居場所シリーズ 「うたた寝天使」 2:不思議な夢 少女すがたのかごめ・・・ 「ど、どういうこと・・・。な、 何がおこったの・・・?」 どこからみても10歳の自分。 (こ、これはきっと夢なんだ) とりあえず、自分を落ち着かせるかごめ・・・ 「ってなんかリアルな夢よね・・・。でもまぁ なんか・・・ちょっと楽しいかも」 かごめ、ちょっと不思議のアリス気分。 「それよりここはどこだろう?」 見知らぬ光景。殺風景な川原だが・・・。 ジャリ・・・。 人の気配を感じて草陰に隠れるかごめ。 (あ・・・!?) ジージャンに黒のジーンズ。 それは紛れも無く犬夜叉だ。 少し今より若い・・・。 (どういうこと!?なんで・・・) ともかくかごめは身をかがめて様子を伺う・・・。 犬夜叉は腕時計を何度も見る。 誰かを待っている様子・・・。 (あの”顔”は・・・) 切なげなあの顔は・・・ 「桔梗・・・」 (・・・。やっぱり・・・) とするとここは・・・ (・・・犬夜叉と桔梗が逢引していた・・・川原・・・) 桜並木が土手沿いにあって・・・ この世界は 犬夜叉と桔梗の過去・・・? (・・・もう・・・。あの切ないクリスマスがやっと 終わったのに・・・。またなの・・・?) 神様の悪戯? こんな夢をみせるなんて・・・ もうなんか・・・ (慣れ過ぎちゃった・・・) なんの試練かなんの思惑かしらないけれど (・・・何でも来いだよ。神様・・・) 夢の中まで・・・ 犬夜叉と桔梗ワールド・・・ なんだか可笑しくなってきた・・・ 雨が降ってきた・・・ (冷たい・・・) 思い出す・・・ クリスマスイヴの夜の雪の冷たさを・・・ 待っても待っても待っても・・・ 犬夜叉は来ない・・・ ”桔梗と何してるんだろう” ”桔梗と何話してるんだろう” 真っ黒で重たい疑念を沸きあがらせて 待って待って・・・ (今の犬夜叉も・・・。そんな気持ちなのかな・・・) 桔梗のことを・・・ 不安入り混じった気持ちで 待っているのかな・・・。 (・・・夢の中まで・・・、泣きそう・・・) 冷たい雨・・・ 体が熱い・・・ 目の前が・・・ 「・・・おい・・・」 (犬・・・夜叉・・・?) 薄れる意識の中・・・。犬夜叉の顔が・・・ 消えていく・・・ 「犬・・・夜叉・・・」 消えていく・・・。 「・・・ごめ・・・。かごめ・・・?」 (ん・・・?) 今度は・・・。心配そうに自分を見下ろす犬夜叉の顔が視界に 入った・・・。 (ここは・・・) 「・・・良く寝てたな。熱も下がったみてぇだ」 かごめの額に手を当てる犬夜叉。 夢の中じゃない・・・。 優しい・・・ 「ん・・・?どうした?かごめ」 「ううん・・・なんでも・・・」 やっぱりあれは夢・・・。 (・・・できればもっと・・・あったかい夢がよかったな) 「かごめ。苦しいところあったすぐに言えよ?」 「う、うん・・・」 現実の犬夜叉の優しさが 幻さえ思える それでもこの現実がいい。 ・・・自分を見てくれるこの現実が・・・ 「犬夜叉・・・。手、握っててくれる・・・?」 「あ、ああ」 犬夜叉はぎゅっとまだ少し熱いかごめの手を握った。 切ない夢はもいい 「犬夜叉・・・。そばにいるよね」 「いるにきまってんだろ」 握り返してくれる手を確かめたい。 信じたい かごめは幸せな現実をかみ締めるように 犬夜叉の手を離さなかった・・・。 「え・・・。嘘・・・」 朝食をとるかごめの箸が泊まった。 隣の病室のおばあさんが亡くなった事を犬夜叉から聞くかごめ。 「ショックでじいさんが・・・。廊下で暴れてな・・・。 じいさんまで入院しちまったらしい・・・」 ”ばあちゃん、いかんでくればあちゃん!” おじいさんの暴れよう 今でも鮮明に犬夜叉の心に焼き付いて・・・。 「・・・っ」 かごめは嗚咽して泣き出す。 「かごめ・・・」 「・・・っおばあさん・・・」 入院して一度も会話をかわしたことはないが 一つの命が消えた・・・。 