居場所を探して・一話完結読みきりシリーズ
12ページ目 パパと呼ばれて 「んぁああ!」【おっす!希の姉貴!】 満と希が布団の上で一緒にぬいぐるみをだっこして 遊んでいる。 「みちゅる。みちゅる」 「んあぁう」【お!希の姉さん、オレの名前呼んでくれたのか!サンキュ!】 満は嬉しくておかっぱ頭の希をなでなで。 「んぁううぃ」【ああ、オレもそろそろしゃべりてぇなぁ】 ためしに口をもごもごさせてみる。 (めしっていってみてぇんだけど) 「んまままま・・・」【まんまといてぇんだど】 なかなか上手におしゃべりできません。 「まんままま・・・」【めし。はらへった】 満は一生懸命にしゃべろうと口を動かす。 その声を聞いたかごめと珊瑚。 「・・・満・・・あんたもしかして・・・今、”まんま・・・”って いったの・・・?」 「んまままま・・・」【そうそう。めしって言いたかったんだけど】 「きゃあ♪”ママ”って言ったのねー。ママ、嬉しい!!」 かごめはぎゅっと満を抱きしめる。 「まんままま・・・」【いや、そうじゃなくてめしって言いたかったんだけどさ・・・】 「もういっかい。もういっかい言って。満♪」 (仕方ねぇなぁ。これも親孝行だ) 「まぁま」【めしっていいてぇけどまぁいいや】 「きゃああ♪そうよ♪私がママよ。ふふー」 かごめは嬉しくて満の頬にぎゅううっと頬擦り。 (だぁあ。母ちゃんってば。ったくよー・・・ま。 これも親孝行だ) その後、満は何回も「まぁま」と呼ばされたのだった・・・。 犬夜叉が帰ってきて。 かごめは犬夜叉に早速報告。 「ね、聞いててね。さ、満、”ママ”って言ってみて☆」 「まぁま」 満は言ってみる。 「ねー♪聞いたでしょ?ママって言ったのよ」 だが犬夜叉、何やらうかない顔。 「”まんま”って言ってんじゃねぇか?メシってさ」 (おう。父ちゃんさすが) 「えー何言ってるのよ。ママって言ってるじゃない。 ねー満」 「んぁあ」【まぁな。母ちゃんが喜ぶなら】 満は頷いてみる。 「けっ。たかが喋ったぐらいで。大げさな・・・」 「子供の成長、犬夜叉は嬉しくないの?それとも 満にママって言われて私が、さきこされたから面白くないんだ」 「べっ別にそんなんじゃ・・・」 どうもそうらしい(笑) 「ふふ。じゃあ満にきいてみようか。ねぇ。満。 ”パパ”って言える?」 「んぁああ」【えー。父ちゃんってか。そりゃちょっと発音が難しそうだなぁ】 だが満君は親思いの良い子。 一生懸命に口を動かしてみる。 「・・・んちゃ。んちゃ」【父ちゃん、父ちゃん。やっぱり発音が難しいぜ】 「何?満。もしかして・・・”犬夜叉”って言おうとしてるの?」 「ん、んなわけねぇだろ茶が欲しいっていってんじゃねぇか?」 犬夜叉、父の尊厳がちょっと傷つく。 「んちゃ・・・んちゃッ」【父ちゃんって言いたいんだけど】 「ほれみろ茶をくれっていってんだ」 「違うわよ。ね、満ー」 満は犬夜叉の方に指をさす。 「んちゃっんちゃあ」 「ほーら。やっぱり犬夜叉って言ってるんだわ。うふふー。 私が呼んでるの聞いておぼえちゃったのね」 「違うわい!茶って言ってんだ!けっ。こうなったら意地でも パパって言わせてやる!!」 「・・・何もムキにならなくても(汗)」 (くっそう!オヤジとしての立場をしっかりせねば!) 翌日から、犬夜叉と満のマンツーマンの”パパ”と呼ぶ練習がはじまった。 犬夜叉はベビーベットに満をだっこして向かい合う。 「おう。いいか?俺は”んちゃ”じゃねぇ。”パパ”だ。 言ってみな」 じっと満を見つめて言わせる犬夜叉。 「・・・んちゃ。んちゃ」 「ちがう。ぱ、ぱ、だ。パパ」 犬夜叉は大きな口を開けて教える。 「んちゃちゃ・・・」【あー。うまくいえねぇなぁ】 満も懸命に口をもごもごさせるが・・・。 「ちがうちがう。パパだ。パパだ!」 大きな声で犬夜叉が怒鳴った。 「ん・・・きゃわあああん・・・」【しかたねぇだろ!まだいえねぇんだからよ!】 満がぐずりはじめて・・・ (わ、や、やべ・・・(汗)) 大声で泣きわめく満にかごめが何事かとキッチンから飛んできて・・・。 「ちょっと!犬夜叉、あんた満に何したの!?」 