居場所シリーズ
「イヴの奇跡」
6:一日遅れのクリスマスイヴ
(犬夜叉・・・)
少しずつ遠ざかっていくクリスマスツリーを眺めながら・・・
(もう・・・。駄目なのね・・・)
信じ切れなかった
信じたかった
いや・・・今でも信じたい
(でも・・・もう・・・イヴは・・・終わったんだよ・・・。
犬夜叉・・・)
「うぇええ・・・!ひっくひっく」【とーちゃん、とーちゃん・・・!!】
満が少し泣き止んだそのとき・・・
「かごめーーーーーッ!!!」
「・・・!?」
誰かに呼ばれた気がして
振り返ると・・・
「・・・犬夜叉・・・!!」
珊瑚の車を必死で走り、追いかける犬夜叉が・・・。
「犬夜叉!!珊瑚ちゃん!止めて!!」
「え!?」
キキキキ・・・!!
珊瑚は路肩により、車を止めた。
バタン!
「犬夜叉!!」
かごめは満を抱いたまま車を降りて走った。
「犬夜叉・・・!!」
「ハァ・・・ハァ・・・かご・・・め・・・ッ」
息を荒くする犬夜叉・・・。
「犬夜叉・・・。どうして・・・」
「・・・。ホテル玄関前に来て見たら・・・。
満の泣き声がして・・・。珊瑚の車に乗るかごめを見つけたんだ・・・」
「・・・玄関前・・・?」
「・・・オレはずっとホテルの庭のツリーで待ってた・・・」
(そういえば・・・。”願いがかなうクリスマスツリー”の
後ろに噴水が・・・)
庭にある大きな噴水。
クリスマスツリーは・・・
実は2箇所にあったのだ・・・。
ホテル玄関前と庭に・・・
二人はずっと・・・。
同じときを同じ場所でまっていた・・・
「・・・かごめ・・・。ずっと・・・。待っててくれたのか・・・?」
「え・・・。あ・・・」
肩にも頭にも・・・
白い綿帽子・・・。
「・・・。犬夜叉も・・・?」
コートも・・・髪にも・・・
こんもり積もった白い雪・・・
同じ場所で
同じ時間・・・
お互いを待っていた・・・
「・・・ふふ・・・」
「ふ・・・」
二人は互いを見合って少し笑った。
「・・・。でも謝らなきゃなんねぇことがある」
「え?」
「・・・偶然・・・。桔梗に会ったんだ・・・」
(・・・)
”桔梗”
犬夜叉の声でその名を呼ばれると・・・
胸の痛みが疼く・・・。
「・・・。話があるって・・・。少しだけ・・・。ホテルのロビーで
話した・・・」
(落ち着いて・・・。ここでふんばるの・・・)
かごめの動悸がまた・・・
(せ・・・咳き込みそう・・・)
冷や汗がかごめの額に浮かぶが・・・。
「・・・桔梗の奴・・・。結婚するんだってさ・・・」
「え?」
犬夜叉は・・・。
その一部始終をかごめに話し始める・・・。
ホテルのロビーで話す犬夜叉と桔梗。
「・・・すまない・・・。誰かを待っていたのだろう・・・」
「・・・ああ・・・」
心此処にあらず・・・。犬夜叉の足の貧乏ゆすりがそれを桔梗に伝えている。
切なさを感じる桔梗・・・。
「それで・・・。話って言うのは・・・」
「ああ・・・。実は・・・。お前に報告することがあって・・・」
「報告・・・?」
桔梗はスッとバックの中から指輪を見せた。
「・・・とある”男”から・・・。結婚を申し込まれている」
「結婚・・・?」
「ああ・・・。ずっと私のそばにいてくれて・・・。
支えてくれた男だ」
(それってもしかして・・・)
犬夜叉の脳裏に樹の顔が浮かぶ。
(でもアイツはかごめのことが・・・)
「・・・。それで・・・。お前はどうしようと思ってるんだ」
「・・・。迷っている・・・」
「・・・。でも指輪を受け取ったってことは・・・。
もう答がでてるからじぇねぇのか?」
桔梗は本音を見抜かれた・・・と思った。
「・・・ふ。お前も少しは・・・。相手の気持ちを察する
ことができるようになったのだな」
「ど、どういう意味だ」
「・・・。いや・・・。なんでもない。私の負けだ」
(負け・・・?)
