居場所を探してシリーズ最終シーズン 「タンポポの綿毛が舞い落ちて・・・ 〜遠い空〜」 第6話 貴方を知りたい 〜過去からの招待状〜 ”あんたは一人じゃねぇんだから・・・” 犬夜叉の言葉が夜、床につく陽子の胸に響く 隣の部屋に居るのかと思うだけで 込みあがってくる熱い気持ち (・・・駄目駄目・・・。何考えてるの・・・。 あの人は・・・家族が・・・) 写真で一度見た・・・ 優しい笑顔の・・・ かごめを・・・。 (きっと・・・あたたかい家庭なんだろうな・・・) 自分には無縁な世界に思える。 けれど 欲しい・・・ ・・・温もり。 「・・・」 この壁の向こうに その温もりの主がいる。 (奥さん・・・。ごめんなさい・・・。今日は寂しいから・・・。 少しだけ・・・少しだけこの気持ちを許してください・・・) 陽子はそっと壁に手をそえて 壁の向こうのいる犬夜叉の言葉を何度も呟くのだった・・・。 ※ 犬夜叉の職場の社員休憩室。 「おう。犬っころ。お前、有名人と知り合いなのか?」 「はい?」 同僚が一冊の古めかしい週刊誌を持ってきた。 「これは・・・」 もう数年も前の・・・。 ”月島桔梗の過去と現在!” となんともいやらしいタイトルの一ページ・・・。 犬夜叉らしき写真がモザイクがかっているが 載っている・・・。 「こ、こんなものどっから・・・」 「さぁしらネェがこれ、お前じゃねぇのか?似てるな?」 「い、いえ、ち、違いますよ・・・」 「そうかぁ?まぁそうだよなぁ。お前みてぇのが 雑誌に載るきゃねぇか。あっはっは」 「ええそ、そうですよ・・・(汗)」 突然の過去の産物に動揺を隠し切れない犬夜叉。 (・・・) 陽子はそんな犬夜叉の姿をじっと見ていた・・・。 女の勘。 ”何かある” 陽子を突き動かす。 そしてその夜。 陽子はインターネットで『月島桔梗』という言葉で検索をかけ あらゆる情報を検索してみた・・・。 ”死亡説まで流れた月島桔梗が突然、現る!” ”月島桔梗に隠された過去の恋愛とは!?” などと、週刊誌のタイトルが出てくる出てくる・・・。 このことから 陽子は犬夜叉と桔梗の間柄をなんとなく把握し・・・。 (・・・きっと・・・恋人同士だったのね・・・。 じゃあ今の奥さんって・・・) さすがにそれ以上の情報は得られなかった。 (それにしても・・・。月島桔梗と奥さんって良く似てる・・・) 似てるから・・・ 結婚したの? と一瞬思ったが・・・。 (ううん。そんな軽い人じゃない。何か深い事情があるんだわ) 想う相手のことは何でも知りたい。 その欲求が止まらない。 (悲しい恋愛だったのかな・・・。月島桔梗とは・・・。 駆け落ちまでしようとしたなんて・・・) 想像して切なくなってくる。 (今の奥さんはどう思ってるんだろう・・・) 犬夜叉の周囲にいる女性。 全て気になる。 そして・・・ (うらやましいな・・・。関われるだけ・・・) すぐ隣に居ても まだ自分と犬夜叉はただの同僚。 そして知り合って日も浅い。 (・・・。いいんだ・・・。私はこうして・・・。 ひっそり・・・想っていられるだけで・・・) だが 抑えられないときめき。 許されないときめき。 (心の中だけ。心の中だけだから・・・) 陽子は心の中に必死に止めようと 自分に言い聞かせるのだった・・・。 その夜。 アパート。 「飯田さん」 「え、あ、こんばんは!犬夜叉さん」 「こんばんは。今日はいい月が出てますね」 「はい・・・」 陽子の心は躍る。 犬夜叉からの言葉。 次へつながると、期待が膨らむ。 だが・・・。 「もしよかったら、知り合いお米、いただいたんです。 もらっていただけませんか?」 「いいえ。オレ、自炊の修行してるんです。 それに、家族は節約してるのにオレだけうまいメシ食うわけにはいかないから」 (・・・) 笑顔で言い返されると 痛む。 「家族が節約してるのに自分の飯ぐらい 自分でしないと・・・。家族いるから頑張れるんです・・・」 「・・・そ、そうですか・・・」 優しげに 今、犬夜叉が想いうかべているのは家族のことだけ (・・・。本当に・・・強い心で繋がってるのね・・・) 「はい。じゃあ。おやすみなさい」 「あ、はいおやすなさい・・・」 パタン・・・。 ドアの閉まる音が切ない・・・。 (・・・眼中にない・・・。私が入る心の隙間は・・・ない・・・) だけど・・・ (今、一番近くに居るのは・・・私・・・) 見込みのない恋だと頭では分かっていても 心はまったく反対な気持ちが激しく動く。 (もっと知りたい・・・。彼のことが知りたい・・・) 陽子はその夜、さらに犬夜叉と桔梗についての 過去を知るべくあらゆる関連サイトを閲覧した。 『天才的音楽家・月島桔梗が蘇ったのは過去の愛』 『月島桔梗の恋人は二股疑惑!?良く似た顔の一般人を巻き込んで 愛憎劇!!』 