人で愛していこうね・・・” 新しい家族は 二人の愛情に包まれて・・・ 小春日和。 また春がやってくる。 庭の花壇の蕾が・・・ 膨らみだした・・・ 皆が祈る このささやかな幸せが続きますようにと・・・