「・・・もう行け。待ち人の元へ・・・」
「桔梗・・・」
「・・・。幸せなクリスマスを・・・」
「ああ・・・お前もな・・・!」
犬夜叉は桔梗に微笑んでそういうと一目散に
ホテルを出て行った・・・。
(最後の悪あがき・・・など馬鹿なことを
考えたものだ。私は・・・)
最初から応えはわかっていたけれど・・・。
もしかしたら・・・結婚に反対してくれる可能性を信じてしまった。
(・・・。幸せに・・・。犬夜叉・・・)
ちらりちらりと降って来た雪に桔梗は呟いたのだった・・・。
「・・・。こんな話・・・。信じてくれっていう方が
無理かもしれねぇけど・・・。信じて欲しい・・・」
「・・・」
咳き込みそうだった
でもかごめは冷静に考えてみる・・・
(・・・犬夜叉と桔梗は”完全”に切れることはない・・・。
そういう”運命”なのね・・・)
昔の恋情がなくとも
この二人には誰にも切れない
不思議な縁がある。
(・・・どうしようもない縁・・・。どうしようもないことなんだ・・・。
こだわっても仕方のないこと・・・)
それに拘っていたのは
自分の心。
「・・・かごめ・・・。やっぱり・・・駄目か・・・?
オレじゃ・・・」
「・・・」
「・・・お前に会いたかった。会いたくて会いたくて・・・」
犬夜叉は必死だ・・・
かごめを繋ぎとめたくて
なんとか繋ぎ止めたくて・・・
言いなれぬ言葉を必死に言葉にしている。
(犬夜叉・・・)
「・・・家で一人でいたら・・・。どうしていいか
わからなくなる・・・。かごめがいない。満がいない。
オレは・・・オレは・・・」
犬夜叉の・・・声が震えている・・・
子供が親にすがるように・・・
「オレは・・・オレは・・・。まだまだ情けねぇ・・・。
でもかごめが必要なんだ。側にいないと・・・壊れそうで・・・」
「・・・かごめ・・・。一緒にいてくれ・・・。なさけねぇけど・・・
オレは・・・。オレはお前がいないと生きる力がでねぇ・・・」
(犬夜叉・・・)
もっと言って。
もっともっと。
かごめが必要だって
だれより必要だって・・・
犬夜叉の言葉が
もっともっと欲しい・・・。
「お前がいないとおれは・・・ぶはああくしょんッ!」
ドサ!!
大きなくしゃみと同時に犬夜叉の頭にツリーに積もった雪が
落ちてきた。
「・・・だ、大丈夫?」
駆け寄るかごめ。
「あ、ああ・・・そ、それより・・・。発作・・・大丈夫か・・・?」
こんもり頭に雪を積もらせた犬夜叉・・・。
「・・・。犬夜叉・・・。うん。
なんか・・・ふぅって・・・張り詰めてた糸が・・・緩んだ気がする・・・」
ふっと
楽になった
とことん悩んでとことん考えたから・・・
考えすぎて
何かが切れた。
「犬夜叉・・・。私・・・」
「いいんだ。無理しなくて・・・。オレは今日会えただけで・・・
ぶあくしょん!!」
ドサ!
また犬夜叉の頭に見事にHIT!
「ぷっ。ふふ・・・」
思わずかごめは噴出した。
(あ・・・)
かごめが・・・笑った
(・・・かごめの・・・笑顔)
久しぶりのかごめの微笑み・・・
寒さを忘れさせてくれる
心底ほっとする・・・。
(かごめ・・・)
「・・・よかった・・・。会えて・・・。会いたかった・・・」
「・・・犬夜叉・・・」
”私に・・・?”
そう問い返したい・・・。
「・・・。会いたかったんだ・・・。
本当に会いたかったんだ・・・」
”本当に・・・?”
「寂しかった・・・。一人の部屋も・・・飯も・・・」
”本当に・・・?”
「・・・会いたかった・・・。かごめ・・・。
オレは・・・。お前がいなきゃ・・・駄目なんだ・・・」
”私がいなくちゃ・・・?”