等など・・・。 犬夜叉とかごめ、桔梗に関する記事をのめり込むように 読む陽子・・・。 (犬夜叉さん・・・あなたは・・・。本当に一途な・・・ 一途で・・・不器用な人なのね・・・) 三人の関係の本当のことは知らない。 だが女の勘。 (絶対に想った女性を・・・守りぬく人・・・) ”まもられてみたい” いつも誰かを守ってきた 父、弟・・・ 家族のために恋愛なんて捨てて 諦めて・・・。 (・・・犬夜叉さん・・・) 冷静な自分は ”そんな恋なんてやめなさい。人を傷つける恋なんて・・・” と言っているだけど・・・ 心の奥底の熱い気持ちが抑えられない。 ”誰かを傷つけても・・・。伝えたい。この想いを・・・” 壁の向こうに 居る・・・。 (・・・もっと・・・。貴方を知りたい・・・。 貴方の心を・・・) そっと壁に手をあてて 願う陽子・・・。 その後、陽子は桔梗のアルバムを買いあさった。 (犬夜叉さんが・・・好きになった人の曲・・・) 桔梗のどんなところに惹かれたのか (知りたいの。とにかく貴方をしりたいの・・・) ヘッドホンをあてて目を閉じて聴く・・・。 その中で一曲。 陽子の心に止まった曲が・・・。 ”悲しみのメロディ” 英訳されている。 ”過去の愛ではなく、未来への希望に変えて” ”私の愛は真実だった。真実が在る限り私は幸せだ” ”私の愛は消えない。たとえこの身が消えようとも・・・” 哀しみの中にある 激しい愛情を感じさせるフレーズで 桔梗の心理を感じる・・・。 (激して・・・切ない恋愛だったんだな・・・) そしてそれはいいアルバムのラストの ”終わりは新しい始まり”といタイトルで (二人は別々の道を歩き出したんだ・・・。 もう関わることはない・・・) ぽろり・・・ 陽子の瞳から涙がこぼれた 嫉妬の涙なのか 桔梗の気持ちと自分の気持ちがリンクしたのか ・・・分からないけれど・・・。 (月島さん・・・。貴方はの恋はけじめをつけたのかもしれないけれど・・・ 私は・・・) 始まっても 終わっても 解らない気持ち。 (整理しなきゃね・・・) と、にわかに湧いた気持ちを整理することを決意するのだった・・・。 そしてそれから一週間後のこと・・・。 (え・・・っ) 本社からのファックスを見て驚いた。 陽子はこの町に桔梗所属する楽団が やってくることを知った。 どうやら、社長と楽団の関係者が入魂の仲らしく、ぜひ、 町おこしも含めた演奏会を開いて欲しいと依頼したらしい。 陽子は事務として、従業員全員参加せよと、社長が言っている旨を 皆に伝えた。 「おらぁ、くらっしくーなんてわかんねぇが 無料なら行くかなぁ?なぁ?犬っころ?」 従業員達が呟く中・・・。 「・・・い、いえ。俺は・・・」 (・・・迷って同然よね・・・) 犬夜叉の心中を探る陽子・・・。 「社長命令だ。みんな、いくしかねぇな」 「・・・」 犬夜叉の顔は曇り戸惑いが隠せないようだ。 (・・・。そうよね。けじめをつけたのに・・・。 助け舟ださなくちゃ。) 「・・・。分かりました。オレ、行きます」 (えっ?) 陽子は驚いた。 「そうかー。ま、会場行っても寝てりゃいんだ。 楽なもんだ。っはっはっは」 (どうしたなんだろう・・・) 犬夜叉の意外な返事に陽子は驚いた。 (・・・。もし・・・。奥さんがこのことしっていたら・・・) 陽子の中で小悪魔がささやく。 だが・・・。 休憩時間。 犬夜叉が携帯をかけているところを陽子がそっとロッカーの陰から聞き耳を・・・。 「・・・って訳なんだ・・・。かごめ、その・・・。 桔梗のコンサート・・・行ってきても・・・いいか?」 (奥さんに・・・。コンサートのこと言ってるの!?) 「そうか・・・。すまねぇ・・・」 (どういうことなの・・・。どうして奥さん、許しちゃうの?) 犬夜叉とかごめのやりとりが理解できない陽子・・・。 (・・・分からない・・・) 陽子が困惑したまま・・・ そしてコンサートの日がやってきた・・・
すみません(汗)原作の影響がやっぱり大きくあの方の影が 消えませぬ。。(悩)原作では綺麗な星になられました。 ”思い出”というカタチにはできるけれど、このお話の中では 生きている設定であり、いつかどこかで 再会するってこともあるかもしれない。そんな不安に過去に目を閉じて” 避けて生きていく”訳にはいかないんじゃないか って思いちょっと書いてみました。 犬がコンサートに行かないことも選択の一つだけど、無理に目を背けるより どーんと”昔は昔”としててほしいというか。。 ”互いに別々の道を行く”ということはやっぱり”避ける”というのは しこりが残る気がして。。 でもなぁ・・・避けたいなぁ(悩) ・・・けど犬かごファミリーの絆は固いのでドロドロな展開にはならないので ご安心を・・・(汗)