居場所を探して・一話完結読みきりシリーズ
たんぽぽアルバム
ラストページ たんぽぽの笑顔
(かごめ・・・かごめ・・・)
耳の奥で響くかごめの声・・・。
(ん・・・?)
だんだんぼやけていた景色がはっきりしてきた・・・。
(ここは・・・。オレの家・・・?)
二階・・・
ベランダへ続く細長い廊下・・・。
(オレは・・・歩いてる・・・のか?)
廊下の感触はしないけれど
どこかへ近づいている。
(・・・オレとかごめの部屋・・・だ・・・)
少しだけドアが開いた・・・
まるで・・・犬夜叉を待っていたかのように・・・
まだ微かに白いもやがかかった景色。
だがはっきりわかった。
部屋の中にいたのは・・・
(か、か)
フワっとカールして後ろ髪・・・
ミルクに匂い・・・
テーブルの前に正座して座っている
座っている
(夢でもいい・・・会いたい)
犬夜叉の手が伸びる
伸ばして
伸ばして・・・
(あ・・・あ・・・?)
・・・アッタカイ・・・?
体温。
「かご・・・かご・・・」
「・・・?」
振り返る・・・
「・・・かご・・・め・・・」
「・・・。どうしたの?」
夢か
現実か
境界線がない
「・・・犬夜叉・・・。青い顔して・・・。さっき、うなされていたの?
凄い声がして・・・」
心配そうな顔で・・・
犬夜叉の額に触れる・・・
(・・・アッタカイ)
「・・・犬夜・・・叉?」
(・・・夢じゃないのか・・・?)
犬夜叉は何度も何度もかごめの頬を
肩を
腕を
・・・手のひらのぬくもりを触れて
確かめる・・・
「ちょ・・・そ。そんなべたべた触らないでよ///」
(・・・夢じゃない夢じゃない夢じゃない・・・)
「わっ。何、あんたちょっと・・・」
かごめを鷲掴み。
「・・・お前・・・ホントに生きてんのか・・・?」
「は・・・?」
「お前・・・ホントにここにいんのか・・・?」
何度も確かめても
確かめても
確かめ足りない。
「・・・い、痛・・・。私は枕じゃないわよ・・もう・・・」
力を込めて
感触を五感を使って感じて・・・
「お前・・・。生きてんだな・・・?生きてんだな・・・?生きて・・・」
(ん・・・?)
犬夜叉の瞳に入ってきたのはあのノート・・・。
悪夢の中でかごめが遺していった・・・
「・・・これ・・・は・・・」
(まさか・・・。このノートが在るってことは、まさか・・・)
まだ悪夢が続いているのか?
それともやはり・・・
「あ、そのノート・・・?なんか急に書いて見たくなっちゃって。
ほら・・・。この間映画の中でみたでしょ?
・・・私も一度は命が消えかけたから何だか色々考えちゃって・・・」
「・・・んなもん書くなよ」
「え・・・?」
バシッ!!
犬夜叉はノートをゴミ箱に投げ入れた
「な、何するのよ!?」
「・・・あんなノートはいらねぇッ!!いらねぇったら
いらねぇんだッ!!」
「犬夜叉・・・?」
「いらねぇから・・・。ただ・・・生きててくれ・・・。生きてて・・・」
(え・・・。な、泣いて・・・る・・・?)
