裸足の女神
ACT24 一番嬉しいクリスマスプレゼント



〜雨は夜更け過ぎに・・・♪


街はすっかりクリスマスムード。



当然、若いカップル達も盛り上がって


腕を組んで街を歩く光景があちらこちら。



それは歩が勤めるガソリンスタンドでも見られて。


「きゃー♪卓也ったらぁ♪」



車の窓を磨く歩など目にはいっていないようで


いちゃいちゃするカップル。




(・・・場所考えろってんだったく。最近の若いモンは・・・)


むすっとしながらも営業スマイルで


「ありがとうございましたー」



と挨拶。





(クリスマス・・・か)




世間はクリスマスでも、仕事がある人間も沢山いる。



歩はガソリンスタンド、かごめは保育園のクリスマス会やらン何やらで

二人は最近すれ違うばかり・・・。




(せめて・・・。クリスマスプレゼントくらいしてぇけど・・・)




とある品物が歩の脳裏に浮ぶ。

この間。かごめがと行ったブティック。



「わ〜。このリング綺麗・・・」


シルバーのかなり高級そうなリング。


ペアだ。



「ほしいのか?かごめ」



「え・・・?ううん。綺麗だなって思うけどお値段高そうだし・・・」


けれど、かごめはそのシルバーのリングを笑顔で見つめていた。




(やっぱあれがほしかったんだろうな・・・。しかし値段が・・・)



ゼロが6つ、ついていた




(ボーナスはなしだし・・・。うーん・・・)



歩の視界にガソスタの前にあるとある看板が目に付く・・・。




(・・・よし・・・!オレも男だ・・・!!)



何かを覚悟した歩・・・。


翌日、ギターケース片手に質屋の前に歩がたっている。




(・・・)



意をけっして質屋の暖簾をくぐる歩・・・。




20分ほどして・・・



「・・・ふぅ・・・」


ちょっと寂しそうな顔で歩が出てきた・・・。



(すまねぇな。けど今のオレにはかごめの笑顔がみてぇから・・・)



財布の中には万札が十数枚・・・。




”これ、綺麗ね・・・”



かごめの笑顔を浮かべる歩。

「うし!!行くか!」



歩は清清しい顔で質屋を後にしたのだった・・・。





その日の夜。



「・・・あれ?歩。歩のギターは?」



いつも大事に壁に立てかけられていたギターケースが無いことに気がつくかごめ。



「え、あぁあれね・・・。バンド仲間にあげたんだ」



「え?でもあのギター・・・。歩が音楽始めたきっかけだって大切にしてたんじゃ・・・」




「いや、いんだ。もう大分古くなってたし・・・。貰ったほうも大事に使ってくれるって
言ってたから大ジョブだよ」



そういいながら風呂場へ向かう歩・・・。




(あんなに大切にしてたのに・・・)




あのギターの音色。


かごめが高校生の頃、路上ライブをしていた歩が使っていた。




(・・・そういえば!)


本棚から、音楽雑誌を取り出す。




”オレ・・・。昔からこのギター欲しかったんだ。でも値段が値段だろ?
ふふ。でもいいシナモンだからっていい音出せるかって言ったら違うけどな”




「・・・。歩にもう一度・・・」




(笑って欲しい・・・)




しかし雑誌のギターの値段はかなり破格・・・。




(今月のお給料日まではまだ日があるし・・・)



アクセサリーボックスをあけるかごめ。



「・・・」



プラチナの指輪・・・。



(・・・。よおし・・・!)




翌日。



質屋の前にかごめが居た。



バックの中からリングを取り出す・・・



初月給でかったお気に入りのリング・・・。


(・・・女は度胸よ!)


