居場所シリーズ読みきり編 「イヴの奇跡」 2:距離を置く 雨が止む・・・ かごめは帰りどこをどう通ったか分からない・・・ 家に帰るなり意識を失って・・・ (あ・・・?) 「おお。気がついたか」 「かーたん!!」【かあちゃん、めぇさめたか!】 心配そうにかごめを見下ろす楓と満。 「満、楓おばあちゃん・・・私・・・」 「気分はどうじゃ?びしょ濡れで帰って来たと思ったらいきなり倒れたんじゃ・・・。 熱でも出るかと思ったが熱はなさそうでよかった・・・。」 「よあった!」【安心したぜ!】 満も一緒に頷く。 「・・・何かあったか?なにか思いつめた顔をしているが・・・」 (あ・・・) フラッシュバック・・・。 犬夜叉と桔梗の激しいラブシーンがばッっと蘇る。 (・・・!) 「ケホッケホケホッ!!」 「か、かごめ・・・!?どうしたんじゃ!?」 突然かごめは激しく咳込みだし・・・。 楓がお茶を飲ませて背中を摩る・・・。 「だ・・・。大丈夫・・・。もう治まったから・・・」 「・・・無理するな・・・。お前は無理をしすぎる・・・」 「・・・ごめんなさい・・・」 満はひょこっと背を伸ばしてかごめの頭を なでなでする・・・ 「かーたんいーこいーこ」【かーちゃんまぁ元気だしてくれや。俺もつれぇよ】 「満・・・」 (そうよね・・・。私・・・へこたれてる暇なんてないの・・・。 母親って仕事があるんだから・・・) (・・・お母さん、もう少し・・・頑張るね・・・) かごめは満をぎゅっと抱きしめる・・・。 ・・・あの衝撃シーンを忘れるように・・・。 だが 抱えきれない心の痛みは 体にも伝染する 悲鳴を上げる・・・ 「かごめ!!大丈夫か!??」 楓からかごめが倒れたと連絡が入って一目散で帰って来た犬夜叉。 「あ、おかえり!犬夜叉ーー!!」 「な・・・?お、お前・・・倒れたって・・・」 「あー。ちょっと昼寝してただけよ」 「ひ、昼寝!?な、なんだよ・・・。心配して急いだのに・・・」 (・・・心配してるのは・・・。別の誰かでしょ) 犬夜叉の優しさも今は 全て刺々しく感じる・・・ ”シッカリシナキャ・カンバラナキャ” 自分に言い聞かせるかごめ・・・。 「ねー!犬夜叉。あんたこそ、コート濡らして 。傘はどうしたのーー!?」 「え、ああ・・・えっと・・・あ、わ、忘れてきた。そう 忘れてきたんだ」 (公園にでしょ) 心の中で突っ込むしかない。 犬夜叉に言ってやりたい 全てを白状させたい ふざけるなとせめて立ててやりたい でも・・・ (我慢しなさい、かごめ・・・。満が哀しむ・・・満が・・・) 母親としての 責任感だけが かごめを押し留めている・・・。 「・・・。どっかに置いて忘れてきたわね。もーう!! 傘だって安くなんだから!とにかく着替えて着替えて!」 「お、おう・・・」 妙にはテンションの高いかごめに違和感を感じつつも 犬夜叉はほっと安堵した。 (・・・。かごめに勘ぐられてるのかと思った・・・) 階段を上がっていく犬夜叉を・・・ かごめはただ・・・俯いて見ていた・・・。 かごめはとにかくはしゃいだ。 明るく笑った 「・・・でね!?ご近所の人が・・・」 「きゃははー!犬夜叉の負けーー!!」 食事後もかごめは必死だ・・・ 今にも犬夜叉の頬を殴りたい衝動にかられるが ”かーたん、いーこ、いーこ” (・・・満・・・) 満のあの手のぬくもりを哀しませたくない・・・。 (私が一人で消化すればいいの・・・。我慢すれば すむ・・・) だから 笑う。 笑いたくないけど 笑ってないと 何を言い出すか分からない 何を言うか・・・ 取り返しがつかない”結末”に火がつきそうで・・・。 