俯いた犬夜叉から何かが落ちて絨毯にしみこんだ。
「・・・いらねぇから・・・生きててくれたらいいんだ・・・」
再びかごめを抱き寄せる・・・。
今度は荒々しくない
優しい抱擁・・・。
「犬夜叉・・・」
胸元で微かに震えている犬夜叉の・・・声。
「ど、どうしたの。本当に・・・」
「・・・うるせぇ・・・」
かごめはそっと・・・
犬夜叉の髪を撫でる・・・
「・・・子供みたい・・・」
「うるせぇ・・・」
子供でもいい。
何でもいい・・・
このぬくもりが消えないのなら・・・。
かごめのブラウスが・・・
少しだけ濡れる・・・
・・・想いのつまった涙が沁みこんでいるから・・・。
時間を忘れて
ずっとずっと
抱きしめていた・・・
(・・・生きていてくれて・・・よかった・・・)
※
「・・・悪夢を見たっていってたけど・・・どんな夢だったのよ」
「うるせぇ。口にしたくもねぇ」
かごめと犬夜叉。
満をベビーカーに乗せて並んで歩く。
「教えなさいよ。あんたが泣くくらい怖い夢って」
「なっ泣いてなんかいねぇッ!!目にごみが入ってただけだ!!」
ぷいっとジャケットに両手を突っ込んで否定する犬夜叉。
だが昨日着ていたかごめのブラウスには・・・
証拠が残っています。犬夜叉の涙と跡がくっきりと(笑)
「ふぅん・・・。まあいいけど。もしかして、桔梗が出てきてたりした?」
(ギクリ。)
犬夜叉、正直者。立ち止まって自供。
「あー。そーなんだぁ。そういう夢だったんだ。
んであたしと桔梗の板ばさみで怖い想いしたっていう夢だったわけね」
「・・・ち、違・・・」
「そうなんだ。ふーん・・・。満。行きましょ。夢の中とはいえ
まだ二股してるパパなんてほっといて」
(・・・汗)
さっさとベビーカーを押して先に行くかごめ。
かごめの冷ややかな視線にドキドキしながらも犬夜叉は思う。
(・・・もっと怖い夢だ。もう二度と・・・。見たくねぇ)
今も確かめる。
かごめが生きている現実が本当の現実かどうか・・・。
空を見上げて
確かめる・・・。
(・・・。夢じゃねぇ・・・。空は・・・真っ青だ・・・)
雲ひとつ無い空。
頬を通り過ぎる風がここが本当の場所だと犬夜叉に教えてくれる。
ここが・・・
「・・・駄目ッ!!!犬夜叉ッ」
(え・・・?)
夢で聞いた・・・
(かごめの・・・声・・・?)
ハッと気がついて立ち止まった犬夜叉。
ビュゥン!!
「わッ!!!」
目の前を一台のバイクが凄いスピードで通り過ぎていった・・・
「犬夜叉ッ!!」
ベビーカーを通行人に預け、かごめは犬夜叉に駆け寄った・・・。
「何ぼうっと歩いてるのよ・・・!もう・・・ッ!!」
「かごめ・・・」
「・・・寿命が縮まったじゃない・・・。どこもけがはない・・・?」
少し目を潤ませて犬夜叉の体に傷は無いかと見回す・・・。
「・・・」
”駄目・・・ッ!!”
夢と同じ声・・・。
(・・・そうか・・・。お前が助けてくれたのか・・・)
「・・・夢じゃなかった」
「・・・え?」
駆け寄ったかごめをそっと抱きしめる・・・
「あ、あの・・・///い、犬夜叉・・・?」
「・・・。夢でも夢じゃなくても・・・。
お前はオレの・・・」
オレの・・・
最後の言葉が
雑踏の音で聴こえない・・・
「え?何?そ。それより・・・あの、ここ街中なんだけど・・・///」
(ま・・・まぁいいか・・・。犬夜叉が助かってよかった・・・)
抱き合う二人。
そんな両親の姿にベビーカーの満は・・・。
「・・・。貴方のお父さんとお母さん・・・。とっても
お互いを大切に想ってるのね・・・。ふふ。ちょっと仲がよすぎるみたいだけど」
「んぁあう!」【おう!夜も仲がいいぜ!!】
ベビーカーをかごめから預かったOLさんに満は手足をばたつかせて応える。
(・・・父ちゃんと母ちゃんは世界一の夫婦だぜ!)
