裸足の女神
ACT21 お前は確かにここにいる
歩、朝から筆を墨汁にしみこませお習字。
『女を労わるような恋愛』
一筆したため、壁に張る。
「よし!オレの目指す恋愛はこうだ!」
決意を新たにした歩。
「男と女の愛はは支えあって育てる。よし!オレの恋愛コンセプトは
これだ!」
堂々、自分が書いた紙の前で決意する歩。
「ねぇえ〜。歩。悪いんだけどシャンプーきれたのー。持ってきてくれるー?」
「はぁあい〜♪今いくよーv」
かごめからのお風呂場からのお使いの声に
歩、先ほどの決意もどこへやら。ハートマークいっぱい
飛ばして風呂場へ直行。
「はい。シャンプーv」
「ありがと♪ねぇ歩。一緒にはいろっか♪」
「はあい♪」
パパッと服を脱いでお風呂へご入場♪
風呂場のガラス窓から二人のあまーい声が聞こえてます・・・
「いかん!!オレは『育てる愛』に生きる男。硬派にきめねぇと・・・」
ガソリンスタンドでタイヤ交換をしながら
スパナを握り締める歩。
最近段々キャラが変わってきたと周囲から指摘され
注意はしているのだが・・・
PPPP〜。
(あ!かごめからだ!)
携帯にすぐでる歩。
「あ、もしもし、かごめかぁ・・・v」
声がオネエです、歩。
「えー♪今日の夕飯。かごめの作るものならなんでも
いーよーぉ。うん。うん」
周囲の同僚、見た目とリアクションのギャップに
ただ、唖然・・・
「じゃあな♪今日も一緒にビデオみようなー♪」
P!
携帯をきると歩、ようやく周囲からのしらけた視線に気づく・・・
(・・・はっ・・・。お、俺ってやつは・・・)
携帯をポケットに突っ込んで
にやけ顔キャラから真面目顔キャラに戻る歩。
「さーて!今日も一日頑張るぞー!」
気合を入れて車を磨きます。
けれど心はもうかごめと過ごす休日のことでいっぱい・・・
(・・・くそ。いかん。これはいかんぞ・・・!)
すぐに緩みそうなこの気持ち。
”女を労わる愛し方をしろ・・・。生涯でただ一人の女を見つけたなら・・・”
松本からのアドバイス。
実行しようと思うけれどマンションに帰り
かごめの笑顔を見たとたんに、松本からの”教訓”などすっ飛んでしまう。
それどころか・・・
「ふう・・・。いいお湯だった」
「・・・」
湯上りのかごめを目の前に・・・
(やべ・・・。なんか動悸うってきた・・・)
思わず目線を逸らす・・・
「あれ?どうしたの?」
「・・・決めた」
歩は突然立ち上がり、台所からとあるものを持ってきた。
ガムテープ。
「それを・・・。どうするの?」
「仕切りだ。オレが欲情しねぇために」
「え?(照)」
寝室とリビングの間にビーッと赤いガムテープを貼り付け、白い布で
カーテンを作る。
「・・・しばらくの間、俺はこっちで寝る。かごめは寝室のベット使っていいから」
「どうして。どうしてこんな・・・」
歩はぎゅっとかごめの手を握った。
「・・・労わる愛を貫くためだ。な?じゃおやすみ!」
シャッとカーテンを閉め、
寝袋にもぐりこむ歩。
「・・・労わる愛って・・・??」
かごめは首をかしげるが
(・・・歩の考えが何かあるのね・・・。眠ろう)
と、ベットに入り電気を消して就寝・・・
こうして別々に眠ることになった二人だが・・・。
チッチッチ・・・
時計の秒針の音がやけに響く・・・
(・・・眠れねぇ)
寝袋の中でもそもそっと動く歩。
かごめがこの隣で眠っていると思うだけで
(・・・ムラムラきやがる俺って・・・(汗))
「・・・ンゥッン・・・」
(!??)