「・・・満、寝たのか?」 「・・・。うん」 「そうか・・・」 鏡の前で・・・髪をとかすかごめ・・・。 犬夜叉の顔を直視できないから・・・。 「かごめ」 「なに」 「・・・。クリスマス・・・。3人過ごせそうだ・・・ どっかうまいもんでも食いにいこうか」 「・・・。そう・・・ね」 犬夜叉の優しげな声も 今は・・・ 嘘に聴こえる 「・・・。かごめ・・・」 かごめの背中。 かごめは昼寝していたと言ったが きっと違う。 (・・・。体調悪かったんだ・・・。オレにはわかる・・・) 「・・・かごめ・・・」 犬夜叉はそっとかごめを背中から抱きしめる・・・ 「・・・楽しい・・・。クリスマスにしような」 「・・・」 抱きしめられても 何も感じない それどころか・・・ ”桔梗・・・” ドクン! (・・・!) 胸が痛む・・・ 呼吸が苦しい・・・ (・・・落ち着いて・・・。私さえ我慢すれば・・・ この幸せは壊れない・・・壊せない・・・) でも・・・ 苦しい 苦しい・・・ 「かごめ・・・。オレ・・・絶対お前守るから・・・。 守るから・・・」 犬夜叉がかごめにキスを求めてきた・・・。 ”桔梗・・・” 激しく・・・ 桔梗にキスを返す犬夜叉が蘇る・・・ 角度をかえて・・・! 深く・・・深く・・・ 昼間、あんなことをしたくせに・・・! 裏切ったくせに・・・ッ!!!! ぞわッと かごめの背中に悪寒が走った・・・ 「いやぁッ!!!」 ドン!! 犬夜叉を突き飛ばすかごめ・・・ 「かご・・・め・・・?」 「桔梗とキスした唇で触れる気・・・ッ!??」 「か・・・かご・・・め?何いって・・・」 かごめらしくない荒い言葉・・・ 人が変わったようにかごめの瞳は鋭く 冷たく見下ろして・・・。 犬夜叉はただ・・・呆気に取られ・・・。 「・・・。よくそんな白々しいことを言えるわね!? アンタ昼間何してたの!?公園で誰と会ってたの!?」 「・・・もしかして・・・。見て・・・たの・・・か?」 「見てたわよ!!いやって程見させられたわよ!?? あんな熱烈なキスなんかして・・・!!」 「桔梗とキ・・・?」 「そうよ!!それに携帯にわざわざそれもすぐ誰かわかるようなイニシャルで 隠して・・・!!」 (いや・・・。口が止まらない・・・。 こんな乱暴な私が止まらない・・・) 犬夜叉を責めたいんじゃない 追い詰めたいんじゃない でも・・・ 抑えていたものが 火山のように溢れる・・・ 「・・・かごめ。お、お前なにか勘違いしてねぇか? 確かにオレは昼間公園で女と会った・・・でもそれは・・・」 「言い訳なんて聞きたくないわよ!!」 「言い訳なんかじゃねぇ!公園で会ってたのは仕事の仲間だよ。 それに携帯のイニシャルも桔梗じゃない・・・」 「馬鹿にしないでよッ!!!」 バフ!! かごめは犬夜叉にクッションを投げつける。 「桔梗似の仕事相手だったとでもいいたいの!?? ねぇ!!嘘つくならモット上手くつきなさいよ!!」 「うそじゃねぇ!!確かに桔梗に似てる奴だけど 桔梗じゃねぇよ!信じろよ!」 「信じろって・・・。何をどう信じろって言うの!?? あんなシーン見せられてそんなそんな・・・」 ヒステリックになっていく・・・ こんな自分嫌なのに・・・ 嫌なのに止まらない・・・ 「・・・そうか。ずっとお前誤解してたのか・・・」 かごめが・・・ 以上にハイテンションだった理由が一瞬にしてわかった・・・。 犬夜叉は自分が妙に気を使ってしまったことが 逆にかごめに疑いを持たせてしまったと、後悔した。 「すまねぇ。かごめ。オレの妙な勘ぐりで・・・。 でも本当だ。オレは桔梗とあってなんかいねぇ・・・。 