「・・・落ち着け・・・。お前まで・・・哀しんだら・・・」 「だって・・・っ。だって・・・」 犬夜叉はかごめのせなかをさする・・・ 感情が不安定。 病院で人の命が消えることは日常茶飯事かもしれない でもそれに慣れてしまいたくは無い もしかしたら・・・あの老夫婦と仲良く慣れたかもしれない そう思うと 「・・・かごめ・・・」 命が消えること 楽しい未来の可能性がゼロになること (かごめを失ったら・・・。オレは心が死んじまう) あのおじいさんのように 心が壊れてしまうかもしれない かごめの背中をさすりながら かごめのぬくもりを確かめたのだった・・・。 夜。 (・・・今日の夕食はあんまり食わなかったな・・・。 明日、なんかつくってきてやろうかな) かごめが眠って犬夜叉もベットの下にある看護者用の 簡易ベットを引きずり出した。 ゴソ。ゴゴゴ。 (ん?) 廊下から妙な音が。 「ばあちゃん・・・ばあちゃんや・・・」 (じいさん!?) 犬夜叉が隣の部屋を覗くと、点滴をぬいておじいさんが ぼうっとたっている 「おい・・・じいさん・・・?」 「ばあちゃんどこや・・・ばあちゃんどこや・・・」 呪文のように呟いて窓の方へ歩いていく・・・ 「ばあちゃん・・・・」 おじいさんはそういって窓を開けて足をかけた 「じいさん!!なにやってんだ!!」 犬夜叉はおじいさんの腕をつかんで 引っ張り上げる。 「わぁああッ。離せ!!ばあちゃんとこ、逝かせてくれぇえ!!」 「馬鹿なことすんじゃねぇ!!」 「ばあちゃんの死んだ場所でばあちゃんの とこ、逝くんだ、逝かせてくれぇ!!!」 おじいさんは物凄い力で犬夜叉に抵抗 窓から手を離さない・・・ 「誰か!!おい・・・、誰か来てくれぇ!」 犬夜叉は飛び降りようとするおじいさんを必死に捕まえて 看護士を呼ぶ。 「ばあちゃん・・・ばあちゃん!!」 「じいさん!しっかりしろ!ばあさんはもういねぇ!!」 「・・・いる・・・。ばあさんはいるんじゃ・・・。 ここに、ここにいるんじゃ・・・生きとるんじゃ・・・」 胸を示しておじいさんは訴える・・・ 「ばあちゃんに・・・会いたい。会わせてくれ・・・。 ばあちゃん、ばあちゃん・・・」 「・・・じいさん・・・」 おじいさんは分かっているのだ 現実を だが・・・ 辛すぎて辛すぎて 認められない 認められなくて もがいている・・・ 「ばあちゃん・・・。ばあちゃん・・・。 話したい、触りたい 会いたい・・・」 「じいさん・・・」 「ばあちゃん・・・。誰かばあちゃんに会わせてくれ・・・」 おじいさんの呟きは・・・ あの”悪夢”の自分そのもの・・・ 「ばあちゃん・・・。戻ってきてくれ・・・ ばあちゃん、ばあちゃん・・・」 おじいさんのすすり泣く声 犬夜叉の心を震わせる・・・ (爺さん・・・。婆さんがいねぇと・・・ 心が死んじまうんだな・・・。心が・・・) 「大丈夫ですか!?」 看護士たちがかけつけた 鎮静剤を打たれ、静まる・・・ 「ばあ・・・ちゃ・・・ん・・・」 また目覚めたとき、暴れぬようにと 手足をベットの柵にしばりつけられ・・・ (・・・爺さん・・・) 「・・・。失いたくねぇよな・・・」 思い出す 小さな箱になってしまった 変わり果てた かごめを・・・ 「・・・でも・・・。会えねぇんだ・・・。 つれぇな・・・つれぇな・・・」 辛い 会えない 辛い・・・ それの繰り返し 繰り返しながら それでも生きていかなければいけない・・・ 「・・・辛れぇ・・・な・・・」 枕にしみこむおじいさんの涙を 犬夜叉はそっと ぬぐってあげたのだった・・・ ”つれぇよ・・・” 「・・・!?」 犬夜叉の声に目を覚ますかごめ。 タバコくさい・・・ (此処は・・・) 「ガキ・・・。目ぇさめたか」 「えっ」 古臭い狭い6畳一間のアパート・・・。 18歳の犬夜叉がそこに・・・ 「あ、また・・・」 (夢・・・。続き物なのね(汗)) かごめの不思議な夢が 始まった・・・