居場所を探してシリーズ 「イヴの奇跡」 4:イブの約束 「いただきます」 朝・・・。食堂で一人・・・朝食を取る犬夜叉・・・。 ”ごはん、できたよ〜” あったかいごはんの湯気を漂わせて かごめがお盆に乗っけて盛ってきてくれる・・・ 「・・・。駄目だ・・・。食欲でねぇな・・・。一人は・・・」 かごめの笑顔がない。 笑顔がない (・・・力がでねぇ・・・。でもかごめはもっと辛い思いしてんだ・・・) でも本当に一人の食事はなんて・・・ (美味しくないんだろうな・・・) いつものことだが・・・。 かごめがいなくなってやっとその存在感を身に凍みて 感じる・・・ (・・・もっとかごめに・・・感謝しねぇといけねぇ・・・。日頃から・・・) 「・・・。テレビでもつけるか・・・」 P・・・ 寂しさを紛わす。 犬夜叉はリモコンでテレビをつけた。 丁度、地元のニュースが映っておりぼんやりながめている 「・・・とこのクリスマスツリーの前でイブの日に 待ち合わせしたカップル・ファミリーは皆、幸せになるという ジンクスがあります」 (ジンクス?) 「喧嘩中のご夫婦も仲直りされたという報告も有ります。 皆さん、是非、イブにはこの大きなクリスマスツリーの前で 待ち合わせましょう!」 (・・・) 犬夜叉は食い入るようにテレビを見入る。 クリスマスツリーの前を 手をつないだ親子連れが通り過ぎていく・・・ 「・・・クリスマスイブ・・・か・・・」 ”3人で一緒にすごそうね” かごめとそう約束した・・・。 (・・・今年は・・・。どうなるだろうか・・・。 かごめ・・・) 満が落としていったサンタクロースのぬいぐるみ。 そっと犬夜叉はズボンのポケットにしまったのだった・・・。 「・・・じんぐるべーるじんぐるべーるすずーがなる☆」 珊瑚の長女、希がおもちゃのクリスマスツリーを 飾りつけ。 「ずんぐるべーるずんぐるべーる♪」【ジングルベルっていいにくいぜ】 満も一緒にお手伝い☆ 「・・・クリスマスか・・・。珊瑚ちゃんたちは イブはどうするの?」 「うん。一応みんなで過ごすつもり・・・」 「そっか・・・。楽しいイブになるといいね」 (かごめちゃん・・・) かごめが家を出て二週間。 本当はすぐにでも戻りたい気持ちを抑えていることを 珊瑚は感じていた。 「・・・。ねぇ珊瑚ちゃん・・・。 私ってまだまだよね」 「え?」 「・・・。母親になってもまだ・・・。犬夜叉と桔梗の ことをこだわるなんて・・・。その上それを引き金に 変な発作起こすなるなんて・・・」 「・・・。仕方ないよ。あの二人のあの空気・・・ 雰囲気・・・。端から見てても心にプレッシャーていうか 重く圧し掛かるって感じ、するもの」 もし弥勒に結婚しても忘れられない人がいるとしたら・・・? そんな女性の影が永遠に消えなかったとしたら・・・? (・・・私だったら耐えられない・・・。弥勒さまの全部 疑って疑って・・・疲れ果てる) かごめはそれを受け入れようといつも必死だった。 今も必死なのだ (・・・はぁ・・・。こればっかりは私にはどうすることも出来ないけど・・・。 犬夜叉にいつか一発”しっかりしろ!”っていれたいな) 「あ、満、お星様はてっぺんにつけるのよ」 満と笑顔でツリーを飾るかごめ・・・。 かごめの笑顔が切なく珊瑚に映る・・・。 (・・・なんでかな・・・。神様は・・・。 一生懸命な人にもっと一生懸命になれって 言うんだろう・・・) 頑張っているのに 頑張れば頑張るほど 傷つくなんて・・・。 まして・・・。 一番大切な人と会おうとすると 体が拒絶する スキなのに 好きなのに 会えない (犬夜叉・・・) 新築中の高層ビル。 かごめがそっと街灯の影から上を見上げている。 「犬っころ、新しいボルトもってこい」 「はい!」 (犬夜叉・・・) 寒空の中・・・ 冷たい風が吹く中薄着の作業着姿で仕事を 黙々とこなす・・・ 家の中では態度がでかくてわがまま者の犬夜叉なのに・・・ 年下の同僚にも反抗的な態度もとることなく 謙虚に謙虚に・・・ 犬夜叉の仕事振りを・・・じっくり見たことはなかった気がする。 (・・・犬夜叉・・・。毎日頑張ってるんだね・・・。知らなかったよ・・・) 家族のために 毎日・・・。 それなのに犬夜叉の顔を見るだけで苦しくなるなんて (私って・・・本当に弱虫だな・・・) 早く直したい 治ってまたたくさん励ましてあげたい。 (・・・せめて・・・。今私がしてあげれることは・・・) 「あの・・・。すみません」 かごめは犬夜叉の同僚に紙袋を手渡して帰っていった・・・。 昼食時。 「兄貴!今、奥さんから差し入れがありましたよ!」 「何!??」 犬夜叉は事務所を降りて走り出して辺りを見回した。 「かごめ・・・!!」 辺りにはかごめの姿はなく・・・。 (・・・。おかかのおにぎりと・・・。から揚げ・・・) 犬夜叉の好きなものがいっぱい入っていた。 (かごめ・・・) 離れているけれど かごめのぬくもりは感じられる・・・。 かごめの優しさが 思いやりが・・・。 (オレもいじけてられねぇ!少しでも強い男になって かごめを不安になってさせてねぇ奴にならねぇと!!) 「うおおーし!!午後もやるぞーーー!!」 かごめのお弁当・・・。 寒さもふっとぶほどに犬夜叉に元気を与えた。 そして・・・。 かごめもまた・・・。 「かごめちゃん。あんまり無理しないほうがいいんじゃない?」 「大丈夫。今日、寒いからきっと温かい物もっていってあげたいの」 犬夜叉の夕食、おでんをつくって持っていく。 そして明日はクリスマスイヴ・・・。 「あ・・・。かごめちゃん。犬夜叉から手紙、来てるよ」 「え?」 ちょっと乱暴な字の葉書。 そこには 『かごめへ。元気か?あの・・・。もし・・・。 もしよかったら・・・24日・・・。会えないか? いや、オレには会わなくていい。お前と満にプレゼント あるんだ・・・。それだけ受けってとってくれたらいい。 ・・・待ってる・・・』 そう書かれ、待ち合わせ場所が描かれていた。 「このクリスマスツリーって・・・。この間テレビで やってたやつじゃない?かごめちゃん」 『このクリスマスツリーの前で待ち合わせした カップルや家族は願いがかなって幸せになれる』 「・・・犬夜叉・・・」 犬夜叉の願いが葉書にはこめられている気がした。 「かごめちゃん・・・。どうする・・・?」 「・・・」 かごめは葉書をぎゅっと握り締める・・・。 明日はいよいよクリスマスイヴ・・・。 犬夜叉達の幸せなイヴは来るのだろうか・・・ もうすぐクリスマス・・・