デッサン3 〜君と共に生きる明日〜
最終話 キャンバスに描く未来へ
水里と陽春が結婚してから半年。 陽春は山間の福祉センターで働き始めた。 「一緒に歩きましょう・・・。一緒に」 転びそうになったおばあさんの手をしっかりと にぎりしめて支える。 医者は病気はなおせるが心を支えることは なかなかできない。 (新しい僕は・・・心を支えたい。僕が・・・) 陽春はおばあさんが立ち上がるまで寄り添う・・・。 ただ、支えるだけでなく・・・おばあさんが立ち上がるまで 見守る・・・。 大切なことは 貴方は一人じゃないと伝えること・・・。 「ちょっと!夏紀先生!原稿遅れてるって何回言ったらわかるんですか!」 「へーい。明日まで書くからちょっとパチンコへ・・・」 編集者に逃走を阻止される夏紀。 陽春の家には今は誰も住んでいない。 水里たちは引っ越したのだ。 ”いつか・・・ここで家族で色んな人が くつろげる居場所を作りたい” そう言って・・・。 (兄貴達・・・。元気でやってるかな) 青い空。 緑が生い茂る山間。 木造のログハウス風の二階建ての家。 水里の父が残した別荘を改築したのだ。 『藤原陽春・水里・太陽』 木のたて看板にそう記してある。 家に向かって4年生になった太陽が走って帰ってくる。 「水里お母さん!ただいまー!」 家の中に入っても誰もいない。 「どこ行ったのかな」 太陽が庭に出てみると・・・ 「お母さん!」 「あ、おかえり!」 顔中絵の具だらけの水里が・・・ 「また絵、描いてたの?」 「うん。この絵、お父さんにプレゼントしたいんだ。 だか内緒だよ?太陽」 「うん!」 指切りする二人。 もうすぐ陽春の誕生日なのだ。 (・・・それと・・・) 「お母さん!僕もね、僕もお父さんにプレゼントがあるんだ」 「なあに?」 「内緒!」 太陽はパタパタと二階下上がっていった。 (ふふ。太陽にもプレゼントが届いているのだ。・・・ 恋人から) 太陽が机の上で発見したのは・・・。 「まりこちゃんからの手紙だ・・・!」 まりことは太陽がこちらの学校へ転校してからなかなか会えないでいた。 (えっ!!) ドタタタ! 「お母さん!聞いて!まりこちゃんがまりこちゃんが・・・。 こっちの学校へ転校してくるって!!」 「よかったねーー!!太陽。これでいつでもまりこちゃんと ラブラブできるじゃない☆」 「・・・(照)あ、あんまりからかわないでよ。//」 太陽は照れくさそうに手紙を持って再び二階へあがっていった。 (ふふ・・・。年頃なのかな太陽も・・・) 太陽の成長を嬉しく思う。 まりこの転校は実は知っていた。 エプロンのポケットから絵葉書を取り出す水里。 差出人は・・・ 唐沢だ。 『おう。山野元気でやってるか。新婚家庭に送るのもどうかと 思ったんだが知らせることがあってな。オレはあの店をやめて・・・ ○町の木工所に勤めることにしたんだ。まりこがお前のセガレと 会いたがっていたし俺も前から興味があった家具職人目指そうかと おもってな。つーわけで近所になるかもしれないからそんときは ヨロシク!』 「店長らしいな。ふふ・・・」 また唐沢との毒舌バトルができそうだと思うと楽しみな水里・・・。 (みんなそれぞれ・・・懸命に生きてるんだな・・・) 空を見上げる水里。 シスターは相変わらず学園の子供達と格闘して・・・。 夏紀は純愛小説道を極めようと頑張って・・・。 それぞれの白いキャンバスに それぞれの色がついていく・・・。 (・・・私達も・・・毎日いろんな色をつけていってるんだな・・・) 怒ったり泣いたり・・・ お互いを助け合いながら・・・。 「ただいまー!」 陽春が帰ってきたが・・・。 明かりがついていない。 (どうしたんだ・・・?) そのとき。 ぱっと明かりがついて。 パパパパーン! クラッカーがなって。 「お父さん誕生日おめでとうーーー!!」 