「オレはもう・・・。
お前と離れることなんでできない・・・。離れられない・・・」
甘い台詞なんていわない犬夜叉が
沢山欲しいことばを
照れもせず
言葉にしてくれて・・・
「かごめ・・・。愛してる・・・」
”愛してる・・・”
沁みこんで行く
想い・・・
言葉じゃないけれど
言葉にして伝えてくれた・・・
照れを捨てて・・・
「・・・っ。犬夜叉・・・っ・・・。ごめ・・・ごめんなさ・・・」
「かごめ・・・っ」
泣き崩れるかごめをそっと抱きとめる・・・
「・・・ごめ・・・ごめんね・・・。私・・・っ」
「いいんだ・・・。かごめが・・・来てくれた・・・。
それだけで・・・」
「・・・犬夜叉・・・」
「・・・一日遅れたけど・・・。メリー・・・クリスマス」
(え?)
犬夜叉はかごめの指にそっと
かごめが置いていった指輪をはめた・・・
「・・・。これがプレゼントってなんか・・・変かもしれねぇけど・・・」
「犬夜叉・・・」
「・・・もう一回・・・。オレと・・・一緒になってくれねぇか
ずっと一緒に・・・」
(犬夜叉・・・)
犬夜叉から・・・
かごめへのクリスマスプレゼントは・・・
二度目のプロポーズ
今度こそ正面からまっすぐに・・・
「・・・で。返事は・・・?///」
「・・・。喜んで・・・。お受けします」
「・・・サンキュ・・・な・・・///」
雪の中・・・
クリスマスツリーの灯りは消えてるけれど
二人の心の灯りは
灯った・・・
「へくちッ」
「あ・・・」
かごめの背中の満。
小さな鼻が赤いトナカイさん。
「満・・・。満のおかげね」
「え?」
「満が泣いてくれたから・・・。犬夜叉が気づいてくれて
会えた・・・」
思い切り泣いたのは
小さな天使が二人を引き合わせたかった声・・・?
「とーたん、かーたんいっちょ」【永遠の愛ってやつ?誓おうぜ?へへ】
小さな天使はにこにこ笑う。
それこそが奇跡。
「・・・満。ありがとう・・・ね」
「みちゅる、とーたん、かーたんいっちょ、いっちょ」【家族はいつも一緒だ】
天使の笑顔
それは犬夜叉とかごめが信じあって出来た大切な
命。
「おう。家族は・・・ずっと一緒だ」
犬夜叉の大きな両手は満とかごめを想いっきり包む。
「・・・メリークリスマス・・・。来年も再来年も・・・
ずっと3人一緒に過ごそうな・・・」
犬夜叉へのクリスマスプレゼント。
それは掛け替えのない家族達。
それ以上の贈り物はないから・・・。
(よかったね・・・かごめちゃん)
珊瑚は車の中から雪に包まれる3人を見守っていた・・・。
「・・・さ・・・。帰ろう・・・。クリスマスのやり直しだ・・・」
「うん・・・。私たちの家に・・・。帰ろう・・・」
「かえろ!」【ああ。ってか風呂が先がいいなオレは】
イヴは過ぎてしまったけれど
3人にとっては
今はクリスマスイヴ・・・
大切な
大切な
記念日の始まり・・・。
家族の絆が深まった・・・
それが・・・イヴの奇跡。
世界中の家族に奇跡がおきますように・・・
fin
最初の犬桔シーンに比べてあっさりした終わり方でしたでしょうか・・・(汗)
っていうか、クリスマスツリーが2本だったていうオチは
無理やりすぎで、ちょっと辻褄が・・・ていう突っ込みはナッシング・・・で・・・(謝&汗)
犬君にいっぱい色々ありったけ、かごちゃんへの想いをいってもらいました。
かごちゃんを失うかどうかのときぐらい、照れやだのなんだの
いってられないものね!
やっぱりイヴなので。愛いっぱいの終わり方がいいなぁって想ったので・・・
かごちゃんの体の症状は果たして治ったのかどうか・・・
とりあえず、治った・・・ということにしといてください(曖昧だろ)
あと桔梗にプロポーズしたのは樹ではありません。・・・多分(汗)
ぢつはぢつは、イヴ終了後のお話も只今執筆中デス。
ちょっと不思議なでもちびっとシリアスな
そんでほのぼのな・・・(欲張りすぎ)
と、まぁ色々こそこそ書いております。UPした際にはまたヨロシクです!