「う・・・んっ・・・」
(・・・っ)
かごめの寝息にドキっと反応してしまう歩・・・
(・・・逆にこれじゃあ蛇の生殺しかも・・・。少し頭冷やすか)
歩は寝袋から抜け出し、ベランダに出る。
「フー・・・」
煙草を一本ふかす。
静かな夜なのに・・・
歩のドキドキがおさまらない・・・
(・・・オレはこんなに助平な奴だったか・・・(自己嫌悪))
ドキドキするのと同時に
微かな不安ななんだろう・・・
「・・・。一人でお月様眺めているの?」
ピンクのパジャマ姿のかごめがひょこっとカーテンを開けて出てきた・・・
「私もお月見しーちゃおっと」
かごめは歩のとなりたち
なにかいい匂いのするものを取り出した・・・
「いただきまーす!」
肉汁のつまった肉まんをぱくっと食べるかごめ・・・
「うーん・・・。おいしいなぁ」
髪はふわっとおろされ、
少し胸元が見えるパジャマ。
なのに肉まんをほおばる・・・
「・・・。んっとにお前って・・・。見てて飽きないよなぁ」
「あー。何よ。それ、褒めてるのけなしてるの。もう一個歩の分も
あるけどあげないっ」
かごめはもういっこの肉まんを背中に隠す。
「あっそりゃねーだろ」
「やーよ」
かごめの背中に手を回して肉まんを取ろうとする歩
「じゃあ、お前のもらっちまうぞっ」
「あ・・・」
歩はかごめのたべかけをぱくっと一口食べた。
「もー。歩ったらお行儀わるいんだから」
「もう一口食べさせてくれよ」
「・・・甘えん坊なんだから・・・」
歩、かごめから食べさせてもらいにこにこしております。
「・・・。ついでに・・・。かごめもいただきまーすっ」
「きゃっ」
歩はかごめを背中から羽交い絞めするようにぎゅうっと抱きしめる。
ぎゅっと・・・
「・・・。どうかしたの?歩」
「えー?どうもしねぇよ・・・。ただ・・・。かごめといるのが
幸せすぎて・・・。なんか現実かなって思ってさ・・・」
「・・・変なの。私はこうしてここにいるよ・・・。歩の腕の中に
ちゃんと・・・」
かごめは歩の腕をぎゅっと握った・・・
「・・・ああ・・・。そうだな・・・」
愛しいと思えば思うほど
失くすのが怖い
昔・・・
自分は置いていかれた
あの瞬間。
”あんた。重いのよ。私が生きていくのにあんたはいらないのよ・・・!”
自分の母に・・・
捨てられた瞬間・・・
「・・・歩・・・。どうしたの。急に・・・黙って・・・」
「・・・。どうもしねぇ・・・。なぁかごめ」
「ん?」
「・・・。ずっとそばに・・・いてくれよな」
「うん」
歩は一層力強くかごめを包む・・・。
「・・・やっぱり仕切りなんてやめよう。一緒に・・・。眠ろう?歩」
「でも・・・」
「一緒に・・・。夢をみたいの。歩と同じ夢を・・・」
かごめは歩の背中に回して顔を埋める・・・
「・・・オレもみたい・・・。かごめの夢を・・・」
ガタ・・・ッ
ベランダが軋む・・・
歩はかごめを抱き上げ
部屋に戻ってベットにねかせ・・・
愛しげにかごめを見つめる・・・
「・・・。あのね。歩」
「ん・・・?」
「ホントは私も眠れなかったの・・・。何だか・・・緊張しちゃって」
「・・・じゃあおあいこだな。ふふ・・・」
歩はくすっと笑ってかごめのおでこに軽いキス・・・
「かごめ。・・・ホントにお前が好きだ。好きだからな・・・」
「うん・・・あたしも・・・」
そして二人は
甘い夢を見る。
離れたくないという想いが一つになって・・・
そしてまた
結ばれた二人だった・・・