「な、なにもしてねぇ。ちょっと発音を・・・」 「あのね!意地になって言わせようとしてどうするの。もうッ! なんてパパなの!!」 (グサリ) かごめの一言は犬夜叉の父としてのプライドをかなり 傷つけた模様。 「行きましょ。満」 ぱたぱた・・・。 かごめに満を奪われて、犬夜叉の”パパと呼んで講座”は2分で終了。 (・・・かごめにも・・・嫌われた(涙)) 一人食堂で ビールを寂しく飲む若き父犬夜叉でありました・・・。 その翌日。 「な、何・・・?お、職場に満を連れてけってか!?」 「うん・・・。楓おばあちゃんはいないし、珊瑚ちゃんも用事があるんだって」 今日はかごめの心臓の定期健診。 病院に満を連れたままいくことは難しく・・・。 「・・・でもやっぱり駄目よね。職場は・・・。仕方ないわ。 診察日変えてもらう」 「・・・いや。それは駄目だ。かごめの大切な体のことだろ。 わかった。連れて行く。棟梁にオレから話するから」 と、満をそっと抱っこする犬夜叉。 「犬夜叉・・・。なんか父親って感じがして頼もしい」 「・・・(照)お、おう///」 (・・・昨日の汚名挽回してねぇとな) ということで。 犬夜叉は建築中の現場に満をおんぶして 連れて行くことになった。 「うわ〜かわいい〜っすね〜。これが 兄貴と奥さんの愛の結晶ですかー」 建築現場の事務所で 小さな満を汗臭い作業着姿の男達が取り囲む。 (なんかくっせーな。男の匂いって奴か) 満、ちょっと小さな鼻をむずむずさせております。 「棟梁には許しを得てある。つーわけでオレは今日は 子守とてめぇらの指導に専念するからヨロシクな」 「いえいえー。赤ちゃんをあやしてる先輩なんて 珍しいですから。ふふふ」 (・・・(汗)) 後輩の不敵な笑み。 (大丈夫だったか。ここにつれてきて・・・(汗)) しかしつれてきてしまった以上、犬夜叉が満の保護者だ。 (お。そろそろミルクの時間か) かごめのメモをみながら ミルクを作る犬夜叉。 さらに。 (お。そろそろおしめか) かごめのメモどおり、 オムツをまく前に、満のおしりに天花粉を ポンポンとつける犬夜叉。 ちょっと汗疹が出ています。 (おー。アニキ、父親っすなー) 犬夜叉の父親振りをこっそり助平な後輩が見守る。 午後3時。 「なんでい。寝ちまったのか」 気持ちよさそうに ザ布団の上で眠る満。 午後からは機嫌よく、手かが駆らなかった。 「・・・ふ。あどけない顔しやがって」 この可愛らしい寝顔。 (・・・。オレとかごめが・・・そのなんだ・・・つくった・・・///) 好き合って形になったのが 可愛いこの寝顔。 (男の子なら・・・成長したら一緒にキャッチボールに・・・) お約束的な想像を巡らせて父親の余韻に浸る犬夜叉。 (・・・かごめ似の娘もいいな///) なんてことまでv そのとき。 「ぱぁぱ。ぱぱ・・・」 「ん!?」 目を覚ました満が 口をもごもごさせた。 「ぱぁぱ・・・パパ」 「お前、今、パパっていったのか!?」 「ぱぁぱ・・・パパパ」 「確かにパパって聞えたぞ!お前、パパって言ったんだな!」 犬夜叉は嬉しそうに 満のおでこを撫でた。 (やっと言えたぜ。まぁ父ちゃんも子育てに 参加してるしこれくらいは親孝行しねぇとな) と、思っておりまして(笑) 家に帰って即効、かごめに報告。 「よかったじゃない。犬夜叉」 「へっ。俺が本気になりゃぁこんなもんでい」 (パパと呼ばせることに・・・本気になるなんてどっちが 子供だかわからないけどね(笑)) 「じゃあ・・・。そのお祝いしましょ☆」 かごめは冷蔵庫から缶ビールを取り出してきた。 「いいのか?もう一本飲んで」 「お祝いよ☆ふふ。あたし達家族の記念の・・・」 カチン。 二人は缶ビールを合わせ、乾杯。 「これからも・・・。頑張ってね☆パパ♪」 「///お。おう」 小さな出来事が こんなに嬉しい。 それが家族。 一緒に喜び合える 大切な 大切な・・・。 「んぁう」【はー。しかしやっぱオレ、父ちゃんって言う方が好きだぜ】 ということで、満がぺらぺらとおしゃべりしだす頃には、 には犬夜叉はパパではなく父ちゃんと呼ばれることに なるのでありました・・・☆