居場所を探してシリーズ最終シーズン 「タンポポの綿毛が舞い落ちて・・・ 〜遠い空〜」 第四話 節約ママ 「・・・。はぁ」 家計簿を見つめながら ため息が止まらないかごめ。 ”飛行機代がんばって貯めるから” って簡単に手紙には書いたものの・・・。 「生活するってこんなにお金がかかるものなのねって今更 実感・・・」 ”住民税””学童保育の保険” 云々。 「悩んでても仕方ない!できるところから節約節約!」 家族の絆のため。 ・・・夫婦の愛のため! かごめは徹底した節約術に挑戦していく。 「自給自足!にんじんとピーマンとなすつくるわよ!」 と、近所の農家のおじさんから苗をおすそ分けしてもらったかごめは 家庭菜園を始めたり。 「八百屋のおじさん。汚れて売れなくなった野菜あったら おまけでつけてくださいなv」 かごめの笑顔で八百屋のおじさんはイチコロ(笑) 野菜をただでGETしたかごめ。 (犬夜叉に会いたいよね・・・。満も小雪も・・・。そして 私も) 想いは一つ。 会いたいだけ。 家族の想いのため、かごめは出来ることをせっせと頑張って 節約しておりました。 ・・・世の政治家様方。 主婦の方々の家計簿を見てください。 そしてお手本にして節約術を学びましょう(笑) 一方・・・。 「・・・かごめ。今日も一日頑張るからな」 携帯に新しく送られてきた待ち受け画面。 かごめがコスモスを持って笑ってます。 (・・・///似合うなぁ・・・我が妻ながら) とか想って顔がニヤつきつつ仕事場に向かう。 「おう。犬っころ。早いな今日は」 「ああ。おはようございます。河野さん」 犬っころというあだ名をつけられた犬夜叉。 犬夜叉が修行し、師匠でもある棟梁に似ている河野と すぐ打ち解けた。 河野も家族のために出稼ぎに各地を転々としているらしい。 ”流れ大工の河野”とも異名をもつ影の匠らしい。 「しかし・・・。最近の家の造りは・・・。心配だな。 ワシは設計士しじゃないからいえねぇが・・・。柱が細すぎる。 それに土台になる柱の組が甘い」 使われている木材がほとんど海外からの輸入のもの。 「湿気が多い日本の家には合ってネェんだがな・・・。 ワシも何度も会社に訴えてるんだが・・・」 「・・・」 大工は設計士から請けた図面を形にする仕事。 それ以上のことは言えないのが現実だが・・・。 「・・・ワシは会社経営するほどかい性がなくてな・・・。 ふふ。一匹狼が性にあってるみてぇだ」 「オレもそうです」 「ぐだぐだ理屈こねててもしょうがネェ。 目の前にある材料で、ワシら持つ技術を駆使 して最高のものを造るしかねぇな。犬っころ」 「はい」 家族のため そして自分の仕事への誇りのため。 男達は厳しい現実をあるがまま受け止め、 その上で仕事へ情熱を注ぐ。 (いい人に出会ったな・・・) 遠い空の下。 人と人の出会いに感謝する犬夜叉だった・・・。 昼休み。 社員達の休憩室に 何やら怪しげな風貌の男が二人突然入ってきた。 「飯田陽子さんって・・・いらっしゃる?」 かわいらしい言葉とは裏腹に 明らかに”その筋の”人っぽい。 「あ・・・」 お茶を運んできた陽子が取り乱す。 「あらまぁ。飯田さんこんにちは。 こんな遠い町で働いていらしたのネェ」 「・・・」 陽子はおびえているようでうつむいたまま動かない。 「ちなみにお給料いくら?ちゃんと返済できる 額です?」 男達は陽子を囲み見下ろす。 「・・・やめろ。お前ら」 犬夜叉が陽子を守るように割って入った。 「なんです?お兄さん。アンタには用がないの」 「うるせぇ。とにかく帰れ。よってたかって 女を脅すなんて野郎がいるとむかつくんだよ」 「・・・ほう。若いネェ。お兄さん。暴力沙汰するつもりはないけど・・・。 あんまり楯突くと・・・。危ないよ?おれたちって」 犬夜叉の襟をつかむ男。 犬夜叉はその手をぐいっとひねり返した。 「・・・喧嘩なら散々やってきた。金のことならちゃんとする。 だからお前らは二度と、ここに来るんじゃネェ」 「そうだ!そうだ!陽子ちゃん、心配すんな、 金のことならワシらみんな協力するよ!」 「皆さん・・・」 涙ぐむよう子。 「・・・いいお仲間に出当てようで・・・。