水里と太陽が垂れ幕を二階から下ろした。 「え・・・。そうだったけ?」 「なあんだ。忘れてたんだ。ふふ。春さん。今日は春さんの 誕生日だよ。ささ、主役はこっちへ」 水里はキッチンへ陽春をつれていき、真ん中の椅子座らせた。 テーブルの上にはケーキやご馳走が沢山。 「すごいな・・・これ、みんな水里さんが?」 「うん!太陽も手伝ったけどね」 「えっへん!」 二人して自慢げに胸を張る。 「ふふ。そうかじゃあ残さず食べないとな」 「その前に!さてさて。プレゼント贈呈〜!! まずは太陽から。はい、太陽の出番だよ!」 「お父さん。誕生日おめでとう!」 太陽のプレゼントは・・・ 木で作ったふくろう。 「すごいな・・・。これ、一人で太陽がつくったの?」 「うん・・・でもちょっとだけ図工の先生に手伝ってもらったけどへへ」 ぺろっと照れくさそうに舌を出して笑う太陽。 「上手につくったね・・・!ありがとう!机の上に飾って 毎日みるよ!!」 「うん!!へへ・・・」 太陽は嬉しそうに笑った。 一生懸命に放課後、残って作った。 陽春の嬉しそうな顔が太陽には何よりものプレゼントだ。 「じゃあ次は水里お母さん!」 「えーじゃあわたします。はい。春さん」 水里が手渡したのは絵・・・。 「わぁ・・・。これ、うちの庭?」 「そう。タイトルは『庭にて』かな」 陽春はじっと絵を見た。 (・・・俺がいて・・・太陽とキャッチボールして・・・。 水里さんがいて・・・) 家族3人。 血は繋がっていないけど それ以上に 繋がっているぬくもりがある・・・ この絵のように・・・ 「じゃあみんな!ケーキ食べよう!」 「はーい!」 笑って泣いて・・・ 同じものを食べて 同じ物を見て感動して・・・ これからまた新しい”色”がキャンバスに描かれていく。 真っ白なキャンバス。 これからは何枚の白いキャンバスにどんな絵が 描かれるのだろう。 どんなことを描くのだろう。 デッサン。 いつからだって始められる。 人生というキャンバスがある限り。 どんな色にでも 出来事も・・・ 夢も・・・ 恋も・・・ デッサン 貴方のキャンパスに希望という名の色が 彩られますように 描かれますように デッサン 人はいつからでも始められる やり直せる。 希望色を忘れないで 明日色を探してください・・・ きっと希望という名の色に出会えるはずだから・・・
FIN

ラストはあっけなくどたどたと終わらせてしまいました(すいません・汗) 長かった。長すぎたかな・・・(恐る恐る)なんか途中マンネリ化してきた 気もするし・・・汗  でもどうしても水里と陽春が出会ってそして惹かれあい、 そして色々な出来事が積み重なって、太陽と三人の家族になるまでの過程が 書きたかったのです。だから三部構成にして長引いてしまいました。 血の繋がらない家族っていうか・・・。 単に恋愛して結婚して・・・というよりちょっとどこか不器用な三人が 一緒にいろんなことを体験しながら 家族になれたらいいなって思いながら描いていました。 人と人のつながりって言うのはそう短い期間で きづきあげられるものではないと思うのです。 白いキャンバスにはいつからでもいつでも 自分色を付けられる描ける。 説教臭いあとがきですがそんな前向きな気持ちが少しでも伝われば幸いです。 最後まで本当にありがとうございました。 何年たったか忘れましたが(数えろよ)最後まで読んでくださった方がいらしたら 本当にありがとうございました。 ・・・と。挨拶が終わったのですが 特別編として、最終回その後を描いております。 水里一家のとある事件を数話ぐらいで・・・。 UPした際にはまたよろしかったらのぞいてやってください。 最後まで読んでくださった方がもし、いらっしゃいましたら 本当に本当にありがとうございました。 2005.12.14 水音