あれは、仕事相手の女がコンタクト落としたっていって・・・」 「・・・」 「借りに・・・どこかで桔梗と会ったとしても、もうオレは話さないし 何も感じない。だって今はお前がいるから・・・」 「・・・」 うそ臭い うそ臭い 今まで何回こんな同じようなことに出くわした? 犬夜叉と桔梗の数奇な絆の意味を 本人達より知っている。 昼間のシーンが本当であろうがなかろうが それが重要なんじゃない 信じたい信じたい でも信じきれない信じ切れない 信じたい信じ切れない信じたい信じ切れない・・・ (・・・駄目・・・。なんか・・・苦しい・・・苦しい・・・) 「かご・・・め」 「来ないでッ!!!」 ビクっと肩をすくめる犬夜叉。 「かごめ・・・。顔青いぞ・・・?やっぱり具合悪いんじゃ・・・」 「・・・・・・ごめん・・・。犬夜叉・・・。私・・・。 もう・・・限界・・・か・・・も・・・」 「え・・・?」 (げ・・・限界・・・って・・・) 「・・・。私・・・私・・・」 呼吸が苦しくなって 胸の動悸が治まらない 病気の発作より苦しい 理屈だけじゃ もう・・・ 「・・・かご・・・め・・・?」 「・・・。かごめ・・・!」 かごめの肩がガクガクと震えだす・・・。 「・・・。犬夜叉・・・私・・・私・・・」 犬夜叉の顔を見ると苦しい あのシーンを思い出して 過去の痛みが蘇って・・・ 「・・・かごめ!!」 かごめはふらりと倒れた・・・ 「しっかりしろ!!かごめ!!」 (・・・犬夜叉・・・) 意識が薄れていく・・・。 「かごめ!!」 犬夜叉大声に・・・ 眠っていた満が目を覚ます・・・。 異様な空気に・・・ 満の目にこんもり涙がたまっていく・・・ 「うわああああーーん・・・」【なんだよ!?二人ともなんか変だぞ!?】 倒れるかごめに駆け寄って泣き出す・・・。 「あーん・・・うえぇええー・・・」【かーちゃん!?なにあったんだ!?】 満の泣き声が響く・・・。 犬夜叉はそのままかごめを抱いたまま かかりつけの医者にすぐさま運んだ。 点滴を打たれるかごめ・・・ 犬夜叉はかごめの容態を医者から診察室で説明される。 「・・・。色々検査してみたいと分かりませんが・・・。 脈も正常ですし、心臓からくる症状ではないので命にかかわる ことはないでしょう」 「そうですか・・・。よかった・・・」 「ただ・・・。奥さんは何か相当な”精神的なストレス” を最近、溜めておられたようで」 「ストレス?」 「ええ。心臓の薬と一緒に安定剤を処方しています・・・。 ご存知ありませんでしたか?」 全く・・・全く知らなかった。 かごめが追い詰められていたなんて 何も知らなかった・・・ 「命には関わらないというものの・・・ストレスは 万病の元ですよ?旦那さんもちゃんと支えてあげないと・・・」 「・・・。あ、あの・・・。んじゃ今のこの症状って奴は どうやったら治るんだ?」 「安定剤や睡眠剤を処方するぐらいしか・・・。あとは 知り合いのカウンセラーを紹介することはできますが・・・。 やはりご家族の支えが一番の治療かと思います」 「・・・」 医者の一字一句・・・かごめの代わりに 犬夜叉を責めているようだ そしてかごめが安定してきて病院を後にした 家に帰って・・・ 犬夜叉はもう一度ゆっくりかごめと話し合おうと 思った。 かごめが納得できるまで話そうと・・・。 「・・・かごめ・・・。あのな。オレ・・・」 「・・・。暫く・・・。離れて暮らそう・・・」 「え?」 「・・・。桔梗と会ってないことはわかった・・・。あれは 私が見た幻覚・・・。犬夜叉のことを疑ってしまった私の 心の闇・・・」 「かごめ・・・」 だけどあまりにリアルで あまりに衝撃的で・・・ 「・・・。