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デッサン3
〜君と共に生きる明日〜
第20話 壊れた心 @
小さな心が壊れた。 子供の心の傷。 大人になって残ったら。 大人になっても残ったら。 別の傷になって残ったら。 他の誰かを傷つけたら。 どうなるだろう。どうすんだろう。 強さになればいいけれど 優しさに変わればいいけれど ・・・根深い歪みになったらどするんだろう・・・ 子供はそんなに強くない 弱くもないけど 強くない・・・
(よーし。一等賞取るぞ〜!!) 体育の時間。 校庭ではりきる太陽。 まりこと約束したのだ。 一等賞をとったらその商品は・・・ ”一等賞取ったらチューしてあげる” (ぜえったいにとるぞ!) 太陽は俄然、力がはいっております。 「ヨーイ・・・どーん!!」 ・・・そして太陽は・・・。 (・・・よし!!まりこちゃんのチュー、GETだぜ!!) と、ポケモンのお決まりの台詞で一着でゴールイン! まりこは拍手を太陽に送った。 太陽は嬉しくて嬉しくて心の中で沢山万歳した。 「今日の太陽くん、かっこよかったよ!」 まりこから賛美をたくさんもらい、にこにこ顔で教室に戻る。 ”お着替えしたら、チューあげるね” (えへへへ・・・。まりこちゃんのチュー・・・♪) と耳打ちされ、もう、今にも踊りだしそうです。早く大休憩になれと 思いながら着替える。 「あれ・・・?ズボンがない・・・」 太陽は机の上にはポケモンのトレーナーはあるものの、ジーンズの ズボンがない。 「あれ・・・。おかしいな・・・。おかしいな・・・」 他のクラスメートたちが着替え終えていく中、太陽は焦りながら 机の中や下をパンツのままで探す・・・。 「あれー?おーい。こんなところにきったないズボン落ちてるぜー!」 太陽が一番嫌いなクラスメート、タカシが業とらしく 太陽のズボンを拾ってみんなに見せびらかした。 「返してよ!!ボクのズボン!!」 「はぁー??おーい、お前ら、これ、どっかに捨てといてくれ」 タカシは仲間に太陽のズボンを放り投げる。 「かえせよ!!ボクのズボン!!」 「とりかえしてみろよ。ほれほれ」 タカシたちは太陽のズボンをバスケットボールのように投げあう。 「かえして、かえしてよーー!!」 太陽は必死で取り返そうとするが取れない。 「ホレホレホレ!!お前のズボンはあっちだぞーーー!!」 他のクラスメート達を煽って拍手させるタカシ。 「取り入ってこい。ホーレ!!」 タカシは太陽のズボンは廊下へとなげられた 太陽は走って取りに行く。 (ボクのズボン・・・) 太陽が拾うとしたその時・・・ 「最後の仕上げた、ソーレ!!」 (え・・・) ・・・おしりがスースーする・・・ なんと タカシは太陽の体操服のズボンをパンツごとずり降ろしていた・・・ 「ギャハハハ!!お前ら、見ろよ、吉岡のヌード」 タカシは太陽を指差して 高笑い・・・ クラスメートたちの視線が太陽に集中する・・・ ・・・太陽は・・・ 小さな手を震わせて ただ足をすくめて何も履いていない体を 必死に隠す・・・ 「お前、ほーれほれ、パンツはここだぞ? 取りにこいよ??」 タカシはこれ見よがしに太陽の目の前にずり降ろしたズボンをちらつかせ・・・ (・・・) 恐怖のあまり・・・ 太陽の周辺が濡れて・・・。 「あ・・・。コイツ、漏らしやがった・・・。きったねぇ!!!」 タカシは鼻をわざとらしくつまんで・・・ 「バーか。クソ!お前なんか死ね。お前なんか消えろ、失せろ。バカ! 」 タカシはぺっと太陽に唾をはいて ズボンをゴミ箱に捨てた。 「貴方達!!何やってるの!!!」 騒ぎを聞きつけた担任の声に、タカシ達は教室に逃げた。 「・・・吉岡君!?大丈夫!??」 担任は慌てて自分が来ていたジャケットを太陽にかけた・・・ 「・・・」 だけど・・・ 太陽は・・・ 泣くことも 息することも わすれたように・・・ 体も心も硬直して・・・ 動けない・・・ 恥ずかしさと 恐怖と・・・ ”死ね、バーか!!” タカシの声は・・・ 「ゲボ・・・ッ」 廊下で太陽に胃の中の食べ物を全部吐かせた・・ 「げぼ・・・」 そして・・・太陽の心はこの日・・・ 止まった・・・。
「嘘・・・」 シスター片岡から一連のことを聞いた水里は 電話口で絶句した・・・ あまりに太陽への仕打ちの酷さに・・・ まるで自分も同じ事をされたように・・・ (太陽・・・!!) 水里は夕食も忘れ・・・すぐさま学園へと走った・・・ 「太陽・・・!!」 学校を早退してから太陽は・・・ 何度も何度も吐いた・・・ 水分さえ胃が受け付けず・・・ 水里はピカチュウのかけぶとんを捲る水里の手も震える・・・ 体を九の字にして 太陽はガタガタ震わせていた・・・ 「太陽・・・。太陽・・・」 水里の声も聞こえないのか 虚ろな瞳は・・・何処を見ているの・・・? 「・・・。太陽・・・太陽・・・」 水里は小さな体をそっと抱き上げ・・・ ただ 抱きしめる・・・ 「・・・もう行かんでいい・・・。学校なんか・・・。 太陽の心壊れてしまう・・・」 「・・・」 水里の服をぎゅっと握り締める太陽の手・・・ 「もう・・・。行かんでいい・・・。もう・・・。もう・・・」 不甲斐ない。 太陽は大分強い子になっていたと過信していた自分が 不甲斐ない・・・ 「・・・。太陽・・・。ごめんね・・・。守ってあげられなくて・・・。 ごめんね・・・」 「・・・」 水里の涙が太陽の小さな手に落ちる。 水里の温もりが太陽に染みて・・・ 一層水里に抱きつく太陽。 「・・・ごめんね・・・」 その日・・・。水里はだっこしたまま 太陽と眠ったのだった・・・