意を決して質屋の暖簾をくぐった。








そしてクリスマスイブ・・・。




「ただいま・・・」



暗い部屋にかごめが一人還って来た。


ガチャ。


(帰って・・・ないよね)




静かな部屋の中。





「・・・ハァ・・・」




寂しさが込み上げてくる・・・




そのとき





ぱっと電気がついた。




「え・・・」





ふわっと背中から抱きしめられる・・・




「メリークリスマス」




「歩・・?」




サンタクロースの赤い帽子をかぶった歩。



「どうしたの?仕事は・・・?」




「・・・。3時間だけ、休憩もらった・・・。どうしてもイブにこれ・・・。
渡したかったら・・・」





ポケットから小さな小箱を取り出した。





「これ・・・」




「柄じゃねぇけど・・・。やっぱそ、その・・・。こういうモンは
イブにわたさねぇと女ってのは・・・(照)」



歩は鼻を頭をポリポリかく。




「うふふ。開けてもいい?」



カサ・・・。



中身はどうやら指輪のケース。


(なんか箱からして高そうな・・・)



かごめが指輪のケースをあけると・・・





「あ・・・。こ、これ・・・!」





プラチナのネックレス・・・。






「すまねぇ・・・。お前が前欲しがってた指輪・・・。ちょっと予算的に
・・・。オレのギターは半分にも満たなくて」





「え、ギターって・・・」




(あ、やべ・・・内緒にしとくつもりだったのに)





「もしかして・・・。あのギター、売ったの・・・!?」




かごめは目を見開いた。



「いや・・・。どうしても頭金がなくて・・・」



「でもでも・・・。あのギターは歩の大切な・・・」




歩はかごめの口をそっと人差し指でふさいだ。




「・・・。いいんだ・・・」



「でも・・・っ」



「・・・。ギターは代えはある・・・。でもかごめの喜んだ顔が・・・。
見たかったんだ・・・」




優しくかごめを見つめる歩・・・。



「・・・。じゃあ・・・。私もお返ししなくちゃね・・・」




「お返し・・・?」



かごめは押入れから何かを担いで持ってきた。




「かごめ。それは・・・」



真新しいギターケース。



「歩が前にほしいっていってた・・・」



「お、おい。待てよ。それ、半端な値段じゃ」




「私”も”ちょっと奮発しちゃった・・・」



「私もって・・・。もしかして・・・。お前も何か・・・」




「・・・うふふ。おあいこね」




かごめは歩の腕に絡ませる・・・。







「なんかちょっとうれし・・・」




「え・・・?」




「考えてたこと・・・一緒だったから・・・。気持ち、
繋がってるって感じられるから・・・」





高価な贈り物より




何百倍



嬉しい。







歩の胸に頬を寄せ、心臓の音を聞く・・・。





「・・・歩が生きてる音がする・・・」




「・・・ああ」






「・・・クリスマスは・・・。大切な人と一緒にいられることが・・・
何よりも、幸せなことなのよね・・・」






胸の中の愛しい




瞳をただ




抱きしめる・・・。











(・・・。なんか・・・やべ(汗))




「・・・?どしたの?」




「・・・。な、なんか・・・。”その気”になってしまった・・・(照)」





「え・・・っ」




ドキっとかごめの心が波打つ・・・。





「・・・」



「・・・」




二人はしばしもじもじして・・・。







「かごめ」




「え?」




CHU!





かごめに軽くキス。






「ホントのところはすぐにでも・・・なんだがそろそろ休憩
時間終わりそうだ。続きはあとで・・・な」




「・・・歩ったら」





「じゃあな!」




バタン・・・!





照れくさそうな背中を見送る・・・。






こういう



あったかいキモチ




(ずっと感じていたいな・・・)





そう思って歩のプレゼントを手に取る・・・



(ん・・・?)




包みから一枚カードが・・・。





『・・・メリークリスマス。かごめ。愛してる。幸せになろう』




と・・・。







(・・・ありがとう。歩・・・。最高のプレゼントだよ・・・)





静かに指輪を薬指にはめる





指輪を口付けるかごめだった・・・