第二話 ただいま おかえりなさい・・・ A

太陽君・・・。ずっと待っていてくれたんですね・・・」











陽春に抱き上げられ、テストを見せた太陽。






すぐにまた眠ってしまった・・・








「大分・・・。重くなって・・・。太陽君、たくましくなった」






「はい・・・」








太陽の髪を撫でながら陽春は太陽を水里に返した。














そして水里は真っ直ぐ陽春を見つめて言った・・・













「おかえりなさい。春さん」













「ただいま・・・」












微笑む陽春・・・













おかえりとただいま・・・










なんだか嬉しい気持ちになる・・・













「春さんも髪、大分伸びましたね・・・」

















「あ・・・え、えとあの。はは。忙しくてつい・・・」「








「水里さんも伸びて・・・」









そっと水里の三つ編みに触れる陽春。






陽春の仕草に固まってしまった水里。






「あ、・・・はは。私も散髪代浮かせるために・・・はは」












(・・・私は一年ぶりの再会になのになんて色気もない所帯じみたことを言っているのだろう(汗))








「おい!二人ともっ。濡れるぞッ。中入れよ!」









一年半ぶりの店・・・






陽春はまるで人の家に来た様に眺める。







「・・・なんだよ。帰って早々、チェックいれてんのか。兄貴」






「いや・・・。なんか懐かしいっていうか・・・。不思議な気分で」






「変だな。ここは兄貴の店だろ。ほい、これのンであったまってくれ」






「ありがとう。いただきます・・・」



陽春が焼いたカップ・・・




一口じっくり含んだ・・・








「・・・」





陽春の反応が気になる夏紀はちょっと緊張・・・。









「うん・・・。旨い。旨いよ夏紀」









「・・・そうか・・・。よかった・・・」







「オレが留守の間・・・。本当にありがとうな・・・。お前の一人前だ」





ちょっと頬を染める夏紀クン。





「あー。夏紀クン、照れてる、照れるー。お兄ちゃんに褒めてもらってうれしーんだぁ♪」







「ばっ・・・。からかうんじゃねぇ!!童顔女!!お、オレ、
ちょっと冷蔵庫みてくるッ」






夏紀は照れくさそうに
厨房へ入っていった・・・





「ふふ・・・。相変わらずいいコンビだな・・・。二人は・・・」





「そうですか?でも夏紀クン、本当に頑張ってました・・・。
”マスター代行”」






メールで水里から店の様子を逐一聞いていた陽春・・・




自分の本職も一休みして頑張っていたと



店の中の綺麗さがそれを物語っていると陽春は思った・・・










「・・・あ・・・。春さんこれ返さなくちゃ・・・」







水里はペンダントをはずしカウンターに静かに置いた。









「これ・・・。春さんにとってとっても大切なものだって・・・。
夏紀クンが言ってました。詳しいことは聞いてないんですが・・・。
」







「・・・」






陽春は水里の首にそっとペンダントをすっと返す・・・








「春さん・・・?」










「・・・。貰っていただけませんか・・・?」





「え・・・。でも・・・」







「太陽くんと水里さんのお守り・・・。一年半この店を支えてくれた
僕のお礼・・・です」







「・・・私が持っていてもいいんですか?」







陽春は微笑んで頷く・・・







陽春は静かに水里の首に再びペンダントをかけた・・・








「わかりました。大切に持たせてもらいます・・・」






「はい・・・」













嬉しそうにペンダントを見つめる水里・・・









「春さん・・・」





「はい」











「おかえりなさい。ご苦労様でした・・・」










「ありがとう・・・」











メールの文字じゃなくて・・・






ちゃんと顔をみて言わなくちゃ・・・
















「なんだかいいですね・・・。”ただいま”おかえりって言葉・・・。
すごくほっとしました・・・」












「そうですね・・・。私もほっとした・・・」















メールもいい






でもやっぱり。








いつも見慣れた風景。





いつも聞きなれた声・・・






そして




いつも見ていた笑顔・・・











自分の居場所に帰ってきた気がする・・・










「・・・ますたあ、おかえりなさい。むにゃむにゃ」








陽春はくす・・・と微笑み






太陽の髪をなでて呟いた・・・











「ただいま・・・。太陽君・・・」












あどけない太陽の寝顔に・・・






陽春と水里は優しく微笑んでずっと見つめていたのだった・・・