まぁとにかく。 返済していただければ、こちらもいいのでね。じゃあヨロシク。 それから威勢のいいお兄さんも・・・」 ドカ! ドアを蹴り開けて男達は帰っていった・・・。 「大丈夫か?飯田さん」 「・・・ええ。ありがとうございました・・・。皆さん」 「よかったら・・・。飯田さん事情話してくれねぇか? 力になれるかもしれねぇ」 「そうだそうさ」 陽子は犬夜叉に促されるように 自分の身の上話を始めた。 簡単に説明すると陽子の父親が質の悪いところからお金を借り、 その保証人に陽子の名前が勝手に使われていた。 当人の父親は行方をくらまし、陽子は借金取りに追われるようになって しまったという。 「なんて親父だ!娘に借金押し付けるなんて!」 社員達はこぞってそういった。 「・・・でも私の父には変りありません・・・。 借りたものは返す・・・。当たり前のことです」 「・・・陽子ちゃん・・・」 同情の視線が陽子に注がれる・・・。 「飯田さん。ここにいるみんなは あんたの家族だ・・・だから、甘えりゃいいんだ」 頷く社員一同。 「みなさん・・・。ありがとうございます。 本当にありがとうございます・・・」 何度も頭を下げる陽子・・・。 「あんたは一人じゃねぇ。一人じゃねぇから・・・な?」 ポン! と何気なく陽子の肩に触れて励ました犬夜叉。 (・・・あたたかな・・・手・・・) 陽子には その大きな手が・・・ 心にぽっと何かが灯ったように 暖かく心強く感じたのだった・・・。 その夜。 「あ、もしもし。おう満か!」 夜9時ジャストになると必ずかかる愛しき家族達からの声。 「なに?鉄棒ができねえ?男だろ。練習して あきらめんじゃねぇ」 保育所であったことを聞く。 一日一日子供はものすごい速度で育っていく。 「ところでとーちゃん」 「なんでい」 「かーちゃんの”ブラ”はちゃんと使えてるか?」 「ばっ///こ、子供がなに言って・・・」 ちゃーんと使ってますよv枕元において毎日抱きしめて眠ってますv 「なんならこんど、かーちゃんの下の”したぎ” おくろーか?」 「なっ!!!!!ばっそ、そこまではっ・・・///」 といいつつかなり期待する父。 「わかった。おくるねー。白いやつにするから」 「か、か、勝手にしやがれ。か、かーちゃんに みつかるんじゃねぇぞ・・・///(喜)」 「あ、もしもし。犬夜叉?」 (ドキリッ。) 今の会話を聞かれてはいないかとヒヤヒヤ。 「お、おう。かごめか。ど、どうだ。そっちは?」 「うん。みんな元気よ。ただ、やっぱり 飛行機代ってかなりするのね・・・。やりくりが・・・厳しいかな」 「無理すんなよ?電話だってあるし・・・。お前の体 崩したら何もならねぇ」 「アリガト・・・。うん・・・。でも・・・頑張る・・・」 少し息を溜めてから・・・ 吐息を吐くように・・・ 「・・・犬夜叉に・・・。会いたいの・・・。寂しくて・・・」 (・・・///っ。そ、そんな素直に言うなよ・・・) かごめの声に 犬夜叉のかごめに会いたいモードがマックス。 「・・・お、オレもあ、あ、会いたい・・・」 「犬夜叉・・・」 甘酸っぱい空気が 電話越しに流れる・・・。 「かーちゃんのパンツ!とーちゃん やっぱ、ピンクがいい?」 と、満の爆弾発言で一気に甘い空気は こわーい空気に。 「・・・下着がなくなってたと思ったら・・・。 犬夜叉。アンタが・・・」 「ち、違・・・っ。満が勝手に荷物の中に入れて・・・」 「何考えてんのアンタはーーーーッ!!!」 一気にお説教を何時間もくらった犬夜叉でした(笑) しかし、そこは愛息子、とーちゃんの生き甲斐の”モノ”を 次の仕送りの中にこっそり忍ばせましたとさ(笑) (仲のいい・・・。家族なのね・・・) 犬夜叉の隣の部屋。 陽子の部屋。 犬夜叉の笑い声が・・・ 静かに聞こえてくる。 ”アンタは一人じゃねぇ” と、犬夜叉が触れた肩にまだぬくもりが残る・・・。 (・・・私は一人じゃない・・・。私は・・・) 触れられた肩をそっと撫でる陽子・・・。 胸の奥で灯った温もりに ”ときめき”という名の鼓動を感じる。 犬夜叉の部屋側の壁を切なげに見つめる陽子だった・・・。