私の心の修行が足りないの」 「そうじゃねぇ。俺がお前によけない心配をかけるから・・・」 「・・・。暫く・・・。離れて暮らしましょ」 「え!?」 犬夜叉は耳を疑った。 「なに急に・・・」 「・・・。今・・・。私達少し距離を置いた方がいいと思う」 「きょ、距離って・・・」 「・・・私のこの症状が治るまで・・・」 「な・・・。治らなかったら・・・?」 かごめは無言で俯く・・・。 (そ・・・そんな顔・・・するなよ・・・) 「・・・珊瑚ちゃんのところに行く」 「え、ちょ、ちょっと待ってって・・・!」 荷物をまとめて満をだっこして部屋を出るかごめ・・・ 「うええぇえええー・・・」【なんで出ていくんだ?とーちゃんは?!】 「かごめ!」 「・・・ごめん。犬夜叉・・・。今はわがまま・・・。言わせて」 パタン・・・ 静かにドアが閉められた・・・ その場に座り込む犬夜叉・・・ 「うえええーーえええんー・・・!」【どうなってんだ!】 泣き止まない満の声・・・ 犬夜叉を刺すように 痛々しく・・・ (・・・か・・・ごめ・・・) コロン・・・。 犬夜叉の足元にサンタクロースの人形が落ちた・・・ 満が持っていた人形・・・ (かごめ・・・。治らなかったら・・・俺たち・・・) ”別れる・・・?” (そ、そんなの嫌だ・・・そんなの・・・) 呆然と立ち尽くす犬夜叉・・・ 一方満を抱いて寒い夜を歩くかごめ・・・。 (犬夜叉・・・ごめん・・・。今一緒にいても・・・ 絶対に良くならない・・・寧ろ・・・。犬夜叉を傷つける・・・) ヒステリックな自分に負けて 犬夜叉を・・・ (少しだけ待ってて・・・。もっと・・・。強くなるから・・・) 「うぇえッヒックッ」【かーちゃん。オレなかねぇぞ。かーちゃんが 今にもなきそーだから・・・】 かごめの腕の中の満・・・ 鼻水と一緒に涙もすすって泣き止む・・・。 「・・・満・・・。強い子ね・・・。お母さんも負けないから・・・」 「あい・・・つおいこ・・・」【オレもまけねぇ!よくわかんねーけど、まけねぇ!】 また・・・ 小雨が降ってきた・・・ 12月中旬・・・ クリスマスまであと二週間ほどの夜だった・・・
・・・少し緩めのシリアス路線に変更しました(汗) 最初はもっとドロドロ路線を浮かべて かごちゃんが見たのは幻覚じゃなくて本当の犬桔の ラブシーンにするつもりでした。 そんで犬桔が駆け落ち寸前でそれを追いかけるかごちゃん・・・。 みたいな昼ドラ路線考えてたんですが それじゃああんまりにも犬が不甲斐ない男になりすぎかなって 思いまして・・・。結婚前のかごちゃんと桔梗の間でフラフラしてた時期なら いざしらず(でも嫌)、結婚して子供がいるのに 昔の彼女と駆け落ち・・・なんて倫理的というか犬かご者的に 苦しくてかけませんでした・・・(ヘタレ)。話的には盛り上がるんですが どんなに犬かごの絆が深くても、”やっちゃいけない行為”をしては 修復不可能だと思ったのです。 かごめちゃんの命が消える悪夢をみてその存在の 大切さを心底分かったはずの犬夜叉なのにおかしいと思いまして(汗) そ、それにかごちゃんの立場なさすぎて、かけませんでした(汗) というわけで路線変更。どシリアス展開ご期待だった 方はすみません><すみません・・・(汗) といってもかごちゃん、ちょっと心理的なドつぼにはまっております。 内容はシリアス系です。 それを乗り越えるかごちゃんの過程をあと何話か お付き合い下さいませ。イヴの夜がラストです・・・ 犬君がかごめちゃんに大告白してます・・・!!ハイ! ということで・・・あと数話お付き合いくださいませ(汗)