大切な人は
ただ、そばにいるんじゃない。
当たり前にそばにいるんじゃない。
優しい想いを寄せ合っているから
そばにいてくれるんだ。
そばにいるんだ
「・・・ね。沢山撮って!今日は写真」
「あぁ?オレ、機械モンって苦手なんだけどなー」
公園。
犬夜叉にカメラを手渡し満を抱っこするかごめ。
「沢山撮りたいの!家族の思い出を沢山・・・。
楽しい瞬間を残していきたいんだ」
(ああそうだな・・・。かごめの笑顔は沢山残したい。
覚えていたい)
一枚一枚に、かごめと満の笑顔が撮られて行く。
・・・ひょっとしたら、明日、かごめが、満が、或いは自分が・・・
思わぬ出来事に巻き込まれていのちをなくすかもしれない。
考えたくは無いけれど何が起こるかわからない世の中。
だからこそ・・・
(・・・一日一日・・・大切にしなくちゃいけない。噛み締めなくちゃいけないんだ)
当たり前の幸せなんて無い。
幸せなんて
すぐ近くに
自分が気づかないだけで
すぐそこに在るから・・・。
「パパー!」
(ぱ、パパ・・・///)
自分に手を振ってくれる笑顔。
自分のことを命がけで守って
そして一緒に寄り添って歩いてくれる・・・。
「3人そろって撮ろう!」
「え、お、おう・・・」
かごめと犬夜叉はしゃがんで
デジタルカメラに向かってにっこり・・・
「ハイ、チーズ・・・!」
隣に世界で一番愛しい人。
そしてその間には愛しい人と紡いだ新しい家族が・・・。
(・・・。何が何でも・・・。守っていかねぇとな。いや・・・。
そうじゃなくて・・・)
”一緒に守りそして一緒に育てていく・・・”
「あ・・・!見て!犬夜叉。たんぽぽ!」
少し季節外れのタンポポがひとつ。
黄色いまぶしい色を輝かせている。
「ふふ〜。似合うー?」
「・・・え・・・っ」
たんぽぽを髪にさして笑うかごめ。
「ねぇ。どうなのよ」
「に、にあ・・・うかも」
「かも!?かもってなによ!?」
「い、いや、だから・・・」
公園で夫婦喧嘩ならぬ痴話げんかの始まり始まり。
(おいおいー。こんなとこで喧嘩なんて子供が恥ずかしいっての)
ということで満、仲裁をします。
「もう!誉め言葉の一つもいえないお父さんなんて・・・」
「とーたんかーたん」
「え?」
かごめと犬夜叉、満の顔をそろってみる。
「満・・・今なんて・・・」
「とーたん、かーたん」
「・・・。父ちゃん、母ちゃんっていったのか・・・?」
満はにこっと笑って頷く。
「きゃぁあああ♪♪」
かごめは感激して満を思わず抱き上げた。
「満ぅ〜♪おしゃべりできたね〜☆嬉しい♪」
「かーたん、かーたん」
「はあい♪」
頬をすりすりする親子・・・。
「とーたん。とーたん。」
犬夜叉を指差す満。
「・・・///。お、おう。俺がお前の親父だ」
痴話げんかも愛息子の仲裁で一件落着☆
「とーたん」
「おう」
「かーたん」
「はあい」
満は3人が手をつないでくれてとっても嬉しい。
「満。ずっと一緒にいようねずっと・・・」
「まぁな。二十歳過ぎたら一緒に酒飲んでやる」
「・・・。もっと愛らしい言い方ないの。もう・・・」
かごめは苦笑しながらも
犬夜叉の手を握る。
そして3人は歩く・・・。
「ずーっと・・・一緒にいようね・・・」
そんな日々が続きますように
もし・・・
誰かが欠けることがあったとしてら・・・
哀しみに心が殺されないように
哀しみを生きる力にかえられるような
記録を沢山心の中にいっぱいつくろう
一日、一日を
大切に大切にして・・・。
FIN
・・・夢オチでごめんなさい
(土下座)
かごちゃんの生き死にを元にして夢オチとはなんだ!と思われたかもしれません(汗)
というか途中からバレバレだったかもしれませんが(汗)
どうしても犬かごファミリーの”当たり前の日常”が
いかに大切か・・・ってことを書きたくてなんかこんな構成になってしまいました(汗)
「8月のクリスマス」という映画の語感が割りとよかったのでその影響が・・・(映画のせいにするな)
一緒に同じテレビを見たり、一緒に夕食を食べたり・・・
そんなのいつもやってて逆に”ウザイ”とか”お父さんといっしょなんて
キモイ”とかいう若い人がいますが
両親と一緒にいられる時間ってそんなに長いものでは有りません。
一緒に居られる時期は大切にしないと後で後悔します。
高校時代、友達と遊びに行くことって高校生時代にしかできないように
家族とも・・・
って説教節は小うるさいかもしれませんが、少しでも一日一日の大切さ・・・みたいなものが
伝われば・・・幸いです(汗)
長編の方のたんぽぽアルバムは暫く一休みして(余裕があればまた書きたいなと思っております)
ミニアルバムの方を細々と書いていきますのでよろしくお願いします。
では・・・また!