居場所を探して・一話完結読みきりシリーズ
たんぽぽアルバム
第16話 醒めない夢 B
「犬夜叉・・・」
憔悴しきった犬夜叉。
桔梗は静かに声をかける・・・。
「・・・。しっかりしろ・・・とは言わん・・・」
「・・・」
ぼんやり・・・自分の声にも反応しない犬夜叉の背中に
桔梗はそっと寄り添う・・・
「お前が立つまで私も立たない・・・。お前が
食べるまで私も食べん・・・」
小さく丸める
背中に・・・
頬を寄せて抱きしめる・・・。
「犬夜叉・・・」
(私では・・・何も出来ないだろうが・・・。そばに・・・)
側にいたい。
奥にしまいこんだ想いが
微かに桔梗の胸に疼いて・・・。
「・・・。・が泣いてる・・・」
「・・・犬夜叉・・・?」
犬夜叉は立ち上がり・・・
「満が・・・泣いてる・・・」
部屋を出て行く・・・。
桔梗はが後をついていくと・・・。
隣の部屋でベビーベット下へいく犬夜叉・・・。
「・・・かごめの言うとおりにしなくちゃいけねぇんだ・・・」
犬夜叉の手には
かごめが書き残したノートが・・・。
「満・・・。母ちゃん・・・きっと帰って来るからな・・・」
くまのぬいぐるみに哺乳瓶をあてる犬夜叉・・・。
(犬夜叉・・・。お前は・・・)
犬夜叉の心は
悪夢の中・・・
悪夢だと分かっているのに
覚まそうとしない・・・
(犬夜叉・・・)
痛々しい姿に
無力感と・・・居た堪れなさだけが
桔梗の心に残った・・・。
”半年だけ会いにやってくるの。短い時間だけど・・・。
家族の心を一つにするために会いにもどってくるのよ”
かごめが大好きだった小説と・・・
かごめのノートを抱いて犬夜叉は夜の街を歩く・・・。
(かごめ・・・。お前は何処に戻ってくるんだ・・・?)
この小説のように
会いに来て欲しい。
蘇って欲しい。
でもどれだけ歩いても
探しても
(・・・かごめはどこにもいねぇ・・・)
頭のさきっぽで理解しても
・・・心がついていかない・・・
認めたくない
認めたくない
かごめがこの世にいないなんて・・・。
小説のような
ドラマのような
映画のような
現実で、奇跡は起こらない
けれど
うらやましくて
くやしくて
どうしようもない・・・
せめて。
あえないならせめて・・・
・・・かごめのメッセージが
ないだろうか・・・
ドンッ!
「キィつけろ!!ばかやろう!」
酔っ払いとぶつかり転ぶ犬夜叉。
かごめのノートが地面に落ちた。
(か、かごめのノートが・・・ッ!!!)
慌てて拾う犬夜叉・・・
ペラ・・・
(・・・)
最後のページの文字に気がつく・・・。
”犬夜叉と出会えて最高に・・・幸せでした・・・”
優しい
柔らかい字・・・。
「か、かご・・・め・・・」
(でした・・・なんていうな・・・。そんな・・・そんな・・・)
過去形なんて使うな
かごめがいない幸せなんてありえないのに
「う・・・どっかに・・・どっかに現れてくれよ・・・。
かごめ・・・っ」
どれだけないても
現れるわけが無い・・・。
(かごめ・・・)
地面に蹲る犬夜叉・・・。
その犬夜叉の背後から・・・
車のヘッドライトが光って・・・。
”犬夜叉危ない・・・!!!”
(!??!)
優しい声に
立ち上がる犬夜叉・・・
「かごめ・・・」
白いヘッドライトの中に・・・
かごめの姿が見える・・・
車のクラクションも聞こえず・・・
”駄目ーーーーッ!!!!”
ドンッ!!!
(かご・・・め・・・)
確かに聴こえたかごめの声・・・。
薄れていく意識の中で・・・
犬夜叉は確かに
聴いた・・・